2023/01/04 のログ
ご案内:「深い霧の中」にインビジブルさんが現れました。
インビジブル >  あるいは、学校だったかもしれない。
 あるいは、戦場だったかもしれない。
 あるいは、街の中だったかもしれない。
 けれど今この場はどこを歩いているかもわからない霧の中。前すら見渡せない深い深い霧の中。

「ねぇ、アナタは優しい人?怖い人?」

 元気そうな女の声がする。

「アンタは、奪う人?奪われる人?」

 落ち着いた雰囲気の女の声がする。

「アナタ様は。どのような方ですか。楽しみましょう」

 優し気な女性の声がする。
 それ以外にも雑多な声がする。泣き声、笑い声、嬉しそうな声、悲鳴、男、女……
 ここが元はどんな空間だったのかもわからない。けれどひとつ言える事は、今この場は明らかに異質な空間となっていた。

ご案内:「深い霧の中」にルシオさんが現れました。
ルシオ > 働いている宿屋の食材の取引をしている店への遣いが終わった帰り道。
いつもの帰り道ではなく、偶々別の路地裏なんかを通って帰るのも悪くない。
そうやって本来の帰り道とは違う道を行くうちに、気付けば周囲には霧が立ち込めていた。

「な、なんか気味悪いなぁ…。」

周囲にあった筈の、経っていた筈の建物まですら見渡せない程に深い霧。
そんな中を一人歩みながら独り言。

そうしてやがて聞こえて来たのは人の声、いや女性の声だ。
しかも、一人ではない。次にまた違う声色、そしてまた違う声色が聞こえてくる。
立ち止まり、キョロキョロと辺りを見渡し―――。

「だ、誰かいるんすか!?た、楽しむって、な、何すか!?」

声を掛けるもの見渡す限りでは、誰も居ない。
背筋を震わせながら、声の主達へと懸命に問い掛けをするのだが―――。

インビジブル >  
 入り込んだ獲物を発見した。見た目にはわかりにくいかもしれない。けれど徐々に声が近寄ってくるような雰囲気を感じ取るかもしれない。

「文字通りですよ、私達と一緒に楽しみましょう。とっても寂しいの。皆飽きたらすぐにすててしまうんですもの」

 クスクスクスクス。笑い声がする。
 それに続くように元気な少女の声がする。

「そーそー。毎日のように遊びに来る癖して、飽きたらポイーだもんね。ホント嫌になる」

 ネーと声を出す元気そうな少女の声。
 それに続くように落ち着いた女性の声がする。

「じゃあまずは鬼ごっこ。私達に捕まったら負け。お部屋に連れていっちゃうよ」

 と同時に後ろから足音のような物が聞こえる。何かが後ろから来ている。そう示すように。

ルシオ > 霧の所為で聞こえてくる声の距離感が掴めない。
けれど、次に聞こえて来た声は近付いてきたような気配があった。

「な、なに言ってンすか…?」

尚も小刻みに震えながら、問うのだけれど、
返って来た答えは、思いもよらぬものだった。

「お、鬼ごっこ…?つ、連れてく…?」

またも問い返すのだけれど、その間に足音が響く。
声の主たちが漏らしたように何か追い掛けてくるような―――。
そんな足音が聞こえてくれば、小さな悲鳴を上げて、駆け出す少年。

「よ、よくわかんないけど、ヤバそう…!」

言葉の通り、何か危険を感じれば駆け足の姿勢を取り、
その場から一気に走り出す。
けれど、そんな中でも大人びた女性の声音だけが耳に残る。
捕まえられて何をされるんだろう―――なんて、妄想を膨らませてしまうくらいに
魅力的な声だった。

インビジブル >  
「フフ、大丈夫ですよ。怖い事はしません、アナタ様は悪い人ではなさそうですから」

 クスクスと優しく笑う声がする。
 それに対して膨れたような元気な声がする。

「ブー、姉さんが遊ぶ気じゃん。まぁいいけど」

 それに対して落ち着いた声が続く。

「大丈夫だよ、ちゃんとする事はしてくれるから」

 カタカタ、足音は尚せまる。とはいえ追いつくとか追いつかないとかではなく足音という現象であるかのように一定の距離で。
 しかし同時に霧に異変が起きる。まるで数か所だけ突然濃くなるかのようにうねり始める。

「そーれ」

 直後、そこから半透明の手のような物が伸びる。明らかに侵入者を捕まえようとする動き。もし捕まればそのまま異界へと誘うだろう。

ルシオ > 「だ、大丈夫って言われましても…!」

少年は駆けながら、尚も続く謎の声の主達と会話を続ける。
はぁはぁと息を切らしながら、走り続ける中で、
声の主同士の会話に耳を傾け、そして思わずツッコミを。

「す、することってなにー!?」

全速力で駆けながら、大声でそんな問い掛けをしつつも、
頭の中では恐ろしいイメージと甘いイメージが戦っていた。

―――背後から聞こえる足音は付かず離れずの距離を保っており、
もう走れない、と立ち止まりそうになった時。

「うわ、うわわっ!」

突如として目の前の空間が歪む。
そればかりか、薄っすらな手のような、腕のようなものが
自身へと伸びてきており、其れを避けようとしたところで
躓いてしまい―――、そしてその手に結局捕まってしまうのだった。

インビジブル > 「うふふ、捕まえた」

 真後ろで声がする。
 侵入者から今の一瞬で僅かでも精力を吸収したのだろう。おぼろげながらその姿は現実にあらわれる。
 捕まえるような半透明な腕は白い女の腕になり、アナタの後ろに現れる。それは長身の女性。抱き着いた後ろからは柔らかな双丘を押し付ける、それは頭が埋まるような感覚を覚えるだろう。

「すること、お聞きしたいですか。とっても楽しくて気持ちが良い事です。それとも……嫌ですか?]

 ススと手が動き、服を、胸の先端の辺りを指で軽くなぞる。

「もしよろしければこちらへ、ゆっくり遊びましょう」

 まるで扉のように、霧の中にぽっかりと開いた特別に来い霧の穴。まるで黒い穴にも見えるそこへ、ゆっくりと手を引いていく。もし逆らわないのなら、そのまま穴の中へと。

ご案内:「深い霧の中」からインビジブルさんが去りました。
ルシオ > 躓いた少年は膝を突きながら立ち上がる。
そんな中、突然に背中に柔らかい感触を感じた。
声も先程までとは違い、なにか鮮明にすら聞こえる。
肩越しに振り返り、その声の主を恐る恐る見る。
その瞬間、その美貌に鼻の下を伸ばし―――。

「た、楽しくて…、気持ちイイこと…!い、嫌じゃないッス!
 む、寧ろ、喜んで…!へへっ…。」

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、先程までの恐怖心はどこへ行ったのか。
促されるままに、その霧の中で出来た黒い穴へと共に消えてゆくのであった。

ご案内:「深い霧の中」からルシオさんが去りました。