2020/09/04 のログ
ご案内:「妖精の森」にミミックさんが現れました。
ミミック > 鬱蒼と木々が生い茂る昼間でも暗い森と違い、此処妖精の森は木々の密度こそ変わらぬものの、差し込む木漏れ日が多く、薄暗い印象の強い森でありながら、この一角だけが明るく陽光に彩られている。

その中で夜行性の筈の一匹の蟲型モンスターが甲殻を皮膚を木々の幹と同色に変化させ、木に擬態し獲物が気づかず通りかかるのを待ち、じっと息を潜めている。

名はミミック。
冒険者であれば一度くらい対峙あるいは退治している経験があってもおかしくない俗にいう雑魚モンスターである。
夜行性で日が高い時間帯に遭遇することは非常に稀で、基本的には暗い夜の時間か遺跡や迷宮の闇の中で遭遇することが多い。

それが、その筈のモンスターが日差しが高い日中であるにも関わらず姿を見せている事は異常事態であるが、モンスター自体が特筆して強いわけでもないので、ギルドで特別なクエストが発生することは無い。

しかし、今このモンスターが居る場所に問題がある。
妖精の森、冒険者のみならず周辺の村々の人間が薬草の採取に来たり、貴族が道楽で立ち寄るような比較的安全だといわれている場所である。

そこに今モンスターが息を潜めて獲物が近づくのをジッとまっている――…モンスターにとっては冒険者であろうが、無かろうが平民であろうが奴隷であろうが貴族であろうが、王族であろうが関係なく平等に餌である。

今は瞼を閉じて眼光が漏れぬように感覚を全て皮膚に甲殻に集中させ、風のゆらぎ、森の緑の香りの中に混じるそれ以外の香り、音を聞き、周囲の様子を確認している。

ただ……。
ポタ、と一筋だけ口端から木漏れ日に煌めく透明な粘液、唾液を滴らせて、モンスターは餓えの強さを見せ付けてしまっている。

一筋がたれ、地面に落ちてびちゃ、と響かせる音。
通りかかる者が耳よければ聞えてしまうかもしれない、が。

ご案内:「妖精の森」からミミックさんが去りました。
ご案内:「妖精の森」にミミックさんが現れました。
ミミック > 厚い甲殻に包まれた脚を使い、木の幹に鋭い足先を食い込ませた状態で甲殻の色をしがみ付いている木の幹と同色に変化させ、擬態させていたが、通りかかる者どころか近くには獣一匹いないと判ると、重たい瞼をあけて赤く輝く眼をあたりへと向け、目視で獲物を探してみるが――…矢張り動く物すらない、もちろん視認の際には温度も見てみたが、それにも引っ掛かるものはなし。

仕方なく、水分だけは補給することにする。
木の幹にしがみつくための多脚ではなく、甲殻が筒状になった前足を伸ばし、その中から太い触手をずにゅと排出させて伸ばすと、近くの木の枝に絡ませてメキッと枝を圧し折り、圧し折った木の枝を口に運ぶとガジと噛み付き、ガジガジガジと枝を強靭な顎で噛み砕いて、噛み砕いた木片の中から水分だけを搾り出して、喉を潤していく。

木の滓は零れ、硬いモノを噛み砕く音は響き、水分をすする音までが響く、その様子は小さな森に有るまじきおぞましさと危険なモノがいるという事への証明となろう。

それでもミミックは水分を啜るのは周囲に誰もいないと察知しての事である。
音をたて自分の存在を周囲に見せ付けても天敵も獲物も居ないと判断し、姿こそ擬態したままだが音も水分を摂取した事で香り始める体臭もミミックは隠さない。
小さな森に広がる蒸した緑の香り以上に濃厚な緑の香りを広げ、不気味な音をかなで、ミミックの水分補給は続くのだ。

獲物が通りかかればピタリとそれを止めるだろうが、今は一先ずは乾いた身体を潤すための水分摂取に一生懸命である。

ミミック > こうして日が高い時間の狩は空振りに終わる。
だが暫くは妖精の森を中心に狩りをする心算らしく、厚い瞼を下ろして暫しの眠りにつく……日が落ちて月が昇り、一層狩りに有利な時間が訪れるまで。

ミミックは静かに意識を落すと気配も臭いもない木の幹の一部と擬態して、時を過ごすのであった。

ご案内:「妖精の森」からミミックさんが去りました。