2023/03/18 のログ
キュアポット > 報酬有りとはいえ、流石に怪しいテスターになろうとする奇特な者は訪れず、今夜の空振りに宿の主人は地団駄を踏むことだろう。

仕方なし、今夜は早めに店じまいだと宿の主人はため息を吐きながらワインセラーを改造した地下室へと階段を下りると、セキュリティの為に扉に厳重に鍵をかけた。

宿屋の主人が言っている事は嘘ではない。
正常なモノであれば貴族がダイエットや解毒や肌に傷を残さぬ治療の為に利用する医療用魔導生命体……それがキュアポットである。

しかし、それはあくまでも正常な動作をした場合。
この宿の地下室で準備されているのは冒険者が無名遺跡で見つけたもの。

それが正常な動作をするか否かは今夜はわかりそうもない。
宿屋の主人の気配が消えた後にボコボコと地下室の方から気泡が浮いて割れる音がして……。

ご案内:「王都マグメール 平民地区:ある宿の地下」からキュアポットさんが去りました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア」に影時さんが現れました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 返答内容に、エルフは太い眉毛を左右でちぐはぐな方向を指して彼に視線を投げる。

「もー ですから、身体動かすは兎も角常に『斬った張った』前提の思考は何とかなりませんこと?
 そーいうのが必要ない状況とか、そーいうのがあったらダメそうな場面だから斬った張った前提の服装自体ちょっと、な状況とかもあるんですのことよ。
 おじさまの『自然の道理』はゆがんでいると思いまーす」

ぶうぶう唇を尖らせる様子は、待ち合わせのカフェでも見られた表情だろう。
おしゃれが生存率を上げる場合もある、とエルフは強調する。もっともそれは個体の生存率ではなく、遺伝子的な生存率かもしれないけれども。

その不満たらたらの顔は、彼の出した案を聞くとどんぐりまなこがきょとんと見開いたものになった。
意外だった、びっくりした―――どうしちゃったの? と最終的には彼が熱でもあるのではなかろうかと
すすすと近寄って手を伸ばして、彼のその額に触れようとしてみたり。

「そうですわねえ、おじさまも一部から取り入れていくことから慣れると良いかもしれませんわね。
 ―――あ、そうだディアーヌさま、その刺繍に何かおまじないを込められたりできるかご存じありませんこと?そうすれば、おじさまもちゃんと使おうとすると思いますの。
 せっかく作って頂いて、衣装棚の肥しにさせる訳にはまいりませんから」

言いながら、エルフは彼の上から下までを見分するかのように見ながら周囲をぐるりと回る。
(背丈もあるし…すーちゃんの恰好をして並んでもらったらどんな光景になるかしらん)
とか考えている、かも知れない。

「ああ、そのコたちは元々私と同郷なんですのよ。元々野山を駆けまわっていましたから『仕事着』はそれも考慮に入れて頂いた方が良いかもしれませんわ。街中ではそんなことは無いでしょうけれども、森の中では小枝やら茨やらありますから」

彼を背中の方から眺めていて、そこからディアーヌのほうへひょいと顔を出すようにして告げる。
それから、仕事内容については彼の方を『どうなの?』というように視線だけで見上げて、つんつん、とその羽織を引っ張って催促。はずみにまた物騒なものがちらり。

『カゲトキさんついでにディアーヌさんの経歴とかちょっと突っ込んで聞いてよー』

エルフは今度、これは音声付きで囁いた。

影時 > 「冒険者というものは、そーゆーもんだと理解してたつもりなんだが、違うのか?
 道理って云うよりは慣れの境地だよなァ……。戦わずに事を運べる、或いは謀り事だけで恙なく済むならそれでイイんだが」
 
“本職”の経験上でもあり、冒険者として主に何に従事してるか、そして講師として何を教えるか、がこの場合関係しているか。
いずれも根っこにあるのは常在戦場の観念だろう。
お洒落と聞くと、ついつい伊達者、傾奇者としての奇抜な装いが浮かんでしまうのは、一端に触れた導線が悪かったのだろう。
数刻前にも見たような表情を、再びこの場で見ながら胸の前で腕を組んで唸る。

「……――こら、何考えやがった。何でもねェよ。
 着てこなかったが、一着持っている奴がそういう仕立てにしてたな、と思い出しただけだ」
 
そして、想定外だったのかはたまた意外過ぎたのだろうか。
何か珍しいものを見たような、と言えそうな面持ちで額に触れるさまを、やんわりと払いつつ、腰に両手を当てて息を吐く。
着てこなかった、という時点でこれはこれで色々と突っ込みは必定だ。
手持ちの白い着物、着流し用に持っているものが、近しい意匠に仕立てていた、というだけのことだ。
故に、同系――同様の意匠に仕立ててみるというのも、それはそれできっと悪くはない。下趣味ではなく魔除け等、相応の謂れのある図案である。
述べつつ、己の頭から足先までをぢー、と見つつ回る仕草に、怪訝に首を傾げよう。まさか、と思ったのはきっと当たらず遠からずか。

「ああ、森に仕事で行ったときに色々あってね。こっちに連れ帰ってきた。
 偶にこいつら、封筒とか便箋抱えて近場に配達行ってたり、花を摘んできたりしてたな……、って。ナニを聞けって云うんだねお嬢様よ」
 
さて、そんな栗鼠とモモンガのコンビの出どころと日常の一端を述べつつ、羽織を引っ張る姿に顔を向ける。
腰に差したものは隠さぬまま、聞こえてくる言葉に、思いっきり眉をひそめて突っ込もう。
コイバナか。コイバナハンターであるのか。初対面の相手から吐き出させたい、聞き出させたい事項は、言わずもがなか。

NPC > 「積極的にお洒落しないヒトをお洒落させたい――って感じかなぁ、その調子だと。
 ンー。出来なくもない、と思う。出来合いのものだったら裏地とか同じ色の糸で刺繍するとか……仕込むだけなら、いくらでもあるわよ。
 そっちのオジサマ、多分ものは沢山持ちたくないタイプでしょ。ついつい着ちゃう服なら、嫌でも肥やしにはならないんじゃない?」
 
一先ず、この顧客たちの対話を聞き、店主はそう考える。
続く可能不可能を伺う話には、できる、と述べよう。
肝心の着る対象がどうするかにもよるが、今あるものを仕立て直す、あるいは新しく一着用立てるにしても、依頼通りの事はできると。
そう考える。例えば身のかわしを良くする、心持だけ耐性をあげるといった仕掛けは、軽装を好む冒険者たちが金をかけてでも遣ることだ。
少なくとも駆け出しには見えない、腕利きであろう男がそういった仕込みをしないのは、無頓着というよりは、無くとも事足りる、という考えかもしれない。

「ふぅん。思ったよりワイルドかも。……旅人っぽいのと、配達屋さんっぽいのがいいのかな?
 この子達にもよるけど。帽子は邪魔にならない? 頭重くて飛べないってとかない、そっちのキミは」
 
オジサマの肩から顔を出すように見えるエルフの言葉に、同郷と聞けば二匹をまじまじと見やろう。
根っからのペット、という類ではないらしい。思っていたよりもアクティブな生き物であった。
毛玉たちの出生と日常の一端を聞けば、考え込む。木炭筆の端を顔に当てかけて、慌てて落としつつ思うのは見栄えと実用性の天秤である。

そして、聞こえてくる言葉を聞けば「何聴きたいのー?」と返して見せようか。

ジギィ > 「もーそういう考えは古いんです。
 独りきりで生きていける訳では無し、仕事だけ出来たって当世生きぬいてはいけませんわよ。
 冒険者だって、ご婦人からの評価は殿方同士の評価にも影響するんじゃありませんこと?
 そのおかげで、謀り事だけで済む可能性も上がりますわよ」

他がからきしなために謀り事だけで済ませようとする、その類は余り良い将来は見込めない気はするけれども
とにかく、そちら方面をばっさり切り捨てる様子はいただけない!と抗議と懐柔をまぜこぜにした言葉を彼に告げる。
額に触れた手を払われつつ、取り敢えず大丈夫そう、とうんうん頷いて
一着持っている、と言う彼を思わず上目にじろっと見た。何故、それを着るのが今日ではないのか。とそのどんぐりまなこは語る。
それから、エルフからすると言わずもがな。というよりもわざと解らないふりをしているのであろう、彼の羽織をまたつんつんと引っ張って。

『ナニってきまってるでしょー』

コイバナ以外に何があるのか。
その当の彼女がかけてくる言葉に、エルフは視線を彼から彼女の方に素早く移して

「そう、そうなんですのよ!
 オシャレに積極的でないというより、積極的にオシャレしないんです!
 オジサマ、よかったですわね!これでデートの時に着る服に困ることはなくなりますわよ」

にっこり笑うと、引っ張っていた裾を放してぽんぽん、とその背を叩く。―――ついでに一瞬ぎゅっとつねる。

「あ、このコたちなら大丈夫だと思いますわ。もしそう思ったら、無くしたりしないように『親分』に預けていくと思いますの。
 親分よりは、オシャレを嗜んでいるみたいですし」

服を着るということ自体にはしゃいでいる可能性も否めないが、2匹の毛玉は彼女が次に何をするのか、期待を込めて見上げている。たまに我慢しきれないのかたたたと机の端まで走って行っては戻って来て、また彼女を見上げているのだ。

「…ああ、ええっと。
 ディアーヌさまこんなにお奇麗でお仕事も出来ていらして…あの、ご結婚とか、お付き合いとかされていらっしゃる?」

エルフは彼の背後から、ややおずおずと彼女に向かって顔を覗かせつつ
しかし結局どストレートな質問の仕方は、わざとである。と思ってほしい。

影時 > 「……出来なくもねェが、というのは答えにゃなんねェかな、こりゃ。
 今の暮らしの質を下げないようにする等にしても、金が要る。そして稼ぐにゃ仕事ができなきゃならん。
 貴婦人等と直接ツラ合わせるよーな御大層なのは請けたことも、指名されたことも無ぇなあ……。
 
 お嬢様よ。
 
 俺が云う謀り事ってのは、如何に己が手を煩わせることなく済ませるかであり、或いは余分な手間等を避けるための手管だ。
 最終的に腕ずくになっちまうなら、備えを怠れねぇんだよ」
 
その点、対照的だろう。
遣ろうとすればごり押し、腕づくで事を済ませるだけの力はある。野外で生きる力もある。
しかしながら、文明社会を活動の場とし、そしてその恩恵を受けているなら、そのための元手、資産を得る手段を選べない。
培った武術やら経験を生計を立てる手段に選んだ以上、故国の侍等と同様に戦いを切り離すことができない。
美女、或いは令嬢やら夫人などから指名されるような大口の依頼は、なかなか縁がないなあと嘯きつつ、肩を竦める。

ともあれ、万事腕づくということばかりではない。
鏖殺しにしなければないような仕事でなければ、交戦を最小限とする心構えと教えは学院で行っている。

「……だよなァ。

 って、そんなに沢山持っているワケじゃねえからな。普段着る奴の格上げ、か? この流れだと」
 
あ、ほらやっぱり。じろっと見る眼差しとコイバナ狙いの思考に、ははは、笑い声を漏らして明後日の方向を見る。
この時期はまだ少し冷えるから、着流しは取っていたのだ、とは言うまい。云って伝わるかどうか。
背中を軽くたたく指が、一瞬だけ抓る。抓ってくる。痛てて、と口の中で呟きつつ、毛玉たちを見やろう。
自分で着せてやるのか、それとも彼らがお互いに着替えたりするかはまだ未知数だが、何かと器用な生き物である。
デザイナーの思考、目の付け方を思えば、着苦しさや脱ぎ着まで考慮した造りをするだろう、と。そう見立てる。

NPC > 「そこは個人差あるから、アタシからはとやかく言えないわねー……。
 趣味悪いってくらいにキンキラキンにしてる奴とか、兎に角宝石をジャラジャラさせてたのとか見るけど、ん。
 そういうのと比べたら、ずっと潔くて嫌いじゃないわ?
 
 今の服を仕立て直すなら、あたしが預かってあげてもいいわ。専門にしてる伝手があるから、そこに繋げて遣ってもらう形になるけど」
 
冒険者も色々である。初心者、ニュービーの癖が抜けずについつい質素になるもの、あるいは反動が過ぎて無駄に派手派手しくなるもの等。
けばけばしい実例などと比べたら、まだ可愛い類かな、とコメントするにとどめよう。
けれど、成程。お洒落を勧めたい気持ちは分からなくもない、というのは女心かもしれない。
一着新作するのか、それとも今の服を手直しして拵えたいのか。それを問う。
前者であるなら、見積書、仕様書を兼ねた紹介状を添えて渡すこと考えつつ、カウンターの上を見る。
凄く見られている。期待の眼差しめいた二匹にいったん手を止め、それぞれの頭を指の腹で軽く撫でてみて。

「奇麗ってそんなまたまたー。……んー、お父様は勧めてくるケド、まだそんな気はないかなぁ。
 学院に通ってた時とか、冒険者の酒場に行った時とか、女の子から声をかけられる方が多かったけど」

お世辞かもしれないにしても、そう言われて嫌な気になる者がいるか。いいや、いない。
ぱたぱたと手を振り、傍らに手を伸ばす。温いとはいえ、水が入った瓶を呷って一息し、再び筆を執る。
しゃっしゃっと描くのは、フード付きのマントみたいな丈夫そうな服である。
棚の一つを開き、緑色の顔料を蝋で固めたものを出せば、先端をこすりつけるように色付けよう。
深緑のマントである。何か紋章でも入れると締まるのかな、とか。思案げにしながら。

ジギィ > 「最終的にっていうか、最初から腕ずく込みが基本になってるからじゃありませんこと?
 まー、身体を動かしたいという気持ちも解らないわけではありませんけれど…」

『お嬢様』はちょっとトンチンカンな返答をしつつ、彼の背後から一歩、隣に並ぶように横に出る。彼の『余所行き』の季節感までは考えが及んでいないらしい。腕組みをして、横目でじろっと見ている瞳は『何で着てこなかったの』をダメ押しで伝えてくる。
エルフも気持ちは解らないではない。元々定住を基本としない氏族だったから猶更なのだが、まあそこはそれ。
『オジサマ』が将来『立派なオジサマ』になるよう、研鑽を怠らないよう(相手を)鍛えるつもりであるらしい。

「個人的には、男性はご婦人から依頼を貰った方が色々お得な気がしますけれど。
 ディアーヌさまはどう思われます?
 あ、オジサマ個人の印象でもいいですわよ」

彼女のほうへと首を傾げて見せて、ちゃっかり意見を引き出そうとしつつ
嫌いじゃない、という回答が取り敢えずは彼への感想なのかなーと思って、脳裏で『彼女からのカゲトキさんへの印象:+1』とスコアを付け始めた。
うろちょろする毛玉たちを、たしなめることなく撫でてくれる姿に目を細めて
(美人で仕事が出来てスタイルも良いとか捨て置けない!)
と心を新たにするのである。オヒメサマの用事を言い遣った騎士様がぞっこん、とかありそう。

「ふふ、確かにディアーヌさま、さぞ凛々しかったろうと思いますわ。年頃の女の子たちが惹かれるのも解ります。
 …お父様のことをお聞きしても?」

何をされている方でしょう?と
またスケッチブックに向かう彼女の、意識を中断しないタイミングを見計らって訊いてみる。
先ほどから何度か登場する彼女の『お父様』。聞きようによっては、いづこかご大身かもしれない。
彼女がハーフエルフであるように見えることから、ニンゲンかエルフかも図りかねるところだ。