2016/08/22 のログ
ご案内:「王都の片隅」にルイサさんが現れました。
ルイサ > 所用を済ませていたら帰りが遅くなってしまった。
市場で買った野菜等を入れた袋を片手に提げて通りを歩く女性は遠くの空を見る。―――そんな瞬間だった。

突然後ろから来た何者かが力任せに袋を引ったくり、誰何する間もなく駆けていくと霧のように消えていった。
その間、つんのめった女性は体勢を立て直す以外出来なくて、犯人が消えた辺りを見つめて数秒間の空白。

「……ッ、びっくりした…。」

ここはスラムではないからと、警戒心薄かったのは否めない。
ちらっとしか見えなかったが背格好は少年か少女といったもので、纏う布はボロかった。
自分もけっして裕福ではないが怪我をさせられたわけでもなく、怒りは湧いてこない。
ただ………

「今晩のごはんどうしよう…。」

ご案内:「王都の片隅」にレイカさんが現れました。
レイカ > 「……………きゃっ……!」

王都の通りで、少しだけ買い物をしてからとある場所へ向かっている最中。
パンやハム、飲み物なんかを入れた袋を提げて歩いていくと、前からボロを纏った何かが横切っていった。
ものすごい勢いで走っていったために、振り返っても既に夜の闇に紛れ姿が見えなくなっていた。
ぶつかることもなかったし、脇に何かをかかえていたような気もしたけど…なんだったんだろうか。

「……………?」

帰り道を急いでいる子供、という風には見えなかったし…。
どこかへお使いという風にしては急ぎすぎている。
なんだったのだろうかと首をかしげながら、私は通りから少し裏路地に入る道へと差し掛かる。
かつん、とブーツの音を鳴らせて通りを曲がった先にいた、闇に紛れる人物。

「……っ………!」

思わず、少しだけ身構えてしまった。

ルイサ > 深刻というほどでもないのだ。
たしかに今夜食べるためにいくらか肉を買ったし、メニューも考えての買い出しだった。
かといって家に帰れば野菜の使いかけくらいあるのだし、一度ひったくられたって餓死するレベルの生活ではない。
けれど――― がっかりするくらいは許してほしい。

うなだれて前髪が目許に影を作る。
相手が見れば以前顔見知りの――と気付けるものかも知れないが、そんな顔の角度でははたしてどうか。
さっきまで腕にかかっていた荷物があっという間に奪われて、重みがないのがなんとも寂しく空しい。
隠れた表情もどこかぽかんと穴が開いたような間抜けたもので、自分の姿に驚いたのだろうか、息を呑んだ相手の顔まで見る余裕はまだ戻っていなかった。
しかしとりあえず、こう言っておかなくてはなるまい。

「あ……ごめんなさい。」

身を少し引いて、進路を邪魔しないようにと壁に寄る。
ぐぅ……と、お腹の音が鳴ったのはその動作とほぼ同時。

レイカ > 「あ……いえ。」

謝られてしまった。
どうやら何かしらの、危険な組織の人間というわけではなさそうだ。
どこか、随分と落ち込んでいるようにも見えたし、手ぶらだというのが気になるけども…。
いや、こんなときにまでお人よしの病気を発祥しなくてもいいだろう。
いまは、”あの子”に食事を届けなければ。

そんなことを思って、譲ってもらった道を行こうとしたら―――。

「……………。」

傍を通ろうとしたときに聞こえてきた、その音。
こういう静かなところだと、非常によく響くだろうその音。
私にも何度か経験がある、お腹がすいてそれを主張してくる腹の虫の音。
思わず足を止めて、驚きフードの奥の瞳を、彼女へと向けて―――。

「…あれ………ルイサさん?」

至近距離ならば、顔の輪郭や声でわかる。
一度、街道であったことのあるミレー族の少女その人であった。

ルイサ > バッドタイミングで腹の音を聞かれてしまったのは恥ずかしかったが、聞き覚えのある声――なにより自分の名を呼ばれたことで顔を上げた先に見た貌に表情が和らいだ。
フードでその殆どは暗がりとなっているものの、知っている顔ならば顔立ちの欠片が見えればそれだけで分かる。

「レイカさん!…あぁ、奇遇。………。」

思わぬ再会は嬉しいし、今度会ったらこんなことを聞いてみて話してみようなんて考えた時間もあったけれど、唐突すぎた。
なにせ一旦落ち込んだ気力が話してみたい話題の記憶をすっ飛ばして、言葉に詰まってしまった。
ただ、彼女の腕には先程まで自分も持っていた袋と似たようなものがあり、無意識に視線をやってしまう。
気を抜けばまた、腹の虫が疼きそうだ。

「気を付けてください。この辺も…、いえ、この時間だから仕方ないんですけど、そういう荷物を狙ってる者がいるみたいです。」

情けなくて、自分も今さっきその被害者になりましたとは言えない。
代わりに、はふ、とため息をついた。

レイカ > 最近、私はマグメールにいることが多くなっていた。
いや、確かに組織に組しているのは今でも変わらないし、抜けるつもりも更々ない。
少しだけ、マグメールでいろいろと調べていることがあるのでここにいるというだけだ。

偶然というのは、なかなかに唐突におきるというものだ。
まさかここで、ルイサさんと再会できるとは思ってもいなかった。
いや、マグメールの平民地区でお店をしているという話だったから、会う確率はないほうがおかしいだろう。
少しばかり落ち込んでいたのは、腹を空かせているから…というわけではなさそうだ。

「荷物を狙って…引ったくりですか?」

もしかして、さっき横切った子供のような影…。
アレが抱えているものは盗んだもので、逃げる途中だったとしたら、アレだけ急ぐのは納得がいく。
なるほど、そして彼女のため息を察するに―――。

「…油断、してしまったという事ですか……。
あの、ハムとかそういうのを食べられるんでしたら……。」

私は、袋の中を開けて差し出した。
中には1日分の食料を入れてある、自分用というわけではないけれども…。
嗚呼、結局いつもの病気が発祥してしまったか…。

ルイサ > 発言といい、はたから見ればバレバレだったのかもしれない、今さっき起きた出来事。
しかし自分としてはそういうつもりではなかったのだから、彼女が全てを察したどころか食料を差し出してくれたことには驚き隠せず、口を丸く開けてしまった。

―――気が抜けた。また腹の虫が細く長く、鳴いた。

「…いえ。いえいえいえっ、いただけませんっ。大丈夫です。…まぁ、ひったくり犯もお腹がすいてたんでしょうし、ほどこしをしたと思えば…。」

出会いは偶然とはいえ、それ以上でもそれ以下でもないはずなのに相手はなにかと優しく接してくれる。
ついついそれに甘えて今だって、ハムを受け取りそうになったもので慌てて首を振ればポニーテールの黒髪も激しく揺れた。
自分の言葉で自分を慰めつつ、腹の虫を黙らせるべく、話題を少しずつずらしていこうと試みる。

「レイカさん、今はこの辺に滞在されてるんですか?たしか普段は――…」

九頭竜山脈の麓と記憶していた気がする。
食料を買っているところからして、店で食事を済ませる風でもなく、一つの疑問として。