2023/07/07 のログ
ご案内:「星が見える丘」にサウロさんが現れました。
サウロ > (王都からヤルダバオートへと向かう街道の、王都に近い海に面する高い丘がある。
 眼下にセレネル海を、その先の水平線に空が沈みゆく景色を眺望できる場所。
 時折魔物が出る事もあるが、街道が近い為行きがけに冒険者や傭兵などに駆除されやすい。
 日が沈み、夜の帳が落ちる。
 月が空に昇り、波打つ海面に光の柱を立てる頃。
 サウロがわざわざこんな時間に、この丘の方までやってきた理由は、毎年の習慣のようなもので。)

「良かった、今夜は星がよく見える」

(特別、国として何があるわけでもない変哲もない一日である。
 丘の上の芝生へと、武器を外して横に置き、岩場に腰を下ろして。
 胡坐の状態から片足を立てて、ポーチからハンカチを取り出す。
 そこに包んであるのは小さな星屑にも似た、色とりどりのコンフェイトだ。
 満天の星空が輝く明るい夜。流れ星を探しながらソレを食べる。
 ただそれだけのこと。ただそれだけの時間。

 "星の王子と月の姫"というタイトルの古い絵本が教会の孤児院にあって、
 サウロを含めた孤児院の兄妹の間ではこの日にコンフェイトを食べるのが習慣だった。
 一年に何度かある、ちょっとした贅沢の日だ。
 その日だけはシスターに内緒で夜更かしもしたなぁ、と少し懐かしい思い出と共に軽く粒を摘まんで、
 小さな砂糖菓子を口に運びながら、のんびりと空を見上げる。)

サウロ > (時折穏やかな潮風が吹いて、月明かりを反射するサウロの髪をなびかせる。
 一粒、二粒。昔を思い出しながら舌の上で転がして味わい、噛みしめれば甘味が広がっていく。
 夜空に広がる星の中でも一等明るく輝く星が、河のように集まる星々の傍らにあり。
 孤児院の屋根裏にこっそり忍び込んで、年の近い兄弟たちと流れる星を指をさしながら、目を輝かせていた時期を想起する。
 騎士団に入ってからも、この日だけは、どれだけ疲れていても空を見ていた。
 年を重ね、それが今に繋がっているのだ。
 きっと来年も、同じようにするのだろう。)

「……あ」

(一筋流れて消えた星を追う。
 早すぎて願い事など出来る筈もなく、苦笑しながら岩に軽く寄り掛かり、また空を眺め──。)