2023/07/04 のログ
ご案内:「路地裏」にサウロさんが現れました。
サウロ > 【待ち合わせ待機中】
ご案内:「路地裏」にセレンルーナさんが現れました。
セレンルーナ > マグメール王国、王都・富裕地区。
そこにある、大きな豪邸が俄に騒がしくなる。
夜闇の中、昼間のように明るくなる豪邸の敷地、わぁわぁと怒号混じりの人の声。

「――証拠品は?!」

『大丈夫、圧縮魔法でピアスの中に仕舞ってある!これだけの警戒と、この騒ぎだこれが本命と見て間違いないだろう!』

高い塀の上から、薄手のローブを被った人影が二つ屋敷の敷地の外側へと飛び降りていく。
飛び降りると同時に、二つの人影は走り出しながらそんなやり取りをして。

「やはり、これまでに集まっていた情報はブラフの可能性が高いかな。」

『順調に集まってると思っていたんだがな!してやられる所だった』

とある大物貴族の内偵調査。順調にみえて、言いようのない違和感を覚えたセレンルーナが、最近独自に情報収集に回っていた案件だ。

「とりあえず、この案件が終われば一息つけるかな。あとちょっと。」

『そうだな、これ以上嫁さん放ったらかしにしたら愛想をつかされちまう―――っと』

ドカドカと荒々しい足音が、正面から響いてくると複数人の傭兵のような屋敷の用心棒たちがこぞってやってきた。
ローブのフードを目深に被った二人は、素早く剣を抜くと身構えていく。

『賊はお前たちだな!屋敷から盗んだものを返してもらおう。なぁに、素直に返しゃァ半殺しの上奴隷にするくらいで命は助けてやる』

「半殺しも奴隷も、嫌かな?押し通らせてもらうよ!」

手元のレイピアを構え直すと、月光が反射してフードの中にグリーンブルーの瞳を照らし出す。
言葉が終わるか終わらないかで、ローブをまとった二人は傭兵たちへと向かっていった――。


――――。

そんな騒ぎから半刻ほどが経った頃、平民地区の路地裏にふらつく人影ひとつがあった。

「――――っ……っ…。」

右の脇腹付近を抑えて、セレンルーナは唇を噛んだ。
脂汗がこめかみに浮かび、流れ落ちていく。抑えた呼吸を繰り返して痛みに耐える。
右の脇腹を抑える手からは、血がにじんでおりそこから矢が一本突き出していた。
戦闘の最中、スターチェンバーの同僚であり今回の案件のメインの監査官であった男性にむけて、背後から放たれた弓矢の矢に気づいたセレンルーナは、
咄嗟に彼の前に出ると、彼を庇って右脇腹に矢を受けて負傷した。
それでも、多勢に無勢の中レイピアを振るい同僚監査官とともに、傭兵の囲いを突破したあと同僚監査官とは二手に分かれた。
証拠を握っているのは、同僚監査官であり最優先で彼をスターチェンバーの本部へと戻さなければならなかったため、セレンルーナが囮となったのだ。
最初は、監査官の彼が平民地区の方向へと逃げ、手元に証拠品と思わしきものをちらつかせながら、セレンルーナが王城の方へと向けて逃げて、少しずつ方向を変えて逆方向へと追っ手を引きつけていく。
幾人かは男性監査官のほうへと向かっていったようだが、思惑通りに大半はこちらへとついてきた。
そうして、追ってを巻いて裏路地へと入り込めば、ようやく一息つけるようになる。

「矢尻に毒とか…勘弁してほしい…かなっ」

壁に背中を預けると、そのままずるずると地面に座り込んではぁっと大きく息を吐き出していく。
矢が突き刺さった右脇腹は、燃えるように熱いのにそこからじわじわと悪寒と痺れが広がっていく。
これは、明らかに矢に毒が塗られていたのだろう。

「………はぁ……――――っ!」

震える吐息を吐き出しながら、右脇腹から生えている矢を掴むとすぅ…はぁ…と息を大きく吸い込み、そして吐き出し…矢を掴んだ手に力を込め一気に矢を引き抜こうと力を込めた。

「体の中に毒の矢尻が残るようになんて、手が混んでる…殺意増し増しって感じ、かな…。」

手の中にあるのは、矢尻のついてない弓矢の棒の部分だけ。
チッと思わず舌打ちをしながら、手の中の弓矢を眺めてそのまま矢を握り締めたままの手を傍らに落としていく。

「ま、ここまで殺意高くこられるんなら、証拠品の信ぴょう性があがるかな。…あー…でも、君が死んだら新婚の奥さんに恨まれる、なんて格好つけたのにこんな所で死ぬのは情けなさすぎるかな…。」

同僚監査官と別れる時に自分が言ったセリフを思い出して、思わず苦笑いが浮かぶ。
そろそろ動かないと、追いつかれてしまうかもしれないのに一度座り込んでしまったら中々動き出せなかった。

サウロ > (陽も沈み、夜闇の帳が落ちる頃合いに街の至る所で街燈に明かりが灯される。
 平民地区で日々を生きる人々は仕事を終えて一杯を楽しみ、あるいは娼館へ赴いて一晩の娯楽を楽しんだり。
 そんな中に建つ自由騎士団の屯所である建物も任務を終えて街に繰り出す隊もあれば、
 彼らを恨めしそうに見ながら夜間任務へと赴く隊もある。
 サウロ達の隊もまた夜間の巡回任務。富裕地区に近いエリアの巡回だ。
 比較的安全な区域とは言え、夜間ともなれば不埒な考えを起こす者や魔性の類が徘徊しだすのが、この混沌とした王都の実情。
 今日のバディとなったのはいつものミレー族の相棒ではなく精霊術を扱うエルフの女性騎士だった。
 手分けして該当エリアへと向かうさながら、『なんだか嫌な風ねぇ』と彼女がぼやく。)

「どうかしたか?」
『無作法な足音がするわ。大勢いるみたい』

(そう告げた彼女の視線の先、怒号を上げながら何かを探すように通りを荒々しく歩いていく集団と遭遇することになった。
 物騒な武器を手に持って往来を威嚇している彼らはどこぞの傭兵だろうか。
 それにしてもこんな場所で、騒ぎを起こしているのであれば見過ごすわけにもいかない。
 盾を背から取り出し、握りしめながらいつでも剣を抜ける体勢でその集団へと近づいていく。)

「────どこの所属か知らないが、往来で武器を振り回すのは感心しないな」
『なんだてめえは!』
『騎士か!? かまわねぇ、やっちまえ!!』

(一体何を目的にしているのかもわからない集団と強制的な戦闘に入ってしまえば、
 サウロは致し方なく剣を引き抜いた────。)

────しばらくして。

(道の往来に転がる傭兵たちのなれの果て────とは言え殺しはしていないが。
 サウロが注意を一手に引きつけて傭兵たちを相手どる間に、仲間が精霊術を使う。
 攻撃というよりも支援を得意とするそれらの術は、敵に一時的なデバフを与えるもの。
 暗闇、昏睡、麻痺、沈黙、などなど。
 それらに耐性がないのであれば、たとえ二人であろうと集団を制圧することは可能だ。
 気絶させて無力化させたあと、『一応憲兵を呼んでおくわね』と女性騎士が告げ通信魔導具で本部へと通達する。
 その間、ひとまとめにした縄で傭兵の腕を縛りあげつつ、周囲を見回して。

 その時、仲間の精霊の一体が、サウロの髪を引っ張った。
 光を纏う小さな彼が何かを伝えたがっているようで。)

「? どうしたんだい? ────あっ」

(ひゅーい、と路地の奥へと飛んで行ってしまう。
 参ったな、と思いつつ、仲間に軽く合図をしてから、精霊を追いかける。
 こういう時、人知を超える自然界の生命である精霊の招きを拒んではいけない。

 いくつかの角を曲がり、そうして月明かりもほとんどささない路地の奥から、血の匂いがした。
 走る速度を上げて、その場へと急ぐ。
 路地裏の壁に凭れかかり、座り込むフードを被った人影に気付けば、すぐにその前へと駆け寄り、膝をつく。
 革のグローブを外して、フードの首筋に手を突っ込んで脈拍をはかり、親指を唇にあてて温度と息を確かめる。)

「大丈夫ですか? しっかりして!」

(まだ意識があるかどうか、少し大きな声で黒いフードを被る人物へと呼びかけよう。)

セレンルーナ > 「……動かないと……」

そう呟くものの、体からどんどん力が抜けていく。
動け、動け、と思うものの息は細く早くなり、視界がぼんやりと歪んでいく。
まだやらなければならないことがある、まだ、やるべきことがある…こんな所では、死ねない…。
そう思って自分を奮い立たせるのに、それに反して体は冷えていく。

「……嫁入り前の娘が、こんな傷をまた作ってとまた兄さんにお小言をいわれて…しまうかな…。」

閉じてしまいそうな瞼を、必死に持ち上げながら意識を保とうと取り留めのない事へと思考を巡らせてつぶやきを漏らす。
そうしていれば、一つの足音が近づいてくるのが人よりも先端の尖った耳に届いていく。

「………。」

追っ手かと思ったが、足音は一つきり…。
こんな路地裏に入ってくるなら、浮浪者の類だろうか…。
目の前に誰かがしゃがみこむのが、霞んだ視界に映っていく。
次いで感じたのは、首筋に触れる手の感触と唇に触れる指の感触。
首筋に触れれば、燃えるように熱いのに脈拍は弱く、唇に触れれば氷のように冷たいという温度の差を感じるだろう。
首筋に触れられた事で、ローブのフードがぱさりと落ちていけば暗闇の中でも分かる銀色が見えるだろう。
右脇腹には、左手で押さえている隙間から黒のローブが変色している。
暗がりのため、見えるかどうかは分からないが…。

「―――……」

サウロの声に、ほとんど閉じかけていた瞼の銀色のまつ毛が震えて微かにグリーンブルーの瞳を覗かせていく。
霞む視界の中で、サウロの姿は判然とせずに見えたのはサウロの中に流れる魔力の流れ。
その魔力の流れは、見覚えがあった…。

「あ、れ……?サウロ…?また、学院に用でもあったのかい…?ダメだよ、一人でいたら…あぶない、よ…」

いくつもの役の『皮』を被ってきたから、今どの皮をかぶっているのか一瞬分からなくなる。
記憶の中にある少女と同じ魔力の流れに、状況を誤解すれば掠れた声が見ず知らずのはずであるサウロへと、そんな呟きを零していく。

サウロ > (脈拍が弱い、息も小さく唇も冷たい。
 徐々に生命が失われつつある状態であることが知れれば、眉間に皺を寄せる。
 精霊に「君の友をすぐに呼んで欲しい」と伝えれば、精霊の光はひゅいひゅいと回って、飛んでいく。
 血の臭いから、負傷しているのが分かる。全体を見るように伺えば、その手には矢じりのない矢が握られ、
 脇腹あたりが色濃く変色しているのが伺えた。
 ポーチに手を入れ、回復薬をいくつか取り出して。)

「とにかく応急処置を────、……え?」

(かすれた声で名前を呼んだ相手へ、サウロは驚いたように目を瞠る。
 短く切られた白銀の髪と、ゆっくりと開いた、霞んでいながらも此方へ向けられる翠碧の瞳に、覚えがあった。
 けれど、いやまさか、と疑問が沸き上がる。学院であった、騎士科の男子生徒。記憶に残る彼とよく似た"女性"。
 記憶を思い出し、思考を重ねることに、手が止まりかけったが。
 サウロは首を横に振って今は考え込んでいる暇はない、とローブの前を広げ、怪我をしている部分の布地を「すみません」と言ってから力尽くで引き裂く。
 衣が裂ける音を響かせながら、露わになる彼女の白い腰周りを、赤黒く穢す痛ましい傷跡に眉を寄せて。)

「暗くてよく見えないが……鏃が刺さったままなのか? クソ…!」

(サウロは自己治癒術程度しか扱えない。
 こんなことならもっと真面目に治癒術を仲間に強く教えてもらうべきだったと悔やみながら、
 彼女の口元へと回復薬の小瓶を開けて、近付ける。)

「これを飲んで、意識をしっかり保って!
 すぐに仲間が来る、だから大丈夫だ」

(開いた目から活力が失われないよう、声を掛け続ける。
 その声は、彼女の記憶にある少女の声とは違う青年のものである。
 細い輪郭の顎を掴んで軽く上向かせながら薬液を少しずつ流し込んで、一先ずは低下しきった体力を戻そうと。
 錬金術師たちが丹精込めて日々作り上げている回復薬が、少しでも延命につながることを願い。)

セレンルーナ > 「………?」

視界に映る魔力の流れは、確かに学院で会った少女と同じ流れ。
けれど、霞む景色の中に見える人影は記憶にある少女よりも大柄なような気もする。
水の中で聞いているようなくぐもった声も、少女の高い声とは異なる青年の声の低さがあった。

「――っ……」

黒のローブの前を広げれば、男性でない事は明らかとなるだろう。
白いブラウスにくっきりと浮かび上がる、布越しでも形の良さがわかるような双丘。
そして、右脇腹にある暗がりでは黒くみえる血が白い布を染めていた。
ビリっと衣裂く音が響くと、少なからず振動が伝わり傷口に鋭い痛みが走る。
矢尻が埋まったままの傷口は、中心部は紫色に近く変色しており毒が使われていることが分かるかも知れない。

「…ぁ……?」

口元に近づけられた小瓶から、薬草の匂いが鼻腔を擽っていく。
掠れた吐息のような声を漏らしていれば、再び声が聞こえて顎を掴まれて上向かされていく。
薬草の匂いとともに、回復薬が流れ込んでくるとコク…と一口飲み込んで。

「―――っけほっ…けほっ……」

二口目を飲み込もうとして、喉にひっかかってむせ込んでしまう。
つぅ…と唇の端から回復薬が流れ落ちていく。
けれど、一口体内に取り込んだだけで質のいい回復薬は即効性があり、じわりと体の中に染み込んでいきむせた事で少し意識が浮上していく。

「……き、み、…は…?」

薄く開いたままでも、先程よりは視点のあった瞳がサウロの姿を捉える。
目の前にいるのは、少女と見紛いようもない綺麗な青年の姿だった。
暗闇の中でもわかるような、透き通るような碧眼がセレンルーナを見下ろしている。
今、自分は彼を誰かと勘違いして変なことを口走らなかっただろうか…?
セレンルーナは曖昧な記憶を辿るように、力ない瞳でサウロをグリーンブルーの瞳で見つめていた。
しかし、遠くから複数の足音が近づいてくる。
サウロたちと出会って捕縛されたのとは、別の傭兵の集団がとうとうこの路地にもやってきたのだ。

「―――。」

乱暴な複数の足音に、追ってが来たと確信する。
サウロをぼんやりと見つめていた瞳が、さっと足音のする方に向けられて鋭くなっていく。
逃げなければ、と動こうとするがずきりと脇腹が痛んで痺れもあって思うように走れそうもない。
チッっと自身の不甲斐なさに小さく舌打ちをすると、パチンと指を鳴らして髪に限定的にかけていた年齢操作の魔法を解除していく。
すると、ふわりと銀の糸がサウロに視界に入るだろうか。
ショートヘアだったはずのセレンルーナの髪は、一瞬で腰よりも長い髪となっていく。
サウロが許すならば、その首に手を回すと彼の体を自分のほうへと引き寄せていくだろう。
そして、叶うならば冷たい唇を彼の唇へと重ねていく。
恋人なり娼婦なりが相手と、暗い路地裏で睦み合っているように見せて追っての目を誤魔化そうと試みるだろう。

サウロ > (彼女が少しでも回復薬を口にし、しかし咽る様子を見れば瓶を引いていく。
 次第に霞んでいた双眸に焦点があってきたようで、少しは効果が見えているようだ。
 しかし、肌の色が変色するほどの傷は毒物の可能性もある。この傷をこのままにしておくわけにもいかない。
 早急に処置をしなければ、命に係わることは明白だ。
 意識も明瞭になってきたらしい様子を見れば、安堵したように息を吐く。)

「自由騎士団の者です。……痛むでしょうが、じっとしていてください」

(怪我をしているところに、清潔な布を取り出して残る回復薬を染みこませながら、傷口にそっと押し当てる。
 止血と回復薬による傷口の消毒、および毒物が広がるのを遅延させるつもりで。
 しかしそうした応急処置の合間に聞こえてくる複数の足音は、どうやら仲間のものではないようだ。
 鋭く視線を向ける彼女と同じく、足音のする方に視線を向けて警戒をしていたが。)

「────っ、え」

(不意に首に腕が回ってきたかと思えば、短かった白い髪が長く伸びていた。
 どうなってるのかと目を剥く間もなく、引き寄せられて壁に片手をつき、彼女を壁と体の間に挟むような覆いかぶさる体勢になる。
 そして唇に触れる、まだ少し冷たいものの、柔らかな唇の感触に僅かに目を見開いて。
 いきなり何を、と思う間もなく、曲がり角を曲がってきた武器を持った傭兵の姿をした粗暴な男たちが、サウロ達を胡乱気に見てくるだろう。)

『おい兄ちゃん、お楽しみのとこ悪いんだがよ──』

(声を掛けてきた男のうちの一人に状況を察したか、唇を少しだけ離して、彼女の耳に顔を寄せる。
 「足を開いて、少しだけ喘いで」と。このようなことは出来ればしたくはないが、先が少しだけ尖った彼女の耳殻に舌を這わせ、甘噛みをして。
 それから、無粋だとひどく不愉快そうな表情を、男たちへと向けた。)

「────何だよ無粋な連中だな、この酔っ払い女はもう俺が手ェつけてんだよ。分けてやるつもりはねえからとっととどっか行きやがれ!」

(真面目そうな雰囲気からがらりと一転して、眦を吊り上げ、目を細めながらがなり声に近い声で男らを威嚇する。
 絵に描いたような品行方正な騎士様、の皮を被ったガラの悪い性悪な男に捕まった酔った女、という図。
 騎士風の鎧を身に着けているが、サボって酔った女を連れ込んで路地裏で致している、なんて、この国では当たり前に見る情景だ。
 『おい行こうぜ、早く見つけねえと』と別の男がいい、また急ぎ足で離れていくのを見届けてから、サウロは深く息を吐いた。
 慣れないことをしたせいで心臓が苦しいぐらい早鐘を打っている。)

セレンルーナ > 「…じゆう、き、し……?―――っんぅっ…っ」

自由騎士団…ああ、青年はこの間会ったミレー族の青年と学院で会った少女と同じ騎士団の所属か、と霞みそうになる思考の中で必死に考える。
けれど、やはり可憐な少女のサウロと美麗な青年のサウロとは結びつかない。
必死に考えるものの、思考はすぐに沈んでいきそうになっていたが傷口に走った痛みにまた意識が浮上していく。
そっと押し当てられたとはいえ、回復薬が傷口に染みて鋭い痛みが走って、びくっと思わず体を強ばらせて声が漏れてしまった。
けれど、痛みのおかげで意識は鮮明になっていく。
痛みに顔を歪めて、耐えるように細く忙しない吐息を繰り返していれば聞こえてくる乱暴な足音。
不意だったせいか、青年はセレンルーナが引き寄せるままにこちらに引き寄せられて唇を重ねる事が叶った。
ドクドクと、正体が露見するかもしれない状況に鼓動が早まる中、粗暴な男の声が聞こえて、口付けながらびくっとセレンルーナの体が強張るのが、触れ合っているサウロにだけ感じられるだろう。
その強張りによって、男たちが追っているのがセレンルーナであると分かるだろうか。

「―――っ……んっ…ぁっ……」

唇を離された瞬間、男たちが追っている存在が此処にいる女であることを告げられてしまうかと体に緊張を走らせるが、耳へと寄せられた唇から聞こえたのは指示をする言葉で、こくっとサウロにだけ分かるように頷いた。
地面に足を滑らせるようにして、足を開いていけばよりサウロの鎧越しに体が密着していくだろう。
うまく喘ぎ声が出せるだろうかという心配も、次の瞬間には吹き飛んでいた。
ぬるっと暖かな濡れた感触が人よりも尖った耳へと滑り、かりっと硬い感触が甘噛みをして思わず声が漏れていた。
男たちからはきっと、壁につかれた片手と長い髪が阻んでセレンルーナの顔は見えなかっただろう。
サウロは、今までセレンルーナに話しかけていた口調とはがらっと口調を変えて男たちを威嚇していく。
この国では当たり前の光景に、男たちも特に疑問は抱かなかったようだ。
別の男が、行こうぜという声をかけるとぞろぞろと男たちは乱暴な足音をたてながらこの場から遠ざかっていく。

「―――………っ…。」

男たちの気配が遠ざかっていくのに、しばらく強ばらせていたセレンルーナの体から力がぬけて、ほっと微かな吐息が漏れる。
しかし、今更ながら緊急時とは言え見ず知らずの男性に無理やり口付けた自分の行為や、サウロからの耳への行為を自覚して頬を赤らめていくだろう。

「その…ごめんね…いきなりあんな事をして……。」

痛みと緊張によって鮮明になった意識のもとで、明確な言葉がセレンルーナからやっと出てくるだろう。
それは、先ほどの行為をサウロへと詫びるもので