2020/05/11 のログ
■リス > 「―――どなたか、いらっしゃいませんかー?」
もしかして、私のいることに気が付かれてないのではないだろうか?ただ単に、すぐに相手が見つかってこっちに来ていないという可能性も否定できないけれど。
嫌な予感がしたので、私は声をあげてみることにした、とは言っても、この場所、そんなにわかりにくい場所ではないはずだ。
ふたなり浴場の中の一部でしかないし、広い場所なので、たまたま誰も来ていない、とかかもしれないし。
声をあげてみたら、誰かが気が付いてくるかもしれないと思った。
「これで、もう少し待ってダメだったら、上がることにしましょう。」
それなりに長い時間お風呂に入っている、人竜の私ならこの程度のお湯で逆上せるとかはないけれど、あまり長く占有してもと思うし。
あきらめも肝心よね、と軽くため息をついてから、ちゃぷ、ちゃぷ、と肌にお湯をかけてふぅ、と息を吐き出す。
今、何時なのかしら、時計がないと、判らないわ。
湯煙の中、時計のないお風呂の中で、どれだけ入っていたのだろう、と思いつつ、私はお湯を救って落とす。
そういえば、これ、桜色してるけれど……媚薬じゃなかったわね、よかった。
いまさらながらに、私は安堵していたのだった。
■リス > 「―――だめ、ね。」
今日も、誰も出会えなかった、それは仕方のないこと、と諦めるしかない。
何が悪いのだろう、やはり、お金を払ってはいる場所だからなのかしら、ううむ、と少女は腕を組んで悩もうとするけれど。
それよりも前にすることがあった。
「帰らないとね。」
さすがにここで寝泊まりすることができるけれど、それをするわけにはいかなかったので、ざばり、と立ち上がる。
お湯の中ではぷかぷか浮く体も立ち上がってしまえばそれもなくて。
なんとなくちょっと体が重く感じられる、体重が増えたわけではないのだけど、嫌な気分になる。
気のせいの話なのは分かるけれど、その辺りは繊細な乙女心と割り切ってもらいたく思うのだ。
そして、脱衣所まで戻り、水滴の残りをタオルで拭い去ってから、胸元を飾るネックレスを付けて。
服を着て。
そして、九頭龍温泉郷を出て、家に戻るのだった―――
ご案内:「九頭龍の水浴び場/ふたなり浴場」からリスさんが去りました。
ご案内:「マグメール北東・まれびとの道。森の野営地」にメルリース姉妹さんが現れました。
ご案内:「マグメール北東・まれびとの道。森の野営地」にアルヴィンさんが現れました。
■アルヴィン > 神韻とした森の中、時折薪が爆ぜる音がする。
板金鎧を外し、鎖帷子だけを残した騎士が火の番をし、姉妹へと先に休むように告げたのは、夜半過ぎ。
まずは自らが不寝番に立つつもりでいるのだろう。
「遠出に…慣れぬ乗馬だ。今日はお疲れであろう。おれがしばらくは起きている故…おやすみあるがいい」
騎士は、火に背を向けると、姉妹へとそう告げた。
野営の炎を見つめた眼は、急に闇へと向けたとしても効かないのだ。
火明かりに眼を慣らしてしまってはならない。
その基本を愚直に守るつもりなのだろう。
剣を抜いて、騎士は膝の上に刃を寝かすと、ゆっくりと砥石を刃へと滑らせる…。
■メルリース姉妹 > 「そうね、ありがとう。
シアちゃんはもうこの状態だし、お言葉に甘えることにするわ。
交代する時は、すぐに起こして。
あなたにも万全でいてもらわないと困るもの」
背中越しに向けられた青年の言葉に答え、しばらくは旅慣れた彼に従うべきだろうと、こちらも焚き火から目を反らした。
はしゃいでいた事もあって、妹はすでに寝息を立てており、妹と並ぶように身を横たえる。
夜は夢魔の時間ではあるが、睡眠を必要としないわけではない。
が、いざとなればすぐに飛び起きることは出来ようと。
■アルヴィン > 「このマントをお使いあるがいい…」
騎士が差し出したのは、魔獣の皮革を用いたマントだ。
鮮やかな青い色合いのそれは、間違いなく皮革の丈夫さとしなやかさを備えている。それを、敷いて寝れば大地に熱を奪われることはない。
告げられた言葉に騎士は穏やかに幽かに笑みを刷く。
姉妹の寝息が届くまで、しばし。
その間、騎士が使う砥石の軽やかな音だけが、三人の野営地で爆ぜる薪の音に混じっていた…。
■メルリース姉妹 > 「ふふっ、お気遣いありがとう、騎士様」
「んぅー、ふひひー♪
アルヴィンおにーさんも……可愛いとこあるじゃーん……ぅゃ~……」
差し出されたマントを受け取り、言われた通りに身体を休めて。
蕩けた寝言を漏らす妹を抱きしめては、そっと頭を撫で続ける。
刃を磨く石の音は、薪と風の音に混じって子守歌となり、やがて姉も同じく寝息を立て始める。
穏やかで、静かな夜はしばらく続いた。
……『人避けの結界』に何かが干渉し、魔素-マナ-の流れに乱れが生じるその時までは。
■アルヴィン > 「やれやれ…どのような夢をご覧になっておられるやら…」
その一言は、耳に届いた妹淫魔のその言葉に。思わずぞくりと背筋を震わせ、肩越しにちらりと背後を視線を投げる。そこには、さも心地よさそうに眠る妹淫魔の姿があり。
ぽりぽりと、騎士は困ったように口許を掻いた。
そんな、平穏な野営の空気の中で。
まず、不穏を嗅ぎ取ったのは、騎士の愛馬であった。
不満そうに、苛立ったような鼻息。それは、愛馬が主を気遣う警告の仕草。
それを耳にし、騎士はそっと膝立ちに。
幸い、剣は既に鞘払っているが…。
「“人払いの結界”を…侵すだと?」
つい、独り言ちたその声が、薪の爆ぜる音と風の音を僅か、かき乱す…。
騎士は一瞬、姉妹を起こすべきかを逡巡し、そっとまだ、盾を持たぬ左の手指を、姉淫魔の肩へと触れさせ、柔く揺らし…。
■メルリース姉妹 > 「……!」
身体を揺らされた姉は、即座に目を覚まし、片膝をついてしゃがんだ状態へ。
同時に妹の身体を同じように抱き起し、大声を出せさぬよう彼女を口元を抑える。
「ん!? うぉ、むっ!」
「……結界が干渉を受けている。きっと向こうに、解呪-ディスペル-の使い手がいるわ」
くぐもった声を漏らし、目を瞬かせる妹をかかえたまま、姉は早口の小声で青年に囁いた。
騎士が信奉する竜神の加護に対抗できるとすれば、同じような……
それでいて逆ベクトルの、混沌の神の力か、と。
■アルヴィン > 「…やれやれ。とんだ初陣となられたな」
ついてきてよかったと、騎士は内心そう胸中にのみ吐息を零していたが。
安堵は、まだ早い。
とはいえ、このようなこともあろうかと、騎士は結界にいくつかの“仕掛け”を施してもいた。
それが、その時早くも“発動”する。
程遠くないところ、丁度先ごろ騎士が結界を張った、まさにその外縁の一つだろう。そこから不意に明かりが届く。
“人払いの結界”が破られると同時に、そこに“光明”の奇跡が発動するよう、この騎士は仕掛けていたのだ。
「リア殿、シア殿、敵襲だ。
…貴女方の魔術の手腕、信用している。良きようになさってくださればそれでよい…」
敢えて騎士は声を殺して告げ、剣を手にし焚火を背に立ち上がった。
そして一度だけ、騎士は肩越しに微笑んだ。
その時既に、濁った雄叫びは野営地に迫っていた。次々と発動し燈される“光明”が、侵入者の位置をありありと示し…。
やがて、ゴブリンというには大柄な個体が、次々と三人の眼の前に…。
■メルリース姉妹 > 塞がれていた口から姉の手が離れると同時、昼のように周囲を照らした光に妹は目を見開く。そして、見た。招かれざる来訪者の姿……
「ふぁ~……アルヴィンお兄さんやるぅ。結界と光明の複合技かぁ……
ってっ、デカッ!? あれ、ホブゴブリンじゃんっ!?」
複数体。ゴブリンはゴブリンでも、先祖帰りの『田舎者-ホブ-』。
腕力も耐久力も高く、手にした棍棒によって駆け出しの冒険者が頭蓋を叩き割られることも少なくない。
姉は頷いて、揃えた人差し指と中指で、中空に呪印を描いた。
「――眠れ、猛-たけ-る心。我らは夢魔。夜の帳-とばり-を引く者……――『睡眠-スリープ-』……!」
幸いなのは、ホブゴブリンは頭があまり良くなく、飛び道具などは使わない。
そして魔法への抵抗力も低いこともあり、夢魔でもあるサキュバスが使う『睡眠』の術式の前に、次々と落ちていびきを立て始めた。
しかしそれは同時に、彼らとは別に結界を乱した『上位種』がいる、という事の証左となる。
そちらは、騎士の出番となるだろう。
■アルヴィン > 「お褒めに預かり、恐悦至極…」
そう、騎士は妹淫魔の言葉に長閑に答えて、そして。
立ち木の位置と焚火の位置、そして守るべき姉妹二人の位置を図り、騎士は今己が居るべき位置、そして絶対に死守せねばならぬ位置取りを瞬時に決めた。
決めてそこに、立ち塞がる。
だが、その立ち位置にて騎士が死守せんとする前に、姉淫魔の唱えた呪文が功を奏し、一体、また一体と大型のゴブリンたちは頽れてゆく。
残るは、二体。
騎士の口許に、常とは色の異なる笑みが刷かれゆく。
穏やかな色の笑みではない。凄絶な、それは剣士の笑みだった。
右手の剣の柄尻に左手を添え、騎士は両の手で剣を持つと、ゆらりと一歩を踏み込んだ。
その動きそのものは、ひどくゆっくりと見えたことだろう。
なんの外連味もなくただ、愚直に。真正直に、敵の目前へと。
それは、無防備にすら見えたかもしれない。
しかし、放たれたのは雲耀の剣。
姉妹は、その剣筋を追えただろうか。
高く上段に据えられていた剣が、紫電と化したその筋を。
悲鳴すらなく一体が胴を両断され、そして騎士はさらにと一歩を踏み込みそして、返す刃が紫電と化す。
もう一体のホブゴブリンもまた、左胴をほぼ両断とばかりに抜かれていた。
野営の焚火に輝く剣。
その刀身に残る血曇りはごく、僅か。
そして騎士…否、剣士は、闇の向こうに瞳を据えた。
この結界を破った者がいる。
その気配はある。が…近づこうとはしてこない。
「…しぶといな。下がる気か?」
剣に一度血振りをくれて。剣士はなんとも不満げにそう、呟いた。
■メルリース姉妹 > 一瞬、否、それよりも速い雲耀の剣に斬断される大型妖魔。
武器としての武骨さを持つ刃が、芸術にも似た動きで命を絶つ様に、妹は、ヒゥ、と口笛を鳴らした。
未だに敵の上位種は潜む。
夜闇は彼らの領域だが、同時に淫魔の領域でもある。
姉の目にははっきり見えていた。
悪趣味な装飾のメイスとブレストアーマーを身に着けた……ホブゴブリンほどではないにしろ、普通の個体よりは長身なゴブリン。
邪神に使える神官戦士だ。
濁ったようなゴブリン語と共に魔素が乱れる。
姉は横目で妹に合図を送り、その方向を指さした。
「――乱せ乱せ悪戯小僧-グレムリン-! 狙いはヤツの耳元だ。ドでかい音でド肝抜け! ――『爆騒音-クラッシュ・ノイズ-』!」
妹が紡いだ魔法は、聴覚に作用する幻術。
パチリ、とその場に聞こえた間の抜けたような音とは裏腹に、ゴブリン神官戦士の耳元では爆音が響いたようで……攻撃魔法を中断し、身体を硬直させた。
「アルヴィン、今っ!」
普段の敬称は省き、妹は追撃を要請する。
■アルヴィン > 「承知…」
その瞬間、剣士は溜めに溜めていた膝の力、武において腿力と呼ばれる力を一気に解き放った。
跳ぶ、と。そう形容してよい歩法。
けれどそれは、高くはない。むしろ、常よりも低く剣士は“跳ぶ”。
その跳躍のような歩法一歩一歩が、更に次の剣撃の迅さ鋭さ重さを生む。そういう、愚直なまでに鋭い歩みは、一歩一歩に地響きにも似たどよもしを伴うのだ。
剣は、右体側に立てるようにして据えられている。
妹淫魔の絶妙の呪文によって生まれた一瞬の硬直は、剣士の放つ雲耀の剣には、夢幻にも等しい機であった。
夜を見通す淫魔姉妹のその翠の瞳に。
血飛沫すら上げずに、胸甲ごと両断されるゴブリンの姿は、ありありと捉えられていたことだろう…。
そして騎士は、もう一度愛刀に血振りをくれた。
そして、大きく大きく息をつき、淫魔姉妹二人の許へと戻りくる…。
「お見事であらせられた、シア殿」
そう、微笑んで掌を出す。
そう、ハイタッチ、というやつだ。
■メルリース姉妹 > 派手な動きでもなく、残像が生まれるような足運びでもない。
にも関わらず、光明の術光を浴びて閃いた剣は、神速とも言える速さで敵のリーダーを文字通りの真っ二つにした。
何秒か遅れて、ようやくその断面から血が噴き出る。
凄惨な光景なれど、恐怖や嫌悪に顔色を変えることがない姉妹は、精神構造そのものが人と異なるのかも知れない。
妹は騎士の青年に満面の笑みで「いぇーい!」などと応え、彼と打ち合わせた掌で、パァン、と小気味の良い音を立てた。
「あなたの剣も見事だったわ、アルヴィン。
ところで……眠ったままのホブゴブリンが、まだ一体いたはずよ。
どうする? とどめは刺しておく?」
姉が、身体を上下に泣き別れさせた連中の合間にいるその個体に目を向けた。
今なら倒すのは簡単だが、どうしようかと。
■アルヴィン > 「できれば、情報を聞き出したいところではあるが…」
ゴブリンの言葉は生憎とわからぬのだ、と。騎士は困ったように髪を掻く。
野営地は、襲撃を受けて凄愴な有様だ。
騎士は、姉妹を立たせ、そのまま荷をまとめる支度にかかろうとする。
結界が破れた今、この血臭は森中にばら撒かれたようなものだ。
やがて、招かれざる客はいくらでも来よう。
そうして、荷をまとめて愛馬に背負わせつつ騎士は、姉淫魔へと問いかける。
「もし、貴女方が彼らの言葉がわかるなら…」
そして、束ねていたロープを指し示した。
眠っているのを幸いに、縛り上げて連れてゆこうか、と問うように…。
■メルリース姉妹 > 「ゴブリン語なら私が解るわ。
睡眠-スリープ-があれだけ効くなら、魅了-チャーム-にも魔法抵抗される事はないでしょう」
「できればもう一つの依頼のゴブリンの歯も回収したいとこだけど……
アルヴィンお兄さんの殺り方が綺麗すぎて身体がまるまる残ってるから、解体に時間かかりそうなんだよね。
今回はパスして、ここが狼さん達の食堂になる前に退散しますかー」
彼の言う通り、場所を変えて捕虜を連れて行こうかと。姉妹は頷いた。
移動するなら、自然とついていく事になる。
「ゼフィちゃんもお疲れー」と妹は、青年の命を忠実に守る愛馬を撫でていた。
■アルヴィン > 「それは助かる。
ならば…」
そう告げ騎士は、手際よく生き残ったホブゴブリンを縛り上げる。そして、余った縄とぼろ布の端切れを使い、まだ眠っているうちにと、ご丁寧に猿轡までしてみせた。
姉妹としては、こういった手際のよさが意外と思えるかもしれないほど、それは素早いものであり。
そして騎士は、まず己の軍装を手早く調え直し、軽々とホブゴブリンの身体を担ぎ上げる。
「では…参ろうか。風上…街道を挟んで逆の森の中にゆこう」
風上ならば、この血臭を嗅いで集まるけものも少なかろう。
水袋の水を焚火にかけて、騎士は片手に愛馬の口を取ると、姉妹の歩調を確かめつつ、自らが先に立って移動を始め…。
■メルリース姉妹 > 「うわ、縛るの速-はっや-!? しかもめっちゃ重そうなのに!?」
「騎士ならば、狼藉者を捕らえるのも仕事のうちだものね。
この巨体を軽々と担ぐのは、流石に驚いたけれど」
目を丸くする妹と、中空に目をやってなるほど、と思い当たる姉。
騎士に従い、その場を離れていく。場には、再び穏やかな風音のみの静寂が戻った。
ご案内:「マグメール北東・まれびとの道。森の野営地」からアルヴィンさんが去りました。
ご案内:「マグメール北東・まれびとの道。森の野営地」からメルリース姉妹さんが去りました。