2020/05/09 のログ
ご案内:「マグメール北東・まれびとの道」にメルリース姉妹さんが現れました。
ご案内:「マグメール北東・まれびとの道」にアルヴィンさんが現れました。
アルヴィン > なんと冒険者として登録したという淫魔姉妹に連れだって、その初冒険の共連れとなった騎士は、春のうららかな日差しの中、街道を一路北東へと旅路を進めている。
自らは愛馬の口を取り。
鞍袋には、一行の冒険の荷を積んで。
そして…愛馬の鞍上には、淫魔の姉妹が乗せられている。

騎士以外の者には滅多なことでは慣れぬ馬ではあったけれど、騎士がその口を取っているから、おとなしく背を許してやっていると、そういう風情であったものの。
旅路が進んでゆくうちに、黒鹿毛の悍馬の方でも、随分と淫魔姉妹に慣れたのだろう。
道行きも歩調も随分と穏やかになり、心地が悪そうに鼻を鳴らすこともなくなった。

「…ようやく慣れたらしいな」

そう言いつつ、騎士は愛馬の鼻面を撫でてやる。
一行が向かうのは、王都を街道沿いに北東へと、一日ほど離れた場所だった。
街道沿いの森に巣食ったゴブリンの間引きという、初心者冒険者向けの依頼を、はりきって受けた淫魔姉妹…正確には妹淫魔のお供と、そういうことにいつしかなってしまったのだった…。

「夕刻までには…まだ、少しあるが。目的地には夜までには十分に後に合おう…」

旅程はしっかりと捗ったと、騎士は背後肩越しに鞍上の二人へと笑みかける…。

メルリース姉妹 > 「えへへー、視点が高いって新鮮だねー! 
お馬さん、ちょっと重かったかな? 後でブラシかけたげるねー?」
「無理を言ってしまったかしらね、アルヴィン。
けれど誇り高い軍馬に荷車を引かせるのも可哀想だし……
今のところ道程が順調なのは、貴方とこの子のおかげだわ」

馬上、騎士が座る鞍の後ろ。
妹は彼にならって跨る形。姉はその後ろで、足を揃えて横座り。
返す笑みも片や呑気に、片や穏やかに。

ゴブリン達が先遣部隊を放つにはまだ遠い。
野営で英気を養い、彼の愛馬を労わるぐらいの間はあろうか。

アルヴィン > 「軍馬と荷馬では、施される訓練が異なるゆえ…」

軍馬と言うのは、荷役には適していない。
荷役用の馬には、速く走ることは求められず、とにかく安定して長い距離を、荷を引いたまま歩き続けられるように持久力だけが求められる。
軍馬に求められるのは一定時間、一定以上の速度を保ち、そしてその鞍上に鎧を纏った騎士を乗せ続けられることだ。
求められる仕事が異なる以上、軍馬に荷馬の仕事をさせると、軍馬としての身体を損なうこともある。

とはいえ。
姉妹二人を背に乗せて歩くことなど、軍馬にしてみればまさに朝飯前の仕事だった。

誉められたことがわかったか、軍馬は威勢よく鬣を振り鼻を鳴らす。が、きちんと揺らさぬようにと振舞うのだから、背にある二人が乗馬に慣れぬことを、もう十分に弁えたのだろう。
相変わらず、人より利口だと騎士は笑う。

「旅程は順調だ…。然様、ゼフィにブラシをかけてやることくらいはできような」

餌をやってみるか、シア殿、などと。騎士もまた機嫌よく、はしゃぐ妹淫魔に声をかけ…。

メルリース姉妹 > 「ふぇー、お馬さんっていっても色々あるんだねぇ。いっこ賢くなった!
あ、ごはんあげるの良いね。リンゴとか食べる?」
「ふふ。シアちゃんたら、はしゃいじゃって……
私達も初仕事の前に休んでおかないと、動けなくなるわよ?
……キャンプが出来そうな場所はあるかしら?」

食料や冒険者用のツールは、前もって鞍袋に入っているのを確認している。
「ねーゼフィちゃーん♪」などと馬の背を撫でている妹をよそに、姉は周囲を見回し、騎士へと視線を向けた。

アルヴィン > 「林檎はよいな、喜ぶだろう」

角砂糖など、馬と言うのは人が思うより甘味を好むなど、騎士は妹淫魔の問いに答え、愛馬の鼻面を撫でてやった。そして…。

「雨と風さえよけられれば…」

後は、結界でなんとかなろうと騎士は告げる。

「“人払いの結界”といって…人だけでなく、獣や魔物が、結界に近づかなくなるのだ」

曰く、近づきたくとも近づけぬのではなく。知らぬうちに、結界から外れて逸れて遠ざかってゆく、というのものであるという。

「街道を外れ…少しだけ、森に入ろう。周囲に樹木と下生えがあれば、火明かりを遮ってくれようし」

冒険初心者のための初心者講習、どうやらこの冒険は、好奇心旺盛な妹淫魔のために、そのような機会をも兼ね始めたらしい。

メルリース姉妹 > 「良かったー♪ んじゃ、ゼフィちゃんには後でリンゴあげるね?
……え、森の中で火って、だいじょぶなん?
エルフさん達に怒られないかな?」
「彼らもそこまで狭量ではないわ。
燃え移らないように気を付ければ平気でしょう。
こういう時に聖職者の術はありがたいわね。
こちらは火を保つために、枯れ枝を集めればいいかしら?」

小首を傾げ、疑問を口にする妹の頭に手を置き、姉は見えてきた森の入り口に目を向ける。
最近大雨が降った、という日はなかったはずだ。
おそらく焚き木を集めるのは難航はしない、と思いたい。

アルヴィン > 「無暗やたらと、燃やさなければ。街道の近くには、宿営に向いた地というものがある。露地が、焼けていようから、すぐにわかるさ」

野火というのは実際に怖いものだ。何度も何度も焼かれた大地と言うのは、次第に芽吹くまで時間を要するようになる。
そのようなことを騎士は告げ、森と街道の境目を見つけると、ゆるりと街道を外れていった。

「春になり…木々の枝葉も水分を含み始めたことだろう。最初に、しっかりと乾かしてやればよいと思う」

既に枯れ枝を集める心つもりの姉へと、騎士は馬上を振り仰いで頷いた。
春になり、枯れ枝は少なくなっているはずだ。
それならばと、騎士はまず、宿営地へと至れば実際にやってみせる。

なるべく、枯れ枝を。
そうでなければ、下打ちと呼ばれる木々の枝葉の未成熟なものをハンドアックスにて伐り取る。
そしてそれを組んで、まず熾した火の近くに組む。
すると、青い煙が立ち上る…。これが、枝葉から湿気が飛ぶときの煙だと騎士は告げて。

「お気をつけられよ。眼に入るとたいそうしみる故…」

と、まずは愛馬に林檎をやってくれて、はしゃぎそうな妹淫魔へと告げるのだが…。

メルリース姉妹 > 「先人の痕跡を探せば良い訳ね」

姉、頷き返しては程なく。
彼に続いて下馬し野営の準備に取り掛かる。
なるほど彼の言う通り、なかなか誂-あつら-え向きの乾いた枝は見つからない。

一方、リンゴをシャクシャクと食む馬に「かわいー♪」などと目を細めていた妹。
さっそく立ち上った煙を興味深げに駆け寄り……

「お、もう火ぃ点いtおぁっふ!? もっちょい早く言って!?」

目を抑えて、素っ頓狂な声を上げた。
これに関しては、妹の不注意で、騎士の青年に非はないのだが。

アルヴィン > 「やれやれ…
 シア殿?こちらへ…」

そうなると、騎士は予想していたのだろう。清潔な布を取り出すと、水袋の水を含ませ、よく絞る。そして、妹淫魔が呼び声に応えてくれたなら、膝を折って視線の高さを合わせると。その頤を指でつまみ、そっと濡れた布地をその目尻へと…。

「大人しくなされよ…。さ、これでよい。そのまま、口許を覆っておかれるがよい」

そう、言いつつ。じんわりと冷たい布地で目尻を拭い、そのまま、口許と、煙が染みたらすぐに眼を拭えばよい、と微笑んで…。そして、姉淫魔へと瞳を向けて、こんなことをのたもうた。

「…淫魔であらせられても、煙が目に染みるのだとは、初めて知った」

どことなく。感動した、と言いたげに。

メルリース姉妹 > 「おふぅ……染みたぁ……あー、ひんやりして癒されるぅー……
アルヴィンお兄さんに顎をクイッてされるのは、もーちょい色っぽい場面でやって欲しかったケド……」
「色事の方面なら、いくらでも都合の良い身体にはなれるけれど、それ以外の痛覚に関しては、どうしてもね。
外側-ガワ-だけでも、そこは人と変わらないわよ?」

大人しく手当されながらも阿保な事を抜かす妹に、集めた枝を彼に倣って火の傍に組む姉。
妹の盛大な自爆を見て煙を避けている辺りは、ちゃっかりとしたものであった。

アルヴィン > 「では、そういう色っぽい雰囲気とやらを、精々作っていただくとしよう?」

妹へは、そろそろこの騎士もこの程度の軽口は返せるようになったものらしい。ただ、一返したら、十さらに跳ね返ってくるということに、そろそろ気づいてもいい筈なのだが、それがまだわかっていないあたりが、野暮天であったけれども。

一方、うまく風上に位置して煙を避けている姉のちゃっかりさに微笑んだ後に。騎士は、二人へとこう告げた。

「周囲に…結界を張ってくる。ここまでゴブリンどもが出てくるということはあるまいとは思うが…。万一の時はご無理をなさらぬように…」

そう、言いおいて。騎士は解かずにいた軍装のままに、一度宿営地を離れてゆこう…。

メルリース姉妹 > 「ぐぬぬぬ。あたしの目が効かないのを解っていて言いよるわ、アルヴィン・アルヴァーハード! 覚えとけよー!?」
「心得ているつもりよ。
そちらも、仮に出て来てもあなたが遅れを取ることはないでしょうけれど、気を付けて。
私はスープでも作っておくわ」

負け犬のごとく遠吠えする妹は、今は返す言葉も持たず。
姉の物言いは、どことなく旗-フラグ-が立ちそうなモノではあったが、まぁともかく。
荷から取り出した小鍋に水を注ぎ、乾燥豆や干し肉を入れて火にかける。
腹が減ってはなんとやらだ。彼が戻ってくるまでには、と。

アルヴィン > “人払いの結界”を張りに出て、そこで遭遇-エンカウント-などとは、しゃれにもならぬと騎士は苦笑し、そして。鎧を鳴らして二人のいる宿営地を離れていった。
とはいえ、それほどに離れる必要はない。
十分に気配が届く距離。ほんの、五十ヤードほどだろうか。騎士が離れたのはその程度だ。
そして結印し、聖句を唱えて、地を踏みしめる。
そうして結界の線を結んで歩けば…魔術師としての腕が相当な、淫魔姉妹は宿営地がしっかりとした“異界”へと、変わったことが肌で感じられることだろう…。

そうして騎士が戻ったのは、妹淫魔の眼が効くようになり、宿営地にスープの薫りが立ち昇り始めた頃…。

「これで、準備はよい。よほどの相手でなければ…今宵のやすみを邪魔されることはないだろう」

そう、二人へと告げて。
騎士はようやく、軍装が解けると息をつく…。

メルリース姉妹 > 「あー、やっと目が落ち着いてきた……おっ?」
「魔素-マナ-の流れが変わった……いいえ、『閉じた』のね。
お疲れ様、アルヴィン。ご飯にしましょう?」

告げられた言葉に、術式の成功を確信する。
妹は目をしぱしぱさせ、姉は匙と椀を人数分用意。
ほどよく塩気と旨味の効いたスープは、明日への活力となるだろう。

淫魔の『本性』も、仕事の前には引っ込めておく。……今のところは、だが。
冒険一日目は、夜の帳と共に終わりを迎えた。

ご案内:「マグメール北東・まれびとの道」からアルヴィンさんが去りました。
ご案内:「マグメール北東・まれびとの道」からメルリース姉妹さんが去りました。
ご案内:「平民地区 訓練場」にスバルさんが現れました。
スバル > 夜の訓練所、人が少なくなった時を見計らって、少年は今夜もやってくる。
黒い髪の毛を長くして、己の顔の半分を覆い隠し、一般的な服を着た、小さな子供。小さなバックパックを背負って、腰に脇差を、右手に小手をしているところが、異質なところだろう。
訓練するために来ているが才能はないのだろう、ちっとも成長しない。
でも、しなければならないのだ、いつも居ない父親に代わって、母親を、姉を守るために。
子供ながらに、僕は男のなんだ、長男なんだと、自分に言い聞かせて、訓練所にやってくる。
他人は怖い、正直に言えば、家の中にいたい、でも、それではだめなのだと、自分に言い聞かせて、少年はいつものように、訓練をする。
まずは、訓練所の隅で、柔軟体操と筋トレ。訓練の前に体を鍛えなければ、ならない。
少年は、同年代のほかの少年に比べても小さく、非力で、喧嘩にも勝てるような要因はない。
ただただ、虐められて終わりになるのだろう、そもそも喧嘩をするような友達さえいないのだけど。
だから、最低限の体力を身につけないといけないから、少年は基礎体力のための走り込みや、腕立てなどのトレーニングをする。

隅っこでやるのは当然ながら、ほかの人が怖いから、冒険者が少ないといっても―――居ないわけではないのだ。
だから、隅っこで目立たないように訓練するのは、少年の習性ともいえる。

スバル > 腕立てに、腹筋、背筋、スクワット……様々なトレーニングの方法を試しているのだけれど、これっぽっちも筋肉がつく様子がない。
食べ物だってお肉とかちゃんと食べているのに、なんで、と思うのだけれど、答えてくれる人はいない。
それでも、少年は決意をもって訓練するのだ、それに、教わっている技術は――突きは筋力がなくても、それなりに相手に手傷を与えることのできる方法。
少年にぴったりの方法だと教わっている、だからいつもそれを訓練するのだ。
それとは別に、近づかなくても戦うことができるように、腕の小手についている魔法のクロスボウ、魔法の矢を発射して攻撃する方法。
それも併せて訓練をしている。
逃げたり隠れたりが得意なので、むしろこっちのほうも性に合っているけれど。
やっぱり、男の子として、剣で戦いたい―――というよりも、守るのなら、前に出る必要があると思うから。
今日も、少年は打ち込み代に向かい、構え、踏み込み、突きという、いつもの訓練を行うのである。