2022/04/25 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 月夜のハイブラゼール 月齢 肥えた三日月」にイスルスさんが現れました。
■イスルス > 港湾都市ダイラス
ハイブラゼール 喧騒外の区画
時刻:深夜
月齢:肥えた三日月 にて
イスルスはその晩 肥えた三日月が空に浮かぶ舞台にいた。
本来なら 喧騒や血錆 レストラン内の奥の席 など マフィアに似合いな場所にいることが多い。
表舞台の光るある場所とは違い、裏側の暗い場所で過ごすのが似合いに見えて
それは隠れ潜むときだけだと イスルスは考えている。
ボスが安全に食事を行う為に、調理場の奥に造られた席に腰を下ろすときなど
それ以外で暗い中にいることは ある意味では危険と言えるだろう
迷信の例えにあるように 暗い中で煙草を吸うとき、マッチはシェアしないほうがいいという。
一人目で気づかれ 二人目で定められ 三人目で刈り取られる
という死神の迷信だ。
それと同じように 暗い中 静かな中で ボスが誰かと話すという行為
それはある意味で 危険 である。
最も、イスルスからしてみれば その場所は心地よかった
やや太った月 虫の鳴き声が遠くで聞こえる
山脈では 狼が
―――ウォォォ オォォ ン―――
仲間と交信をしているようだ。
きっと この月でも狼達は 足りているのだろう。
ボスの周りにも客はいる中で
イスルスは今夜はあまりボスの傍にはいない。
狙う者に対し、その距離からでも対応ができる事
喧騒の中よりも明確に誰そ彼がわかること
ボスにとっては不都合な点があっても、イスルスにとっては都合がいい。
イスルスは時折新しい琥珀酒の入ったグラスと取り換える仕事だけをしながら
離れることを繰り返し、新しい氷や酒の具合を確かめる。
毒物の有無 視線 必要以上の接近 火薬や引き絞られた狩人の気配
そんなものがないかを探りながら、月と狼の夜は、イスルスの体もまた
後悔も躊躇も 戸惑いも憐憫もない ただ目の前に現れ その牙で獲物に喰らい付く
そんな狼を想起させるような遠吠えを体で感じていた。
今夜は 狼達にとって 好い夜のようだ。
―――ウォォォ ォォ オォォ オン―――
ご案内:「港湾都市ダイラス 月夜のハイブラゼール 月齢 肥えた三日月」にキルシュナさんが現れました。
■キルシュナ > 「―――くふ♥ くふふふふふふふふ……♥」
狼の遠吠えに応えるかの如く、蟠る闇の中から漏れ出でたのは何とも不気味な―――否、場違いに軽薄で品のない女の笑い声だった。
鉄火場に身を浸すボディガードがあらかたのターゲットを屠り終え、再び主の元へと戻るべく踵を返したそんなタイミングでの出来事だ。
そちらへ視線を向けたなら、ひと気の無い山野にて旅人を崖っぷちへと誘う鬼火を思わせる一対の炎玉がぼぅ…っと宙に漂う異様が目に入ろう。
そうしてそれが分厚い雲に遮られていた月明かりの差し込みと共に、ヒト型のシルエットを纏って浮かび上がる。
優美な曲線が豊満さとしなやかさを交互に繰り返して見せつけるそれは、まだ若い女の悩ましいボディライン。
その頭頂からぴょこんと突き出す三角耳と、肉付きの良いヒップラインの後背にてくなくなと気儘に揺れる猫の尾が、正体不明の人影をミレー族だと狼に知らしめる。
「いやぁ、ダイラスに美味しそな狼ちゃんがおる聞いて出向いた甲斐があったなぁ。まぁ、想像以上にヤバイ感じやけども……♥」
言いながらずらりと引き抜くのは黒塗りの刀身に禍々しい呪紋を浮かび上がらせる双子の魔双剣。凡そ実用的とは思えぬ未開の部族の宗教色を強く感じさせる捻じくれた刃形を持つそれが、相当な魔力を秘めた危険な武器である事は、数々の修羅場をくぐって来ただろう狼の目にも分かるだろう。
そんな危険な武器を抜き放ったにもかかわらず、熾火の双眸をくゆらせる鬼面の猫からは殺意の一欠片すら感じ取れぬのだから、それが一層の不気味さへとつながりもしようか。
■イスルス > 太った三日月
狼の遠吠え
真夜中
三つが重なったダイラスの夜
ハイブラゼールの中でも静かな領域の中で、ボスが酒を傾けている。
誰そ彼との時間の中で、イスルスは酒を取り換え 時折葉巻の火を灯すため
所謂夜間用マッチとして採用されている、死神の迷信から遠ざかるような青い灯
葉巻の先端を焦がし、指先でパシンッとマッチを弾けば その瞬間的な速度で火は消える。
甘い煙の中で、その時
バ シ ッ
放たれた弩 握り掴んだ矢。
ギヂンッと手の中で完全に速度を殺したそれが ビィィィン と震えている中で
事の始まりを感じた周りが、流れ弾はごめんだという感覚 立ち上がる群れと共に
イスルス以外の人数が盾のようになりながら ボスや客人と共に移動するだろうか。
その際、ボスはイスルスに対し 黒生地と縦縞のマフィアンスタイルで笑みを浮かべ
一言 片づけてこい と命じるのであれば そこがどんな高低であれ
逃げ出した者との追走劇が始まるだろうか。
相手も獣の臭いがする。
速度申し分なく 今のイスルスは銀以外 恐れる者などありはしない。
そうして出向いた先は 街から離れた場所 山野方角
一撃離脱 恐れを孕んだ呼吸と死が近づくそこから逃げる何かを屠り終えた際に 次の展開が始まっていた。
「……。」
イスルスの目の前に広がる霞月から露になった月明り
露出する光が別の光源 それが人の形を成して目の前に現れた出来事。
無表情な 何も映さないハイライトの瞳
リムフレームレンズが反射して人影のシルエットを映し出している。
盗賊 暗殺者 将又 小手調べの斥候
イスルスに対し 以前から何かしらに触れていたらしい口振りで
その手に歪んだ刀身を持つ双剣を見せながら 怪しい笑みを浮かべていた。
「……。」
罠 この屠り散らかしたそれらはただの撒き餌
ボスの元へ足を進める気持ちが一欠片だけ、そこにはあった。
しかし、目的は自分だという。
この場所まで誘い込んで 二人きりで 今の事柄よりも闘争を。
更なる闘争を約束させるような誘い方だった。
イスルスは 久しくいない 自身が目的でそこに来て ここに来させたという展開に
両手指が這うフィンガーグリップ 刀身に銀色の線画が彫り込まれた剣銃二つを手に
その切っ先を赤く滴らせ 瞳は少しだけ瞼を持ち上げて広げる表情を見せる。
“美味しそうな狼” という言葉は確かに耳に届いていた。
なら目の前の“旨そうな猫”を、己自身がどう扱おうが 構わないのだろう。
■キルシュナ > 躍動する動きは血に飢えた獣そのもの。
それでいて細身の眼鏡が形作る顔貌には理知がある。
しかしてレンズの奥の瞳と来たら、爬虫類やら昆虫やらと同じ、何を考えているかさっぱり分からぬ深淵ばかりがどす黒いはらわたを覗かせているという異様。
そんなキリングマシンが、しかし、僅かな思考に人間らしい逡巡を覗かせた。
恐らくは主への忠誠が元となった迷いだろう。
それが行き先に迷ってうろうろする犬の姿の様で、場違いにも
「くふふっ♥ 可愛らしなぁ、狼ちゃん♥」
なんてセリフに繋がった。
――――さて、ほとんどの場合において愛用の双剣を引き抜くことなく揶揄い半分に制圧出来るだけの実力を有する伝説級の元暗殺者。そんな猫娘をして初見から獲物を抜かせるに足る危険な獣にわざわざ喧嘩を売りに来るほどキルシュナも物好きではない。
戦いなどは真の目的を果たすための手段の一つ。そんな物に命を懸けるなど、よっぽどの酔狂者か、戦いに狂った剣鬼くらいの物。少なくともキルシュナはそうした生き方とは遠い場所に身を置いているつもりだ。
そんな猫娘が何故こうしてホームタウンから遠方に出向き、狼の牙列の前に身を晒したのか。そこには信念のブレなど存在しなかった。
人の言葉を発する事のない狼ちゃんとエッチする。
ただただそれだけの非常に純粋で色欲にまみれた最低な理由のみがそこに在る。
並の相手であればお得意の淫術にて金眼をぴかぴかさせてやれば一発で肉便器と化すだろうが、眼前でうなりを上げる狼の様な存在は別だ。
彼女の核は主に対する絶対的な忠誠。
それを揺るがす何かが無ければ、淫魔に対してすら効果を発揮するキルシュナの淫術を用いたとて掛かりは不十分となり、場合によっては淫行の最中に喉笛を食いちぎられるなんてバッドエンドを招きかねない。
そのため、まずは剣力にて獣に教え込むのだ。
己が単なる肉塊ではなく、貴様が屈服するに足る力ある者である事を。
じりじりと円を描きつつ間合いを図り、目に見えぬ剣閃のやり取りで機を伺う。くるん、ぎょるんっ。そんな中、猫娘の手の中でジャグリングめいて歪な刀身を回転させる双魔剣。
―――ほれ、飛び込んで来い。隙だらけやで?♥ なんて言葉を言外に放つにまにま笑いの舌なめずり。
■イスルス > 久しく 本当に久しく感じていない気分だと イスルスは無表情のまま
両手に剣銃を携えたまま思考する。
もぞもぞと体の内側に入れないか まるで探るような感覚が肌にうっとおしい。
その上で挑発的な態度
ほんの少しだけ首を傾げて見せる。
男の下卑ひた臭いと同じように 目の前の猫は己に対し 発情期のそれ
本当に久しい。
この猫は 己に欲情所か 襲う気でいる。
盛った雌猫の臭いじゃない 雄猫の臭いだと鼻先で スンッ とわかるほどだった。
猫は雌が雄を選ぶという。
犯されたがりではなく 犯したがり
互いにゆったり、円を描きながら間合いを図るような動きに至りながら
誘うような動き 群れの連携ではなく 孤狼の一匹での狩りに対し
追い詰められるのではなく追い詰めようとする視線。
ボスの所有物であることを、自身で認めている身で
ボス以外に捧げるなど ボスの言葉以外にはないだろう。
食い散らかすことはあっても 食い散らかされることなどありはしない。
跨るのではなく押し倒す気が多い猫に対し
飼いならされることを選んでいた狼のとる行動は、両の剣銃の雫を掃うと
後ろ腰に両方収めたそれだった。
月明りが、一瞬陰る
再び霞む月 イスルスと 猫の半面が陰る。
その間に、イスルスの体からは煙がゆらりと立ち上り 顎が下を向いた表情。
月が再び 起き上がる
イスルスの顎が 前を向く。
「―――ゴロ ロロロ ロロ……。」
勝算無くして猫は狼の前に立ち上がらない。
イスルスは目の前の敵を 本能と理性で察し 半面が煙が揺らめくような月明り色の毛並みを起こし
マズルフェイスが片側だけ浮かび上がるように その牙の配列を見せ 喉がうなりを上げた。
互いに一度のその鉄を交えずに イスルスが狼を見せる
人面の無表情から 獣貌の唸り
ギヂッ ギヂッ ギヂンッ と両手の五指が力を絞る。
■キルシュナ > 「――――うは……♥ ナイフのカラクリ以外にも、なんや切り札隠しとるとは聞いとったけど、これか……。にひひひひっ、ホンマ、ヤバそな番犬飼いならしたもんやなぁ……」
夜闇の中、猫の暗視に映し出されるのは獣の異相。
単なる獣人ではなく、獣返りの力すら残すウェアウルフの末裔だったのかと理解した猫は、八重歯の光る大口の笑みに一筋の冷や汗を伝わせた。
木製のグリップを握り潰しかねない不穏な音に猫耳がびくびく震える。
獣の本性を覗かせた人狼は、筋力と瞬発力の向上において、ヒト型とは比べ物にならぬ程の性能を誇ると聞く。
とはいえ、露骨に晒した隙に勇んで飛び込んでくるような粗忽な獣でもないとなれば、このまま時を潰す意味も無い。
幸いキルシュナは眼の良さには定評がある。
人狼の瞬発にも恐らくは対応出来るだろうし、そもそも対応出来ぬのならば勝ち目はない。
「まぁ、軽ぅく打ち合ぅてどないな手ぇ隠しとるか見さしてもらおか……なッ!」
とぷん。
と猫が影に潜った。
そんな風に見えるだろう沈身が前倒しにした状態の、たわわな双乳が地に落ちる寸前に疾駆する。
地を這う影が、凡そ人とは思えぬ俊足で狼の脇へと回り込み―――ぞうんっ!
しなやかに伸びあがる長躯と共に歪な双剣による斬り上げを見舞う。
双剣双剣猫尾に蹴撃。
側方への宙返りを行いながらの四連撃は、間合いも角度も微妙に変えた、ひどくいやらしい軌道で逃げ道を限定する。
素直に跳びのいての回避を選択するならこちらは危険な宙でのやり取りを行う事なく着地出来るし、複雑な軌道を描く四連撃の僅かな隙を縫って攻撃してきた場合の防御手段も用意している。
まさに様子見の初撃といったこの動きに、果たして人狼はどの様な動きを見せるのか。
■イスルス > 狼の 喉笛の 唸り声
月の夜
陰りから再び月明りにさらされたそれは相変わらずの黒瞳
暗闇の中 月の明かりが反射して見えるだろう あの月の瞳すら見せはしない。
多くの獣が暗視の中で見せるだろう月の瞳すらない中で、目の前で月の瞳となっているだろう猫瞳
それが、狼のさらけ出す半貌に対し 侮らず 恐れを抱き 本能という獣の理性で理解するそれ。
しかしまだあきらめていないらしい。
探り 見える部分を見てからでも遅くはないという構えのそれ。
戦の臭いに対し 逃走手段や この状態のイスルスを翻弄できる何かがある
駆け引きではなく内側の手札に存在する何かを イスルスも同じく感じ取れば
唸りを上げるイスルス 毛並みは揺らめき毛先が煙となって四散していく中で
其処にはすでにリムフレームレンズすら半面の膨らみで中心から パキンッと割れて地面に落ちた。
剣を片手に 脱力からの踏み込み。
どろりと体を崩し 足先から音もなく爆発させるかのようなそれは
昔は無しにあるような失せたもの 猫の足音 のよう。
ひたりと掌を床につけた音よりも音のない世界から
互いに夜に長けた瞳を持つせいか見失うことはない。
しかし軽やかさ 柔軟性 軌道を描くそれは猫の方が上なら
シルエットからうかがえる逞しさのバネ。
始めに見える斬り上げに対し イスルスが瞳で追う先は足先
それが両方浮いているということ
つまり跳躍しながらの撃であると悟るのならば イスルスの上半身が消える。
刃が二つ 蹴りが一つ 尾が一つ
それが毛先が散ったイスルスの視線の上でちらちらと月明りに透けて線を描いている中で
黒い軌道を生んでいた。
ぞるんっ
イスルスが行っているのは、上体逸らし と呼ばれる バランス 柔軟 筋肉 で成り立つむしろ猫寄りに見える回避術。
しかし 撃が過ぎた後で まるで引き金を引いたように飛び起きる上体
それと共に片手が地面に這うのなら、視界が逆転する中で片足の膝を畳む動作。
引き絞るそれが、伸びた片足を位置を入れ替えるように その濃紺の革ブーツの靴底から
ぎ ゅ ぱ っ ! とそのシルエットに対し、一撃を叩き込まんと穿つ。
■キルシュナ > (うへぁっ、身体能力の向上だけやのうて煙化まで使いこなせるんかいっ! 人狼の中でも長生きした古豪だけが使える技術やろそれぇええ!!?)
そんな言葉を口にせぬのは流石のエロ猫もそんなセリフで貴重な酸素を消費するわけにはいかないから。無酸素の疾駆、そこからの跳躍。同時に放つ四連撃。
直前に煙化の能力は視認したので、それを用いたカウンターの可能性は考慮していたものの
「―――――んなぁッ!?」
よもや身体能力だけで対応されようとは。
人の身では無理な挙動に身体が耐えきれず筋繊維の断裂を起こしかねない反背と振り子の返し。
反動を利用したオーバーハンドの一閃を予想して咄嗟に双剣を交差させるも、またしても予想外。
狼の攻撃はまさかの死角、下方からの靴底による刺突。
「ッどわぁぁあぁああ!?」
側宙の連撃を放ち終え、くるんと回る猫の身体が着地を前に長脚を下方に向けたタイミングでの変則蹴り。
反応出来たのはただの偶然。うなじにぞわっと来る第六感が、鳴らす警鐘に従って、交差した双剣をんばっと大の字に開くかの回避行動。
大きく広げた両腕と、それに引かれて左右に開く爆乳の合間にてばづづづづづづづんっと聞いた事の無い異音が響く。
それは黒装束の中央、淫猥に褐色肌を見せつける露出部の保護を行う鋼の編み糸が砲弾めいた蹴り脚に断斬された音。
後先考えぬ無理矢理な回避が、びたぁぁんっと盛大な尻打ち音を響かせる。
それでも、多少無様な挙動であろうと即座に立ち上がれるのは、あの様な状況にあってもきっちり受け身を取った猫の柔軟があればこそ。
追撃を弾く構えを取りながら、つたたんたんっと距離を取り、この期に及んでなお余裕ある動きで身を起こす。その頬にはいくつかの冷や汗を見る事が出来ようか。
「――――ええやろ。今日ンとこはこれで終いにしといたるっ! せやけど忘れんなや! 次はもっと美味い事やって、狼ちゃんのメイドご奉仕楽しんだるからなっ!!」
しゅざっと潔く双剣を佩き直し、代わりにずびしと人差し指を狼メイドに突き付けて、雄々しい声音で放つのはそれは見事な負け惜しみである。
鋼糸の支えを失った胸元が、弾力性たっぷりの爆乳をたゆゆんっと大きく揺らした。
そうして次の瞬間には「とぅっ!」などとふざけた声音と共に爆裂玉を投げつけどろん。
ヘタに突っ込めば数日間は発情に苛まれるという性質の悪い煙幕が夜風に流された後にはもう、猫の子一匹存在しない虚空があるのみ。
伝説級の暗殺者が、伝説を作り上げるに至ったのは、偏にこの思い切りの良い逃げ足があったればこそ。この日を境に情報収集と対策を練ってはちょっかいを掛けてくるエロ猫と、辟易とした無表情の狼のじゃれ合いにも似た命のやり取りが幾度か交わされる事となるのだが、ともあれ。この日の軍配は狼の方に上がったのである。
■イスルス > 煙化と実体
煙のように近づく という言葉がどこかにあるように
近接でのそんな行動はある意味でペテン
詐欺回しに近いような行動の一種だろうか。
最も、それが発せられているのは毛並みの揺らめきにもにた表現のみ。
五体を駆使するような肉弾戦に切り替えたそれは 武器 ではなく人狼の体で挑むこと。
闇に溶けるような踏み込みと技術 連撃
イスルスはすでに体は月明りの中でまるで暖める必要もないほどに高まり、上体逸らしと組み合わせた
靴底蹴りという上方に向けた蹴り上げによるカウンター
それに対し、人狼の蹴りに対し耐えきったあの双剣
そして威力を逃したと言えど、衣服が損傷しただけで済ませた猫の様子
それをイスルスは蹴り上げた姿勢からふわりと足先を地面に着けて、観察する。
半貌 今だにマズルフェイスが煙を帯びて浮かび上がるそれ
無表情から 狼の唸りは明らかな表情を造り上げているまま。
互いに一合交えただけながら あの双剣は実体化したこの身に影響を及ぼし
絶命に至らずとも切り落とす程度のものを孕んでいる と位置付けた。
もしもそこでカウンターを更に返すように その切っ先を向けて突き刺すようにされていたなら
武器を一つ失わせることはできたかもしれない。
しかし片足は損傷していただろう。
焦りと判断 身軽さと柔軟性が生んだ回避は、互いに一つを使えなくする代わりに双方に間合いを取らせる
始めに戻るそれとさせたのだ。
「ガロロ ロ ロ ロ……。」
そして喉笛の唸りは、これで終わりではないことを示す。
前のめりに 背中にもメイド服の上から煙が纏われ ふわりと人狼の毛並みが浮き上がった。
しかし
ここまでを小手調べ 様子見としていた猫は、性欲は恐れに負けずそこにあり
捨てセリフにしては余りにも強欲な言葉を残し、追撃を行おうとする初手
それを封じるような煙幕
煙に乗じて出現させる
イスルスは判断するものの、一瞬吸ったそれの違和感に煙と化すことをやめ
マズルフェイスが四散する。
口元を袖で覆いながら、風が消えるころにはそこから消える猫。
「……。」
口元を解くころ、月明りの中で一人。
遠くでは 狼の遠吠えが聞こえる。
身体が沸いている中でも、表情が再び無に戻れば 体から隆起していた筋肉がスッと力を抜いて
元の女 メイドの肩 シルエットが戻る。
後にボスのところに戻り、ハンドサインを交えて事の顛末を語ると
自身ではなくイスルスが狙いだったこと
それはある意味では正しくもあり ある意味で愉快だったように笑んだ。
ボスはイスルスが五体満足のまま どこか瞳は熱の色を残す様子
それを嗅ぎ取っている イスルスの ただ一人の主故に。
『おそらくそれは―――』
其処からあれが誰であり 何者であるのか
それを聞いたところで、イスルスの答えは変わらない。
これ以降 何度も正逆極まる二人のやりとりが何度か行われているものの
ボスではなく狙いは自身 されど銀を携えてくることすらないという 体目当てのやり取り。
それが続く 奇縁 というものが出来上がった切っ掛けの日となっていた。
ご案内:「港湾都市ダイラス 月夜のハイブラゼール 月齢 肥えた三日月」からキルシュナさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 月夜のハイブラゼール 月齢 肥えた三日月」からイスルスさんが去りました。
ご案内:「貴族の邸宅」にメレクさんが現れました。
■メレク > 王都の貴族邸宅にて行なわれる仮面舞踏会。
普段よりも照明を落とした薄暗いホールには管弦楽団による艶やかな音楽が鳴り響き、
華やかなドレスで着飾った男女が肌が触れ合う程に身体を近付け、会話や舞踏に興じている。
彼等は皆、一様に仮面を付けており、己の素性が何者であるのかを分からなくしていた。
表向きにはやんごとなき者達の社交の場である夜会。
しかし、その実は有閑貴族達が一夜の享楽に耽るための集いであるのは明白。
貴族の他にも見目麗しい奴隷の男女や高級娼婦、事情も知らずに集められた女達が混ざり込み、
灯りが届かぬ会場の隅からは男女の熱い吐息や嬌声が、音楽の途切れる合間に漏れ聞こえてくる事だろう。
その会場の中央の壁際にて一人の男が二人掛けのソファに腰掛けて高級ワインを嗜んでいる。
でっぷりと肥えた身体に、節くれ立つ十の指に嵌めた豪華な太い指輪。
仮面で顔を覆っていながらも、正体を隠す意志が見られない彼は、この夜会の主催者である。
傍らに奴隷達を侍らせて、時折、近寄ってくる貴族達との他愛もない会話に興じながら、
男は快楽に堕落する人々の姿を眺めて、心底愉しそうに只々ほくそ笑むばかり。
ご案内:「貴族の邸宅」からメレクさんが去りました。