2019/09/23 のログ
ご案内:「富裕地区の公園」にクレマンスさんが現れました。
ご案内:「富裕地区の公園」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
■クレマンス > 「そうしていただかなくては困りますわ。ギュンター様のお体はお一人のものではないのですし…」
心配するあまり、まるで身重の妻を気遣うような言葉を吐く。
どんな関係なんだとギョッとする者がいないのは幸いだろう。
色々なしがらみから解き放たれた聖女はともかくとして、王族の嫡男である彼に妙な噂が付いて回っては困る。
「あら…私はギュンター様のお姿もお慕いしておりますよ。
なるべく長く健康でいていただきたいので、もう少し日光に…と申しましたが、
そういったことを抜きにすればお美しいと思います。
でもきっと年々ギュンター様のお姿は成長されていくのでしょうね。
人間は…そういうものですものね。それも楽しみにしています。」
当然それは容姿に惹かれて始まった恋というわけではないのだろうし、明確な好みだなんて考えたこともない。
だが今となってはそういうものは後から付いてくるというのか、中性的な顔立ちも含めての恋心なのだと平然と。
勘違いしないでほしいのは、成長するにつれて男性的になるとしても心が離れるという意味ではないということ。
その時はその時で、違った魅力を持つのだろうことは何となく想像できる。
「そうですね。私もこうして男性と過ごすために外出する経験はありませんでしたから…貴重な時間です。
自由恋愛には縁遠いものと教わっていましたし……」
聖女の表情が柔らかくなる。
穏やかに外の空気を楽しんでいるだけにすぎないが、平凡でのんびりとした時間こそ
恋人と過ごすべき幸福なのだろうことは、こうした経験のない身でもわかる。
だが彼女に限らず、女性というのは誰かに執着すると世俗的になるものだ。
柔らかな表情のまま、むしろもう少し笑みを深めて。
「あぁ、ですが……ギュンター様の夜伽の嗜好につきましては、今夜もう少しおうかがいしなくてはなりませんね」
木々の葉の隙間より爽やかな日差しがこぼれるこの地では、さすがに不相応な話題だと判断したか、今夜と指定しておきつつも不穏な発言。
寝台での彼は今更説明されるべきものもないだろうが、異性の好み、ひいては女性経験などはよくよく聞いてみたいところだ。
「ええ、帰路も当然繋いで帰宅したいところではございますが……ギュンター様。
もうお帰りになるのですか?もっとどこかへエスコートしていただけるのでは?」
口付けた彼の手を放すと、いそいそと軽食の片付けを始める。
公園内を散歩するのも場所を移動するのも良いだろう。
いずれにしてもどのような予定を立てているのかが楽しみなのだから。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「そう心配するな。これでもある程度自分の身分は弁えているつもりだ。早々無茶な事はせぬよ。……身重の女を気遣う様な言葉を投げかけられては敵わぬからな?」
最後の言葉には、少し冗談めいた色が含まれている。
とはいえ、彼女の言う通り、己の身体は一人の者では無い。王族と言う立場。一族の嫡男としての責任。そして、眼前の聖女の恋人として。余り無茶な事はしない様にするか、と内心決意を固めるのだろう。
尤も、己の能力に対する自信と、元来持ち合わせた傲慢さ故に、無茶のハードルが些か人とは異なってしまうのだろうが。
「…当面の目標は、美しいという賛辞を男らしいものへと変える事だろうな。その為には、やはり身体を鍛えなければならないだろうか…。
うむ。人とはそういう生き物故な。それ故に、俺もゆくゆくはお前を見下ろす程背丈も伸びるだろう。いや、伸ばしてみせるとも」
平然と己の容姿に対する賛辞を述べる彼女を直視する事が出来ず、僅かに視線を逸らせて己の華奢な腕を見つめて溜息を一つ。
しかし、何か決意を固めた様に再び彼女と視線を合わせると、今は負けている身長差も追い越してみせると自信ありげに言葉を紡ぐだろう。その様は、年相応の。寧ろ、少し幼ささえ見える様な見栄であったのだが。
「神聖都市は自らに甘く他者に厳しい指導者が見受けられる故な。こうしてお前が楽しんでくれているなら、それだけでもあの都市から連れ出した甲斐があったというものだ」
上層部の腐敗は特段神聖都市に限った訳では無いのだが。
とはいえ、本心から楽しんでくれている様な聖女の表情に此方も穏やかな笑みで応えるだろう。
願わくば、より外の世界を見知って欲しいと思うところではあるのだが、彼女がどの様な世界を求めているのか。それを決めるのは己では無いかと内心苦笑い。
しかし、笑みを深めた彼女に何事かと緩く首を傾げて――
「…おや、聖女殿は随分と世俗的な話題が御好みの様子。応えてやらぬ事も無いが、聞いて面白い話でもあるまいに」
己にとって夜伽や褥に纏わる話というのは、大概敵対する貴族達の話題集めかゴシップの様なもの。彼女もそういう話題を気にするものなのかと、些かズレた感想を抱いていたり。
その真意を今夜理解した時、どんな表情を浮かべる事になるのか。それを見る事が出来るのは、彼女だけなのだろう。
「…確かに、まだ昼餉にも早い時間だしな。近場の公園で終わってしまうのも物足りぬだろう。一応、数か所次の場所を考えてはいるのだが…」
片づけを始めた彼女を眺めて、手際が良いものだと感心しながら少し考え込む。
美術館や劇場といった場所を考えてもいたのだが、彼女が以前見繕っていた場所とは少し違う気がする。
となれば――
「富裕地区の商店を見に行ってみるか?お前も、色々と入用な物があるだろう。或いは、王城を見に行っても良い。あそこの中庭は絶景だからな。一度見る価値はある」
と、次に行く場所を彼女に提案してみる。
勿論、彼女に何か希望があれば喜んで其方を優先するつもりなのだが。
■クレマンス > うっかり身重の体を労わるような言葉を吐いた己に気付き、笑い声混じりに
失礼いたしました、と返す聖女の様子には、もう過剰な心配の色は見えない。
心配はしたが、同時に信頼もしているのだ。
彼の利発さは理解していて、無茶はしないと言うのならそうなのだろう。
大きな怪我も病気もなく、なるべく長く共にいられること以上に望むものはない。
が、その共にいる間に見ることができる成長具合はまだまだ未知数ということで。
「鍛え上げられたお体と、見下ろすほどの背丈ですか……?」
楽しみにしているとは言ったが、いきなりそう言われると物凄い変化を遂げるような気がしてしまう。
今の少女然とした姿から、長身で筋骨隆々の男性になるとしたら―――そんな想像をしたことが丸わかりだろう、顔。
ごまかすように咳払いを軽くした後に。
「……とても頼りになりそうですね。
私、人間についてもっと知っておかなくてはならないと思いましたので…先日文献で調べましたが…
男性は声変わりしたり髭が生えたり喉仏が出たりと、そういった成長を経て大人になるそうですね。
……少し目眩が」
順当に成長すればすらりとした美青年になるのだろう恋人の姿を、よほど極端に想像したらしく。
想像通りに成長したとしても心が離れるわけではないが、理解は追い付かなさそうだ。
だがその姿で今の愛らしい反応を見せてくれるのだとしたら、むしろときめくのではなかろうか。
聖女の立ち直りは早い。
「いいえ、構いません。ギュンター様がどのように成長されようとも。
ただ…今しかできないことはありそうですね。
私たちの背はほとんど同じですから…何でしょう。
御衣を交換する、という程度しか思い浮かびませんが…」
そんな戯れも面白いかもしれないが、胸部以外は恋人の方がスリムに見える。
きつくて入らないということでもあれば、彼以前に己も肉体改造に勤しまねばならなくなるかもしれない。
そう、そんなところも含めて、聖女は世俗的なのだ。
あの都市を出るまでは本人すら自覚していなかったが。
「では今夜はお時間を戴けるのですか?
睡眠時間に言及したばかりだというのに恐縮ですが…眠れなくなる可能性もございますよ…?」
実現すれば尋問さながらになるだろう。
冗談なのか本気なのかわからない聖女の微笑みは、色々な含みがあった。
「それでしたら是非商店を拝見してみたく存じます。
用意された物を使うことが多く…自ら見繕う機会が少なかったものですから」
続くデートコースに浮ついた声を隠しもせず。
朝に比べて軽くなったカゴを持ち、早速と恋人を急かしてしまおう。
教会から出る機会がなかったわけではないが、限られた回数だっただけに自由に出歩く開放感は一際強く。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 笑いながら謝罪の言葉を口にする彼女に、無駄に鷹揚な態度で頷いてみせる。
とはいえ、無茶をしないという決意に偽りはない。具体的に思い付いたのが、戦場の只中で指揮を執るのは控えめにしておこうくらいのものではあったのだが。
「……言っておくが、人の可能性というものを馬鹿にしてはいかんぞ。第一、父上は筋骨隆々では無いが、長身痩躯の男性だ。その血を引いているのであれば、俺だって少なくとも身長については未だ成長の余地があろうというものだ」
流石に、聖女が何を考えて咳払いをしたのかくらいは理解出来た。不機嫌、とは言わずとも拗ねた様な声色で己の成長期を力説するのだろう。
因みに、一族郎党の中で少年だけが妙に背が低い事はホーレルヴァッハ家では家族以外は触れてはいけない話題である。
尚、筋骨隆々という点に関しては弁えているのか彼女の態度を責める様子は無い。諦観とも言えるかも知れない。
「うむ。良く調べたな。私はそういった成長期が少し遅め故、目立った変化は現れていないが、何れはそうなるだろう……おい、大丈夫か?」
眩暈が、と呟く聖女に思わず声をかける。本当に調子が悪い訳では無いだろう、くらいは流石に読めていたが、眩暈を起こす様な理由がとんと掴めなかった為。少年が女心を理解するのは、未だ遠い。
「…御衣の交換?お前が私の服を着るのは似合うだろうが……流石に俺がお前の服を纏っても道化にしかならぬよ。というよりも、お前は自分の服を着た俺の姿を見たいと思うのか?」
何だかんだ彼女に甘い己は、普段なら不機嫌極まりない様な話題でも冗談を交えつつ応えてみせる。
己の衣服は、主に胸元が彼女にはキツイのではないかと思いつつも、男装した彼女の姿にちょっと興味があるのは否定できない。
彼女の衣服を己が着る事に関しては、思考を遮断する事で事なきを得ていたり。
「…随分と凄みが出ているぞ、クレマンス。まあ、時間を取るのは構わんが…」
含みを持った笑みに、流石に僅かな危機感を持つに至る。
その危機感の理由まで察せないのが、少年の改善すべき所なのかもしれない。
「うむ。では、行くとしようか。平民地区程雑多な物は無いが、品質と舶来品に関しては富裕地区の商店は良い物が多い。衣服でも宝飾類でも、お前の好きなものを見て回るとしよう」
と、偉そうに解説しているが、己も富裕地区の商店を頻繁に利用している訳では無い。
必要な物は屋敷の者が買い出しに行くし、王侯貴族ともなれば商人の方から出向いて来るのが当然であるが故。
それ故に、恋人と買い物を楽しむというシチュエーションに期待を抱いているのは己もまた同じ事。
浮ついた様子の彼女をクスリと笑みを零して眺めながらも、彼女を先導する様にゆっくりと歩き出すのだろう。