2022/04/14 のログ
■ヴィルヘルミナ > 目の前の相手には、何か事情があるのが伺える。
この留学生が求める自由とは何なのか、興味を抱きつつも、今は目の前の勝負に集中し。
「油断しなければ勝ち目があると思ってるところが不遜よね。
いいわ、本当の貴族の実力、見せてあげる」
そう言って、手にした模擬剣を一度眼前に掲げ、再度構えなおす。
勝負が始まった瞬間、イェンの巨剣が横薙ぎの攻撃を繰り出してくる。
ギャラリーがどよめくが、ヴィルヘルミナは動じない。
「……ふぅん?」
それどころか、にやりと笑って。
迷いなくしゃがみ込むと、巨剣と地面の間の微かな隙間に身を滑らせるように駆け抜ける。
己の身を切ることも恐れぬ度胸。ギリギリの所で刃を避けるが、その金の美しい髪の毛が数本断ち切られ、宙に舞う。
「本当に遠慮が無いわね!楽しめそうだわ!」
イェンの剣を掻い潜れば、今度はヴィルヘルミナの番。
その手にした模擬剣を、遠慮なくイェンに突き刺さんとする。
手にした模擬剣は、王国正規兵の片手剣を模したもの。
短いがその分軽く、目にも止まらぬ素早い斬撃を繰り出せる。
■イェン > (後方に投げ出した細身が、双丘の膨らみ越しに令嬢の回避運動を確認する。彼女であれば必ず回避するだろうと読んではいたが、かすめただけでも致命傷となりかねぬ剛剣を紙一重でかわしつつ、笑みさえ浮かべて見せるとは。十分高めな評価をしていたつもりだったが、彼女の脅威度を更に高く設定しなおす。地面に倒れ込む寸前、ととととんっと小刻みに大地を蹴り込み後方へ。ばうっと盛大に土煙を立ち昇らせる巨剣の横薙ぎを掻い潜った令嬢の反撃は、レイピアもかくやという鋭さを有していた。)
「………ッ、ふ…ッ! ―――哈ァッ!」
(こちらも回避はお手の物。元は《蛇》として育てられ《牙》としての訓練さえ受けて来たイェンである。《華》となってからも鍛錬を怠らずにいたその体術は、本職相手であろうとも決して引けを取るものではない。紙一重とまでは言わぬものの、ゆらりゆらりと捉えどころなく揺れる細身は危なげもなく無数の斬閃から身をかわしてのける。 そうしていきなりゴウッと彼女の背後から唐竹割りの断斬を落とす。無論、かわされよう。続いて右の、続けて左の巨剣の追撃が詰将棋の様に彼女の逃げ道を塞いでいく。意思持つかに自在に舞い飛ぶ四剣の息もつかせぬ連撃は、駆け出しのみならずベテラン冒険者をして唸らせる程。)
「―――――呀ァッ!」
(それら剛剣の竜巻に自ら飛び込むような決死の吶喊が剣士の距離さえ踏み越えた。距離を取って戦うが常道の魔術師が、刃圏のさらに内側へと潜り込む掟破りの不意打ち。それで狙うは組み打ちによる貴族令嬢の無力化。蛇の如く巻き付く白腕が剣を握るお嬢様の腕を絡め、豊乳を擦りつけるかの体捌きがぬるりと背後に回り込む。刹那にふわりと香るのは、青林檎を思わせる甘酸っぱい生娘の体臭。崩した体幹を押し込むように倒れ込めば、肩を極められ仰向けに地面に押さえつけられた死に体となるはず。)
■ヴィルヘルミナ > 「あらあら!貴女はただの帝国からの留学生じゃないようね!」
己の刺突はまるで陽炎を相手にするがごとく。
ひらりひらりとかわすイェンの姿に、ヴィルヘルミナは確信を強める。
ただの豪商の娘が何も考えず貴族に歯向かうわけもあるまい。
「デカけりゃいいってもんじゃないのよ…っ!!」
ヴィルヘルミナの攻撃を中断させる、背後からの斬撃。
魔術の巨剣が次々に、彼女に襲い来る。
しかしながらヴィルヘルミナはスリルを楽しむように笑いながら、背後からのそれをかわしていく。
しかし、
「……ッ!!」
その懐に飛び込んでくるイェンの姿。彼女の腕が模擬剣を振るう腕に絡みつき、彼女の身体が背後に回り込む。
流石のヴィルヘルミナも、この魔術師と思えぬ掟破りの体術に、不意を突かれ屈してしまうかに見えた…が。
彼女は、にやりと笑みを浮かべた。
「…せいっ!」
倒れ込む寸前、後方に回り込んだイェンの顔に、寸分たがわぬ後頭部での頭突き。
それで彼女を怯ませ、振りほどけば、すかさず剣を捨て、振り向いたヴィルヘルミナ。
その硬く握りしめた拳を、遠慮なく、イェンの身体に突き刺す。
「ボックスは貴族の嗜みよ!!惜しかったわね!」
次々拳を繰り出していくヴィルヘルミナ。魔術による身体強化は、拳の速さをも上げていて。
ともすれば、ヴィルヘルミナがイェンをこの間合いに誘い込んだのかもしれなかった。
「これで…トドメ!」
最後に、打ち上げるアッパーカット。
決まれば、イェンも流石に立っていられないだろうか。
■イェン > (よくもまぁあのような回避行動が取れる物だと感心さえした。こちらがただの留学生では無いのなら、あちらもそこらの貴族令嬢では無かった。なればこそ、このまま四剣で追い込むだけでは勝ち目は無かろう。それが分かってからの判断は早かった。即断即決の踏み込みは狙い通り彼女の不意を突いたと見えた。正直、勝ちを確信してさえいた。押し倒した後、どの様に言えばうまく収められるだろうかなんて事さえ考えたのは、やはり、幼少より訓練漬けの身であったとしても実戦経験に乏しい駆け出しだからなのだろう。)
「――――ツぁ……ッ!?」
(咄嗟に顎を引いて鼻先への痛打こそ避けた物の、まさか伯爵令嬢ともあろう娘がこの場面で頭突きなどという泥臭い反撃を返してくるとは。目の前に星が散り、抱え込んでいた細腕を手放していた。地面に倒れ込んだ際の衝撃は不思議と柔らかな物で)
「――――ぁうッ! ッは、あッ……ッく、ンッ! あァ…ッ!」
(脇腹に突き立った拳は信じがたいほどに硬かった。肋骨が軋み、内臓が拉げ、胃の腑がひっくり返る。頭部だけは堅守せねばと幼少期に刷り込まれた教えに従い持ち上げられていたガードが、腹腔を抉る重い連撃に下がっていく。死角より跳ね上がったとどめの拳に反応出来たのは、目で見ての物ではなく、直感に突き動かされての物だった。本来であればガツンと顎を撃ち抜いていただろう拳撃は咄嗟に背筋を反り返らせたイェンの顎先をすこんとかすめるに留まった。)
「あ、ぇ…………?」
(その結果として訪れたのは、完璧なまでの脳震盪。頸椎を刺し貫かれたかの様に総身がイェンの操作から切り離される。くてりと弛緩した身体が力なく倒れ込み、下方から留学生を乱打したお嬢様の豊乳の上にぽふんっとポニーテールの頭部を落とした。幸い潰される事無く形を保つ事の出来た小鼻からの出血が、伯爵令嬢のブラウスに赤い染みを滲ませる。紫影の四大剣が風化したかの様に散っていく。)
■ヴィルヘルミナ > 「…………私の勝ちでいいのよね、これ」
完全に力の抜けたイェンの頭をその豊かな胸で受け止め、着ていた制服を血に汚しつつ、
ヴィルヘルミナは彼女を抱き支えながら片手をかざし、呪文を唱える。
そうすれば回復魔法がイェンの身体の痛みを癒し、目を覚まさせるだろう。
「ほら、目が覚めた?どうしてくれるのよ私の制服」
イェンの意識が覚醒すれば彼女を立たせ、ハンカチで彼女の鼻を拭いながら文句を言うヴィルヘルミナ。
ただ、言葉の割には怒ってはいないようだ。
「で、命までは奪わないからこれでいいわよね。
貴族と平民の差、思い知った?ならよろしい」
イェンが言葉を述べる余地なくまくしたて、そういうことにしておくヴィルヘルミナ。
イェンの血を除いても彼女の肌と服は己の汗にぐっしょりと濡れ、その太腿を包むストッキングは透けるほどであった。
「ま、貴女も相応の実力がある人間だというのは良くわかったから、それさえ弁えてくれれば今度からは貴女のやらかし、私が許可したことにしてあげるわ。ありがたく思うことね」
そんなことを言って、にんまりと笑うヴィルヘルミナ。
だが、彼女はイェンに近づくと、徐にその頬に指先を伸ばし、撫でて。
「……でも決闘で負けたのだから、何か差し出しなさいな。
そうね…汗だくだから、お風呂で洗ってもらおうかしら♪」
■イェン > 「――――っ、か…っ、はぁっ! はぁっ、はっ、はあ…っ、はあ……、か、回復魔法まで……」
(《華》へと所属を変えてここ数年は与えられる事の無かった激痛。どす黒い痣と血尿にしばらくの間は悩まされるだろうと思っていたそれらがすぅっと引いて、弛緩していた身体がイェンの脳へと回路を繋ぎ直した。至高の寝心地を誇る肉枕から顔を上げ、制服姿の各所を押さえて身体の具合を確認していたイェンだったが、恨みがましげ声と下方から押し付けられるハンカチに目を向けた。流石の鉄面皮も紫水晶の双眸を丸くして、見下ろした彼女の胸元と、鼻先を拭うハンカチに赤い物を見つければ)
「あ……ぁりがとう、ございます……」
(実戦の高揚に染まる白頬に更に色濃い朱を広げ、居心地悪そうに視線をそらして礼を言う。『この子、思っていた以上にいい子じゃないですか……』と、改めて彼女の認識を上方修正しつつ、今更ながら伯爵令嬢の腹上に馬乗りになっているお尻に気付いて身体をどかした。その際、お尻にひんやりとした風を感じ、一拍遅れて己の物とはまた異なる汗の匂いに鼻腔を擽られ、少なくとも彼女の肢体をこれだけ火照らせるだけの戦いは出来たのだと確認した。)
「――――ええ。感謝いたします、ヴィルヘルミナ様。 ……噂とは、やはり当てにならぬ物ですね」
(地べたの上で正座して今度こそ正しく頭を下げた。耳にした噂が全くの偽りという事は無かろうが、少なくともそこから思い描かれていた印象の悪さのほとんどはこのやり取りで払拭された。むしろ、これまで出会って来た貴族などよりは余程に好感の持てる相手だ。元に戻ってしまった冷淡な美貌に、どこかすっきりとした納得の色を広げたイェンではあったが)
「………へ、ぇ? ………っと、………ん。 わ、分かりました……その程度の事であれば……」
(続く言葉には再びきょとんとしてしまう。数度またたき、ようやく彼女の要求を正しく受け取ったのだろう。再びじわりと滲ませた赤は羞恥による物なのだけれど、頭部の炎熱にて再びつぅ…っと垂れた鼻血は、クールビューティーと名高い留学生が何やらいかがわしい事でも考えたかの様にも見えたかも知れない。)
■ヴィルヘルミナ > 「……どんな噂を聞いたのかは聞かないでおいてあげるわ」
どうせロクでもないものなのは自分でも分かってはいるが。
クラスでの彼女は貴族通り越して暴君めいているが、それでもこういう場面で体を張る女なのだ。
「じゃあ決まりね♪どこかの浴場でも貸し切って…って。
また鼻血出てるわよ…」
またハンカチを差し出しつつも、それは殴られての出血という風にも見えず。
彼女の視線、頬の赤らみも合わせれば……。
(……ふーん…)
こちらも改めてイェンの顔身体を見れば、帝国出身らしいエキゾチックな美人で、悪くない。
勝者の立場で何を要求しようかと想像を膨らませながら、ヴィルヘルミナはイェンの手を引いて歩き出し、訓練場を後にした。
ご案内:「平民地区 訓練場」からイェンさんが去りました。
ご案内:「平民地区 訓練場」からヴィルヘルミナさんが去りました。