2023/05/04 のログ
ご案内:「迷路通り」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都の一角……商店街や住宅街などが連なる表通りたる、広い道から裏路地へと通ると、
一部の住民からは「迷路通り」と呼ばれる、複雑に入り組んだ区画へと繋がる。

王都で薬草や薬の素材となる様々なものを買い終えた、小さな薬師の幼子は、
このあたりにも穴場となる店や素材屋などはないものかと好奇心にかられ、自ら足を踏み入れる。

しかし、高い壁、似通った屋根…迷路通りの名前に負けぬ入り組み方の路地は、
瞬く間に小さな子を巻き込み、もう戻ろうとしても簡単には元の路地には出られない。

「ぉ、おおーーーっ…これが、うわさの迷路通り……っ…
…ええと、こっちから来たから……あ、あれ…?あれ…?」

いよいよ迷子になりきる前に、来た道を戻れば良いとタカをくくっていた幼子は、
迷いの森や、迷わしの妖精の術に化かされているかのように、面白いように戻るべき道の選択を誤り続け、
どんどんと奥深くの迷路…否、迷宮じみた、暗く狭い路地へ進んでいってしまう。

ご案内:「迷路通り」にヴェルニールさんが現れました。
ヴェルニール > 王都の一角、ふらりと迷い込んでしまえば、右を見ても左を見ても似通ったような建物に、入り組んだ細い道。
方向感覚を狂わせるような結界が張られているといわれても納得してしまいそうな裏路地。

「なんだか、ミノタウロスに食べられてしまいそうな迷宮ですわねえ…。」

裏路地に来なければいけないような用事があったのか否か。
紬糸でも持って来なければひと一人飲み込んでしまいそうな街並みの迷路をぐるりと見渡して、面白そうに口元を持ち上げ。
ひとと擦れ違うにも肩が触れ合ってしまいそうな細い入り組んだ道を曲がって。
歩を進める先に、小さな人影を見つけて。
彼の服装に一瞬怪訝そうに瞳をぱちり、と瞬くけれど。
ここの住人――ではなさそうなのは、落ち着かない様子で辺りを見渡している様子から見当がついたようで。

「ご機嫌よう、小さな紳士どの。
不躾かしらとも思ったのですけれど。なにかお困りですかしら…?」

タン・フィール > どんどんと複雑さを増していくような路地の道筋に、徐々に街の喧騒や人の気配すらも霞んでいくような暗がり。
そこを進んでいくか引き返すか思案していたところに聞こえた声に、ぴく、と小さな方が跳ねる。

「わっ ……っと、っとと……
その、用事で通りかかったんだけど…ここって、
迷路通りって呼ばれてる場所みたいで…帰り道、わからなくなっちゃって……」

たんなる好奇心ではなく用事、としたのは自分の迂闊さを隠すため。
少し早口で饒舌なのは、無自覚のうちに感じていた不安から開放してくれた見知らぬ女性の存在に、内心ホッとしていたからだった。

「…おねえちゃんは、このあたり、どういけば町の方に帰れるか…わかるひと?」

と、小さな体を一歩、二歩と歩ませて近づいていけば、1mとそこそことかなり小さな体躯にあどけない顔、服装は乞食の如きシャツ一枚のみという姿だが、不思議とその布の質は高く小綺麗な、不思議な子供だった。

ヴェルニール > 遠目から見れば、シャツ一枚だけを羽織った彼の幼げな容姿は、下町の子供か、追い剥ぎにでも遭ったのだろうか…とも一瞬思いそうになるけれど。
立ち振る舞いや、近づいてみれば上質な布地に、瑞々しい肌も身綺麗で。
そういった境遇ではない事は一目で分かる。

「まぁ、迷路通り…。視覚から狂わされてしまいそうな街並みに相応しいお名前がついていたのね。」

ぴくりと跳ねる肩に、軽く身を屈め。
ヴェール越しにだが、一度視線を合わせてから言葉を返して。

「あたくしも実は初めて来たのですけれど。大通りへの路ならば…」

あどけない表情に笑みを返して。
頷くと、くるり、と肩越しに来た道を振り返り。
そこで3秒ほど空間を見つめる時間。

「――…あら…?何だか壁の角度が…?」

おかしいですわねぇ、と呑気な声で呟き。
うふふふふ、と更に笑みを浮かべれば頬に手を当てつつ、再度少年へと視線を向けた。

タン・フィール > 少年も少年で、薄布のシルエットに覆われた女性の姿と、淡くのぞく顔を見て、一体こんな通りに、このような姿の人が何故訪れたのか不思議そうにしながらも返答に耳を傾けて、こくりと頷く。

「そうなの。 そっくりなお家や壁が続いたり、行き止まりも十字路もたっくさんあって……
…おねえちゃんは、迷わなかったの?」

と、不思議そうに見上げてくる長いまつげの真紅の瞳。
ヴェール越しに交わした視線には、不穏や危険さを孕んだ相手ではない…と判断したのか、安心したような様子の口調で女性の言葉に続いた。

「あっちのほう?…はーーっ…助かった……
……って、ぅえええっ…!?なに!?壁の角度、変わっちゃった…!?」

ちょっとした悪戯なのか、あるいは、この路地には本当に魔性が棲み壁や道の角度を変えたのか、
どちらにせよ真に受けてしまった少年は肩越しに女性が見つめた方向へ振り返り、どこどこ?とキョロキョロと辺りをうかがって、
もしからかわれたと察したならば、ぷうと柔らかな頬を膨らませたことだろう。

ヴェルニール > 「あら、ヒトの生は迷い路さながらというではありませんの。
少々道を誤る程度、よくある事ですわよ。」

つまりは自分も半ば迷うように歩いていた訳なのだが。
人ですらない者がそれらしく言ってみては、くすくすと肩を揺らして。
なんとなく、彼もひとの仔ではないのだろう…と思っているけれど、言葉に出しては指摘しない。

彼のつるりとした滑らかな肌が、暗がりの路地でも浮き上がるように映えて。
妙にそそられる様な色気を放つ肢体へと向けられる視線に、不穏な気配はないけれど。
どこかねっとりとした湿っぽさも感じるかも知れない。

「…あぁいえ…。まさか、壁や路地が動くわけではないでしょうから…。
ほんの冗談ですわよ。」

大仰に驚く彼に、肩を竦めてみせる。
意図してからかっていた訳ではないのだが、そう受け取られてしまえば、膨らんだ頬を風船でもつつくように、指先を伸ばして触れようと。
むに、とめり込むかも知れないが、肌の弾力を楽しんで。

タン・フィール > 「……つまり、おねえちゃんも迷子ってことじゃ……
……ほんとにこのみちで、あってる?」

朗らかでお淑やかな印象に交じる、どこか怪しげ…否、妖しげで、悪戯めいた色も感じる女性の雰囲気……自身に向けられているその視線の湿度に対しても、じとり、と目を細める。

けれども、それでも警戒といった類の域には達していないのか、
指先で頬を突付く仕草を許して、つんつんとつかれれば指先にはぷにりとした柔らかな、水気を多く含んだ菓子や果実を思わせる張り。

「もぉっ……おねえちゃんなのに、こんな小さい子からかうの、よくないんだ!
イタズラばっかしてると、いつかイタズラしかえされちゃうんだからねっ」

矢張りからかわれていると明かされて膨らんだ頬を赤らめて抗議する。
やがて、数度突かれた後にぷしゅるぅーと息を吹き出すと、

「それじゃあボク、教えてもらった方に行くけど…おねえちゃんは、どうする?
いっしょにいく?」

ふたりのほうが、出口にも気づきやすいだろうし、と付け加えて彼女に訪ねて。
その口調からは、年齢を考えれば怯えすくんでいてもおかしくはない、暗がりの通りでの迷子という状況でも快活な様子ではある……
が、迷子になった状況自体は不安が大きいのか、どこか一緒に来て、と訴えるようでもあって。