2016/02/03 のログ
ご案内:「地下図書院」にヴァイルさんが現れました。
ご案内:「地下図書院」にツァリエルさんが現れました。
■ヴァイル > 夕過ぎ。
ヴァイルは王城に忍び込んで、大した説明もせずに密かにツァリエルを連れ出し、
簡単に支度をすると、マグメールの地下に広がる迷宮――地下図書院と呼ばれる場所に訪れていた。
単に探索を行うだけならヴァイル一人でも何も問題はないのだが、
ツァリエルにしかできない役目がある、という話だった。
仮にもダンジョンに潜るというのにヴァイルの装いは、普段のものに
マントを羽織らせただけという軽装のものだった。
手にはランタンを携えている。夜目のきかないツァリエルのためのものだろう。
「おれから離れるなよ」
背中にそう声をかけて石造りの通路を歩む。
浅層のおおよその構造や罠の位置は知り尽くしているらしく、ヴァイルの足取りに迷いはない。
遠くでは警備用ゴーレムの規則正しい足音が響いている。
■ツァリエル > 突如現れたヴァイルに驚くも城の外に連れ出されると聞いて
慌ててよそ行きの簡素な服に着替えて相手の目的の場所まで連れ立っていく。
ついた場所がこれまで縁もゆかりもなかった地下の遺跡であったことにこれまた驚いた。
もの珍しそうにあたりをまじまじと見つめる。
ヴァイルから離れるなよと声を掛けられれば必死に首を縦に振って
そっと彼のマントの端を掴んで恐る恐る後ろを歩く。
遠くから何者かの足音や駆動音が聞こえればいちいちひっ、と青ざめて息を殺す。
そもそもこんな場所はならず者や向う見ずな冒険者が出入りする場所でただの一修道士であったツァリエルにはなんら関係のない場所だ。
どうしてヴァイルがそこに連れてきたのかはわからないがどうやら相手は随分とこの手の場所に慣れているらしい。
「ヴァイルさん、この奥に行ってどうするの?」
不安をにじませながら声を潜めてそう尋ねる。
■ヴァイル > 「隠し扉を見つけたんだが、調べてみるに
どうやら王家の血の者に反応する仕掛けらしい。
姿は真似られてもその本質までは同じにはなれんからな、おれは」
重い駆動音が近づいてくる。
ツァリエルの手を引いて書架の影に二人して姿を隠す。
すぐ近くを巡回するゴーレムが通り過ぎ、離れていった。
掴んだ手を緩める。
(壊してやってもよかったが)
足手まといを連れている以上軽率な真似はできない。
「どんな宝物が隠されているかは知らんが、
王族縁の品物なら国をひっくり返せる――とは言わずとも
何かしらの助けになるには違いない」
ツァリエルを使って王権を獲得させる、というのはヴァイルの用いる手段の一つにすぎない。
マグメールに多くある迷宮の探索もヴァイルにとっては重要な仕事であった。
「魔物やゴーレムも多く蔓延っているが、罠に気をつけろ」
などと言っている間にも、ツァリエルの目の前の書架から、本が一冊ひとりでに、
珊瑚色の表紙を上にして床に転がり落ちた。
いかにも手にとって欲しそうに、きらきらと暗がりの中で古書とは思えぬ輝きを見せた。
■ツァリエル > 「王家の人しか開けられない扉……?何を隠したんだろう……」
ヴァイルの言葉に独り言のようにつぶやく。
こんなところに隠すものなのだからなにか大事なものであることは確かだろうが……
もしもそのすごい宝物を使ってヴァイルが邪な企みをもっているのならば出来る限り穏便な方向にもっていかねばならない。
罠に気をつけろという忠告に頷くも、その途中で本が一冊ばさりと目の前に落ちてきて気をとられる。
綺麗な珊瑚の色をしたその表紙に思わず目を奪われて手に取って開いてみようとする。
■ヴァイル > 「さぁな。
一帯を焦土に変える核熱の呪文書か……
はたまた、叩いた人間の心を操る魔杖か。
何が出てくるものか楽しみだな――」
言葉の途中でツァリエルを向けば、まさにツァリエルが本を手に取っていたところだった。
ツァリエルが頁を覗けば、不思議な文字の群れと四足の獣の絵が目に飛び込む。
解読することはできなかったが、ツァリエルは自分の中で何かが疼き、急激に膨らんでいくのを感じるだろう。
読めば読むほどにはちきれんばかりの力を流し込み、理性を奪い、
野性の暴力性と欲望を解放する呪いの書であった。
最後には心も身体も文字通りの獣と化してしまうだろう。
「ええい、言ったそばから!」
叫び、強引にツァリエルの手から呪いの書を叩き落とそうとする。
■ツァリエル > 開いたページから到底理解することが出来ないような文字が頭の中に直接流れ込んでくる。
ヴァイルがツァリエルの手から本を叩き落とそうとしたその瞬間、ツァリエル自身から本をぽろりと取り落として手放した。
そしてそのままがくりとその場に蹲る。
いや、四つん這いになって唸りだした。
下から見上げる様にヴァイルを見るとぼんやりとした目が彼の顔を見つめ
「わんっ!」
と元気よく犬のような吠え声を叫び、相手にとびついてのしかかろうとする。
運よくヴァイルに飛びつければ、相手の顔をぺろぺろと舌で舐めまわし鼻先でしきりに匂いを嗅ぎまくるだろう。
まるで人懐こい子犬がしっぽをちぎれんばかりに振っているかのように。
そこにはおとなしい修道士の面影も高貴な血筋である印象もないだろう。
■ヴァイル > 呪いの書に不用意に目を通してしまえば一瞬にして書の奴隷と化してしまってもおかしくない。
この罠によって同士討ちで全滅する冒険者パーティは後を絶たないのだ。
身構えていたがすぐさま襲い掛かってくる様子はない――
と思いきや、まるで犬になりきった様子のツァリエルがじゃれついてきた。
「……これがきさまの欲望なのか?」
座り込んで、呆れたような無表情でツァリエルのされるがままとなる。
呑気にも感じるが、周囲に他に脅威となりそうな気配もない。
「ならしばらくそのままでいるがいい。
なんなら首輪でもはめてやろうか」
ツァリエルを軽く頭を撫でてやりながら観察して、呪いの度合いを推し量ろうとする。
■ツァリエル > 頭を撫でられれば心地よさそうに鼻を鳴らす。
飼われたての犬が主人に褒められて嬉しそうに甘える様に。
相手がちっとも抵抗を示さないのならば、そのままふんふんと匂いを嗅ぎまわり
相手の素肌が見える場所をくまなく舌で舐めとろうとする。
やがて、一通り上半身を舐めまわし終えれば、ヴァイルの衣服のすそに気が付いて鼻を突っ込みそこも舐めようとする。
腹のあたりや腰のあたり、はては下半身の大事な部分までためらうことなく鼻先を押し当て、獣じみた荒く熱っぽい息をその冷たい肌に吹き付ける。
やがて両手、いや両前足でヴァイルを組み敷くと衣服を足と口で引きはがそうと乱暴に扱い始めた。
■ヴァイル > 袖から覗く白い手首や首筋を舐められるまでは薄笑いのうちに許容していたが、
さすがに組み敷かれ、衣服が乱れるとまでとなるとそうもいかなかったらしい。
思いの外に力が強い。呪いの影響だろうか。
「せめてここに来た目的を果たすまでは待て、駄犬」
静かに窘めるが人語が今のツァリエルにどれほど通じるかは怪しい。
慌てた様子もなくツァリエルを振りほどこうとする。
怪我をさせないように注意を払っているからか、大した力は篭っていない。
■ツァリエル > ヴァイルが自分をやんわりと押しとどめれば不平そうな吠え声を立てるもしぶしぶと上からは降りた。
彼の横に四足で座り、まるきり犬のように舌を出してはっはっと次の命令を待つ。
よくよく確かめればツァリエルの耳が犬のたれ耳になり小さいながらいつのまにか細い白金の尾が伸びて揺れていた。
姿勢もより犬のように、だがまだ完全にはなりきらずどこか人と犬のあわいに立って不格好な体つきになっている。
「ひゃん!ひゃんひゃん!」
次に何をするのかというようにヴァイルに向かって嬉しそうに吠えてみる。
その股の間が、衣服に隠されているとはいえ緩く盛り上がっているのが見えるだろう。
■ヴァイル > 振り払えたことに密かに安堵しながらも、自身の衣服を整える。
指に嵌めていた真鍮の指輪を引き抜いて手の中で弄ぶと、
真鍮のプレートのついた細い鎖付きの革首輪へと変じた。
それを持った手をすっかりと盛りのついた犬と化したツァリエルの首に回し、はめてやる。
「行くぞ。件の扉にたどり着くまでは大人しくついてこい」
立ち上がると鎖を引いて、早足に回廊の奥へと進んでいく。
呪いを打ち消すのはそう難しくはなさそうだ。
ならば犬のままでいさせてやってもいいだろう。
犬は本などは読まないし。
■ツァリエル > 大人しく首輪を掛けられれば嬉しそうにヴァイルの周りをぐるぐると回ってゆく。
主人と一緒にこれから散歩に出ることが嬉しいといった様子でその場を跳ね回った。
ヴァイルが立ち上がり自分の鎖を引いて歩くと四つん這いのまま器用にその後ろをついて歩く。
途中そこかしこの書棚から零れ落ちた何かや、スケルトンの骨などに興味を示して咥えようとするが
ヴァイルがすたすたと先に歩いてしまえばくぅんと残念そうな唸りを上げてしずしずと諦めて歩き出す。
途中ヴァイルの尻のあたりをしきりに嗅ぎまわったりもしたが
おおむねしつけの行き届いた犬と変わりなかった。
四足で歩くせいで衣服のすそや膝あたりが汚れたが気にした様子もない。
■ヴァイル > 立ち止まることあれば鎖を強く引いてさっさと進む。
理不尽に暴力的ではないが人間に対する丁重さではない、まさに飼い犬に対する扱いを自然に行っていた。
回廊を進み、階段を降り、それをしばらく繰り返せば
さほど苦もなく目的地まではたどり着く。
ヴァイルの立ち止まった場所は何の変哲もなさそうな壁付書架だったが、
本を抜いては差しを繰り返せば、書棚がひとりでに横に動き、その奥に隠されていたものを暴き出す。
鍵穴や取っ手などはない、大きな石扉であった。
不可思議な紋様や装飾が刻まれているが、
扉の中央、胸ほどの高さに小さな円形の空白がある。
それを目にして、緊張から脱したように、小さく息を漏らした。
確かに、王家の人間であれば反応する何かがこの扉にはあるようだ。
「そら。立て。ここに手をかざしてみろ。……肢か?」
大人しく追従してきた四足のツァリエルをさほど興味もなさそうに見下ろし、
脇腹をつま先で小突き、促す。
■ツァリエル > 元人間であったことも忘れたのか犬のような扱いにも不当な意思を見せず
けなげな忠犬としてヴァイルにつき従う。
連れてこられた遺跡の奥深くにも耳と鼻をきかせて主人にあだなす者がないかと注意深く伺い
人間であったときよりもよっぽど役立っているようにも思えた。
ヴァイルが開けられなかった扉の前に不思議そうに見上げてみせるが
脇腹を小突かれればおとなしく後ろ足のみで立ち上がり、指示された場所へと右前脚をぴたりと乗せる。
予想以上に賢かったツァリエル犬は、ちゃんとやってみせたよとヴァイルに胸を張って見せ
ご褒美を期待して舌をはっはっと長く垂らした。
■ヴァイル > きちんと立ち上がれるかどうか怪しく思われたが、
ツァリエルは危なげなく支持された通りに二本足で動いてみせた。
すると前脚の乗せた箇所が淡く光り、鍵のない石扉が重々しく開いていく。
どうやら犬でも問題ないらしい。
「よくやった」
簡素に讃えて、軽く頭や耳の後ろを撫でてやる。
鎖を引いて扉の奥の狭い通路へと進む。さらに奥に何かが隠されているのだろうか。
敵対者が潜んでいる気配はないことはツァリエルの耳鼻でもわかるだろう。
通路の途中で一度脚を止め、ツァリエルに振り返る。
「もう待つ必要はないぞ。
……それでどうしたい? おれは察しはよくないんでね」
ツァリエルの顎に手を添えて引き、細めた目で見つめる。
もう片方の手を彼の股座へと伸ばした。
■ツァリエル > 伸びあがったそのままの姿勢で再度ヴァイルのほうにのしかかると嬉しそうにぺろぺろとその頬を舐めまわす。
相手が犬にするように褒めて撫でるのをしっぽを振って受け入れるとようやく許しが出たことにわふっ、と満足そうに吠えてためらうことなく相手を押し倒した。
だがそこで犬やけだものと成り果てそうになっていたツァリエルの体がぶるぶると大きく震えて、その輪郭が変わる。
犬の手足や耳尻尾だったものが溶け崩れそうになりながら、少年の体のラインがゆるゆるとなだらかなものに変わり、
女性とも獣とも男ともつかぬあいまいな生き物に変り果てる。
ただツァリエルというものであることだけは間違いがないようだ。
「わふ、……あ、ぅ……」
先ほどから犬の吠え方しかしなかった口が何らかの人の言葉を語ろうとわなないた。
「ヴァイル、さ……ぼく、ヴァイルさんのものになりたい……
あかちゃ、ほしい……ヴァイルさんのあかし、ちょーだぃい……
ぼくもヴァイルさんのなか、あげたいのぉ……」
獣のようなたどたどしい言葉が口から洩れる。
もともと中性的な要望が一層強まり、ヴァイルの体に自分の体をのせてさわさわと期待するように相手の体を撫でる。
相手の太ももに押し付けた股倉が固くなっているのと同時に、先走りだけではない何かでしとどに濡れているのがわかるだろう。
■ヴァイル > ツァリエルに押し倒されて、今度はそれを留めることはしなかった。
「それはならん」
だが、彼のたどたどしい懇願にはぴしゃりと打ち付けるように返した。
ツァリエルの容貌の変化に驚く様子はない。
「強欲な願いもあったものだ。
いかに愚かなきさまでもわかろう。
きさまのような立場の人間が子を孕むということの意味を……。
そもそも、おれには人を孕ませる力がない。そういう種なのだ」
感情の乗らない静かな口調。
「それともおれに子種を注いでみるか?」
それもまた無為である、と気だるげなヴァイルの表情が言外に語っていた。
小さく息をついて、組み伏せられたまま、手を動かして
ツァリエルの窮屈そうな脚衣をずらし、下にあるものを顕にしようとする。
■ツァリエル > 自らの願いがぴしゃりと跳ね除けられてしまえば呪いに侵された異形の王子の顔がくしゃくしゃに歪んで泣き始める。
ツァリエルの真の願いはヴァイルのものになることであり、犬としてでも侍りたいという形の表れがあのように呪いの力を借りたのだが
呪いによってでもその願いは空しく打ち砕かれた。
ヴァイルが望んでいないことは自分も出来ない。
いかな乱暴な獣性を呼び覚まされたところで主人に逆らう犬は犬ではない。
「そ、れでもぉ、ヴァイルさんの、ほしいの……
さび、さびしくて、いつも、さびしいからほしいぃ……」
獣が唸るようなすすり泣く声とともに、ヴァイルに縋り付く。
注いでみるかと誘われれば空しいとはわかりつつも、ちゅうちゅうと冷えた肌に唇を埋め、吸い付いた。
ヴァイルの手によって露わにされた性器は大きさこそ子供のものだが、犬のようにふしのあるものであり
さらにその奥にたらたらと愛液をこぼす女のそれがあった。
空気にさらされればたちまち恥じ入ったように、隠そうと相手の太ももにこすり付ける。
■ヴァイル > すすり泣くツァリエルに、ヴァイルは頭を振って目を瞑った。
「おれは前に心はグリム・グロットのものである……
おれはそう信じているのだが、どうなのかわからない。
おれはもしかすれば誰のものでもなかったし、
誰を手に入れることもできていなかったのかもしれない」
どこかひとりごとのようにそう語ると、ツァリエルの背中を撫でる。
自身も脚衣を下ろすと屹立した白い槍が現れた。
それがツァリエルの露出した硬い茎とぶつかって、ぬるぬるとこすれ合う。
「ツァーリ……王様になってくれ。
そうすればツァーリはおれのものだし、
おれはツァーリのものになれるんだ」
熱い息。
ツァリエルの熱が移ったがごとくの、切なげな瞳が刹那見据えて、閉じられる。
かけられる言葉はこれまでのような命令ではなく、願いの形をしていた。
■ツァリエル > 嘆く自分を慰める様にヴァイルの冷たい手は優しかった。
おおむね自分は彼に会えば甘えてばかりで、どこか申し訳なさや後ろ暗さがあるのだが
獣の呪いに掛けられたせいか、感情を止める役割の理性が容易く押し流される。
「おうさま……うん、なる……
なって、それで、ヴァイルさんと……ひとつになりたい」
涙に濡れた頬を相手の頬に擦り付け、お互いの秘具もまたぬるぬるとこすり付けあう。
王になれる保証などどこにもないのだが、それが彼の願いなら自分こそが叶えなければならない。
相手の熱い息を心地よく思いながら白いヴァイルの下肢に手を掛け、けだもののような姿勢で自身の肉杭を相手の中にぐいと打ちこむ。
犬の尾がぶるるとゆれ、中に分け入った快感にしばらく酔いしれた。
■ヴァイル > 「……ふ、っ……」
菊座に性急に陰茎が押入れられた衝撃に、瞠目して息を吐く。
肉の筒はさほどの抵抗もなくツァリエルのものを受け容れ、
柔らかい動きで奥へと招き入れていく。
「満足していないでちゃんと動かして奥までかき回せ。
徹底的にな」
声は冷ややかだが、彼の股座で膨張している肉鞘は
内側でツァリエルのものがかすかに動くだけで歓喜するように揺れていた。
さながらツァリエルの男根によって石像が命を吹きこまれたかのようだった。
「もし子供ができたらどうする?」
唇を歪めてそんなことを皮肉っぽく言う。
■ツァリエル > 「ご、ごめんなさ……っヴァイル、さんのなかぁ……きもちよくてぇ……」
蕩けた様にそう詫びながらも動きは早く貪欲になる。
相手の首筋に柔らかく噛みついて息を殺そうとする。犬が雌に対してぐっと動かぬようにそうする仕草。
言われた通り、おおよそあの軟弱な王子がするようなおとなしい動きではなくそれこそ獣のまぐわいとでもいうような激しさでヴァイルの中をかき回す。
今一時だけ偽りでも彼が自分の物であるようにと征服するような性急さだった。
ああ、と快感にあえぐ最中ヴァイルの問いかけが耳に入る。
またくしゃくしゃと顔を歪めて嬉しそうに鼻先を摺り寄せながら
「で、できちゃったら……その、うれし、うれしいっ……。
ふたりで、そだてたい……」
顔を真っ赤にして恥じらうように目を細める。
ウソ偽りない反応であることはわかるだろう。
後先も考えない言葉ではあったが。
やがてヴァイルの中を激しくかき回す勢いがいよいよ痛いほどのものに変わる。
慣れぬ所作に限界が近いのだ。
一層強く相手を組み敷いて、いちばん奥へと自分の子種を流し込もうとする。
■ヴァイル > 腸管の粘膜が節ばった肉棒に激しく抉られれば、ヴァイルの息も荒くなり、
うなじを見せつけるように首を反らす。
淫らな水音を立てる肉筒はまるで女性器じみていて、
彼もまた後孔での行為には慣れていることが察せられた。
「やるじゃあないか……そうだ、いいぞ、
その調子だ……」
したたかに微笑んで見せる。
余裕を残す表情とはさかしまにヴァイルの肉体は突かれ悦ぶ雌を完璧に演じていた。
遣り場のない手指が、石の床を引っ掻く。
「……っ、は、あ……」
ツァリエルが絶頂に至ると、ヴァイルもそれに続く。
相手の精を強欲に飲み下しながら、自身の性器も脈動し、
まるで尻とつながっているように白濁を吐き出して、互いの肌を汚していった。
そうすれば、脱力に四肢を投げ出して、少しの間動かずにいるだろう。
■ツァリエル > いつものごとく余裕のある表情を見せつけ自分を受け入れるヴァイルに煽られて
らしくもなく獣のように相手を貪る。
自身が獣であることもそうだが今日の彼はいやに女性めいていてこれが自分の征服すべき相手だと勝手に思ってしまう。
犬に似た性器が射精するにつれ、その精を一滴も外に零すまいとこぶのようなものが出入り口をふさぐ。
本当に孕ませようとする意図があるらしいその行いはたぶん無駄に終わるだろうが。
白いうなじに柔く甘噛みをし、最後の余韻までゆっくり味わった後
ヴァイルの体を慮りながらそっと自身を引き抜いた。
そうして二人の間に挟まれたヴァイル自身が絶頂に至った証をまじまじと見つめると
もったいなさそうに白濁を舌で舐めとり口に含む。
そのまま飲み下さずに一度手に吐き戻すと、自らの秘裂の中へ指に絡めてその精を馴染ませる。
自分にも子が授かればいいのにというようなしぐさだった。
あらためてツァリエルを見れば犬の異形はすでに解けてやがて女性的な形も失われつつあった。
呪いがどういうわけか弱まりはじめているようだ。
■ヴァイル > 接合が解かれる。
行為によって乱れた着衣を指で整えながら、
横目でヴァイルの精を惜しむような仕草を見せるツァリエルの様子を伺った。
「欲の発散と同時に消えたか」
ツァリエルが落ち着くのを待って彼の服も整え、首輪を外し、手を取って立たせる。
瞳を覗き込むようにして、顔を近づける。
「おれは邪悪と罪を背負うが宿命の一匹の野良犬にすぎん。
少なくとも君主となってやることはできない。
だからきさまに王となってもらうしかないのだ」
そう自称するヴァイルの声に自らを蔑んでいるような響きはなく、
ただ淡々と事実を語っているにすぎないという様子だった。
「きさまはおれの持てぬ善性を抱えるためにいる……
それこそが真なる王となるために必要だ」
かつかつとヒールを鳴らして、宝物のあるであろう奥へと進んでいく。
足取りは常のそれと同じに過ぎて、先程までツァリエルの獣を咥え込んで
女のように佳がっていたとは思えないほどだった。
やがて突き当りにたどり着くと、そこには一つの書棚があった。
何の変哲もなさそうな一冊の書を抜き取り、めくると、
静かだったヴァイルの表情に途端に苦渋めいたものが滲んだ。
■ツァリエル > やがて自分の体がもとの細い少年のものに戻ると惜しむように溜息を吐いた。
顔色はあまりよくないが、欲望の波も消え去ってしまい冷静さが公開となって押し寄せた。
「ごめんなさい……ぼく、獣みたいに…あんなことしちゃって」
落ち込んでしまった様子でヴァイルの手をとり立ち上がる。
それにと付け加える様にしぼんだ声で告げる。
「僕だって善性だけで王様になれるなんて思ってないです……。
ヴァイルさんが王様になれないし、一人がいいって思うなら仕方ないけど
でも、僕はヴァイルさんほど王様に似合う人を知らないです……。
僕が立派な王様になれたのなら、それはヴァイルさんがいてくれて世の中の薄暗いところを知っていてくれるからだと思います……」
もぐもぐと言い訳のようにそう言ってみるもきっとあまりきちんと受け取ってくれないだろうが。
きょろきょろと周りを珍しそうに見回すも、また先ほどのように呪いの遺物があったらと考えて
おっかなびっくりヴァイルの後ろをついてゆく。
だがヴァイルが読んだ本が何か良くないものだったのかと表情から伺うと
「ど、どうしたの?」とおっかなびっくり自分も覗き込んだ。
■ヴァイル > 「構わんさ。ツァーリにじゃれつかれるのは、そう悪くはない」
ツァリエルの謝罪を手で制する。
付け加えられる言葉には「言うじゃないか」と、
ヴァイルの唇がうすく笑いをかたどった。
「その通り、ツァーリひとりで王になれるとも思わん。
おれにとってツァーリは換えの利かぬ者だということさ。
……嫌な役目を押し付けるための、な」
単なる皮肉とも、内心の吐露とも取れる口調。
ツァリエルが覗き込んでくると、渋面を無表情へ戻す。
そうしてその書をツァリエルに押し付ける。
古代の言語であるが、解読することは不可能ではない。
「呪いではない。ある意味呪いかもしれんが」
嘆息。
その言葉の通り、目を通しても直接的な害がふりかかることはない。
口に出すのもはばかられる茹だったような、陶酔と官能にまみれた詩が、
かつての時代の言葉で記されていた。
それがほぼ全ての頁を占めている。
ヴァイルは別の書を手にとって検分しているが、どうやら
書棚を占めているのは似たり寄ったりであるらしい。
■ツァリエル > 換えの利かぬ者と言われればさっきまでしぼんでいた表情がにわかに輝いてはにかみ始める。
もじもじと足元をつま先でつつきながら恋を知った少女のように顔を赤らめた。
「う、うん……その、僕、ヴァイルの役に立てるなら
嫌な役目でもいやじゃないよ……」
えへへと嬉しそうに相手へ笑顔を向ける。
先ほどの犬の態度ならばしっぽをぶんぶんと振っているだろう喜びが透けて見える。
ヴァイルに渡された古書の内容をあらためるとつい最近学んだ古語の文章にやや難しそうに眉をしかめるもなんとか読めた。
だがどのページにも破廉恥な内容の詩だけがつづられているとわかるとわぁあああと慌てて表紙を閉じて書棚に戻した。
まるで卑猥が移るといった態度である。
「もう、なぁにこれ……。僕のご先祖様……じゃないかもしれないけど
王族の血筋ってみんなこんなに……なんか……うーん……。
もうちょっといやらしいことだけじゃなければよかったのに」
呆れた様にヴァイルが他の本を探すのを見るがやはりどの本もそんなもののようで
同じように嘆息した。
まぁ自分だってヴァイルのことを思って日記をつづったらやっぱりこんな風に隠したくなるだろうけれど
だからって子孫にも見られたくなかろう物をこうして宝物のように隠しておくのはいやだなぁと思った。
事前にわくわくしていただけになおさらがっくりと来てしまう。
■ヴァイル > 「これはこれで何かしら使い途があるかもしれんが……」
苦労して仕掛けを解いた結果が徒労とわかれば流石に失望を禁じ得ないが、
価値のある財などそうたやすくは見つからないものである。
元あったように古書を戻していく。
これもよくあること、と肩を揺らして笑った。
「さて地上へ戻ろうか。長く居れば書の一つにされてしまう」
地下図書院にまつわる怪談話のひとつを口にして、
ツァリエルの手をそっと取ると、隠し部屋の外へと足を向ける。
「それにツァーリと一緒に冒険できて楽しかったよ。
今度はもっと風情のあるところにでも逢引に行こうか」
冗談めかしてそんなことを言うと、
ふいに手を離し、横からツァリエルに抱きついて、頬に口付けた。
まるで悪戯をする少年のような顔つきで。
■ツァリエル > ヴァイルが笑う様子からこういう無駄足を踏まされるのは慣れたものというのが伺える。
自分よりも何度もこういう目にあっているだろうからそう落ち込むこともないのだろう。
同じように気を取り直して横を歩くが本の一つにされてしまうと聞かされれば
青い顔をしてきた時と同じようにぴったりとヴァイルの横についたままマントの端を握った。
「うん、僕も初めてこういうところに来て……わくわくして楽しかったし
ヴァイルさんから誘ってくれて嬉しかったから
また、一緒にどこか行こうね」
やんわりとした笑顔を向けると急にヴァイルから抱きつかれ頬に唇の柔らかさを受ける。
慌てて受け止めるが一瞬何が起こったかわからない様子で目を丸くしていたが、
へにゃりと力の抜けたような笑顔を向けると同じようにぎこちなく頬にキスをし返す。
そわそわとどこか浮かれた様子で歩みをすすめながら、ヴァイルの冷たい指先をきっちり握って隠し部屋を後にした。
ご案内:「地下図書院」からヴァイルさんが去りました。
ご案内:「地下図書院」からツァリエルさんが去りました。