2021/06/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房」にスピサさんが現れました。
■スピサ > 王都 マグメール 平民地区の鍛冶場工房地区
昼間の曇り空 雨が小雨で降ったり止んだりを繰り返す季節は、冒険者の足取りも重い
季節的には湿度が高く、この時期に豊富にとれる採取クエストや、湿度の高い時期に土眠りから目覚める魔物等
時期限定のそれは売買が高くなることもあり、重くとも皆稼ぎにいくだろうか
故に、武器防具店に休みはない
購入はもちろんのこと、時期的に武器を入念な手入れをしようと砥石や油の購入も多くなる
錆びにくい合金とは真逆な真鉄鋼を使う者は、不安が在れば馴染みの武器屋や鍛冶師に点検を依頼するだろう
どんな武器を持つ者でもいう言葉だ “お前が錆びれば自分が死ぬ” と
「ん……。」
この時期になると、新たな武器や防具の依頼新調も多い
誤って武器や防具を破損させる事例が上記から発生するからだ
そして、見誤らない者はこうして研ぎや修繕を依頼する。
スピサは鍛冶場工房をopenの看板を下げながら、工房にて
水桶や様々な砥石が詰まれた傍 一定の角度でランタンを丸太椅子に固定させることで
見るべき刃を常に同じ火明かりの角度で眺める。
手にする武器は鋳造ではなく、打ち据えることで形を変える硬質鋼を使った代物
サイクロプス特有の大きな単眼が、刃を 身を その鉄の色合いを眺め
凹凸の具合 鉄の弱みを調べ、研いでいく。
「……。」
しかし、依頼品は愛用の武器だからと、長年使われたことでやや幅広な剣身は少し痩せてしまったもの
鋼は好いものの、刃は鑑賞とは違う実戦用は、何れ痩せていくもの
そして、見えない傷を増やしていく。
スピサが試しに、小さな飴を砕けるサイズの金属槌で先端から叩いて調べた時だった
カチンッ 先端の音 カチンッ 半ばの音 カシンッ そして、鍔元の音
鍔元の音が、明らかに違う
中心の鋼が罅か、捻じれを起こしたか 表面を整えただけでは無理な音を奏でていた。
■スピサ > スピサは、此処まで愛された武器が寿命というものを迎え、終わりを告げている
それを何度も見てきた 時には料理人が使うような包丁や専用の刃があるが
これは身が痩せていき使用人の癖に合わさるだけ故にそう折れることはない
しかし、様々なものを斬りつけるこれは後何匹 何人か斬れば折れると思えた。
単眼の眉が悲し気に下がる。
例え一度きりの全てを賭して折れてしまった新造剣でも
例え何度も危難を払ってきた愛剣が折れてしまったとしても
どちらも等しく職人からすれば、認められていたが故に別れは悲しいものだろう
「仕方ない、かな……。」
もう一度火を入れ直し、新しく生まれ直してもそれは別の代物
納得できるかは使用者次第として、鞘に納め直し、布で包み直した。
そしてそれを保管場所へと鍵をかけて納め直すと、また別の代物を抜き、剣身を調べ出す。
長期の仕事や森や霧のような湿度でやられてしまった身の錆びつき
スピサはこの時、単眼で色を見定め、匂いで錆びを検出していく
そして工房内では、静かに研ぎの音が細かく、何度も広がっていくだろうか。
■スピサ > 錆びを削りながらも、その錆が完全に消えるものではない
荒く削る段階までを過ぎれば、繊細な残りを、また違った砥石で削っていく。
指肌で分かる目の細かさ 単眼の肉眼で視認する粒の違い
砥石の上をとろりと広がる削れた鋼
指で、単眼で確認していきながら、雨の音が変わったなと思う以外
工房の中に変化はない
故に集中して、何度も、何度も砥石を取り換えていく
儀礼剣のように照らし光るものではない 持ち主が、剣の傷や気持ちがくみ取れるように
きちんと目でも確かめられるように整えていく。
だから綺麗に磨く意味がある。
凹凸を限りなく無くし、無駄な減りをなくし、一本がそうしてまた仕上がっていく。
時には砥石のとろりと削れた粉が影響しないように、場所を変えて削ることもあるほどだった
そうして磨かれた剣身を確認すれば、試しをするように羊皮紙にトンッと押した。
切れ味や剛性 硬すぎてすぐに欠けない角度 終えると集中していたせいか
汗が纏う体を一度拭っていく。
スピサの体が熱を持ち、そして今冷めていく感覚
一日で全てを終えるわけではない研ぎの作業といえど
鉄を打つ事 研ぎを行う事 これらの集中に劣差はない
「喜んでくれるかな。」
一人、鉄に向かっているだけの生活ばかり
独り言も多いものの、その剣の具合は喜んでいそうだった
鞘に納めた時の、 チィ ン と少し間延びした音
嬉しそうに鳴いてくれていると、鍛冶師的に思うのだ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房」からスピサさんが去りました。
ご案内:「夜の街」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 娼婦が客を、客が娼婦を、あるいは酒や食事や宿を求める冒険者らが、
三大欲求を満たすために訪れる夜の街。
豊満だったり貧相だったり、着飾っていたりみすぼらしかったりする様々な娼婦の肢体がごったがえす通りや、
少年少女に食指を動かす貴族の紳士やご婦人の招く手指を、
まるで蝶々がふわふわと枝葉を避けるようにすり抜けて闊歩するのは、
幼げなシルエットの裸身に桃色のシャツを羽織っただけという独特の出で立ちの、薬師の子。
「~~~~~♪」
手には、媚薬や強壮剤、安眠薬や堕胎薬…
様々な「夜」を彩れる効能の薬をたくさん詰めこんだバスケットをぶら下げて、
夜の街のふしぎな薬売りとして様々な客を相手に売り歩く。
その薬師のあどけなさに騙されず、夜の薬師としての活躍を知るものには、
様々なニーズに応える薬を手頃な値段で提供する、夜の街の妖精めいた存在として噂され、
未だその存在を知らない者には、年齢に見合わぬ懇切丁寧さと商売っ気と、確かな効能を説明し、
…ときには、実演販売もかねて、そこいらの宿へと連れ立って姿を消すという。
そんな妖しさと危うさを備えた、少女のような貌の子が、
鼻歌交じりに今日も夜の街を呑気に散策し、
ぺたぺたと、不思議と決して汚れず、傷もつかない裸足が石畳を歩む音。
ご案内:「夜の街」からタン・フィールさんが去りました。