2020/04/24 のログ
イルルゥ > 「アレフくん」

閑散とした冒険者ギルドにもう一人、入ってくる姿。
ここの食堂は夜でも…遅くに帰ってくる冒険者のために営業を縮小して解放されており。
それを利用するために少女はやってきた。
そこで、つい見知った姿が何やら可愛らしい動作をしていたから声をかける。

「それ、取りたいの?ちょっと、届かなさそうだけど…」

こてん、とローブ姿のまま首を傾げて。
いくらか声音は柔らかく、少し甘くなり、優しい口調だ。

アレフ > 「あ…♪」

呼びかけられた声に、少年は椅子の上からくるりと振り向き、そして…それはそれは嬉しそうに声が躍った。
頬にはぽわわ、と桜が散って。
ふわぁ…と嬉し気に微笑んでから、桜はみるみる薔薇になる。

ナニかを思い出しているのは、もう、はっきりわかる仕草だった。

もじもじ、としつつも少年はこっくりと頷いた。

「はい、その…ええと、うんと…」

もう少し詳しく内容を見てみたいなあ、と。そんなことを少年は言う。
少女と約束した、初冒険は遺跡探検、ダンジョン探索!
その言葉どおりに、遺跡探索のような依頼をつぶさにみていたものだから。

けど、ちょっと届かない。
むー、と少年は悔しそう。

イルルゥ > 「……ぅ。……受付さんに言えば取ってくれると思うけど、今は居ないね」

少年の様子に、フード姿もまた少しびく、としたけれど。
それを誤魔化すようにきょろきょろと頭が揺れる。

「肩車してあげよっか。それなら、届くかも」

少女は隠蔽系の魔法が苦手な代わりに、身体を強化する魔術は非常に得意だ。
バランス感覚もあり…椅子の上で少年を肩車することは特に難しい事でもない。
少女も少年と同じような背丈であるため、取ってあげることはできない故の苦肉の策。

(……少しの間、息止めてれば…なんとか……)

密着はしてしまうけれど。
ローブもあるし、呼吸を止めれば匂いも入ってこない。
そんな計算をしつつ、少年の答えを待つ。

アレフ > 「えっ!?」

肩車、というのは少年にとっても意外な提案。
ぴっくりした、という色のどんぐりまなこが、掲示板と少女とを行ったり来たり。
そして、うーん…と唸ったかと思うと…。

「そしたら!ぼくが肩車します!」

と、少年は張り切ってみせる。
少女の得意なスキルは知っているし。
任せて安心なことはわかっているし。
…けど、オトコノコなのだ。やっぱり、いいとこ見せたいではないかと、そういう意気込みなのは、むふー、という力んだ様子でわかるだろう。
いそいそと、少年はその場にしゃがんで少女を待つが、それは少女の用心を、ある意味無にしてしまうかもしれず…。

イルルゥ > 「え?いや、アレフ君が取りたいのかと思って……ぅー…」

肩車待ちの少年を見ると。
反論…というか辞退するのも悪い。
何だか張り切っているようだし、それを無下にするのも良心が痛む。

「わかった…、じゃあ、行くよ…取ったら、すぐ下ろしてね」

少年が見つめていた依頼書をしっかりと見て。
肩車されればすぐに取れるように意識する。
人も少ないのが幸いして…少年だけ特別に少女に触れている、などという噂も立たなさそうだ。

懸念はやはり…ホットパンツ越しとはいえ、ローブ無しで少年に触れてしまう事だけれど。
すぐに降りれば問題ないと判断して軽やかに少年の肩に両足を置いて座るように。
重さは…体相応といったところだが、少年が支え切れるかどうか。
ともかく、持ち上がるなら…依頼書を手にしようと少女は頑張ってみる。

アレフ > 「いきますねぇ。
 …っこい、しょっ!」

少女が乗ったそれを確かめて。少年はそう声をかけた。
思いのほか、軽々と持ち上がったけれど。
けれどやっぱり、慣れないらしく。
よっとっと、おっとっと、と。
やっぱり少しばかりはフラついてしまう。
少女の手が、求める依頼書に届くまで、少年の後頭部がぐりぐり、ぐりぐりと、「ある所」を刺激してしまうのは、これはもう事故としか言いようがないし。

懸命に頑張る少年から、体温が上がればそれはもう、少年らしい瑞々しい匂いも立ち昇る、というもので…。

イルルゥ > 意外に力強く、ぐい、と視点があがる。
椅子と、少年の背丈を足せば余裕で依頼書には手が届き。
揺れも、特に依頼書を取るのには支障はないけれど。

「っ……!、……っ、あ、あれふ、くん、手、離して」

いくら何でも、この場で発情するわけにもいかず。
慌てて遺跡、やら調査、やら書かれた複数枚の依頼書を手に取って。
切羽詰まった声で、そうお願いする。

手を離してくれるならそのまま…くるん、と少年の背を擦りながら背面に回転。
すた、と地面に降り立っていくだろう。
離してくれないとなるとまたお願いを繰り返すか、取ったよ、と言って下ろしてもらうことになるのだけれど。

アレフ > 「はーぃ」

よっとっと。
少年はなんとか懸命に、椅子の上というアンバランスさにも負けず、ゆっくりゆっくり腰をかがめて…少女が降りやすいようにと心掛けた。
手を離して、と言われたけれど。
なんだかとても心配で、少女が思っていたより、少しばかり長く触れていてしまったかも、しれない。

「ふわぁ…さすがに、身が軽いんですねえ…」

と、背後に降り立った姿に、どんぐりまなこをまん丸に。

イルルゥ > 「はぁ、ふ……、もう……。アレフ君、私は大丈夫ですから、離れてって言ったら離れてくださいね」

これは一応、大事な事でもある。
パーティでの冒険には当然、一人が時間を稼いだ後離脱…という状況もある。
だからこそ、もたもたとしていれば危険もあるかもしれない。
…そんな思いからの忠告だが、本当は非常に体質的に危なかったからなのだが。

「はい。…近くの遺跡とか、森の調査ね。丁度……、ふぅ。…いいのとか、あると思うけど」

手に取った依頼書を手渡して。
何とか息を落ち着けようと深呼吸し、大きくフードの肩が揺れている。

アレフ > 「…ごめんなさい」

しゅん、と見るからにしぼんだ気配がありありと。
けれど、いつまでもヘコんではいられない。
少年は少女と共に、椅子を返すついでに食堂へ。
その手には、椅子もだけれど、念願の探索系依頼書の束がある。
きらきらと輝く瞳は、きっとまだ見ぬ遺跡に飛んでいるのだろう。

「どれ…っ、その、どれがいいと思いますかっ!?」

彼女は尊敬する先輩冒険者だ。
きっと、自分の今の力に合わせた冒険を助言してくれるに違いないと、少女の気も知らず少年は、それはもう、興奮している、という様子。

イルルゥ > 「あ、ぅ。いや、その……いいの、ゆっくり、覚えていけばいいから…」

慌てて、あわあわとフォローを。
半ば自分の体質のために怒ったようになってしまったから。
ぱたぱた手を振りつつ、食堂へと向かっていこう。

「んー………………」

どれがいい、と聞かれると、じっくりと束を見始める。
一枚一枚、丁寧に。
ここで依頼を良く見ずに受けてしまったりするとそれはそれで少年を危険に晒すことになる。
先輩として、しっかり守るつもりはあるけれど、それでも限界はある…
そんな思いから、選定には時間をかけて。

「これ…かな。報酬は他のに比べてちょっと低いけど、初めてなら丁度いいと思う」

やがて選んだのはそう遠くない遺跡の調査依頼。
既に何度か冒険者も入ってはいるが、罠もいくつか残っている旨が記されている。
魔物のレベルは低めであり。少年一人でも、罠のことを考えないなら戦える程度の魔物しか出ないようだ。
例えば、大蝙蝠やネズミなど。スライムとは毛色が違うが、物理が効きやすい分、少女もフォローしやすい。

アレフ > へぇー、とか。ふぅん、とか。
少年はずずい、と頭を寄せて依頼書を覗き込みつつ、それはそれは熱心に少女の説明を聞いている。
ふんふん、なんて相槌を打ちながら、自分でも指で依頼書の文言を追いかけて。

「蝙蝠…ネズミ…」

挙げられたモンスターに、少年は一度天井を見上げるようにして、何やら考え込む様子。そして…。

「…それなら、友達になってくれるような子もいるかもしれませんねぇ」

なんて。
にっこり笑って言うのだった。
少年によると、故郷でもそうだったらしい。
退治したモンスターとごくたまに、心が通じ合うのだという。
そういうモンスターは倒さずに、怪我を治して別れたり、村の近くで村人にも紹介したうえで暮らしてもらう、なんてこともあるというから、驚きで。

イルルゥ > 「っ……、と、ともだち?、えっと………」

顔が寄ってきて、ついびく、としてしまうけれど。
何とか誤魔化そうと少年の言葉に乗っかる。

聞いてみれば、中々驚くことばかりだ。
魔物と言うのは無差別に人を襲い、悪質になれば村や町も襲ったりする。
そんな認識だったから、友達にできるという言葉には驚いて。

「うーん…確かに、手数が増えるならいいけど…」

仲間が多いということはそれだけこちらの取れる作戦が多くなるという事。
ほんの少し、気づかれないようにそっと頭を離しつつ。
少し疑い…というよりは、初めて聞いた技能だからか戸惑っているようで。

「でも、それなら頼もしいね。…私は基本的に、フォローと危険な罠を報せることにしようと思ってるから…
魔物は、頑張ってアレフ君が相手をしてくれる?」

少女にとっては、少し物足りないくらいの難易度であるが故に。
今回の依頼は、少年のスキルアップを目的としているところが大きい。

アレフ > ふるふると、少年は首を振った。

「友達に危ないことはさせられないですよぅ。せっかく正気に返って、危険じゃなくなったんだから、ちゃんと安心して暮らせるところに返してあげないと…」

なんて、ちょっとだけ少年はお兄さんぶるように言った。
そして友達になったモンスターは、凶暴性から解放されるから、あまり闘わせたくないのだとか。
その分、少年はその薄い胸をどん、と叩く。

「任せて、イルルゥさん!」

ぼくちゃんと闘いますよ、と。
それはもう、少年は逸っているのだ。

イルルゥ > 「そういうもの、なのかなあ……。ん。わかった。じゃあ、アレフ君のこと、信じるね」

余りに、自分の常識とは離れている。
中々イメージが湧かず、ただ頷くだけになってしまって。
しかし、少年自身のことは、信じられる。
例え上手くいかなかったとしても依頼の遺跡なら自分一人でも依頼を終えられるだろう。

「それと、準備はちゃんとすること。非常食とかちゃんと買った?装備は傷んでない?」

意気込みは感じられるけれど。
不測の事態に備えて準備することは大切だ。
今度は少女の方から、先輩冒険者らしい言葉を。

アレフ > 「ええと…」

問われて少年は、ごそごそと自分のバックパックをいじり始めた。

「松明は買ったし…火打石もあるでしょ。ロープも買いました!それと薬草も補充したし…」

剣も研いできたし、盾も傷んでないし…、とか。
携帯食はいくつか買いましたけど、それでもいいですか、とか。
油の瓶は三個くらいで足りますか、とか。
テーブルの上に買い揃えた物を並べる様子はこれはもう、先生の荷物検査を受ける生徒のようだ。

イルルゥ > 「しっかり勉強してるんだね。……えらい、えらい」

ほとんど誰も居ない食堂のテーブルに広げられる道具たち。
どれもこれも、冒険に必要になるかもしれないものだ。
消耗品であり、これを補充するのを忘れたりあえて補充しなかったりする冒険者も多い。

けれど少年は、何が必要かはしっかりと学んで用意しているようだ。
その様子に、発情も収まってきたからか、自分から手を伸ばして少年の頭を撫で撫で。

「それなら、大丈夫だね。私も用意できてるし、今日はもう遅いから、明日ゆっくり休んで…明後日に馬車を取って出かけよっか」

その日程なら依頼の期限にも間に合うし、と。
少年の身体自体も労わった日程を設定していこう。

アレフ > 「明後日…!!」

具体的な目標ができると、それはもう、ムズムズとするものだ。
それは、武者震いのようなものかもしれない。
冒険そのものは初めてではないけれど。
パーティを組んでの、本格的な冒険だ…!
少なくとも少年には、この小さなパーティが、とてもとてもかけがえのないもので…。

「はいっ」

明後日、という言葉に駆け巡ったいろんな思いから、ふっと我に返って少年は、それはそれは元気に頷いた。

「よ、よろひくおねがいひまふっ!」

と、緊張なのか噛み噛みのあいさつながらに一度立ち上がり、ぺこりとお辞儀してみせる。

イルルゥ > 「ふふ。はい、よろしくおねがいします。
…明日の夜は…きちんと寝ないとだめだよ。寝不足で動きが鈍いってなったら私怒るからねー?」

少女も立ち上がって、ペコリとお辞儀を返して。
今の様子だと、興奮して眠れなさそうだと思ったのか、そんな忠告を。

「じゃあ、これを依頼箱に入れるからサインしよっか。名前はかける?」

受付が居ない時間に依頼を受ける方法としてギルドに登録されている冒険者であれば
依頼用紙に名前を記して専用の箱に入れることで依頼を受ける方法がある。
せっかくだから、少年の名前で受けてあげようと、ささ、と羽ペンを持ってきて

アレフ > 「だ、だいじょうぶですよぅ、もう子供じゃありませんっ」

なんてムキになるのは、十分子供だという自覚があるその裏返し、なのだけれど。きっと少年本人はわかってなくて。

少女が用意してくれた羽ペンを手にすると、思いのほかに流麗な文字でスラスラと、少年は綺麗な筆記体でサインした。

そして、それはそれは丁寧に依頼書を折り畳む。
依頼箱にそっと依頼書を入れると、パンパン、と二度ばかり手を叩いては、何やら拝む仕草まで。

そして…。

「あ、あの…、イ、イルルゥ…さん…?」

何やら、もじもじと、少年は言いたそう。

そしてそっと囁いたのは、こんなおねだりだったのだ。

「あ、明日は…その、………い、一緒にいて、いいですか…?」

冒険前日の、一日。
その一日に、少年がナニを求めているのかは…少女にはもう、わかるだろう。
だって少年からはもう、ニオイがしてくるのだから。

発情した、牡のニオイが…。

イルルゥ > 少年がサインを意外に綺麗な共用文字で書いていくのを見ると自然に笑みが漏れる。
少年と一緒に依頼箱までついていき、しっかりと投函されたことを確認して。
さて、私も馬車の予約とかしないと、なんて思っていたところに…

「………、…もう。……いいよ。別に。どうせ明日は私もゆっくりするつもりだったし」

特に予定はない、と返して。
平静を装いながらも、ローブの内では、既に息は荒く。
今夜、あるいは明日の夜。…眠れないのは、少女の方かもしれなかった。

ご案内:「冒険者ギルド」からアレフさんが去りました。
ご案内:「冒険者ギルド」からイルルゥさんが去りました。