2022/12/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房地帯」にスピサさんが現れました。
スピサ > 鍜治場の工房がそれなりに広がる王都の一角
武具屋と一体化している裏手の工房とは違い、ただ造るばかりに終始するような
強さを求めるイカレと同じように
妖刀と呼べるような過分な切れ味
魔槌と呼べるような過剰な重撃
そんなものを求めて武器を鍛えつづけるイカれ達

どんな一本薄利の数打ち物を造る者だって、イカれた夢を捨てきれない。



コォンッ コォンッ コォンッ

コォンッ コォンッ コ―――ォンッ


真っ赤に焼けた鉄が柔身を増して、槌の音を吸い込む
魂を込める瞬間はここだろうと表現する者だっていそうな音

硬質的な音がぶつかるのではなく、変化を与える音はまるで音が奥の奥にまで吸い込まれるように
槌の音を鉄の中心に打ち込んでいく事になる。

真っ赤な炉 汗ばむ薄青い肌
ヤットコで摘まんだ鍛えた鉄の棒を、形を変えていく槌
それを支える金床の上で、一枚一枚、冷え切った鉄の皮が剝がれていく。
一撃 一撃 打ち込むたびに、それに耐えきれなかった外側の不純な鉄が落ちていく。

最後に残った鉄が、本当の最高の鉄。


孤独な場所なせいか、目を覆い隠すこともしない
スピサはその大きな単眼を裸眼で、半身が真っ赤な鉄の棒を見つめて
その筋肉の凹凸が波打つ右腕で振るう玄翁で振るう。

何度も曲げて 叩いて 練って 叩いて 曲げて 叩いて
それを繰り返すと、強度は一度で済む鉄は、隙間ない一個の純粋な鉄塊に代わる
穴も節もない綺麗な鉄塊になるから、最初よりも、槌に来るそれは硬い。


「ふー…、…っ
 ふぅぅー…、…。」


無意識から一度表に意識が戻ると、汗がフワッと額から噴き出す。
熱で乾いて、髪に巻いた三角布のバンダナが汗を吸っている。
こんなに寒い日なのに、ここは凍えることがない。
裸体に一枚の革着だけなのに。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 鍛冶場工房地帯」からスピサさんが去りました。