2023/03/29 のログ
キュアポット > 触れると安堵を覚えさせるほんのりと温かな体温。
ぐんにょりとした弾力は触れると柔らかに押し返した後に、つぷりと音をたて、触れるものをずぷずぷと飲み込んでいく。

しかしこれは敵性のモンスターであるスライムと似て非なるモノであり、王族や貴族階級の者達が肉体的な傷を宿している魔力を治癒或いは増幅する為に創造された医療用魔導生命体。

今の姿は不明な対象者に向けて適切な治療やその健康を診断するために適したゼリー状のスライムに落ち着いている為、明確に敵対的な行動を取らない限りは触れるものを試そうとするものを優しく受け止めて飲み込んでいき、その体を調べようとするだろう。

こういう宿にあること自体が非常に希少な存在であるキュアポットは時折パリっと音を奏で、透明な身体に緑色の輝きのノイズを走らせ、自分を利用する者を待っている。

それとは別ではあるが、宿屋の主人が余計な気を利かせたのであろう、利用者をリラックスするために少し甘めの花の香りがほんのりと室内に広がっているのだが、それは果たしてキュアポットにはどのような作用をもたらすかまでは考えていないだろう。

極端な効果はキュアポットは毒と判断する可能性もあれば、理解できない成分を認識する事で行動が狂う可能性もある。
心に平穏を促す香りに眠ってしまうのであれば……さていかなる事になるのか。

しかし訪れるものが誰も居なければ、宿屋の主人は酷く落胆するだろう。
それでも時間は過ぎていく、宿屋の主人はため息を吐きながら地下室の扉に鍵をかけるのだった。

ご案内:「ある宿の地下」からキュアポットさんが去りました。
ご案内:「マグメールと魔族国の国境沿い」に赫徹さんが現れました。
赫徹 >
 山奥の中に店を構える研ぎ師のように、国境という端の中の端
 その川傍で店を構えていると、もはや存在意義は他者からではなく自分で作り終えているかのよう。
 来ても来なくてもいいという気持ち 流行りや噂 衝動ではなく目的で訪れられているという
 単純明快な抽出方法だろうと思う。


 ―――ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ!


 聞こえるのは、足踏み式のミシンでも扱うかのように水車とドワーフの踏み込みの力を利用した
 壁際に設置されている歯車と鉄の塊で出来た相槌。
 赤髪のドワーフ 赫徹 はグローブ超しのヤットコを両手で握りしめ、赤赤と燃える鉄塊を練り上げる
 刃の形に変える前 最高の鉄にする為には最高の鉄に交じるものを吐き出す必要性がある。
 質のいい口の中で溶けるような粘土と藁が混ざり合った水を何度も鉄塊へとかけていき
 ぶくぶく ぱちぱち と粘土水で鉄塊の息を塞ぎ 藁で熱を高めるそれ
 そうすると、最高の鉄の中に交じる不純物がたまらず息を吐き出すように外へと弾ける。

 その鉄を、何度も相槌もいない一人の鍛冶故にか
 片手で振るいあげる槌だけに頼らず、ある程度までの効率を求めた相槌機で打ち込んでいく。
 小柄なドワーフの、盛り上がる肩筋から伸びる剛腕のように振われる鉄槌機の打ち込み
 それで形を伸ばし、何度も折り返されていく皮の部分。

 炎と集中力 暖かくなってきた今の時期
 赫徹の体は既に水と塩を欲して止まない
 しかし蒼瞳は乾くことを知らず、舌は失うことを求めず だ。


        「よか出来や 饕徹に相応しか具合になれそうばい。」


 汗まみれの笑みは、ニッと肉を食いちぎれそうな健康的な歯列を見せて
 その器量のいい鉄に笑みを浮かべる。

ご案内:「マグメールと魔族国の国境沿い」から赫徹さんが去りました。