2023/04/29 のログ
ご案内:「バフート 魔物養殖店」にリシェスさんが現れました。
■リシェス > ■
奴隷市場都市は今日も変わらず奴隷を売買する。
その奴隷の多くは女で、性奴隷になる未来が見えている。
まだ少女とも言える年齢の子供から、夫を失った子持ちの未亡人まで。
高貴な血筋からミレー族や魔族まで。
今日も、奴隷女を求めてやってくる者は多い。
そんな中で、あえて男奴隷を求める者もいた。
──高貴な血筋も魔族もミレーも、良質な雄がいれば高く買い取る。
そう宣言したのが、富の女商人。
色白の肌に映える長い金髪に、美しく磨いた曇りなき金貨を思わせる双眸。
長い睫毛に整った顔立ち、通った鼻筋と薄紅色の唇。
妖艶を体現する魅惑のボディラインを包む金と黒のドレスに紅玉の装飾品を身に着け、高いヒールを鳴らして都市内を歩く彼女は、バフート内で強者に位置付けられた女性だ。
そんな彼女が今いるのが、魔物の養殖店。
奴隷を調教したり、魔物を飼いならしたい好事家や貴族たちが訪れる機会が多い場所だ。
今日もホルマリン漬けにされたり檻やガラスケースの中にいる魔物たちを愛でる老齢の店主の恭しい出迎えを受けて、彼女は引き連れてきた自分のところの男奴隷の護衛を一人以外下がらせて、手に持った煙管をくるくると指で弄ぶ。
「さて、良いものが出来たそうじゃない。見せて貰いにきたわ」
不敵に笑う女の唇が、悪どくつり上がった。
■リシェス > ■
看板に魔物専門店と書かれた店の前には、黒燕尾の執事服をきた数人の男たちが立っているのでさぞ目立つことだろう。
とは言えやんごとなき身分の者も享楽に耽る為にこういった類のものを欲しがる。
その光景は目立ちはするが、特に珍しいものでもない。
店内では老齢の男が、上客の女に「煙は御堪忍を」と告げている。
ああそうだったわねと思い出したように頷いた美女が煙管を横へ出せば、後ろに控えていた男が両手を差し出した。
そこに灰を落とす。火をつけていた燃えさしを素手で受け止めた奴隷が「ぐっ……」と小さく呻いて、下がる。
「これでいいかしら?」
彼女にとって、男の悲鳴は耳を楽しませるものだ。
愉しげにクスクスと笑いながら、煙管をしまえば商人が用意した席へと着いて足を組む。
テーブルの上へと並べられる様々な瓶。
それを老齢の魔物商人がしゃがれ声で説明していた。
────神経毒を持つ魔物から取った血で調合した弛緩薬。
逆に神経を敏感にさせ、感度を高めるもの。
塗った部位に細やかな痺れを与える麻痺毒の薬。
定番の媚薬は飲むタイプと、粘液から吸収するタイプ。この店の人気NO,1の商品をさらに高品質化したもの。
獣に使う興奮剤を人間にも使えるように調合したものなど。
説明を聞きながら、彼女はニコニコと愉しそうに笑っている。
■リシェス > ■
催淫系の薬品は用途によって効果が大小様々。
ふと見つけたのは催痒薬と書かれたラベルの貼られた黄色い液体。
「へえ。面白いものがあるじゃない。────お前」
控えている奴隷を指で促す。近づいてきた男奴隷が手を差し出せば、女は薬の蓋を開けて小さな刷毛を取り先ほど灰を落とし火傷させた部分に塗り付ける。
掌は人体の中で多くの神経が集まっている箇所だ。そこで反応を見ようとしている。
「手は開いたままよ」
小さく呻く奴隷の声を聞きながら、効果が出てくるのを待つ。次第に効果が出始めたのか、奴隷の指に力が入り、汗がにじみ出して、苦悶の声が漏れ出している。
痛いのか、痒いのか、掌だけで充分な反応を見せる"お気に入り"の奴隷の手首を強く掴んでいる。
つつ、と指でなぞれば、奴隷の悲鳴が上がった。
愉悦の表情で笑みを浮かべながら、奴隷の手を離せば女は双眸を細めた。
「良いわね。これも買うわ。量はいつも通り用意してちょうだい」
満足そうに告げれば立ち上がって、踵を返した。
掌を震わせている奴隷に「早くなさい」とペットを呼ぶように告げて、その後は表に立っていた奴隷たちを引き連れて馬車へと乗り込み、店を後にした────。
ご案内:「バフート 魔物養殖店」からリシェスさんが去りました。