2023/03/19 のログ
影時 > 「でも、ないなぁ。ああ、ない。……最終的に手ぇ出すにしても、片手を振るだけで片付くならそれが一番だ。
 特に一人で遣るとき、あるいは駆け出しを引率してる時は重要だぞ?
 体力の配分が分からない、出会う魔物を兎に角倒せばいいと思っている手合いを連れているときとか、猶更な?」
 
腕ずくは――ない。少なくともそう考える。
出会う敵を兎に角斬れば良いというのは、忍者の仕事として考えると、非常に粗過ぎる。
いや、そういう使い手が同業者に居なかったわけではないが。さて、それは兎も角として駄目だしの眼差しが強い。
そんなに着飾らせたい、とか考えると、嗚呼。否定はできないものではある。
貴人の護衛につく侍、武士がどうであったかを思い出せ。彼らの装いは質素であったか否か。

「……わかったわかった。もう少し温かくなったら着てやる。
 冬でも着れねぇワケじゃないが、組み合わせられる上着とかがなくてなあ」
 
夏場も今のような恰好をというのは、少しつらい。春先から夏場、街の中で冒険者稼業以外で出歩くなら着流しでも事足りよう。
そう考える。こちらもこちらでお返しにというわけでもないが、何か考えるか。
思考を巡らせつつ、コイバナを少しだけでも引き出そうとするエルフの様子を見やる。
毛玉たちも少なくとも、仕事の依頼を受ける気になっている相手が気に入ったのか。ったく、と声を零しつつ唇を釣り上げて。

NPC > 「あたしも一応、今も冒険者のつもりだから、少しはわかるのよねその辺り。
 どこそこの家のご婦人、ご令嬢の家令のナニナニが依頼を仰せ付かって――が多いかも。
 ……例えば、びよーに良い特別な品を仕入れて生還できるなら、ご贔屓にはなる、かも?
 
 殺し屋っぽいけど腕の立ちそうなオジサマのコト?
 なんだかんだカッコつけみたいだけど、下卑てるよりはずっとマシね」
 
仕立て屋、お針子でありつつ、現役は捨てていない、と。そうハーフエルフの女は宣う。
自衛には十分すぎる位の剣術に覚えがあり、なおかつ、魔法が使えるというのは、其れしかできないタイプの人間よりは需要がある。
身なりを整える、整っているとなれば、それは対人面でも好印象を付けやすいのもまた拍車がかかることだろうか。
多少なりともその手の話には通じている、または覚えがあるのか、如何にもありそうな例を口にして思考を巡らせる。

「学院に出た時の朝、靴箱に手紙が山盛りなんて時は困ったわねー……。
 お父様? 貴族よ。荘園運営をして稼いでるわ。今も昔も、どうやっても土地から生じるものなしに生きられないものね」

土地を転がして、或いは農園や酒造所を運営しての収入、税収を以て財を成す。
少なくとも貧乏貴族の類ではない、と。そう嘯く。姓を知れば貴族名鑑から如何なる家柄かは知りえるのも難しくないだろう、と。
そして、父親の呼び方がぞんざいではないのは、如何にもありがちな駄目人間、悪人の類ではないという証左であろう。

「ええと、ジギィさんだったっけ。二人とも、どちらか家紋とか持っていたりする?
 配達屋さんみたいな帽子を被らせて良かったのだけど、普段着ならシンプルな方が楽でしょ。
 けど、ちょっとこれだと背中のスペースが勿体なくて。……謂れのある図柄とかあったら、格好よくなりそうなの」
 
さて、ひとまずはデザインは固まったのか。
リスとモモンガのスケッチを再度拵え、如何にも歴戦みたいなマントを羽織ってキリッとした二匹のイラストを提示して見せる。
マント、またはチョッキめいたものを着せたイラストも別途添えている。普段着と考えれば、余分過ぎない方向性を考えたらしい。
ただ、シンプル過ぎないかと云うのが悩み処らしい。何か言われのある紋章とかあるなら、それを使ってもいいかもしれないと思いながら。

ジギィ > 「……」

ほんとぉ?とエルフの視線は語る。
そういう機会が無ければ無かったで、帰った後存分に獲物を振り回して汗を流したりしてやしないかしれませんこと?
あるいは問題ないと判断した時は、酔狂な体力の使い方をしていたりしませんこと?
―――などなど。
持て余した体力の話なので、場面は近いかもしれないが、意味合いは大分違う。

ともあれ、暖かくなったら着る、という言葉にエルフはわーいと両手を上げて見せて

「やった、約束ですわよ!そのとっておきのオシャレ着が変かどうか、ディアーヌさまにも判定してもらいましょーよ。
 …あら、ディアーヌさま現役ですの?」

バンザイの腕をゆるゆる降ろしつつ、エルフは目を瞬いて彼女を見る。
まあ、確かに未だ身体付きや身のこなしはしっかりしているし、不思議では全くなかったが…
……となると、ギルドかどこかで顔を合わせる可能性が無きにしも非ずと言う事だ。

「なるほどですわね…」

今自分がしている小芝居の意味をしばし、じっと考える。

「―――その家令でディアーヌさまを良く訪ねてくるような方とかいらっしゃいません事?できれば腰が曲がっていない方で。あ、もちろん男性ですわよ。
 ぅ…―――――」

彼女の『オジサマ』への評価が率直すぎて、エルフは再び素早く顔を背けて肩を震わせ始める。吹き出さなかったのは褒めてほしい。
思わず隣の彼の羽織を握った、その手がプルプル震えているのは、机に座った彼女からも見えるかもしれない。
またしゃなりと横髪を掻き上げつつ向き直った頃、エルフの若草色の瞳の端に涙が浮かんでいたのは言うまでもない。肌が銅色で良かった、としばしば思う瞬間だ。
その後ぽんぽん、と彼の背中を叩くのは、何か慰めているつもりらしい。

「荘園?場所はどちらかしら。薬草は扱っていらっしゃる?
 ―――あ、ええと、わたくしちょっと植物に興味がございますの。
 
 …わたくしは、家紋、というものは無いですわね」

どうやらデザインが固まった様子の彼女スケッチブックを覗き込もうと、エルフは机に歩み寄る。
先に出来上がりを見ていた2匹の毛玉はまた尻尾をひこひこさせつつ、彼女の側に周ったり、横から見たりして、出来栄えを眺めている。
『親分、どうです?』
とばかり、ふんす、と鼻息荒く『すーちゃん』が彼の方を振り返ってみて
『ひーちゃん』のほうは彼女の腕に『ちょっと失礼しやす』とばかりにそっと前脚をかけてから
彼女から拒絶する反応が無ければすすすとその肩まで登って、全体像を眺めたりする。

彼らと同じように首を傾げたりしながらスケッチブックを覗き込んだエルフは、腰に手をやりつつ考える。
強いて言えばエルフに取っては狼が氏族のシンボルだが、栗鼠とモモンガに背負わせるには奇妙が過ぎる気がする。

「…ンーーーー、オジサマは? 家紋などございますの?」

エルフは首を傾げた、その恰好のままぐるりと彼を振り返ってみた。
目立たないようにマルだけ、とか言いだしたら、その太い眉が吊り上がることは想像に難くない。だろう。

影時 > 「意味のねェことに耽溺する趣味はねぇぞ」

特に殺戮の類はそうだ。
族滅しなければならない程の繁殖力が酷い、知性がある危険な魔物の群れの時は仕方がない。その時は念入りにやる。
例えば討伐目標が特定の個体のみであり、憂さ晴らしに出来そうな雑魚に喜々とする趣味はない。ないったらない。
喜々とできるのは、それこそ腕試しになりそうな己と同等、あるいはそれ以上と思える相手と遭った時位か。
基本的に忍者は大体合理主義、効率主義に走り易い――と思っているが、一概に言い難い点もある。
少なくとも、自分はそうである。そうであると主張はしておく。

「へいへい。一応、凄くお洒落とかそーゆー類じゃないからな?変に思われんよう先に言っとくが。
 ……御大層な評価をどーも。まぁ、現役だろうなァ。鈍っているような風情じゃなかったしな」

とりあえず、過剰な期待がないようにだけ――釘を刺しておこう。
今の地味な姿と比べて、少しなりとも派手であろう、という位だ。暗色に相反する白い装いとはそういった色の落差をつけやすい。
そんなにか、と頬を掻きつつ、万歳めいた仕草で両手をあげるエルフに嘯く。
そして、この店主が現役であるというのは、疑いないだろう。
魔法や裁縫の才だけで食っていけるだろうに、そうしないのは矢張り、着想その他等、インスピレーションを求める手段でもあるから、かもしれない。
そう見立てつつ、笑いの衝動がいよいよこらえ切れなくなったのだろうか。
裾を握る手の震えに、思いっきり腹から息を吐こう。
悪く見られないための最低限として身なりを整えているかいはあったが、慰めるように背を叩かれるのは、どうにも釈然とし難い。

「家紋、えんぶれむ、かァ。いやぁ、俺も無ェなあ。
 ……――要るってなら、ンー。ちょっと借りるぞ?」
 
いいんじゃねえかね、と。スケッチブックに描かれたものをのぞき込み、振り返り見てくるリスの顔に頷いてみせよう。
普段着はごてごてしすぎても仕方ないし、野良の動物やらなにやらと思われる危険を避けるにも、悪くない。
ただ、確かになるほど。ワンポイントはちょっと欲しい思いはわかる。
忍者が家紋やら何やら掲げ、残しても仕方がない点があれば、過去に相対した、或いは仕えた等の処から持ってくるか?
許可を得て、メモ帳を借りれば木炭筆で或る意匠を描き込んでみよう。
〇を描き、下向きに三日月のように黒く塗りつぶしたような意匠。さながら、月輪を思わせるような家紋様のそれ。
花でもあった方が良いのかね、とも考えつつまずは描きだそうか。

NPC > 「うん、現役現役。縫い針替わりにレイピア持つのもオツな物よん。
 ……具体的に聞いてくるわね。確かに居るわよ。初老くらいの執事のおじちゃん」
 
レイピアと魔法、糸繰り紡いで操る――といった手管、術使いは居るか居ないか、かもしれない。
杖を持たずに魔法を使うというスタイルは皆無ではなく多いが、剣も魔法も過不足なくどちらも使いこなせるのはきっと少ない。
いざという時にはついつい手が出てしまうから、というのも気質としてあるのだろう。
そして、何やら具体的に聞いてくる姿に眉を揺らし、首を傾げて応える。
何かツボに入るところや、気になるところなどでもあったのだろうか。

「近いところだと、――……かな、多分。お父様が売り払ってなかったらだけど。
 麦とかホップ、葡萄の商いが主ね。薬草……栽培が難しくない所ならあったと思うわ。
 
 無いかー……無地でも、悪くはないと思うけど、君たちはどう? 地味すぎるのは嫌?」
 
口にするのは、王都からそう離れていない田園地帯。そこで栽培される農作物の商いが財源の一つであるらしい。
毛玉たちのうち、モモンガの方が、とてて、すすす、と軽やかに肩へと上がってくる。
それを追い払う理由はない。幸い、細い肩に重くないのがありがたい。
一緒になって見下ろす姿に尋ねつつ、考える。何もワンポインチがないならチョッキ風な方がらしいのかと思いつつ。

「あ、それ向こうの“カモン”って奴? 凄くシンプルね……。盾を描いて分けたりしないだけ楽だけど」

オジサマがメモ用紙を求めれば、どーぞと手近なものを差し出し、描いてくるものを見やろう。
紋章学に則ったのとは、また違う意匠である。シンプルな衣装は刺繍して描くにも、楽でいいかもしれない。

ジギィ > 【次回継続】
ご案内:「富裕地区・商業エリア」からジギィさんが去りました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア」から影時さんが去りました。