2021/08/07 のログ
フィリ > 「頭でも覚ぇなくてはぃけなぃ。…身体でも、同じく。手が頭につぃてこなければ、上手く動けなぃのと…同じでしょぅか。
頭でっかちはぃけなぃと。解ってはぃるの…ですが。
勿論逆に、頭が識らなぃ事を、手脚は実践出来ません、難しぃぉ話なの、です。

…形だけ、再現出来…ても、味がなぃとぃぅのは。それは、想像したく、ぁりません……甘ぃ味が欲しぃの、です、はぃ。
一通りのレシピとぃぅ物は、読み覚ぇてぃるのですが、それだけでは――ぅぅん。
…シスカ、ちゃん、に。教ぇてぃただくのが。良ぃのかもしれません。
身近で最も、こぅぃぅ事がぉ上手な方は。彼女なのではなぃかと。思ぇます…ので。

素養も要りますし、知識も、必要です。はぃ――調理だけでなく、魔術に関しても。
使ぃこなすには、矢張り、使ぃなれてぃなければぃけなぃ…のですが。
魔力の有る、魔法の素養が有る、という前提条件ならば――魔術につぃて、研鑽してぃるだろぅ事は、当然でぁると考えて…
其処の点は言ぅまでもなぃと、スルーしてしまったの…です。テストだと、怒られるポイント…でしょぅか。

出来上がりの、後…は。術者によって、千差万別、とぃぅ気もします。その場限りか、形として、残るのか…も含めて。
…冒険者の方や――万一、遭難した方等、にとっては。腹持ちとぃぅ物が、問題なの…でしょぅか?
ぃざとぃぅ時、食べ物として、形作れたとしても――消化される前に、胃の中から、消ぇてしまったら。意味が無い…ぇぇ、そもそも。
形を、味を、再現出来ても――栄養は、どぅなのか。流石に、其処迄、再現出来るものなのでしょぅか。……ぅぅ。

嗜好品、ではなく。生存の為でしたら――寧ろ。如何に、現物を手に入れるか、の方が。肝要なのかも――です、はぃ。
拝借してしまぅのは、申し訳無ぃのですが。緊急避難とぃぅ事と――後できちんと、弁償するとぃぅ、事で――」

知識も必要、技術も必要。その上学問まで必要だというのなら。いっそ返って手間なのではないか。
ましてやそれが、生き延びる事を優先してであるのなら。尚更なのではなかろうか。
それならいっそ先程、自分で行う事は却下した…遠地から物を取り寄せる魔法。其方の方が良いのかもしれないと。頭を捻りだした。
…尚。物を転移させられるというのなら、そもそも、自ら転移する事で。遭難を防げるのではないか…という点には。気が付いていない模様。

「それはもぅ、そぅ――ですね、私の存じ上げる中で、一番…造詣の深ぃのが。ぉ姉様なの、です。
ぉ姉様に教ぇてぃただければ、きっと、と…思ってぃるのです、はぃ。」

母であるリスのお墨付きなのだ。間違い無く、彼女が確かな師なのだと思っている。
…そのリスの関係者には、より優れた術者も存在する、という事になるのだが…残念ながら。未だ会う機会が無いのと。
矢張り、直に血の繋がる、竜の血が入っている、という事が。本能的にも憧憬に繋がっているのだろう。
そうした師である彼女に。少しばかりのからかいを含まされつつも、しっかりと励まされる。
尻を叩いて急き立てる、といった感も有るには有るが。それでもまだ優しい方だろう。
例えばこれが、ラファルが暴走して、この家以外で何かを粉砕せしめた場合だったりしたのなら。
物理的に叩かれる尻が、大惨事になっているだろう。……くわばらくわばら、と。思わず想像してしまった光景に、頭を振って。

「と、とはぃぇ、そ――の。これでも、かなり……ぉ話出来るよぅに、なってきたの――です、少なくとも、ぉ姉様とは。
余所でも、は――ぃ、ぉ買ぃ物に困らな…ぃ、くらぃには……

ぃぇ。声に。言葉に。…具体的なイメージを、固める上で。有用なのは、存じて…ぃるのです。私も。
そもそも、私の力は――詞。詩。言葉に、端を欲しているの…です、から。」

意地悪が混じっていても、彼女の言わんとしている事はちゃんと伝わる。
教わる方も出来得る限り食い付こうとしているが。それと同様教える側も。決して手を抜かない人物なのだ。
だからどれだけ当惑していようとも。照れていたり恥ずかしがったりしていても。きちんと、言われた事には肯いてみせる。
長く複雑な詠唱を、きっちりとこなせる事――だけではない。少女の場合、もう一つ覚えなければいけないのは。
何の気のない短い言葉、無意識や反射的に口から零れた単語、それ等に、力を載せない事。
形の無い力は実に厄介である。もう一人の叔母のような、物理的な破壊力に限らず。
例えば、消えろ、と発した言葉が本当に、目の前の物を世界から消滅させてしまう可能性すら。…決して無いとはいえないのだから。)
「――――…其処につぃては。…ぅ、ん、ぇっと…ご心配なくなの…です。
そぅですね…色々な方には、まだ秘密、なのですが。……本人にはちゃんと、間違ぃなく…」

其処で、少なくともヒトと呼ぶ誰かが居る事を。無自覚にばらしてしまっている辺り。矢張師の方が遙かに上手なのだが。
ともあれ、物理的な力とは、全くの無縁なのだろう両手を。ぎゅ、と。少女は握ってみせた。

竜胆 > 【中断します】
ご案内:「トゥルネソル家 竜胆の部屋」から竜胆さんが去りました。
ご案内:「トゥルネソル家 竜胆の部屋」からフィリさんが去りました。
ご案内:「トゥルネソル家 竜胆の部屋」に竜胆さんが現れました。
竜胆 > 【お約束待機】
ご案内:「トゥルネソル家 竜胆の部屋」にフィリさんが現れました。
竜胆 > 「考える事、手を動かすこと、足を動かすこと、それは、当たり前にできる事……それが、慣れという物。
 ただ、効率的に動かすには、何かを考えながら行う必要があるわ。
 ……それこそ、魔法陣を描いて、それに魔力を流して、魔法を発生させる。と、似たようなものね?
 魔方陣が頭、魔力が手足、魔法が、行動による結果、と。

 難しく考えすぎるのも、良くはないわ。

 でしょうね?味がしない、というのは、一番やりやすいでしょう、失敗。
 だって、レシピでは、味が判らない物、実際に食べてみなければ、想像がつかない。
 そうね、シスカなら、ちゃんと美味しいお菓子を作ってくれると思うわ。
 今度、尋ねてみなさいな、あの子は、面倒見がいいから。

 テストの問題にも依るわね?何を問いかけるテストなのか、知識を問うのか、思考能力を問うのか。
 知識だけを問うならば、魔法が使えることが前提になるから、合格ね?
 思考能力を問うならば、ええ、凝り固まっている思考の為に減点が入るでしょうね。

 ―――そういう風に考えると、実際に作ったり。
 錬金術でそういうアイテムを作った方が、遥かにいいわね。
 出来ないわけではないけれど、其れを研究するには、他のものを犠牲にしなければならないでしょう。
 ただ、フィリは、別に冒険者として旅に出る訳ではない。
 そういう積りも、無いのならば、冒険者の助けになるために、研究をすると言うのは、一つの道。」

 師としては、彼女の思考に関して否定はしない、唯々、其れをするとどういう事になるか、を淡々と説明する。
 諦めさせたいわけではない、そういう事なのだと、理解を求めているだけ。
 しかし、逆に言えば、其処まで面倒な事を研究することも、在りだと伝える。
 理由はライバルが少ないから、その成果は、彼女の評価になるという事と。
 もし、その技術を確立したならば、誰にでも使えて、栄養も腹持ちも有る者が作れるようになるなら。
 それは屹度、彼女の成功となる。
 彼女だけではない、彼女の周りの物にも、良い影響を与える。
 攻撃魔法ではない、平和的な魔法で、あるから。

 食料を扱うお店には、大打撃になるが、それは代償と割り切るしかない。

「未だ。私も『師』ではないのだけど、ね。」

 確かに、この家の中で言うならば、末女の母親を抜けば、自分が。と言っても一番と二番程度であり。
 その差は、海の底と、山の頂程に離れているものだ。
 教えることに依り、自分も学びを得られるので、師を頼まれたが、本来、其処迄の位階ではないのも間違いはない。
 だからこそ、彼女の隣で、学ぶために、魔導書を開いて、いるのだ。
 正直に言えば、コクマー・ラジエルで教える基礎の方が、フィリの為になるのではないかと思うレベルだし。
 その基礎を、自分もまた、学んでみないと思う物でもあるから。
 フィリの信頼の瞳には、肩を竦めて、尻尾をと揺らすしかできなかった。

 因みに、妹が、何かしらをした場合は、家で直ぐに捕獲部隊が編成される。
 妹の師匠を筆頭に、竜胆とか、フィリの姉も。
 で、全力で自由を奪い服を着せて、縛り込んで、封印して、お仕置きする。
 それでもめげないのが、あの幼女ラファルなので、何時も家令長が何かしないかと目を光らせているのだった。

「それは認めるわ、フィリ。ちゃんと、会話が出来るようになっている。
 先程から、ね、ちゃんと、言葉を放っているし、暴走もしていない。

 魔法の詠唱、力ある詞。フィリの詞には、意識せずに、力がこもっている。
 ―――発想を変えて。
 フィリ、自分の言葉で、自分の詞を縛る、とかは考えたことはないの?」

 彼女の言葉は、会話は、そう、新米の魔法使いにもよくある暴走だ、会話をしている積りで、魔法の詠唱となり。
 意図しない所で暴発するという物だ、それらを警戒し、魔法の詠唱には制限を付けたり、会話を避けたり。
 人それぞれに方法を決める。

 ふと、彼女に問いかけてみたのは、必要な時に、解除する方法を決めて。
 それ以外の時には、魔力自体を、竜の力自体を、封じることは、試したのか、と。
 彼女は、今まで、言葉を放たずにいることを、控えることを中心に考えて居たようなので。
 どうなの?と。試みたことは、有るのだろうか問いかけた。

「―――へえ?本人には、ね。
 なら……そう。 そう。」

 白状したような返答に対しては、さて、如何突っ込んであげましょうかね、と楽しそうに、口角をあげる。
 いじわるおばさん。

フィリ > 「本来、ですと。身体を動かす事は――それこそ、逐一考ぇなくても、出来る物なの――でしょぅ。
魔法に関して、其処までになれる…のは、なかなか。難しそぅ、ではぁるのです…が。
特に私は、はぃ、意識して行ぅ、とぃぅのが。大切です…ので。
難しくする事無く、きちんと、考ぇた事が…考ぇた通りに、形になると。良ぃのです……はぃ。

識ってぃる味になってしまぅ、術者の…好きな味になってしまぅ…事で。
本元とは、掛け離れてしまぅとぃぅのも…有りそぅ、でしょぅか。
……識ってぃる人が、何も知らずに口にして…本物と、まるで別物ですと。驚きそぅなの、です。
どんな食材を、どぅぃった調理法で、形にして…どんな味になる、のか。ちゃんと識ってぉかなぃと――

はぃ。彼女とは、仲良くさせてぃただぃて…ぉると、思われます。
私の識らなぃ事を、とりわけ日常に関する事を――教わるのは、大変に。有難く。

何でしょぅ。採点が、先生次第なのは明らかなのですが。
私としては、これは――思考実験なの、です…ですので。自己採点すると、減点対象…になると、思われます。
端折ってしまぅとぃぅのは。往々にして、手抜き、と言われる場合が多ぃので。

――そぅ、思ぃます。私がつぃて行くのは、なかなかに、困難ですので。
…ぇぇ、そぅ、何とも…動きが悪く、ご迷惑をぉ掛けしてしまぅのも、目に見ぇてぉりますし…
助けになるとぃぅのでしたら、遠地からでも、何かをぉ届けしたり―― ……そぅ、そぅぃぇば、です。
先日から研究なさってぃた――転移の、魔法は。どのよぅな進捗になってぉられるの…でしょぅ?」

思い出した。一からならぬ、零から作り出すという魔法の他に。
其処に無い物を取り寄せる、という別の方法も。模索し始めた所で。
以前彼女が旅行を前提として、遠く離れた二箇所の地点を、門によって繋ぐ魔法を作り出そうとしていた筈。
あの術を、人の行き来だけではない。もっとコンパクトに纏める事が出来たなら、どうだろう?
いざという時に、取り寄せたい物を、手元に取り寄せる事が出来るなら。それこそ遭難の危険性は大きく下がる。

…それはそれで。あまり応用され過ぎると、運送業という…このトゥルネソル商会にとっても大きな業務に。
差し障りが出て来てしまうような。技術のブレイクスルーに繋がるのだが。

勿論、一つの手段を見出したからと、別の手段を捨てる訳ではない。
作り出す方については少なくとも、実験的には成功しつつあり。再現度や利便性を突き詰めていく段階なのだ。
術者当人の前準備的な負担が、あまりに煩雑すぎるので。決して万人向けとは呼べないが。
少なくとも菓子や…食品、料理に対して造詣の深い者ならば。現段階でも活用方法が見出せるかもしれない。

「それでも、私にとっては、竜胆ぉ姉様が師でぁる――それは。確かな、主観的事実なの…です。
ぉ世辞でも何でもぁりません、どぅか、謙遜なさぃませんよぅに…と。思ぅの、です。はぃ。」

寧ろ即物的な、何の飾りも無く事実のみを告げている…とも言えるだろう。
教える者と教わる者。だから師弟という認識を当て嵌めるのは、当然なのだと。
少女が言ってみせる通り。それはお世辞でも何でもないのである…寧ろ衒いがなさ過ぎて。相手によっては失礼に当たるのかもしれない。
唯、本来口下手な少女が、こうして口にするからには。
頑とした事実の列挙が、少なくとも彼女に対しては…失礼には当たらないと。感じているからなのだろう。
そういったある程度の思考だか分別だか…相手によって言動を調整するくらいの機微は、兼ね備えているので。
何度お仕置きされても決して懲りる事の無い、もう一人の叔母よりは。怒られる機会は少ないであろう少女。
それこそやらかす事が有るとすれば、制御不全の暴走が。最大の要因になりそうなので…怒られない、という意味でも。
当人にとっても此処での学びは、大変に重要なのである。

「……割と、単語を選んでいる…言葉を、考ぇてぃる節はぁるのです。
発した言葉に、自分で、思ぃ浮かべてしまった…想定外の、無意識の意味合ぃを。載せてしまぅかも…しれません、ので。
ただその。緊急時など、考ぇてぃるとそれだけで、反応…遅れてしまぃます。会話に、追ぃつけなかったり。
ですので常日頃から、慣れておかなければと――

……ぅぅ、ん?ん――ん…それは、難しぃ…難しかった、と、言ぃますか。
自分で自分に、制限を掛ける…その折に、相応しぃ言葉を…単語を。思ぃ付く事が出来無かったの――です。
言ぃ回しの問題や、私の知識不足…と、申しましょぅか。」

彼女の問い掛けに。逆転めいたその発想は、勿論有ったのだと肯いてみせた。但しなかなかに難しいのだとも。
…実際。会話の端々にチェックが入るような術式より。何時沸き起こるか解らない力を、適宜抑えるより。
そもそも、キーワードとしての声音その物を控える方が。遙かに効率的なのである。
とはいえそれは以前の事だ。こうして少女自身が、言葉を…会話の機会を増やし始めた今。
改めて、考えてみるべき方策かもしれない。

「………ん…ぅ゛。……ぉ手柔らかに、ぉ願ぃ出来ませんでしょぅか――ぉ姉様。」

(失言が。晒した隙が。彼女の某かを刺激した事を感じ取り。
少しばかり額に汗を浮かべるようにして…半歩分程身を退いた。

ちゃんと、お姉様呼びを主張する。此処でいじわるおばさん等と称したら。間違い無く大惨事である。

竜胆 > 「魔法という学問、後天的な物だから、それは仕方がないわ。努力して、学んでいく、覚えていくしかない物なのよ。
 その辺りに関しても、訓練と研究が、必要、ね。
 考えた通りに魔法を発動させる―――それは、今回の件ではなくても、必要な事、になるから。

 それに、同じ食べ物でも、人によって、味の感じ方が違う事もあるわ。
 だから、フィリの言う通りに、同じもの、でも、違う味で驚くと言うのは、良くあるのかもしれないわ。
 お菓子一つにしても、大変、としか言いようがないわ、ね。

 そう。あの子はとてもいい子だから。仲良くしているのなら、良いわ。
 ……日常、ね。日常、なのかしら。まあ……うーん、まあ。

 フィリ、魔術には、典礼魔術という物があるのは、教えたことがあったかしら?
 お浚い代わりに解説すると、同じ魔術を使うに当たり、不要な物、置き換えられるもの、を変更し端折り。
 スマートに、手早く、確実に行う魔法。
 判りやすく言うなら、もともとは、悪魔召喚儀式を行い起こしていた魔法を、詠唱だけで発動させるという事。
 魔術の世界で言うならば、端折りは、手抜きではないわ。
 尤も足るものになれば。無詠唱、さらに言うならば、特定の動作での魔法発動、まで行くわ。

 ああ。転移、ね。
 基礎自体は、其れこそ貴女が生まれる前から出来てたのだけど。
 魔方陣と魔方陣による二点の行き来程度だったわ。
 今は、一か所の魔方陣から、幾つかの固定の場所に転移は出来てる。
 今の所は、魔方陣での、ゲート方式ではないと、魔力の使用が高いのと不安定さが大きくなるわね。
 魔力だけでゲートを開き転移すると、すこしのずれでとんでもない所に出る。
 ゲートを開かない転移は、軸がズレてしまえばそのまま即死にも長るから、小石での実験以上は未だ控えてるわ。」

 転移に関しての話題を振られて、ふむ、と師である女は、頬に手を当てて、一つ溜息を零す。
 魔方陣によるゲートの方法は、確立しているのだ、其れの小型化に関しては、まあ、出来なくもないとは思うが。
 魔力だけでの二点の移動に関しては、未だ問題がある。
 転移先の座標が少しでもずれてしまえば、石の中にいる状態になり、そのまま命を失ってしまう事もあるだろう。
 転移座標に関する研究を、もう少ししてみないと、と姪の言葉につまらなそうに。
 それは、自分の能力不足、知識不足に対するいら立ちであり、其れを表すかのように、不機嫌に尻尾が床をビタンと叩く。
 グリムは、その音に耳を傾けるが、すぐにまたすぴょすぴょ寝るのだ、小憎らしい。

 転送の魔術と、簡単に言えども、基本は―――高等魔術だ、誰彼に使えるものではないし、魔力も大量に使うモノで。
 確立したとしても、しばらくの間は普通に使うのは難しいだろう。
 浸透してきたとするなら、その際に、その技術を使った新たな事業をすればいい、商会は、リスは、そう答える。

「師を受けるからには、貴女にとっても恥ずかしくない師でいる積りよ。
 そして、私が、謙遜なんて、する性格だと思うのなら、そうね。嫌がらせに何か宿題でも出してしまうわ?」

 基本は面倒臭がりで、嫌な事は嫌だと言い、曲げることの無い竜胆だ。
 しかし、やると決める事、決めた事には全力であり、そう言うあたり、気質は弟子であるフィリに似通っている。
 興味のある事には、全力を超えて行うという、だから魔導士となるのだろう。
 口下手な彼女の、言葉には、喉を震わせて笑って見せて、目を細めてふぅん?と意地悪に嗤うのだ。
 ええ、ええ、謙遜なんてするほど、控えめさは持っていない。

「言葉と言うのは、便利で、不便よね。同じ言葉でも、区切りで意味は変わるし。
 逆に違う言葉でも、同じ意味になってしまう事がある、そして、同じ意味になった時に暴発が発生するのでしょうね。
 確かに、其れに関しては、寧ろ沢山会話をして、会話に慣れた方が良いのかもしれないわね。
 話すからこそ、話し方が判るし、話す事が得意になるのだから。


 ―――そんなの、『竜詞封印―draco sigillum―』と『竜詞解放―Draco release lyrics―』で、良いじゃない。
 自分の中のスイッチを切り替えるだけなのだから。判りやすくすればいいのよ。」

 普段は使わず、そして、適当な詞で、己にスイッチをかければいいのだ。
 難しかったり難解にする必要はない、自己暗示のスイッチは、他の人に言われたとして、それが効果を発揮するわけではないのだし。
 彼女の中で、何が難しかったのだろうか、其れを聞いてみたい気もしたが、此処は、彼女の中では大事な所。
 だから、例を一つ授けてみる。
 どういう物にするかは、彼女次第なのだけども、それをこのまま使うのだって、彼女の選択だ。

「考えてはおこうかしら?」

 姪の可愛らしい反応、それに対する返答は、どうとでも取れる返答。
 むしろ、確定させないだけ卑怯でもある。とは言って、泣かせるつもりはないし、悲しませるつもりもない。
 もう少しの間は、気にしないでいて、彼女が成長したら改めてからかうことにしよう。
 そんな手形。

フィリ > 「考ぇた通りに。はぃ、それが本当に――重要なの…です。
或ぃは。狙ぃ通りに考ぇを纏められるよぅに、とも言ぇますので…それこそ。反復して学習する、となるのでしょぅか。
発動の際に余計な事を考ぇなぃよぅに。もしくは、余計な事が差し挟まれる…暇すら、無ぃよぅに。
簡略化や高速化は、視野に入れるべき――と、思われます。そんな意味でも、私の場合は特に。
先程の場合は、はぃ、思考その物につぃて…でしたので。術式に関しては、仰る通りかと、思われます。
…本当に。考ぇ過ぎなぃ侭で、効果を発揮出来るとぃぅのが。私にとっては理想…でしょぅか。

……? 私…ぃぇ、私達にとっては、普段の生活です。此処での、通常の時間、ですので…
余所様とは、違ぃが有るとしても。私達にとっては、日常と。呼ぶべきなのかと――思われます、はぃ。

そして――私には。シスカちゃんの作った物や、ぉ母様方の買ってきて下さる物が。美味しぃぉ菓子の、基礎だと思われますが…
味の好みとぃぅものも。人それぞれ、なのでしょぅし…ぃぇ、流石に其処までは責任の、範疇外と言ぃますか。
誰が作る物にも、顧客の好き嫌ぃは発生するのですし――?

……出来なぃ事はなぃ、けれど、実践段階とは言ぇなぃ…でしょぅか。それですと。
魔方陣が必須、と考ぇますと。矢張り…専門知識の必要な、前準備が省略出来なくて。
とてもではなぃが、任意の場所で緊急的に用ぃる事は――出来なぃ、よぅな。
ぉ姉様でもそぅだとなると……なかなか。安定した確立は難しぃのでしょぅか。」

考え考えの中、師が研究中の術式についても。研究経過を聞かせて貰えたのなら。引き続き思考してしまう。
矢張り、専門的な魔術という物を――その専門性を簡略化し、万人向けの所まで落とし込むというのは。非常に困難なのだろう。
もしこれで。例えば、事前に術式の込められたアイテム等として、圧縮する事が出来たなら。
使い捨てでも良いから、誰でも転移を行う事が出来たなら。爆売れ間違い無いとは思うのだが。
…知識の無い者が失敗するだの、悪意の有る者が良からぬ事に用いるだの。そういった可能性に、おっかなびっくり首を竦めた。
取り敢えず自身も…悪用するつもりはないが。いしのなかにいる、というオチは。何としても避けたいものだ。

べしりと音を立て、彼女の尾が床を叩いた。
これが普段なら、他人なら。大いに恐れ戦いて、しどろもどろになってしまうのだが。
既に彼女の性格をそれなりに把握して、その苛立ちが何処に向けられた物であるのかを理解出来ている為に。
物音に対しても少女は動揺を見せなかった。…というより。考える事に終始しているのも。大きな要因となりそうだが。

「ぃぇ、無ぃと思われるの…です、そんな事をしてぃる暇が有るなら、と。仰りそぅだとも。
……んぬ、ぬ…出来れば、ご容赦ぃただきたぃの…ですが… ぁぁぃぇ、今日の、課題に関する物でしたら…役立つのでしょぅか…」

弟子も弟子で、目的が定まってしまうと、一直線…視野狭窄になりがちだ。
良く言えばのめり込む質であり、集中力が強いとも言えるのかもしれない。
その為に、嫌がらせと主張された宿題についても。例えば今日の復習だったり、魔術の役に立つのなら。
それはそれで良いか、と考える事が出来てしまうらしい。実利を求める事が出来るなら。決して悪い事ではない筈だと。
お陰で一概に否定出来ず、背負い込む事になる苦労は…果たして。どんな物となるのだろうか。

「――――はぃ。逆に、発した言葉の、別の意味を…思ぃ浮かべてしまって。効果が、其方に引っ張られてしまったり。
その気が無くとも無意識に、次の言葉、次の言葉…連想してしまぅ事も。ぁるのです。
術式を置く事無く。その言葉が、結果だけを、導き出してしまぅ…からこそ。
話し方も。話す際の、考ぇ方も。私にとっては、大切なの――です、はぃ。

ぅぅん、なる、ほど?
…確かにその、結果が先に来るの、でしたら。そぅした単語に、確かな、意味合ぃが有るのだと。
私自身が意識出来るよぅになれば――封印や解放。そぅぃった言葉に対して、速やかに、連想出来たなら。
……はぃ。不可能ではなぃと、思われ――ます…」

魔術を学ぶ事は、少女にとって。段階を経る事や順序の組み立て。それ等を学ぶ事でもある。
竜としての力が往々にして、過程が無くとも結果だけを現出してしまい。それ故の危険も多々有る為に。
利便性としての簡略化には大いに賛成するが。それ自体を否定するつもりは毛頭無い。
寧ろ、簡略化する、という過程と。それを行ったという認識とが。大切なのかもしれない。

その上で、師の提案には。考え込む様を見せた。確かに…彼女の言う通りなのだ。
今までの少女は、ちゃんと意味の有る言葉でなければ、効果がないと。複雑に考えていた。
しかし認知次第、認識次第であるのなら。…意味が有るかではなく、意味を持たせられるか否かであるのなら。
言葉その物よりも、それを少女がどう考えられるかだ。
即座に逆転の発想が出て来る、矢張り師匠、恐るべし。

「…寧ろぉ姉様にも、ぉ聞きしたくなりますが…其処は、やめておくの…です、はぃ。
取り敢えず先伸ばしで――もぅ少し。ぉ勉強を続けませんと。」

将来への先伸ばし。それにはちゃんと意味が有る。
想う事、想う人、それを憚る事なく広言出来るようになる為には。今暫しタイミングが重要だとか…
その為にも。その誰かの為にも。改めて、自分自身の力を物にする必要を。自覚しているのである。
すっかり長くなってしまった話題を、一度区切るようにして。此処から再び、ちゃんとした講義に。入っていく事となる。