2016/08/23 のログ
■レイカ > まあ、正直なところを言えば、バレバレだった。
おそらく帰り道で何かしらの、夕食の材料を買い込んで、それをひったくられたというところだろう。
自分だって空腹のときは、誰かに助けてほしいときも…ままあることだし。
逸れに、こういうときは”困ったときはお互い様”というものだ。
「いえ…そこまで否定しなくても…。
逸れに、いくらお腹をすかせていたとしても盗みを働くのは、ちゃんと咎めないと…。」
跡で一緒に探すべきだ、と提案した。
勿論、取り返す云々は別問題。大事なのはちゃんと叱ることだと思う。
このまま、手癖の悪い人間になってしまったら、どんどん国が悪くなっていってしまう。
こういうことは、ちゃんと言うべきなのだと、私は思った。
「え……?」
この辺に滞在……。
嗚呼、そういえば彼女には普段は九頭竜山脈のほうにいると説明していた。
それならば彼女に疑問も、尤もな物だろう。
「ええ、少しの間ですけど、こっちでやることが出来てしまったので…。」
食料も、私のものではない。
いま、貧民地区で匿うような形で生活させている、とある子供のためのもの。
さすがに盗みを働かせるわけにはいかないので、こうして食料を届けると約束したわけだ。
■ルイサ > 「…まじめですねぇ。大事なことだとは思いますけど。」
以前もそう、生真面目だと感じる発言は多かった。
自分が特別不真面目だとは自覚していないけれど、当たり障りなく生きることで無事に生活してきた身だから、どうにもその辺りは価値観が違ってくる。
感心、といった風に出てきた言葉はそんな相手に対する心配だったり、諦念だったり、憧れだったり、含めるものはごちゃ混ぜだ。
「組織のお仕事範囲広そうでしたものね。せっかくこっちにいるのなら、…ほら、前ちらっと言いましたけど、お茶でもしながらお話をって思ったんです。この時間じゃあ、開いてるお店は空気が悪そうなところばっかりだろうなぁ。」
博愛精神というのだろうか、彼女はそういったタイプのようでいて、それを褒めると少し影が生まれた記憶がある。
しかし食料が恵まれぬ誰かのもの、とまでは思考が至らなかったらしい。
むしろ、本来いる場所ではないところに滞在し、食材を買い宿かどこかで調理をするのであろうと思っている彼女が疲れやしないかと肩を竦めた。
だからお茶でも飲んで座って――と思ったところで、スカートのポケットの中は食材を買った残りの、たいした金額にもならない小銭だけだということを思い返し、足は進められなかった。
空気が悪いことには目を瞑っても、こんな時間に開いているお店で奢れるほど今は裕福ではない。
ご案内:「王都の片隅」にレイカさんが現れました。
■レイカ > 「……時々堅物、と言われたりもしますけれども…ね。」
いや、半分くらいは自覚しているつもりだった。
どうにも、私は物事を難しく考えたり、融通の聞かないところがあるらしい。
出来る限り国をよくしたいと思っているだけなのだけれども…難しい限りだ。
「あ、いや…その……。今こっちにいるのは、ほとんど私用なので組織は関係ないんです。
この時間だと、空いていても酒場や冒険者がいる場所程度ですし……お茶をするというのは難しいかもしれませんね。」
食料は恵まれないものへ―――という思考は、残念ながら持ち合わせていない。
私にはできることは限られている、せいぜい子供を一人匿う程度でしかないのだ。
飢えている人皆に食料を配ろうというような慈善活動なんかも出来るわけじゃないし、なにより私は聖職者ではない。
でしゃばって、なにをしているのかと咎められ、組織のことが露呈すれば―――楽園が崩壊する。
そんなことだけはさせるわけにはいかなかった。
「……あの、別に気遣いは無用ですので……。」
お茶をするのはいつだって出来る、もうしばらくはおそらくマグメールにいるはずだ。
彼女と会う機会も多いだろうし、必ずお茶をする時間はあるはずだ。
■ルイサ > 「うふふ、損することも多そうですね。」
堅物とまで言ったつもりはなかったけれど、突き詰めればそういう性格なのだろう事実を彼女自身が口にしたことで思わず、笑みがこぼれた。
世の中は損得だけではないとはいえ、綺麗事だけでは生きにくい。
ある意味自分にはなれない存在である相手に興味を持ったり、余計な心配したりというのは、自然なことかもしれない。
だからお茶は今は無理そうだと諭す言葉には隠すこともなく、残念そうに声音を曇らせたのだった。
「じゃあ次に会う時までに美味しいお茶の葉を買っておきます。またお店の開いていない時間に会う可能性、ありますし。…って、食べ物盗られちゃったわたしが言うのも頼りないですよねぇ。」
腕も軽ければ懐も寒い夜。
照れ隠しか、ばつが悪くて、か、頬を掻きながら自嘲するも雰囲気は軽く。
「レイカさんも買い物帰りでお腹がすいたでしょう?そろそろ帰りましょう。今夜は――…わたしが送ります!って言いたいところですけど、足手まといにしかならなさそうなので、手を振って見送るだけにしようかな。」
友人と呼ぶにはこういう辺りが対等ではない気がするが、それでも気兼ねなく友人と呼べる関係にいつかなりたいものだ。
少々馴れ馴れしげにそう提案したなら、彼女が当初進もうとした道を促すように。
■レイカ > 「…………。」
軽く、苦笑するだけにとどめたけれども…彼女の言うとおりだった。
損ばかりの人生だけれども、ささやかな幸せをかみ締めることも何度も出来た。
いろいろとお話をすることもあり、彼女にも明るいものが見られたのは、とても喜ばしいことなのだろう。
私は、軽く肩を竦めて見せながら…彼女の手に、一つだけハムを乗せた。
「空腹は長引かせると、体調を壊すことがあります。よければ、ポトフなどにして食べてください。
私は…小食なので食べ物に困ったことはそんなにないんですよ。」
逸れに、飲食店で働いていたこともある。
だからこそ、彼女のその申し出はとても嬉しかった。
こんな、腐りきってしまった王国だけれども、まだこんなに綺麗な人がいるのだから捨てたものでもないかもしれない。
いつか…ミレーも人間もない場所で、皆が幸せに暮らせればと、乙女チックなことすらも思い浮かんで。
「……そうですね、そのほうがいいと思います。
誰にも言わないでほしいんですが…今、私は貧民地区の奥…廃墟地区という場所にいます。」
治安は最悪、もしも彼女が来れば、ミレー族というだけで蹂躙され、奴隷ギルドにいやおうなく送られるだろう。
人が近寄る場所ではないその場所、私がいまそこにいるという事を告げると…彼女の横を通り過ぎる。
「…平民地区で見かけたら……声をかけます。そのときには、必ず…。」
沢山話をして、たまには私も…気軽に話がしたい。
そんな思いを秘めて、私は貧民地区のほうへと足を勧めていった。
■ルイサ > 「え……、あ…。」
自然な所作で渡されたハムを断ることも出来ないほど呆気にとられた彼女の優しさ。
そこで華麗に押し返すでも、礼をさらりと述べるでも出来ればいいのだろうが、三度目の腹の虫が鳴ったのだからどうにも格好はつかない。
そんな状態のまま、黒い外套に包まれた《友人》が治安の悪い方向へと向かったなら、要らぬ敵を呼ばぬよう、控えめに背に声をかけよう。
「あの…、ありがとうございます。気を付けて!忘れないで、逃げることも。」
私用で滞在している彼女が、なぜそんな治安の悪い場所にいるのか尋ねる時間はない。
先程彼女は真面目で堅物と話したばかりだ。
何か起きた時に自分の身を優先するとは思えなかった。
だから、別れ際伝えるべき言葉だけを伝えて、あとは宣言通り手を振って見送ることにする。
絶対また、会えるのだからその日まで無事でいてもらわなくては困る。
そんな思いを込めて、次の依頼によるお金が手に入ったらまずは茶葉を買いに行くとしよう。
今夜はとりあえず、お腹いっぱいポトフが食べられることに感謝しながら、黒い背が闇に紛れるのを確認したら、自分も自宅へと―――。
ご案内:「王都の片隅」からルイサさんが去りました。
ご案内:「王都の片隅」からレイカさんが去りました。