2023/06/17 のログ
ご案内:「神聖都市 街はずれ」にエヴィータさんが現れました。
■エヴィータ >
神聖都市の、とある修道院への潜入を果たしてから、はや、数週間。
夜更けの闇に紛れ、女は街外れの朽ちかけた教会を訪れていた。
「―――――…だめです、まだ、何も掴めてない。
修道女に売春させているのは確かですし、客も何人かは……、
でも、小物ばかりですから。 もう少し、粘りたいんです」
ひそひそと話す相手は、王都からの連絡員だ。
思うように成果が上げられないのなら、一度戻って来い、という、
上司からの伝言を繰り返すためだけに来たような男を、
心底軽んじています、と顔に出さないようにするのは、正直骨が折れる。
互いの顔もわからない暗がりは、そういう意味でも好都合だった。
「とにかく……帰れませんよ、まだ。
せめて、あと何日かは。
大丈夫です、バレてませんから。 誰も、私を疑っちゃいません」
ある出来事から吹っ切れて、請われれば自ら客を取りもしているからだろう。
今のところ、誰からも疑われずに済んでいる。
だからこそ、もう、少しだけ―――――懇願めいた口調に押し切られ、
相手は渋々といった様子で、教会を立ち去っていく。
その靴音が遠ざかるのを、暗がりに身を潜ませてじっと待ち―――――
そろそろ、己も帰ろうかと思ったところで。
ふと、立てかけた扉の向こうに人の気配を感じた。
気のせいだろうか、それとも。
慎重にそちらへ視線を向け、そっと、一歩を踏み出しながら。
「どなたか、いらっしゃいますか……?」
囁く声音で、誰何の問いを投げた。
ご案内:「神聖都市 街はずれ」にベアさんが現れました。
■ベア > 誰何の声に答えるように、青と銅の混ざった鎧が女性の視界に入るだろう。
その鎧の主は、少し見上げる感じでみれば白い毛を纏った熊の獣人。
身長差がかなりあるため、目の前に出てきたときに目に入ったのが、つけているブレストプレートであっただのだろう。
「こんな時間に、こんな場所で…誰かとあいびきですかい、シスター様?」
部分鎧とはいえ、音を立てずに近づいて…その問いかけ、もしかしたら何かを聞いていたのかと思わせる様に意味深で。
声を掛けた獣人は警備の為に雇われている冒険者だと女性は知っているかもしれない。
暗がりの中でも、熊獣人故か夜目が利き、また嗅覚も鋭いため夜間であれば人の様に明かりを持たずとも行動できるのが売りである。
暗がりに紛れようとする、何者かに対してはある種厄介な存在ともいえるだろう。
その相手が、女性を見下ろしながら首をかしげている。
ただ、獣人の表情がわかるなら、どこか嬉しそうにも見えているかもしれないが。
「まぁ、とりあえずは…こっちも仕事なんで、ちと話聞かせてもらってもいいですかね?」
すっと伸ばした毛の生えた手で女性の肩を掴んで、そのまま廃協会内へと押し込もうと動く。
抵抗しなければ、もしくは弱い抵抗ならそのまま協会内へ押し込むだろう。
押し込んだなら立てかけられていた扉をずらし、すぐには逃げれないようにとするつもりで。
「それとも、大声だしてみますかい?
こんな時間に、嗅いだ記憶のない匂いのシスターがこんな場所に居たってはなしを、来たに人間にすることになりやすが」
言葉から、この獣人冒険者が警備範囲内の人間の匂いは覚えているのだろうと、まさに匂わせつつ。
その言葉は、皮肉そうに意地悪そうに掛けられる。
■エヴィータ >
ぎらり、その男の纏う鎧が、不意に月明かりを反射する。
次いで視界に飛びこんだのは、その身を覆う白銀の―――――
獣人、という種族の者が居ることを、全く知らぬわけではない。
しかし、これほど近く、そうした種族と相対するのは初めてで、
相手を仰ぎ見た己の顔は、幾らか強張っていただろう。
「あ、逢引き、だなんて…… いやですわ、
わたくし、この通り、神にお仕えする身ですのに……、」
しおらしい態度と声音を繕いながらも、忙しく頭は回転し始める。
この男、今、ほとんど音もさせずに近づいてきた。
いったいいつからここに、何か、見るか、聞くか、しているのか。
そう言えばこのあたりの何処かで、獣人を警備に雇っている所があると、
小耳に挟んだことを思い出す。
目の前の男が『それ』だとしたら、―――――どうするのが一番利口か。
そこまで思考が及んだ時、男の大きな手が、己の肩を掴んで、押した。
あ、と声を上げる間も無く、柔らかく非力な女のからだは、奥へと押し込められて。
バランスを崩して数歩、踏鞴を踏んだ暗がりの中。
蒼い瞳を剣呑に吊り上げ、獣人の男を睨んでみる。
粗略な扱いを受けた側の、当然の権利と言わんばかりに。
両腕で己が身を抱き締めつつ、憤慨している、というしるしに、細い肩をいからせて、
「ほんとうに、声を上げたら……困るのは、貴方のほうじゃありませんの?
もしもどなたかがいらしたら、私、その方に言いますわ、
息抜きの散歩に出ていた私を、貴方が無理矢理、ここへ連れ込んだのです、って。
どちらの言うことを信じて貰えるか、試してみますか」
あまり分の良くない賭けであるのは承知の上だが、むやみに怯えては付け込まれる。
だからとりあえずは強気に出て、相手の反応を窺おうかと。
ぴんと伸ばした背筋が緊張にざわつき、声が震えないようにするのもひと苦労だったが。
■ベア > 女性の視線を受け止め、睨まれているというのに気にした様子は見せず。
誰かが来たら言いつけると、そんな言葉を聞きながらもじっと女性を見つめて。
「息抜きの散歩か…それでどう考えても人がいなさそうな廃教会に来るっていうのは良い趣味だな。
それとも、通りではできない事でもしたくなったのかい、お嬢さん」
からかう様な口調で女性にそう告げて、くわっと牙を見せつけるように笑顔をを作る。
そうしながら、女性の頭から足先までぶしつけな視線で、まるで値踏みするように見て、小さく頷いてから。
両手で肩をしっかりとつかむと、顔をぐいっと首元へちかづけて。
「で、お嬢さんしってるかい、人ってのは慌てたりすると汗の香りが濃くなるんだ。
さっきあった時よりも、自分で声出してって言った後の方がお嬢さんの匂い、一気に濃くなったんだがこころあたりは?」
鼻をすんとならしながら、そう告げて…獲物を見つけた獣の様に小さく喉の奥をぐる、と鳴らす。
そうしてから、今度は首元から耳元へ口元を近づけて。
「なぁ、お嬢さん…こっちは最初に言っただろう。
逢引してたんじゃないか、ってな…意味なく最初の言葉がそう出るとおもうかい?
普通は迷ったのか、とか何者か、とかになると思わないか俺は警備員なんですぜ」
そんな言葉を女性だけに聞こえるように告げた後で、再び牙を剥き出しながら笑顔を作る。
それとともに、壁際へ押し込むように女性の体を少しずつ押して。