2018/12/23 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯/森の中」にぼたんさんが現れました。
ぼたん > 風もない満月の夜。
小高い木々が立ち並ぶ森は、時折夜鳥の鳴き声がする以外、冬の空気と同じくらいしんとしている。

その森の一角、ひときわ背の高い木々に囲われた場所に、朽ちた祠がひとつ。白い石材で造られたそれは月明りに照らされていっそなまめかしく、何かの骨のようにも見える…

そうして、それを前に佇む女の影が一つ。

ぼたん > 女の耳は黒い毛皮に覆われた獣のもので、眦の下がった黒い瞳からは、絶えず黄緑色の光が零れ落ちる。表情はひどく物憂げで、困惑しているようにも見える。
灰色のマントをしっかりと前で合わせていた白い手を、恐る恐る片方だけ前に伸ばして、冷たい、恐らくは以前柱だったであろうヒビだらけの部分に触れる。

「…キミ、かぁ…」

ぼたん > 触れた指でつつとなぞって呟いて、軽くため息を付く。
忘れられて棄てられたのか、何かとの敗北ゆえの仕打ちか…なんにせよ、こうなってしまっているのはひどく、寂しく、気の毒だ…

(――でも)
と言って、自分の身体を捧げるわけにはいかない。まして『他から見繕って』などというのも以ての他だ。
だから…これは間に合わせの手段。

ぼたん > 打ち棄てられた神でも、この類のものはそもそも自然と一体だ。消え去ることなどはなく、『戻り』損ねれば只ひたすらに寂しがって呼びつづける。

―昔の栄光を!日々を!…ひとりに、しないで――

その『彼』『彼女』に、ほんの気晴らしを―――

ぼたん > 柱に触れたまま、いいよ…と囁く。そうして、石の中でぶるり、と震える気配。一瞬、躊躇するような間を置いた後、月の光によく似た灯りが女の指先から、その上へと昇ってくる。
――その頃にはもう、女の眼から意思の光は消えている。瞳からこぼれる光も、段々と月のそれと同じになって―――

ぼたん > 決して強くはない光がその場に一瞬、充満する。
そして収縮するようにふわりと消えた時には――女の姿はそこにはなかった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯/森の中」からぼたんさんが去りました。