2022/02/09 のログ
ご案内:「乗合馬車」にタピオカさんが現れました。
タピオカ > 「あぅ、……きついよ……っ……!
はぁっ、ぁ……!」

吐息が窓グラスに触れて、白く広がる。
褐色肌の女子生徒が後ろから押し付けられて苦しげにもがく。

……といっても、何か艶っぽい事が行われているわけではなかった。今のところ。
此処は大型の乗合馬車の中で、コクマーラジエル学院への通勤通学客で混み合っているのだ。

学院にて身分混合クラスが新設されて生徒は増たせいか、乗合馬車の乗車率は右肩上がりの様相。
通勤通学手段の整備は後手に回っているのか定かではないが、最近は足の踏み場も危うい混雑っぷり。

「これじゃどうやっても隣の人と身体が当たっちゃう……!
あ、……ごめんなさい……」

足の踏み場も無ければ手の置き場も危うい。鞄を前持ちにする手先が、ふにり。
誰かのどこかに当たってしまった感触に、それがどの人のどこに触れたのかわからないまま謝った。
そうする間にも背中や腰に感触を覚え、居心地悪そうにぎゅっと鞄を抱き。
揺れる満員の乗合馬車。

タピオカ > そのうちに、御者席から到着のお知らせ。
間もなく停車した馬車の扉から押し出されるように外に出ると新鮮な空気を吸ってほっとひといき。

スカートの裾につきかけた皺を手先で丁寧に伸ばし、銀髪に軽く手櫛を通すと。

「ふー!窮屈だったー!
でも……。へへ。ちょっと都会な気分かな」

どこまでも高原と稜線と川の流れが続く故郷では決して得られなかった経験に、少しばかり満足そうにもするのだった――。

ご案内:「乗合馬車」からタピオカさんが去りました。