2017/01/25 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船乗りの憩い亭」にルキアさんが現れました。
ルキア > 『カレイのフライあがったよ!』

「はーい!」

わいわいがやがやと、酒をのみ、料理を楽しむ客の声の中に威勢のいいオヤジの声が響く。
それに、高い声が返事をして所狭しと大柄な男たちが座る椅子の合間を縫って頭に三角巾と、ワンピースの上にエプロンを纏ったエルフがカウンターへとやってくる。
カウンターに置かれたほかほかと湯気をたて、香ばしい匂いのする大皿をお盆に乗せると一緒にエールのジョッキを二つほど手にもつ。

『無理して零すんじゃねぇぞ!』
「はいっ!だいじょう、ぶです。」

結構な重量になり、バランスをとるのが難しい。
けれど、ここで働くようになって持ち方のこつも掴んできた。
動き始めにすこしよろけたものの、動き出せば姿勢は安定して。

「はい、カレイのフライとエールのおかわりおまたせしましたっ」

店の中だけでは収まりきらない客の一部は、店の外に置かれた木箱や樽をテーブルや椅子代わりにして酒を飲んでいる。
大半が、港で働く船乗りや倉庫番達だ。

ルキア > 破落戸達から逃げ出したあとも、娘はそのまま港湾都市ダイラスに留まっていた。
王都に戻るという選択肢もあったが、戻らなければならない理由もなくなにより、探し物はこのダイラスの方が見つかる可能性が高い気がして。
世話になっていた装飾品店には、手紙を送り王都から離れる事、無事でいることなどを知らせてある。
今は、この『船乗りの憩い亭』で住み込みで仕事をさせてもらっている。
店は決して広いとはいえず、女将と元船乗りの親父さんの二人で経営している料理屋兼酒場は、名前のとおり船乗りたちの憩いの場となっている。
歓楽街のハイブラゼールよりも、仕事帰りの男たち向けの店といったところか。

「チーズの盛り合わせと、ホットワインお待たせしましっっきゃあ?!お、お、お尻を触らないでくださいっ」

『いーじゃねぇか。それよりもっと肉付けろ肉、触り甲斐がないぞ』

皿とホットワインのカップをテーブルに置いた際に、するりと男の手が尻を撫でるのに耳をはね上げて、真っ赤に染めながら悲鳴を上げる。
非難の声も、酔っ払いに更なるセクハラで返されるのにもーっと耳を下げながら、お盆でガードしつつ離れていく。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船乗りの憩い亭」にルヴィエラさんが現れました。
ルヴィエラ > (ローブ姿の男が一人、店の中へと姿を現す
丁度船の出港準備にと出て行く船乗り達の座っていた壁際の席へと
入れ替わる形で着席したなら、ふと、店内へと視線を向けた
――聞き覚えの在る声音、客達のからかう声に応えて、元気に響く其れ
まだまだ、此処からが繁盛だという時間帯に、忙しそうに駆け回る、一人の少女の姿を
のんびりと眺めながら――とりあえず、目の前にうず高く積まれた前の客の残した皿が
回収されて行くのを待とう。)

――――お嬢さん、冷えたワインと海草のサラダ、お願い出来るかな?

(そして、もし少女が近くを通り掛る機会が在るなら
きっと、己から声を掛けて、そんな注文をするだろうか
――ローブのフードを被った儘の己は、口元位しか見えていないだろう
一人の客程度に意識を傾けていられる筈も無いとは思う故に、暫し仕事ぶりを眺める所存か)。

ルキア > 『ルキアちゃん、あんまり無理して重いものもっちゃいけないよ。分けて持っていけばいいからね』

エールの注文に、ジョッキを片手に三つずつ持とうとして、その重さに持つのを諦める。
木製の大きなジョッキに波波とつがれたエールは、大体800ml~900mlひとつ辺り1キロ近く重さがあって流石に無理だった。
それを見かねた女将さんに、声をかけられて苦笑いを浮かべる。
無理に持って落とすこともそうだが、女将の心配はそれ以外にもあった。
服の上からでは、そこまで目立たないがすこし膨らんだ腹部には娘以外の命が宿っている。
それを心配しての言葉だった。

「おまたせしました、残りの品物もすぐにお持ちしますので!」

とりあえず、一つずつ片手に持ってテーブルへとジョッキを運んでいくと、すぐにカウンターへと戻り残りのエールを運ぶ。

「あ、テーブルすぐに片付けますので!」

勘定を終えた男たちがご馳走さん、と言って外へと出て行くのと入れ違いにフード姿の客が入ってきた。
まだ、汚れた皿やジョッキが積まれたそこに座るのに慌てて声をかけると、残りのジョッキを客の元へと運んでいく。
女将が、すみませんねぇと言いながらフードの客のテーブルから食器類を下げていくか。

『ルキアちゃん、テーブル拭いてきてね。』
「はいっ」

女将と入れ違いに、娘がフード姿の客のもとへと台ふきを手に近づいていく。
食べこぼしなどで汚れたテーブルを手早く綺麗にすると、注文の声に顔を上げ。

「はい、ワインと海藻のサラダですね。少々お待ちください。」

どこかで聞いたことのあるような声な気がしたが、はてどこで聞いたのだったか。
記憶を探るが、相手の外見が分からずに記憶が繋がらない。
すこし視線は、記憶を探るのに泳いだあとに注文を復唱してカウンターへと伝えに戻っていく。
すぐに、お盆に白ワインのボトルとグラスを乗せて戻ってくる。

「ワイン、おまたせしました。サラダはすこしだけお待ちください。」

ルヴィエラ > (彼女を最後に見たのは、はて、何時だったか
其れなりに時間が経っただろうかと、殆ど磨耗しかけている時間感覚を呼び起しながら思う
己にとっては然したる時間でも無い、けれど、其の時間は若い彼女の様な存在にとっては
十分過ぎる程に――きっと、自らを取り巻く環境さえも変えるほどに、長い

女将がテーブルの上を片付けて行くのには、軽く礼を告げ
程無くして、己が眺めていた彼女が席へと近付いて来るならば
其の姿を僅かに見上げ、そして、僅かばかり変化を帯びた其の身体を眺めて。)

―――……嗚呼、有難う。 そうしたら、サラダはビネガーでお願い出来るかな?

(先にワインが運ばれて来たなら、例と共に受け取って
それから、遅れてくるらしきサラダへと、注文を一つ追加しては
その際に、そっとフードの端を持ち上げて、其の瞳を彼女へと向け様か
何時だか、御遣いにハイブラゼールを訪れた少女を、迎え入れた其の顔
さて、少女の記憶に残っているかは定かでは無い
あの時、彼女の深奥に掛けられていた記憶封じの術式は
今は如何やら彼女の中には存在しない様子だが
己の記憶が、果たしてどんな扱いと為っているかは判らない故に
もし、彼女が気付かない様子を見せたならば、今は敢えて、其の儘にするだろうけれど)。

ルキア > 「今注文が混み合ってて、お料理は大将が一人で作っているので…。はい、ビネガーでですね。」

王都の装飾品店のお使いで、はじめてハイブラゼールを訪れてから、結構な時間が経過していた。
ワンピースとエプロンに隠された体。
そこには、彼が施した黒い蛇の気配は感じられず代わりに小さな小さな命が宿っている。
ワインのボトルとグラスをテーブルへと置いて、サラダの注文を聞くとカウンターを振り返る。

「サラダ、ビネガーです。」

がやがやと喧騒の中、通る声がオヤジへと届くと『はいよっ』と威勢のいい声が返る。
注文が届いたことに、ほっと小さく吐息を吐き出しながら振り返っていた視線を客の方へと戻すと、フードの端が持ち上げられ紅の瞳と、銀髪、そして整ったその容貌が垣間見える。

「あれ……?――…ルヴィエラさん?」

その整いすぎるほどに、整った容貌に見覚えがあった。
美形のエルフの中で育って、美形を見慣れた己に記憶に残るほどのその容貌。
装飾品店のお使いで訪れたハイブラゼール、その届け先である娼館ファタールの主だ。
商品を届けたことは覚えているが、娼館の中で何があったかまではよく思い出せない。
すこし自信なさげな声が、その名を口にして。

ルヴィエラ > (――彼女に、果たして会わぬ間、何が在ったのかを知る事は叶うまい
唯一つ判るのは、其の身体に宿る、もう一つの命の存在
力強く育つ其の命を、彼女が厭う事無く護って居るのならば
それは、きっと彼女が紛う事無く望み、受け入れたのだろうか
無論、と言うか、矢張り、己には想像する事しか出来ない事だが)

―――……や、元気そうで何よりだ。 久し振りだねぇ。

(――己が名を呼んだ少女に、ふ、と口元に笑みを浮かべて
それから、フードを外して、完全に素顔を晒したなら、片手をひらりと掲げて見せよう
ワインボトルの蓋を掴んでは、ぽん、とコルクを掴んで開けてしまい
其の儘グラスへと自分で注いでは、ゆらりと片手に器を揺らし
改めて少女の顔を見上げたなら――くすりと、また、小さく笑い。)

……ルヴィエラで合っているよ? そう言うキミは…ルキア、で、合っていたよね?

(冗談だ、一度覚えた名前はそう易々と忘れはしない
多少疲労の色は垣間見えるが、其れでも確りと、生きている其の姿を、僥倖だと思いながら
――改めて、互いの名前を、名乗り合おう。 何せ少女の方は少し
己の名前と記憶の方に、自信が無さそうな様子だったから。
本当だったならば、少し付き合わないかとワイングラスを向けてみる所では在る、けれど。
身重の身体に、酒精は宜しく無いと、其処は控えて)。

ルキア > 「はい、お久しぶりです。フードを被ってらしたので、わかりませんでした。」

フードを外せば、男とも女とも取れる中性的な整った容貌が顕となる。
ワインをグラスに注ぐのは、お客にさせるようにと雇ってもらって、仕事を教えられているときに女将から言われた。
そうしなければ、酌をと求められて仕事にならなくなってしまうから、と。
白ワインは、グラスの中で回され店の明かりを透かす。
彼が普段飲んでいるであろうワインのような、上等なものではなくこじんまりとした店にあった、安めのワインだ。

「はい、ルキアです。またお会いできて嬉しいです。」

名前を間違っていなかったのに、ほっとしながらも問われるのに頷いて笑顔を浮かべる。
恙無く…とは全くいかなかったけれど、娘は生きて再び彼の目の前に立っている。

『はい、ヒラメのムニエルと海藻のサラダあがったよ!』

カウンターの奥からオヤジの声が届くと、そちらに視線をやり

「はぁい!ルヴィエラさん、すみません失礼しますね」

申し訳なさそうに頭を下げて、カウンターへと戻ると料理を運ぶ。
彼の注文した海藻のサラダもテーブルへとおかれ、忙しそうに酒場の中をちょこまかと動き回っていることか。
そして、彼がのんびりと店で過ごしたなら、客が多く忙しい時間はすぎて次第に客は少なくなっていくか。
船乗りの客が多く、夜の出航準備に出ていくもの、朝早いため早々に帰っていく者も多い。

『ご苦労様、今日はもうあがっていいよ。お知り合いなんだろ?』

気を利かしてくれた女将さんが、そう言ってくれるのに甘えて娘は再びテーブルへと戻ってきた。