2019/07/29 のログ
ご案内:「王城裏庭」にエダさんが現れました。
■エダ > 「ぅわ。冷た──」
王城の敷地内、ほとんど森の中といってよさそうな一角で、小さくそんな声があがった。
声の主は、某貴族家に仕える侍女。今日も今日とてサロンに出席中の「お嬢様」を待つ間、
やってきたこの場所で。肌にまとわりつくような蒸し暑さをひと時しのごうと、小さな噴水に素足を浸しての一言であった。
「──でも、気持ちいい……はぁあ……」
着衣の裾を膝近くまでたくし上げて結び、濡れないように気をつけつつ、噴水の縁に腰を下ろし。
眉尻も目尻も仲良く落として、盛大に気を抜いている。
お嬢様のおともで城に上がる機会も多く、人があまり来ない穴場もよく知っているからこその油断。
背後では脱ぎ捨てた靴が、きちんと草の上に揃えられていた。
■エダ > 立ち仕事で火照った足に、ゆるく循環する水の流れが心地良い。
足指の間に水流を行き渡らせるように爪先を遊ばせて、何度目かの半ば恍惚としたため息を漏らすと
頭上を見上げる。樹々の狭間からのぞく夜空は晴れていて、蝙蝠か梟か知らぬが何かが羽根を打って飛び立つ音がした。
城内の乱痴気騒ぎもこの場所からは遠く、まあ静かなものだ。一番大きな物音といえば噴水の水音程度で。
「──……♫ ……──♪」
だから、水音に紛れるか紛れないか程度の音量で好きな歌を口ずさんでも、誰の迷惑にもならないはずだ。
それは10数年ほど前に流行った恋の歌で、王国に長く住んでいる市井の者なら聞き覚えもあるだろう。
母親がよく歌っているのを聴いているうち、刷り込まれて覚え込んでしまった歌だった。
■エダ > 歌声はいつまで、水音と夏の夜気に紛れていたか──。
ご案内:「王城裏庭」からエダさんが去りました。