2023/04/11 のログ
フェブラリア > 「…もちろん、人の脆さは存じておりますよ。」

菊座から抜き取られたカギが、奴隷の少女の枷を外される。
一種のこの市場特有の、客を楽しませる仕草のようなそれにクスリと小さな笑みを浮かべて。
それを見届ければ、竜令嬢は彼女手早く持ち帰るために、軽々とその身体を抱え上げる。

はてさて、持ち帰ってまずは何をするべきか。
下腹部の紋様は、確か手渡された時点で如何様にも弄れるものだったか。
なれば、もっと自身の都合の良い、実験的な遊びをしてみてもいいかもしれない。

「ああ、でも……まずは食事にしましょうか。」

考え事をしながらも、竜令嬢は来た道を戻り始める。
行先はただ一つ、このような地で直ぐにでも奴隷を味わうための、竜令嬢の別荘の一つ。
絢爛さや華やかさあまりない屋敷でも、用途が満たせれば十分だ。
これからの暫くの日々を想像し、竜令嬢は愉快そうに口元を歪めるのであった。

ご案内:「奴隷市場都市バフート『黒百合の苑』」からナータさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート『黒百合の苑』」からフェブラリアさんが去りました。
ご案内:「平民地区 とある宿」にキュアポットさんが現れました。
キュアポット > 王都に何件もあるし何処にでもある宿。
平民地区でも賑やかな通りに面している比較的好立地な場所に佇む宿なのだが、最近他の宿との差別化が出来ず売り上げが低迷中らしい。

そこで宿の主人は一発逆転を狙い奮発して無名遺跡の地下迷宮から発見されたあるモノを冒険者から買い付けて設置する事にした。
その怪我や疲れを癒すプールというのが冒険者から買い付けた『例の物』なのだが、宿の主人も冒険者からの受け売り程度しか知らない。

だから宿の入り口に『貴族も愛用!怪我や疲れを癒すプールをテストしてくれる人募集、報酬有り』と書かれた張り紙をして、テストをしてもらう者を募集してみた。

具合がよければ宣伝をしてもらおうと、悪くても使い方が解ると考えてなのだが、全くと言っていいほど張り紙を見たとテストを請け負いたいという人がいない、いないというかゼロ、全くゼロ。

しかし、だとしてもだ。
高い金を払って買い付けたものを無駄に出来る余裕はこの宿にはないと考えた宿の主人は、次の手を考えた。

『ルームサービス有りマス。
 お部屋とマッサージサービスで………。』

と宿の部屋を抱き合わせて『あるモノ』を体感して貰おうという暴挙と書いて作戦に出たのだ。
張り紙にある怪我や疲れを癒すプールもマッサージサービスも結局は一緒。
もし張り紙を見て興味が湧いたのなら宿の主人に声をかけるといい、主人は喜んで二階の角部屋の鍵と陶器の水差しに並々と注がれているキュアポットを受け取る事が出来るだろう。
部屋に着いたら必ず鍵をかけてから、疲れを感じる感部に中の液体を塗ってくださいと、或いは部屋に備え付けのバスタブに入れて使ってくださいと、説明が。
逆に報酬に眼がくらんでプールをテストすると言えば宿の主人は地下室に案内してくれる筈だ。

地下室はワインセラーを改造したもの。
ほんのりとワインの香り漂う小さな部屋にキュアポットが蓄えられた木桶とバスタブ。
それにテーブルにハンドベルと脱衣用の籠が置いてあるし、ふかふかのタオルもセットしてある。
宿の主人は説明らしき説明をしないで直ぐに地下室を後にする。
最後に「使った感想を聞かせてくださいね?」と一言を残して。

キュアポット > 触れると安堵を覚えさせるほんのりと温かな体温。
ぐんにょりとした弾力は触れると柔らかに押し返した後に、つぷりと音をたて、触れるものをずぷずぷと飲み込んでいく。

しかしこれは敵性のモンスターであるスライムと似て非なるモノであり、王族や貴族階級の者達が肉体的な傷を宿している魔力を治癒或いは増幅する為に創造された医療用魔導生命体。

今の姿は不明な対象者に向けて適切な治療やその健康を診断するために適したゼリー状のスライムに落ち着いている為、明確に敵対的な行動を取らない限りは触れるものを試そうとするものを優しく受け止めて飲み込んでいき、その体を調べようとするだろう。

こういう宿にあること自体が非常に希少な存在であるキュアポットは時折パリっと音を奏で、透明な身体に緑色の輝きのノイズを走らせ、自分を利用する者を待っている。

それとは別ではあるが、宿屋の主人が余計な気を利かせたのであろう、利用者をリラックスするために少し甘めの花の香りがほんのりと室内に広がっているのだが、それは果たしてキュアポットにはどのような作用をもたらすかまでは考えていないだろう。

極端な効果はキュアポットは毒と判断する可能性もあれば、理解できない成分を認識する事で行動が狂う可能性もある。
心に平穏を促す香りに眠ってしまうのであれば……さていかなる事になるのか。

しかし訪れるものが誰も居なければ、宿屋の主人は酷く落胆するだろう。
それでも時間は過ぎていく、宿屋の主人はため息を吐きながら地下室の扉に鍵をかけるのだった。

ご案内:「平民地区 とある宿」からキュアポットさんが去りました。