2016/04/05 のログ
■スヴェン > 額の少し上、髪の生え際あたりに触れればちくり、と痛む
出血の量に比べれば思いの外、傷は浅く縫う程でもない
これなら、と髪を結んだ革紐を取り、ざぶん、とそのまま頭から湖に浸かり、汚れを落としていく
張り付く髪をかき上げる、ふう、と息を吐きながら湖から上がれば、二の腕に出来た大きめの傷に視線を向け、
ここだけ縫っておけば平気か、と下着を履き、シャツで軽く身体を拭きズボンに脚を通せば、木陰に腰を下ろして、
糸と針で自分で傷を縫い始める…
「ん…っ、くそっ…」
利き腕に受けた傷のせいもあって縫いづらい
痛みに小さく唸り声を零しつつ、少しずつ塗っていき
ご案内:「湖」にヘリオトロープさんが現れました。
■ヘリオトロープ > 己に託された書状は本当に遣い程度の物で、いくさばに近付く事はあれど、
一定の安全を保証された位置迄の遣り取り。
書記官に親戚宛の書状を手渡した後、翻す馬上から離れた戦場を見遣る。
風にのり流れる鉄の香りに、視界が揺らいで、
咳込みたくなる衝動を飲み込むと、息の荒らぐ愛馬の首筋を撫ぜた。
「無理に駆けさせて御免なさい、――水場、は…」
必要とされるより、荒い扱いをした自覚はある故に
眉尻を下げてかける声は労わりを含んで、弱い。
言葉に答えるように、自ら鼻面を向ける相手に任せて道を逸れると、
鞍から降りて手綱を引いて歩く先、開けた景色に目を細めた。
大きな獣が水を飲む姿を見付けてゆっくりと歩み寄ると、
木陰の座る人影に気付いて息を詰めた。
傍らの馬へと縋るように、手綱を引き寄せつつ暫く見詰めた後で口開き、
「あの、…何か、お手伝いできることはありまして。」
少しばかり、掠れた声で。
■スヴェン > 近づく馬蹄をいち早く察知したのは愛馬だった
王国軍の宿営地の傍とはいえ、戦場である…万が一、ということが無いではない
いち早く、接近してくる何かに気がつく愛馬の主人といえば、戦場での高ぶりは冷め、幾らか気が緩んでいたか
傷口を縫合することに意識を向けていた…手慣れた傷の手当も利き手以外だと酷い有様であった
此方に近づく音に気が付いた時には既に遅く、マント姿が馬を曳きながらこちらへやってくるのへ視線を向ければ、
まず第一に部下の誰かと思ったが背格好に憶えがなく、正規軍の早馬かとも思ったがそれにしては小柄で、
軍装でもなかったから首を傾げた
―――女か。
と彼女の掠れた声に眼を丸くすれば、隠し持っていたナイフに伸びかかった手が止まり
「…お嬢さんがあまりこんな所をウロウロするもんじゃない…
―――と、言いたい所だが、この際、助かった。傷を縫ったことはあるか?」
良い仕立ての衣服に馬を扱うことが出来る育ちの良さ
どこぞの貴族の生まれであろう、と予想しつつも、なぜ、そんな人物がこんな場所にいるかは見当もつかないが
縫いかけの二の腕を見せればどうだ?とでも言いたげな視線を向けた
■ヘリオトロープ > 先程とは比べ物にならない濃密な赤の臭気がした。
水の清らな匂いでも薄め切れはせず、詰まり、
現在進行形で流れ出て居るのだと眼で確認するよりも先に感知しての声掛け。
怯えの色は隠せず、感じ取った此方側の小振りな馬が身を摺り寄せる。
大丈夫だと、獣の毛並みを撫ぜ、
「遣いでしたの。
いいえ。――でも、…そうは申していられないでしょう?」
こんな時に役立つ技術は無かったけれど、承知の上で声を掛けたのだと逆接を繋げる。
逃れるのなら生命線になるだろう手綱を手から解くと湖へと愛馬を放つ。
気が急く様に駆け出すのは、猛る空気を残すこの周辺に
野生が警戒を抱かせるのかもしれない。
見送る間も無く、傍らへと跪くと針を求めて手を差し出した。
見事に裂けた傷痕、肉の覗き見える其処に震える唇を食み、
■スヴェン > 彼女の馬が怯えるように落ち着きなく彼女に身を寄せれば、申し訳なさげに瞳が揺蕩う
馬も、彼女も怖がらせるのは本意ではない
傷の手当の最中でもなければ、遠乗りにでも参りませんか?と口説き文句の1つもかけていたことであろう
「それは、ご苦労様なことで―――
だが、娘さんを戦場手前までとはいえ、使いに出すとは親の顔が見てみたいな…」
差し出される彼女の手に針と糸を任せれば、頼む、と一言
彼女の口ぶりは随分と慌てているように聞こえるが、この程度の傷、日常茶飯事であったから気楽なものである
フードの奥の紫色の眼差しを眺めながら、痛くしないでくれよ?なんて軽口を叩けば、突然、彼女が傷口に
唇を宛てがうものだから、こちらは慌ててしまった
「―――まてっ!そんな事をするもんじゃ…っ!」
ちりり、と走る痛みと微かに唇から伝わる体温に小さく呼気が漏れた
■ヘリオトロープ > 血に濡れた疵口に唇を寄せると、傷に障らない程度に
気を使い乍ら触れるか触れぬかの接触をさせ、
青年の慌てた様子に彼の血液に濡れた唇を指先で拭うと首を傾けた。
「おまじないです。…こどもの頃、なさいませんでした?」
痛くして欲しく無いのだと、この傷を受けて日常事にしている人が
子供の様に軽口を利く物だからおかしそうに笑うと、
下手な力や震えが抜けた心地。
或いは記憶違いで、その呪いは額にする物だったかもしれなかったし、
或いは処置の終わった後に宥める物だったかもしれないけれど。
刺繍位にしか扱った事の無い針を束の間見詰めると、妙に慎重に一刺し、一刺し。
加減が判らず時折相手へと痛むかを問いながら針を進め、
「両親に紹介するには貴方が、
とても運のわるいことにならなければなりませんから、ちょっとお勧めしたくありません。」
集中と話の中身を追い駆けてか、柔かい弧を描いていた眉根が歪む。
折角頑張っているのにと、呟ける程度には終盤に近付き
■スヴェン > ほんの一瞬、触れたか触れないか
けろり、とした様子でおまじない、と口にする彼女を物を知らぬ籠の中の小鳥なのか、と目を丸くする
「唾つけとけってんなら、自分でやるもんだけど…
他人されるってのは聞いたこと無いまじないだな…」
自分の軽口に彼女の怯えや力みが消えれば、ホッと安心した
これから傷口を任せよう、という相手の指先が震えていたらこちらも気が気ではない
彼女の指先が一刺し、一刺し、慎重に傷口を塗っていくのだが、その都度こちらへ視線を向けられれば苦笑を浮かべ
「大丈夫、お嬢さんも好いた男へ刺繍なんかを送るだろ?
あれと同じ要領でやればいい、いっそハンカチか何かを縫ってるんだと思ってくれ…」
そう断り、ぼんやりと彼女が傷口を縫合する指先を眺める
痛まぬ訳では決して無いが自分でやるよりは云倍もマシである
「―――俺も、貴族のアレやコレやに巻き込まれたくはねえなあ
運が落ちるってのは良くない…」
傷口に集中する彼女を邪魔するのも悪い、と思い視線を愛馬に向けなんとなく、水を飲む姿を眺めた
す、と湖から吹く風に次第に薄れていく血の残り香
傷口の縫合が済めば、彼女に視線を向けて
「迷惑ついでにもう1つ―――
戦場から何一つ功なく戻った傭兵を慰めてはくれないか?」
何も、娼婦のようにしろってんじゃない―――と
続ければ、彼女の腕を掴もうと伸ばし抱き寄せようとする
強引に組み敷く、とかそういうんではなくただ単に、彼女の体温を求めてのことで
■ヘリオトロープ > 「あの、……唾液で傷が治るんですの?」
――其の遣り取りの中で一点気に掛かったのが其れ。
呪いとして至極控え目に触れたけれど、もっと付すべきだったのかと、
暫しまともに受け止めて検討した。
結局は生々しい傷其の物を矢張り彼是と弄くるのは良く無い気がして困惑し。
己から声を掛け、遣らねばならないと気負った物の、
如何にもたどたどしい指使い。時折血が滲み出すのを、
髪を結わえていたリボンを解くと布巾代わりに用いて吸取り、疵口を明らかにし乍ら。
「布と皮膚はちがいます…。」
気遣いは受け止めるが無茶を言うと、逃げはせぬも泣き言はある。
当り前を殊更重い事の様にして告げると漸く傷を縫い終える頃には指先から、
衣服の袖迄彼の血が飛んでいた。
言葉足らずが、少々誤解を呼んでいる事に気付いたが、
緊張が解けてみれば其の誤解の方が良いと、口許を綻ばせ
「――あ、…」
緊張の解けたついでに行き過ぎた弛緩。
腕を引き寄せられれば、バランスを崩して彼の体に縋った。
――慰める、と呟けば外套で掌を拭ってから、そうっと相手の頭部を撫ぜにいこうと
■スヴェン > 「さあ?ただ、唾液で生き返ったヤツなんて見たことはないな」
気休めみたいなものだろう、と笑い飛ばす
ちくちく、と縫合されていく傷口…普段であれば、仲間内で行ったりするのだが、出会ったばかりの彼女に
こうしろ、ああしろ、と口をだす気にもならずただただ、彼女に任せる…彼女がリボンを解いた時には、
それを制止しようとしたが、結局、口を挟むことは出来ず、血に濡れた袖に気がつけば申し訳なく思った
「そうだな…まあ、気構えの話
ハンカチはちょっとばかり間違って縫ったって怒ったりはせんだろ?」
へらり、と笑い横から上手い、上手い、と軽口を飛ばす
あまり邪魔するのも悪い、と思ったからそれきり黙ってしまったが―――
「…ようやく人心地ついた…」
彼女の衣服越しの体温を感じれば、狂乱の戦場に昂ぶり、生還の安堵に冷えた身体がようやく人並みに高くなる感覚
彼女が頭を撫でれば水に濡れしっとりとした髪の感覚を伝えるだろう
ことん、と額を控えめに彼女の胸元へ預ければ抱き寄せた腕を彼女の背中に回しその体温をより求めようとした
■ヘリオトロープ > 「――もう、余り笑うと傷に障りますよ。」
真剣に考えて仕舞ったのが気恥ずかしく、笑い飛ばす声には誤魔化しを含んだ諌めの言葉。
拙い乍らも縫合を終えれば、其の儘リボンを包帯代わりに仮止めし、少し強めに巻き付けて行く。
他に丁度良く扱えそうな布が無いので自明とばかり拘りも無く。
「…ハンカチは文句を言わないかもしれませんけど、
引き攣らせて仕舞った方は気に為る物です、ずっと。」
軽口にはほんのりとはにかみに耳を染め乍ら、
跡が残らなければ良いがと、傷痕を気にした様子見せた。
然程傷を気にした様子の無い豪放さを見せる青年も、
不自由である事は間違い無かろうと気遣わしげに。
思考の寸断。傾くも慌てる間も無く、引き寄せられ支えられる身体。
背に廻る腕に逆らわず濡れた髪を撫でて行くと、胸に伏せる仕種と小さく響いた呟きに、
柔かく頭部を抱きこんだ。囁く声を、やわく耳元に忍ばせ、
「…お帰りなさい。よく頑張りましたね。」
■スヴェン > 「ああ、すまない、控える…」
雑談みたいなものだと思っていたが、思いの外、彼女は真剣に考えていた気配を声音に感じれば、
諌める声に従い押し黙ってみせる…のだが、彼女の反応が面白く噛み殺したような笑い声が漏れる
ギュッ、と強めにリボンを巻きつけられれば、痛かった、僅かに身じろぎし笑い声も収まった
「…気にしなくていいさ、どうせ行きずりのハンカチじゃないか
家に帰って床に就いて朝起きれば、綺麗サッパリ忘れちまいな」
傷痕を気にする様子に、ここにも、ここにも、と自分の身体に残された傷痕を指先で指し示せば、
縫った奴もいちいち覚えちゃいないだろうさ、と笑ってみせる
ふわり、と彼女の腕が寄せた頭を優しく抱いた
微かに香る女の匂いが安息をもたらすのは間違いないのだが、戦場の昂りの残り香みたいなものが
僅かばかり燻っていたから、これは拙い…と苦笑する
「―――頑張った、だけでは食っていけないのが悲しい所、だ、が、なっ!」
ぐ、と彼女の背中に回した手に力が篭もると、そのまま、彼女を抱いたまま立ち上がり
彼女からそろり、と身を離すと落ちていたシャツを拾い上げた
「助かったよ。もうしばらくお嬢さんの腕の中に居たかったが…
男というのはそういうわけにもいかんのさ、戦場帰りだと尚更な」
笑いながらコートも掴みあげ、彼女の愛馬に歩み寄れば驚かせて悪かった、と首の辺りを乱雑に撫でてやる
一頻り、彼女の愛馬への謝罪をすませば彼女に振り向きながらコートの前を合わせ
「ここいらも危ない…お屋敷まで、とはいかないが安全な場所まで送ろう。えー…、と恩人の名前をお伺いしても?
俺はスヴェン、しがない傭兵さ」
自己紹介をすれば、彼女の返事をまたず己の馬に近づき手綱を取ると労うように撫でてやり
■ヘリオトロープ > 「――…」
距離の近さ故笑われれば、押し殺して居ても気付いて仕舞う。
恨めし気な視線を向けたいのは山々だが、其れも墓穴を掘り続けるに似ていると、
感覚ででも判断出来たのは、上出来だったのかもしれない。
素知らぬ振りをしているのに、精一杯。
傷痕を見れば、相手の生きてきた道と理解はするものの、
微かに眉尻を下げて何と感想を抱いて良いのか迷う顔。
少しの間の静かな時間。
湖畔を通り過ぎる風が、周囲のいくさばの匂いを割って流れていく。
彼の手に力が入るのに腕を緩めて眸を瞬くと、
抱いて立たせる仕種にきゃ、と小さく声が漏れた。
「何かの、お役に立てたなら良かった。ひとつ、目標ができましたわ。」
疵口の縫合の教えを受けたいなぞと云えば、揃って叱られそうな、
粗確実だろう予感を胸に抱き乍らも表情を緩め、微笑んだ。
「ええ。スヴェン。…あのね、覚えています。
ちゃんと覚えていますから、怪我が落着くまでは無茶をなさらないで。
縫い跡が引き攣らないか心配していた者がいるのを、思い出してくださいね。」
行きずりのハンカチと称す相手の名を反復がてら唇に乗せると、
彼が撫ぜた己の愛馬へと歩み寄り、其の背へと慣れた様子で跨った。
「ヘリオトロープと申しますわ。…しがない…しがない何かしら。」
擬えて自称してみようとすれど失敗しつつ、送るという彼の言葉に甘える事にして、
何処ぞ危害の及ばぬ場所まで共に馬を走らせ――
■スヴェン > 「目標…?なんだか判らないが、まあ好きにしたらいいさ」
貴族らしいお嬢様が行きずりのハンカチの傷口を縫って目標が出来たらしい
きっともう少し裁縫の腕を上げようだとか、その辺りだろう、とあまり深くは追求しない
未だ湿り気のある髪を革紐で結わえ直せば、馬の背に跨がってみる。少しくらい馬を走らせても傷に障りはないだろう
「そうしたい所だが、そういう訳にもいかないのが戦場ってもんだ。飯の種にしているのなら尚の事…
恩人を早々忘れはしないさ、ヘリオトロープ…リオと呼んでもよろしいか?」
良い身なりに育ちの良さを感じる言葉遣い
見ず知らずの兵士の傷の治療を手伝ってくれた性根…
しがない、もないだろう?と笑みを浮かべれば愛馬の脇腹を軽く蹴り―――
「では、参りましょうか?」
騎士にでもなったつもりで少しばかり気取った口調で告げれば馬を歩かせ始めるのだった―――
ご案内:「湖」からスヴェンさんが去りました。
ご案内:「湖」からヘリオトロープさんが去りました。