2019/09/29 のログ
ご案内:「ダイラス・酒場宿」にセイラムさんが現れました。
■セイラム > 明日アップルパイをたくさん焼くからおいで、と酒場宿の女将に声を掛けられたのは昨日買出しをしていたときにだった。船に積む前に完熟してしまった林檎は、料理上手で知られている女将のところへ大量に持ち込まれる。この流れは己が知る限りかなり長く続いていて、風物詩めいた楽しみのひとつでもある。
その当日である今日、件の酒場宿を訪ねて扉を潜るなり、予想外の光景を目の当たりにして目を瞬かせることとなる。お茶の時間よりやや早い時刻、酒場として混み合うにはまだ早い時間だというのに一階の酒場には人、人、人。テーブル席は殆どが埋まり、カウンター席もあと数席しか空いていない状態だ。
「……何かあったんですか?」
汚れた食器を両手に抱え、通り掛った店員にそう声を掛ける。『嵐で行方知れずになってた船員たちが実は生きて戻ってきて、彼らとその仲間たちが祝杯をこの酒場であげている』と答えが返ってきた。
■セイラム > 店員を呼び止めたついで、女将さんのアップルパイについても訊いてみれば、嗚呼それならとあっさりと注文を通して貰えたけれども。
「――…時間、掛かるでしょうか……。」
出来れば持ち帰りでと店員に言葉を添え、その姿が奥の厨房へ消えていくのを見送って、ちらりとカウンターに視線を向けて少しばかり迷う。結局は残り少ない席を飲食するでなく埋めて仕舞うのも少々気が引け、戸口近くの壁へと踵を返して壁に背を預けて待つことにする。
潮で嗄れた太い笑い声、あちこちのテーブルでジョッキとジョッキがぶつかり合う音色、誰が持ち込んで弾いているのか調子外れの手風琴が賑々しく店内を彩っている。普段渡り歩いているハイブラゼールとは空気感が異なるけれど、此処もまたダイラスの一面でもある。だが少しばかり、賑やか過ぎる。外に出て待つか思案し掛けたところで、先程の店員が片手に紙袋抱えて己の許に戻ってきてくれた。
■セイラム > これ幸いとばかりに店員に代価を支払い、賑やかな店を出る。片手に持つ紙袋には大人の拳大くらいの大きさのパイがたくさん入っている。波止場か、桟橋か、潮風に当たりながら食べるのも良さそうだ。足取り軽くその場を離れて――…
ご案内:「ダイラス・酒場宿」からセイラムさんが去りました。