2021/08/02 のログ
ご案内:「トゥルネソル家 竜胆の部屋」に竜胆さんが現れました。
ご案内:「トゥルネソル家 竜胆の部屋」にフィリさんが現れました。
竜胆 > 富裕地区の一角に有る大豪邸、トゥルネソル商会の三姉妹が住まう家で、通称は竜の巣と呼ばれる家がある。
 広大な敷地にロの字型の家は、他の家と一線を隔しているというよりも、砦などを連想させるものだ。
 建材も其れこそ頑丈な物で作られて、煉瓦等で、確りとした土台迄あるのは理由がある。
 竜の巣、と言われる一番の理由として、ドラゴンが此処に来るのである、トゥルネソルの眷属のドラゴンたちは仕事が終わればここにきて、屋根に留まり、人へと身を転じて中に入っていく。
 だからこその、竜の巣、という通称なのである。

 そんな竜の巣の中は、意外に普通の人間の家と変わりはない、調度品などは、上品に、と言える程度に少なく、家を設計した人の性格が表れている。
 質実剛健、を旨とした作りになって居るが、威圧感は無いように考えられて作られている家であった。

 さらにさらに、その中、竜胆の部屋は、二階にあった。
 ただ、竜胆の部屋の入り口を知るものはいても、部屋の中を見たものはいない。
 理由は、竜胆自身が魔術師という所にもあり、誰にも入れないように、と魔術的な封鎖を行っているのだ。
 入る事が出来るのは、竜胆の魔術を解除できるような実力の有る者。
 若しくは、入室を認められた人、という事になる。

 部屋の中は、魔術で空間をいじられていて、他の人の部屋よりもはるかに大きくなっている。
 そして、その部屋の中にぎっしりと、古今東西の魔術書、魔導書などが集められ、書架に収まっているのだ。
 これは、眷属のドラゴンたちの財宝の中から、魔導書などだけを全部いただいてきた結果とも言える。
 そんな部屋の中で、人竜の少女は、トゥルネソルの三姉妹の次女は、魔導書を片手に、読み耽る。

フィリ > さて。そんな数少ない、「入室を認められた者」の中に。彼女の姪っ子が存在する。
外見年齢以上に未だ未だ幼く、竜としても未熟極まりなく。だからこそ――力の使い方に長けた彼女に師事する事となった。

唯。実際に、魔術士めいてキッチリとした師弟関係が構築されているのかと言われると。
正直な所、とてもそうは言えないだろう。
今日も、部屋の主は魔術書を読み耽り。弟子もまた同じように直ぐ近くで、活字に埋もれているのである。
まだ本格的な魔術書を開くには、実力的に危険が伴う為に。比較的初歩、初心者向け、そういった物ばかりではあるが。

「んー……ん、ー? ぇぇと…申し訳ぁりません、ぉ姉様。
此方の術につきまして、その、疑問がぁるの――です…」

そうして時折、怖ず怖ずと。自分だけでは理解出来ない疑問点が生じた時に、師である彼女に問い掛ける。
回答を得て解決策を見出す事が出来たなら、其処から、再び次の式を考えていく。
大凡この室内で行われているのは、こういった最低限+α程度の応答である。実際に魔術を行使するのは、基本的に室外となる。
…此処で迂闊に術や、竜の力を暴発させてしまうと。数多存在する魔術書の「中身」達が連鎖的に反応し、大惨事となりかねないのだ。

ちなみに。血縁上は叔母に当たるのだが、「お姉様」呼びである。
彼女が、姉と呼んだ方が相応しかろう年齢である事と。彼女自身の命令もとい希望によって。徹底されていた。

竜胆 > 姪が、自分に頼って来たのは、彼女自身が魔術に興味があるという所、後、竜としての力の制御を求めての事だった。
 彼女が自分の弟子になった時には、未だ、あの人物はいなかった。いなかったと言うのも語弊は有る。
 今であるならば、自分よりも魔術の深淵を見ているものが家に居るので、其方でも、とは思うが―――まあ、彼女は色々と忙しい、縁があった時に教わるくらいで良いのだろう。
 それに、竜のとなると、やはり自分が教育に立たされるのだろう。

 魔術とは技術であり、技能である、実践をするにはまず、様々な知識が必要。
 なので、今現状は彼女には、知識を集めることを注視してもらう事にしている、理屈、理論などを理解して、初めて基礎が出来る。
 彼女は、活字を読むのが好きなので、それで十分今は、学べている。
 そんな、静かでのんびりとした時間の中で。

「どの術?」

 視線が上がり、控えめすぎるぐらいに控えめな、小さな声が、少女の唇から零れる。
 部屋が静寂に包まれている此処だから、聞こえる位の声。
 脇ですぴょすぴょ鼻提灯浮かべて寝ているグリム君の寝息すら聞こえるぐらいなのだ。
 質問を投げかけられれば、竜胆は深い青の瞳で、彼女の指し示す術の頁を見やる。

「―――フィリ、何が判らない所なの?」

 答えを直ぐに言うのも又正しいのだろうが、竜胆は毎回問いかける。
 彼女の中の疑問は何処にあるのか、と、そして、其処にたどり着くための答えを持っているかどうか、を。
 彼女は、知識が深い、様々な書物を読んでいるから、魔導書も、此処に来るたびに読み耽る。
 だから、基礎は出来上がってきている筈だと。
 そう考えて居るから、問いかける。自分で問題を、整理すれば、自分で答えを見つけることも出来る筈でもあるから。

「―――。」

 じ、とフィリの眼を、挙動を見やり、彼女が疑問に思って居る所を、待つ

フィリ > そもそも母達から、師事を薦められたのは矢張り。竜の力、それを制御出来るようになる事を。期待されてだろう。
「詞(コトバ)をその侭現実化してしまう」かのようなその力は、産まれて直ぐの辺りに。幾度も暴発、暴走を引き起こして来た。
きちんと制御出来無い内に、万が一、身の危険に襲われるような事が有ったなら――例え自衛の為だとしても。大惨事になりかねない。
周囲の為にも、当人の為にも、至上の命題なのである。
根底が竜の力に有る以上。如何なる魔術士よりも。魔術士にして竜である彼女が最適である事は。疑う余地もない。

知識を学ぶ。出来る事と出来無い事を識り、何をすれば出来るのかを理解する。
それは同時に、実現する為の順序、道筋、道理を理解する事で…この世の法則に則った力の使い方を覚える事と言えた。
常識を、現実を。あらゆる過程をすっ飛ばして、結果を現出させてしまう事の無いように。

つまり、一番大切なのは。本能侭や恐慌侭ではない。きちんと頭で考えて、きちんと理解して力を用いる事なのだ。

「はぃ、此処なの――、です、 …先日見せてぃただぃた、食べ物や…ぉ菓子。この場に生み出す物なの…ですが……」

問い掛けられた少女の返答も。ぼそぼそと低く小さな声。
こちらは場の静寂を乱さない為、大きな大きな魔犬を起こさない為…などではなく。単純に元々の性格だ。
人見知り、引き籠もり。正直これでも、相手が肉親であり慣れている為に。まだまだマシな方。
少し俯き加減、上目遣い。じ、と答えを待つ叔母を見上げてから。直ぐにまた視線が落ちる。
彼女と目を合わせるのを嫌った訳ではなく。ちゃんと文面上、疑問点を追い掛ける為に。

お互いその辺りはきっと。気質も似ている、伝えるまでもないだろう。

「…物を、生み出す。…其処に何故。 ……元素?この世の、要素――を。…操らなければ、ぃけなぃの…でしょぅ?」

少女が述べた疑問点は。正しく、魔術と竜詞の相違点。
結果だけを出せてしまう少女にとって。過程をきちんと突き詰める事が。愉しくはあるのだが――理解、しきれないのだろう。

竜胆 > 魔術師としてではなく、竜として。竜の詞……竜の力の制御の方法を求めての事なのだろう。
 確かにそういう意味で言うならば、三姉妹では竜胆が一番長ける。リスは、竜の力が、発現できていない。
 ラファルは、感覚的すぎて物を教えるのに不向き、性格的にも、不向き。
 理論的に、説明するとなると、竜胆、となるのだ。

「食料を作るための、魔法ね。」

 魔力を持って、食料を生み出す魔法、それは、聞こえはいいが修練しなければ、生み出したものの味は酷い物になる。
 味のイメージや、食べ物の構成など、確りとくみ上げて初めて美味しい食べ物を作れるそれ。
 正直に言えば、自分で料理したほうがおいしいとまである魔法でもある。
 ただ、魔力で空腹をしのげると言うのであれば、冒険者達からすれば、使い勝手のいい魔法だ、緊急避難にも使えるから。
 そんな魔法を見て求めるのは屹度、お菓子が食べたいのかもしれないと思う女だった。

「それは、その魔法に限ったことでは無いけれど、魔法と言うのは、それこそ、この世の要素を動かして、現象を作り上げるものだから。
 火を出すのには、熱が居るわ、その熱を魔力で代替し、作る、魔力を熱に変換するのよね。
 変換する為に、必要なのが、元素。その元素を組み替えるのに、操ることが必要なのよ。
 魔法と言えど、無から有を作るように見せて、実は、見えない物を見得るようにしているだけ、という事よ。」

 過程の説明と言うのは、難しい物だ、だからこそ、自分にも学びになると思う。
 実際に指の先に爪の先程の炎を出して、其れを作るための熱量を、変換することを、説明してみせた。
 魔術というよりは、錬金術の思想に近しいだろうか、と。

フィリ > もう一つ重要なのが。研究者気質である彼女に求められたのが。物事を説く、という事その物。
謂わば数学の世界に於いて、直感で回答を導き出してしまうのではなく。如何にしてその結果に到るのかという計算式、過程が重要視される…
それと同じ事を。世界の理を。きちんと理解させる事。
理論という枷を、しかし少女は説かれたのなら、きっと喜んで受け容れる事だろう。
元々考えたい、考える事それ自体を好む性質なのだから。考える事で、自分自身の力がきちんと、制御出来る物になるのならと。

「…でしたらそれは…ぇぇと?
目に、見ぇなぃ過程――きちんと。経てぃるの、でしょぅか。
厨房で行われるよぅな事を、ぅぅん…脳内?と言ぃますか、そぅぃった、何処かで。
だとすると、材料…を省けるとぃぅ以外の、長所が…随分と、減ってしまぅの――です、が…」

そして、考えたい、という事は。言われて直ぐに「はいなるほど解りました」、とはならない。
おどおどとした態度ではあるのだが。疑問点が回答へと到る過程を、一つ一つ辿る。
先ず最初、こくりと肯いてみせたのは。「食料を作る魔法」、其処には納得出来たから。
確かに、元素――火や水に繋がる要素。それ等を原材料であると考えたなら。材料を加工するのは必然だと。
そして必要となる調理器具が…謂わば、魔力という事になるのか。魔術は器具を操り、調理を進める技量である。
と、此処まで考えた所で。また沸き上がってくる次の疑問。

「はぃ…作る、とぃぅ場合に関しては、納得なの―― ですが。
これが、持ってくる?、でしたら、どぅなのでしょぅ…余所の世界や、其処に在るとぃぅ可能性…等、から。
そぅぃった、場合は――材料ではなく。ぉ代のよぅに何か、代価…代償が。必要なのでしょぅ――か」

パラレルなんちゃら。シュレディンガーの何とか。想像は飛躍する。
お菓子一つこの場に生み出す、たったそれだけの魔法でも…こうして。突き詰めようとする者達にとっては、議論が尽きない物なのだろう。

竜胆 > 「目に見えない過程、は、経ているわ。
 置き換え、なのよ、詰まるところ誰しも、知っているものを知って居るようにしか想像できない。
 例えば、パンの形も味も知らない人に――パンを想像して作れと言っても、無理でしょう?
 だから、無意識でも、過程は通っているのよ、といっても、魔力でつくり上げた、パンの形で、パンの味をした、塊が。一番近しい答えではあるけれど、ね。
 長所としては、材料が要らない、何処でも作れる、腐らない。という所かしらね。
 家に住まう私たちにとっては、その程度の魅力しかないけれど、そうね、ゼナに訊いてみればどうかしら?
 その魔力でつくられたパンは、どれだけ便利か、ね。」

 問いかけに答えながら、彼女の言葉に一つ追加を出してみる。自分たちに魅力がなくても、別の人であれば魅力に思う事もある。
 見方は一つではない、という事を伝えておこう。
 冒険者にとって、何処でも手に入って腐らない食糧なんて、其れこそ、垂涎の的であると。
 味は、善ければ直義、だが、悪くても我慢できるはずだ、食べられないということが無くなるのだし。
 閃きや、疑問、其れにさらなるものを、プレゼント、という所。

「そう、ね。持ってくる、となると。
 例えば、テレポートの魔法、転移の魔法よね?これで移動する、という事になる。
 その場合の代償としては、移動に使う魔力と、本来あるべき場所から移動している、食べる為に、売るために作ったものが消失する。
 それが代償という形になるでしょうね。」

 お菓子を手に入れる方法は、其れこそ千差万別だ。
 もっと物理的に言うなら、ゴーレムを作って、作らせてもいい、パティシエを魔法で魅了して作らせるのだって、お菓子が手に入る
 複雑にしようとすれば、何処までも複雑にできるのが、魔法だ。