2023/07/11 のログ
セレンルーナ > ちょっと気まずい無言を、りんごを咀嚼する事で誤魔化していく。
真面目、という印象通り、真面目すぎて融通はききそうにない。
それは、不正をしないという点でとても信用できる事ではあるが、今はそれが少々困ってしまう事となっていた。
言い逃れるつもりはないが、上手く事態を説明する言葉はないかと、血が足りなくて回りにくい頭を回転させていく。

「…あ、ああ…そういえば名乗ってなかったよね。ごめんね。私の名前は、セレンルーナ・カイエスタン。改めて、よろしくね。」

そういえば、名前を名乗っていなかったなと思い至り、名乗られたのに名乗り返していなかった非礼を詫びて自分の名前を名乗っていく。
一瞬偽名を使う事も考えたが、誠実に対応してくれる彼には誠実で応えるべきだろうと姓まで正直に名乗り。
口調や、性別、年齢は学院でであった【彼】とは異なる。
けれど、それでも隠しきれない雰囲気というものはあるかもしれない。

サウロ > 「セレンルーナ……さん」

(セレンルーナ・カイエスタン。カイエスタンという家名がどれ程の家格はまではわからないものの、
 苗字を持つと言うことは彼女自身が高貴な身分か、資産家や豪商である可能性は高い。
 平民の中にも苗字を持つ者はいるにはいるが、彼女の雰囲気や所作、それに美貌も含めて貴族と言われた方が納得がいく。
 改めて名乗られた名を繰り返してから、小さく息を吐いて軽く首の裏に手を当てる。
 深く考え込むように目を閉じて、少し間を空けてから、軽く身を起こして。)

「一先ず、この件の報告書については、セレンルーナさんの体調が戻ってからにしましょう。
 あとで食事と共に、レターセットを持ってきます。貴女が届けて欲しい先に、届けに行きます。いかがですか?」

(彼女には考える時間も休む時間も必要だと改めて思い直す。
 それならきっと、彼女も現状を伝えるべき相手に伝えられるだろうと。
 その手紙を届けるのが自分であれば、彼女も安心してくれるだろうかと提案して。)

セレンルーナ > 「名前が長ったらしいからね…いいように略してもらっていいかな。」

以前会ったミレー族の青年も、いいように略してくれたことを思い出すと、名前を呟くように復唱する彼へと付け加えていく。
あはは、と努めて元気そうに振舞うが首の後ろに手を当てながら、考え込むようにサウロが目を閉じたのを見れば密やかに疲れたような吐息を吐き出していく。

「重ね重ね、迷惑をかけて申し訳ない…。あ、ありがとう。それはとても助かるかな。実は兄が当主なんだけど、口うるさいんだよね…音信不通になったら、あとで何を言われるかと思うと胃が痛かったんだ…。届けてもらう場合、二箇所に届けてもらうことになるけど、いいかな…?」

サウロ自身が届けてくれるなら、信頼できるだろう。
カイエスタン家ともう一つ、スターチェンバーの本部へと現状報告ができるのはとても有難い。
気遣いを有り難く思って、心からの感謝をつげつつも冗談めかして少し誤魔化してしまう。

サウロ > 「お名前を? そういうわけにも……」

(平民であるサウロからすれば立場が上になる存在だ。許可を得てはいわかりました、とはなりづらい。
 まさか自身の相棒であるミレー族の青年がそうしているとは露知らず、疲れを感じさせる吐息が聞こえれば顔を上げて目を開いて。
 とにかく彼女を休ませる方を優先しよう。)

「わかりました、場所はどこでも大丈夫です。
 手紙の封筒の方にすぐお渡しできるよう一筆頂ければ、必ずお届けします。
 ……お兄様がいらっしゃるんですね。弟さん、とかもいらっしゃいますか?」

(さりげなく彼女の家族構成を聞けば、なんとなくそんなことも尋ねて。
 あまり長居するのも気が引けるので、一先ずは立ち上がって下がろうと。
 食べ終わったら、木皿はそこに、とベッドサイドにある小さいテーブルを指して。
 喉も渇いていると言っていたから、そこにある水差しからコップに水を注ぎ、近くに置いておこう。)

「また後で来ますね、安心して休んでください」

セレンルーナ > 「あはは、名前がちょっと長いのは自覚してるから気にせず、略してくれて構わないんだけどな。
 一応、カイエスタン家は貴族だけど、当主は兄で私は跡取り   
とかそういうの関係ない、行き遅れの妹ってだけの立場だし。
あ、そういえば…ここの騎士団にジャミルっていう騎士っているかな?
 …その彼は、私のことをセレン姉さんて呼んでくれるかな。」

カイエスタンの名を知っていたかは分からないが、少なくとも平民とは違う事を気づいたようなサウロの対応に苦笑が浮かぶ。
ともかく、気軽に呼んでくれて構わないと冗談めかしながら、以前会ったミレー族の青年を引き合いに出していく。
そうすれば、彼も気軽に略称を呼びやすくなるかと思って。

「……っ」

気づかれないように、吐息を零したつもりだったが聞こえてしまったようで、顔を上げた様子にさっと視線を逸らし、吐息なんかこぼしてませんよ、気のせいですよといった表情を装っていく。

「何から何までありがとう…。
 …うん?口うるさい兄がひとりね…。弟はいないかな。
 でも、兄の子たちがいるから弟みたいなものかな。」

弟?と首をかしげながら、思い浮かぶのは兄の子『たち』の方。
兄の子のそのまた子供達は、弟っぽいかなと考えて答えていけば、余計にサウロの頭の中はこんがらがっていくだろう。

「気遣いありがとう。…お言葉通り休ませてもらおうかな。」

サウロが立ち上がり、木皿の置き場やコップに水を注いでおいてくれるのにお礼を言って、彼の背中を見送っていく。


………。

「ふぅ……」

少し会話をしていただけでも、どっと疲労感が押し寄せてくる。
とさっとベッドに上半身を倒して、額に手を押し当てながら天井をぼうっと眺める。
ここまでしてもらっておいて、事情聴取も受けずに姿を消すというのは…恩を仇で返すような所業だろう。
けれど、守秘義務のことを考えるとそれが一番いいような気もする。
もぞもぞと、再び起き上がると素足を板の床へとつけていく。
それだけで、くらっと立ちくらみのような感覚に見舞われて呼吸が乱れていく。
ぐっと足に力をいれて、立ち上がろうとすればざっと血の気が下がって、ぐらぐらする視界に立っていられなくなってその場に座り込んでしまった。

「……っ…情けない、かな…これくらいで動けなくなるなんて…」

自分の体の状態を正確に把握すると、思った以上に貧血は深刻なようだ。
はあっと吐息を大きく吐き出していく。

サウロ > 「……なっ、……あいつ、いつの間に。
 うちの隊の者なんですが、きっとなれなれしくしたでしょう、すみません……」

(ジャミルという名を聞けばぱっと浮かんだ顔。そういうことをしそうだということから軽く頭を抱えて。
 彼女の言葉を聞いてもまだ素直に呼べないのは、女性ということもあるし、貴族のご令嬢を親し気に呼ぶのも、という点がサウロを躊躇わせている。
 それについては、考えておきます、と一度お茶を濁すように。
 それから弟はいないと聞けば、やはり首を傾げる。
 疑問符をいくつか浮かべるが、彼女の兄の子、というのならその可能性も。
 とは言え、今のサウロが何を伝えても、性別の違いからどういうこと?となりそうで迂闊に話題にも出せない。
  ともあれ休ませることを優先させたのであれば、後は大人しく休んで貰おうと決めて席を立った。

 見送って貰った後に一度部屋を出て、ちょうど医務室から出てきた医療士と話をして、
 昼食を少し遅らせることと、レターセットの用意をと頼みつつ話をして。
 そう言えば服、彼女の服のことを伝えるのを忘れていた。
 破れてほつれていたので、修繕している最中だ。彼女も目覚めたばかりだったし、
 それについて尋ねられなかったので忘れてしまったのだろう。
 あとで伝えるべきか悩んだが、不意に隣の部屋からどさりと何か落ちる音が聞こえれば、
 反射的に動いて病室へと戻り──。)

「セレンルーナさん!?」

(戻れば、ベッドから降りて床に座り込んでいる彼女の姿があった。
 驚いて駆け寄る。落ちた、というよりは自分から降りて、立ち眩みで座り込んでしまった、というような姿勢だ。)

「大丈夫ですか? 一体なんでベッドから降りて……」

(どうして降りたのかと尋ねようとして、ハッと思いいたる。
 ────ご不浄だ。
 目覚めたばかりだからそこは察するべきだったと僅かに気まずそうに視線を反らしつつ、
 しかし立ち上がるのも難しそうな彼女に、「失礼します」と言って背に腕を回して、
 ゆっくりと肩を貸して立ち上がらせようと。
 そのまま一旦、ベッドへ座り直すように促して。
 どうやらそのまま帰ろうとしていたとは思っていない様子で、心配そうに彼女の前に膝をついて見上げて。)

「無理をせず、今女性の医療士を呼びますから……その、少しだけ我慢してください」

セレンルーナ > 「以前、王都の近くの森で出会ってね。ん?そんなことないかな?明るくて楽しい青年だったかな。」

頭を抱える様子に、苦笑を漏らし。…そこではた、と。
もしかしてジャミルが言っていた、生真面目な奴というのは彼のことだったのだろうか…と。
ぴしゃりと、物事をはっきりと否といえたりするあたり、責められるのが好き(勘違い)なようには見えないけれど、人は見かけによらないということだろうか…と、ちょっと横道にそれたことを考えてしまっていた。

結局セレンルーナ=セナという確証は得られなかっただろうか。
一旦休むようにいうと、部屋を出て行った。
サウロはとっくにレターセットを取りに遠くへ歩いて行っていると思っていたが、座り込んだ音を聞きとがめて彼がすぐに部屋に戻ってきた。

「――え、あ…サウロ…いや、えっとこれはその…。」

大丈夫かと駆け寄ってくれながら、なぜベッドから降りてといったところで言葉が消えていく。
セレンルーナはセレンルーナで、こんなに早くサウロが戻ってくるとは思わずに、どう言い訳をしたものかと少々慌ててしまうだろう。
歯切れの悪い言葉は、なぜかうまいことサウロの想像と奇跡的に合致していく。
肩を貸してもらいながら、ベッドに座り直すのでさえも体重の大半をサウロにあずけていなければいけない状態だった。
出ていこうとしていたのがバレただろうか…と視線をさまよわせるセレンルーナに対して、膝をついたサウロはなぜか女性医務官を連れてくるといった。

「え…う、うん…?」

見張り、ということだろうか?でも見張るなら女性よりも男性のほうがいいのでは?と頭にはてなを浮かべながらも頷いていくだろう。

ご案内:「自由騎士団屯所」からセレンルーナさんが去りました。
ご案内:「自由騎士団屯所」からサウロさんが去りました。