2019/08/31 のログ
ご案内:「ハイブラゼール・螺旋階段」にセイラムさんが現れました。
セイラム > 爛れた欲望で膨れ上がったハイブラゼールの不夜城は、千の蝋燭に火を燈したよりも明るい光りを纏ってよく晴れた夜空の星を霞ませている。今宵、己が助っ人として借り出されたこの劇場には正規の出入口のほか、非常用にと後から増築されたらしい外階段がある。そのうちのひとつ、鉄製の檻のような螺旋階段の最上部近くにまでわざわざ足を運んだ理由は、此処が思いのほか涼しい夜風に当たれる好い休憩場所だからだ。

「――…景色だけならとても綺麗なんですが、ね」

ベストの内側の隠しを探って燐寸と細い紙巻煙草を取り出し、片手だけで器用に燐寸の先に火を燈す。揺れる小さな炎が安定するのを少しだけ待ってから火を煙草の穂先に移し、消火した燐寸を指の間でパキンと圧し折る。

ご案内:「ハイブラゼール・螺旋階段」にヴァイスさんが現れました。
ヴァイス > 冒険者仲間に連れられてきたハイブラゼール。
大口の仕事で懐が温かいのもあり、仲間付き合いも大事と思い、来たのだが……
あまり性に会う場所ではなかった。

賭け事は元来貧乏性の自分にはどうしても楽しみ切れず。
女性とともに飲むのも、女性に気を使い過ぎて疲れてしまい。

どことなく気疲れして、静かなところを探しながらさまよっていた。
酒に酔った肌に夜風が気持ちいいと思いながら劇場の裏手にあった階段を上っていく。
誰もいないと思っていたそんな場所に一人の銀髪美女がいた。

「失礼、邪魔したかな」

向こうもこちらに気付いているようだし、このまま無言で立ち去ったほうが不審者だろう。
まあこんなバックヤードに近いところにいる人間がそもそも不審者かもしれないが……

軽く声をかけながら、その女性の隣の壁に寄りかかり、使い慣れたキセルを取り出して葉を詰める。

セイラム > 折った燐寸は携帯用灰皿にしまいこんでから紫煙を肺へ深く送り、深い溜め息をふわりと紫煙と共に吐き出していた矢先、ふと下から昇ってくる足音を耳で捉えた。足音の重さからして女性ではなさそうだという推測は、夜に溶け込むような黒を纏う男の姿を見て確信へと変わる。

「いいえ、構いません」

穏やかな声音でそう答え、煙草を指の間に挟み、もう片方の手で空間を示すような仕草をして邪魔などと思って居ないと態度で示そう。彼が隣に並び立てばその大柄さが一層際立つ。取り出した細長い喫煙具の先に彼が葉を詰めるのを見て、ベストの隠しから着火具を取り出すのは最早習性だ。

「――…、よろしければ、どうぞ?」

燐寸を擦って火をつけ、彼の喫煙具の近くにまで火を寄せて。咥え煙草であるから少し不明瞭な発音で、火を差し出す。

ヴァイス > 「ありがたい。ここの従業員さんかな?」

手慣れた様子でマッチを擦るその様子は、そういう仕事をしている人を思わせた。
ありがたく火をつけてもらい、のんびりと煙をくゆらす。
夜も明るい街の隅の暗がり、蛍のように光るマッチが、そのままゆっくりと消えた。

「一応自己紹介しよう。俺はヴァイス。しがない冒険者だ。田舎者なせいかここのにぎやかさが肌に合わなくてな」

吸った煙を再度吐き出す。煙はゆっくりと闇に消えていった。

「しかし、ここから見える景色はきれいだ」

セイラム > 「ええ、今夜は臨時でここへ遣されまして」

今は休憩中です、と冗談ぽく付け加えて。
先に折った燐寸と同じく携帯灰皿へと入れながら、自己紹介をする彼に軽く頷き返す。

「愉しみ方は人それぞれかと。賑やかでない場所も、愉しみ方も、ここには在ります。
――…同感です。欲望の光だとしても、…矢張り綺麗だと感じてしまう。」

ヴァイス > 「そうだな、とてもきれいだ……」

目線はその景色、ではなく、その景色を眺める隣の女性の横顔にくぎ付けになっていた。
透き通るようなその美しさに目が離せないでいた。
さすがハイブラゼールといったところだろうか。女性が美しい。
さきほど席の隣にいた女性が彼女のような人だったらもう少し楽しめたかもしれない、などとくだらないことを考えながら、紫煙をくゆらす。

「あまり突っ込んで聞くのも野暮かもしれないが…… 臨時ということは本業ななんなんだい?」

セイラム > 鉄の檻の向こう、夜の街に向けた侭で紫煙を吐いてから視線をゆるりと引き戻す。
半分ほどになった煙草を指に挟み、彼と視線を合わせて。
身長差から彼をやや見上げる様にして、ふっと柔らかく笑んで。

「ふふ。お目を愉しませることが出来たのでしたら、光栄です」

ごく控えめに笑い声を添え、問われたことに少し考えるように視線を斜め上へと逸らせて。

「あちこち借り出されておりますが、…平穏な日は『月の涙』という娼館に居りますよ。
当館の花をお選びになる間の話し相手として、お口に合う酒をお勧めしたり……、
本来なら貴方の様な方を当館へご案内するのも仕事のうちですが、…今宵の当館は少々賑やかなので。」

貴方のお好みではないかも、と小さく笑いながらそう告げる。

ヴァイス > 「不躾だったね。あまりにきれいだったものだから」

視線を気付かれた気まずさと、その柔らかい笑みに苦笑しながら視線を景色に戻す。
そして、彼女が娼館に所属していると聞き、ある気持ちが我慢できなくなってくるのを感じていた。

「しかし、君の一夜を買いたい。今宵は空いているだろうか」

この女性と一夜を共にしたいという気持ちだ。幸い懐には余裕がある。
手品まがいの小さな魔法で赤い一輪の薔薇を取り出し、差し出しながら、左手でセイラムの腰を抱こうとする。
逃げられたら諦めようと思いながら自分なりにかっこつけて、そう一夜を懇願するのであった。

セイラム > 重ねて褒められて、ありがとうございます、と控えめに笑んで告げる。
ベストの隠しから携帯灰皿を取り出し、吸殻を押し込むその最中に。
一晩を願う声が隣立つ彼から飛び出せば、はた、と動きを止めて。

「――…ふふ、綺麗な薔薇。」

細腰を抱き寄せる腕に逆らうことなく身を委ね、差し出された薔薇は腰を抱かれた侭で受け取ろう。
それにしても、こうして抱き寄せられると改めて相手の体躯の大きさを意識する。
やや無骨な印象を受けていた相手から、まさか赤い薔薇が差し出されるとは思わなくて。
小さく肩を揺らして笑いながら、こちらへ、と彼を促し共に劇場の内側へと姿を消して――…

ヴァイス > そのまま腕に収まってくれた彼女を見てほっとする。
こういうはなやかなところだからと仕込んできたかいがあった。
そのまま壊れ物を扱うように、しかししっかりと腰を抱くと、彼女に促される方向に進んでいく。

「そういえば名前を聞いていなかったような気がするな」

自分ではきりっとした顔をしているつもりだが、実際はうれしくてしょうがない男でしかない顔をしながらそう尋ねつつ、劇場の中へと姿を消していった。

ご案内:「ハイブラゼール・螺旋階段」からセイラムさんが去りました。
ご案内:「ハイブラゼール・螺旋階段」からヴァイスさんが去りました。