2023/05/13 のログ
ご案内:「空き地」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 少し風が強くなってきた春先の平民地区の一角、
住宅街と商店街をつなぐ路地に、ぽつんと開けた空き地が一つ。
すっかり工事で慣らされて草一本生えていない殺風景なそこに、一生懸命にテントを張る準備をする小さな影がひとつ。
このテントを普段の住まいとし、薬屋の店舗ともしている少年薬師が、
強風と格闘しながらなんとかテントの骨組みを仕上げ、
ペグを地面に打ち込み、ロープを張ろうとしていて…
「わわっ!っく、 ぅう~~~っ! このっ…!
あとちょっと、あとちょっと~~~っ!」
手付きそのものは不慣れではないが、いかんせん強風を布地が受け、手も疲労と冷たくなってきた夜風でかじかんでうまくいかない。
日頃は1分ですむ作業に10分かかってしまうペースに悪戦苦闘しながら、
テントが雨風をしのげる状態までもう一息…。
ひとまず、テントの形だけでもできあがったら、中で火をおこし、温かいものをこしらえて一休みしようと、
目前の安息のために小さな体を奮い立たせて、ぎりぎりとロープを引き、テントがもちあがっていく。
■タン・フィール > 「ふう、っふ… ふーっ…」
そうして、なんとかテントが、いつもの6畳間ほどの広さと形になるまで更に十数分。
ようやくテントが外界の強風にも冷気にもビクともしない、住まいとしての体裁が整ってくれば、
外に出していた荷物を順番にテントの中にひとまず押し込んで自分もテントの中に避難する。
「ふう、つかれたぁ…! ちゃんとしたお店にするのは、明日からでもいいかな… なんか、あったかいもの、飲もう!」
と、様々な薬品をしまい込んだ袋から、薬用だけでなく、調味料や飲料にもなる薬草や甘味料を選別して、
手際よくテントの中に焚き火と、暖かな明かりのランプを設置し、鍋に火をかけ、お湯とミルクを混ぜてそこに粉末を投入する。
その香りはテントの外へと、湯気と甘い香気をまとって流れていくだろう。
「んーーーっ、いい香り……ふふ、めいっぱい甘くして飲んじゃお。」
冷えた身体を温めて疲労を取り去らう、ココアに似た甘い香りのお茶。
それが煮えるのを楽しみにしながら、ひとまずクッション類やシーツ類を無造作に取り出し、敷き詰める。
遊牧民族の寝床かくつろぎ場のような、だらりと寝転んで甘味を貪り、温かい茶を飲める空間にしたてていく。