2022/12/04 のログ
■影時 > 「よぉし、いい、だろう。
この森から出て街に戻って、報酬貰ったら貸衣装屋に行くぞ。
兎に角着替えさえて、ウン時間動かずに似顔絵でも描かせてもらってやるからな。覚えておけ」
嗚呼、我ながらある種無駄な使い道である。
しかしながら、端金ほど吹いて消える蝋燭の火の如く、儚くすぐに消えてしまうものである。
一見無駄な使い方でも、気晴らしに使うのであれば、それはきっと無駄ではない。有意義である。
“できる”というのであれば、証明してしまうまで――だ。
「……それ位のもん、とは、何というか空恐ろしいな。
木乃伊よろしく乾いて風化してるとかなら、粉に挽いてしまうンじゃねえかね。
馬鹿云え。大の大人が、混じってどーこーってのは、楽どころか、人生の放棄もいいところじゃねえか。
胸尻張った美女もいねえなら、余計にだぞ。
……痛ぇって、より、むず、がゆいって、わい。後で揉み返してもイイか?」
醸造酒やら蒸留酒では偶にそのような年代物を聞くが、年月を経た事物というのは、物がどうあれ何か宿るのだろうか?
故郷の言葉でも引用するのなら、神でも宿るのだろうか。だとすれば、存外ご利益はあるのかもしれない。
常態とは言い難いコンディションだが、思考はどうにか回っている。というよりも、変な思考を回してなければ保たない。
呼吸を整え、気脈を巡らす。肉体の平常を保っていられるからこそ、紐づく精神と魂は影響を抑えられている。
今もまたつねったりするむずがゆさを覚えながら、だらりと垂らした手を動かしかけて――止める。声がする。
「……答え、ちゃぁ、まずかった、ンだか。
なぁ、お前ら。そんなに俺の頭の上が気に入ったなら、好きに乗っていいから、……働け?」
言葉遊びのリドルか。それとも、他の寓話的なものであるか。
場所が場所でなければ、よく通る声にあー、と口を開きかけて噤みつつ、エルフの言葉を思い返す。
さて、背中の背負子が揺れて、羽織を伝って這い上がる気配がどすん、と頭上に鎮座する。
モモンガが下、栗鼠が上の鏡餅的フォーメーション。お仕事は見張り――なのだろうか。どうなのだろうか。
上目遣いで頭上を見やろうとするも、流石に見えない。
いやまあ、襲い掛かってどうこう、というものではない。きっとない、筈?
「あれ、ほっといていいのかね。……なんか街中までついてきそうな勢いもすンだが」
ぽつと、零すようにエルフに問いつつ、ふと脳裏に浮かんだ逸話やら思考実験めいたものを列挙する。
この手の怪異、妖怪が故郷にいなかったか。何か使えそうなものがないかどうかを探しつつ、横目に野兎を見やる。
■ジギィ > 「んんん― …カゲトキさんが趣味の良い衣装を選んでくれたら、考える。あとマルちゃんずも一緒だったら。
趣味が悪かったら… ん―そうだな。 それをカゲトキさんが着るとか?」
誰への罰ゲームかと言ったら、被害者の一番手は似顔絵を頼まれる画家かもしれない。
何であれ、戯言といえど未来の企画は楽しい。
2匹の毛玉の貸衣装など、果たして王都に取り扱っている店などあるのだろうか?あったとして、相当に高級だったりするのではないだろうか。
「地の精霊とか精霊使いに取っては逆に好物というか、猫にマタタビ的なものになるらしいよ。
珍しいのよー 地の精霊が好むものなんて、ほとんどわかってないんだから!使い方によっては家を建てられるし。
…同じサイズに縮んだら、もしかしたら張ってるかもよ?」
後の問いかけには言葉は返さず、エルフはにっこり笑顔を返しながら、まだ本来よりままならぬであろう彼のつま先に踵を降ろす。
「あっごめん(棒)。
答えちゃダメってことは無いけど、間違えるとよくないのは確かかなー。 だから見逃して貰えるといちばん、いいんだけど…ついてくること、もある、かも。
まるちゃんずなりに、ご主人様の頭部という大事な場所を守っているつもりかも。
リドルの答え間違えて、髪の毛全部取られたとか聞いたことあるし」
考え込んでいる野兎の横を、決して早い足取りではない2人が支え合うようにして通り過ぎる。
その視線が、横目で野兎を見ていたものから進む前方へと戻されると。
「あーん、だめだあ。答えないと駄目なコかも」
エルフが囁き声で悲鳴をこぼす。横を通り過ぎた筈の野兎が、また数歩前に居る。
地面に降り積もって、すやすや寝息を立てているフェアリー達もだ。
野兎は、前脚を腕組みするようにして佇んで、時折耳をぴくりと動かす。…横を通り過ぎた時より、少し大きくなっている様に思える。
『…ふむ。では
一枚のものだが、切ったり破ったりせずに、10枚にすることができる。
これは何か?』
思わず野兎の前で脚を止めたエルフ、と連れられた彼(と2匹)に、野兎は再び質問をする。
(どうしよー)
エルフの眉間にしわが寄る。声には出さずエルフがこぼすのを、
生命の危険から遠ざかるために選んだ道のりが、とんだ回り道になりつつある。
■影時 > 「――酔狂なことはやって愉しくなきゃァなるまいよ。大事だぞ?
少なくとも、流行りのあれこれとかは……聞いてから、選ぶな。 こいつらもはイイんだが、あンのかね……。
ははは、こら女装なんぞ期待するな。せめて子供っぽく出した分身に着せるにしてくれ」
前払いで金を出すだろうにしても、請け負った画家はちょっとした不幸かもしれない。
どんちゃん騒ぎは決して嫌いではないけれども、最低限のかわりにこういったコトに費やすのも、ちょっとした贅沢だろう。
毛玉二匹の貸衣装はもともとあるのかどうか、という処まできっと入ってきそうだ。
犬にケープを着せてるような服を見かけたことはあるが、きっとそのような形式になる――のだろうか?
罰ゲーム的な提案に、ないない、とばかりに手を振ってみよう。抜け道はあるが、きっと却下されるだろうか。
「なんだそりゃ、面白いな。……呪物を触媒にする、とか言う奴のと同じ感じか、きっと。
地の精霊、地のか……どわぁふ好みの麦酒や火酒は楽しめたが、無理か、って、お前……ッ……」
踵で踏まれると、痛覚ばかりはいっちょ前にあるらしい。ないよりはマシなだけ、ありがたいと思いたい。
脛には脚絆やら脚甲をつけることがあるが、つま先はよく見る騎士の鉄靴よろしく装甲は纏っていない。
思いっきり顔を顰め、呻きつつ、地の精霊が好みそうなものを想起する。
ドワーフ繋がりが利かないなら、特殊な鉱物、鉱石の類なのだろうか?
今の時点では、やがて至る魔族の国で見つける特殊な鉱石、金属の類との出会いはまだ気づく由もない。
「……寝ても覚めても視界の端にあの兎のツラがあるってのは、ぞっとしねぇや。
――頭髪の守り神、かぁ……。いや、まあ。考えようによっちゃ馬鹿にならんってのは確かなんだ、がー。其れで良いのかお前らよう」
エルフがやるようにな囀りのマネは、あんまりうまくいかない。
大きな問題は、ひとつ。妖精たちが再び飛び上がる前に囲みを抜け、先に行くこと――だろう。
そのために立ちはだかる野兎というのは、厄介である。意識してしまったのがまずかったとは、思いたくない。
だが、何か堂に行った姿勢で腕組するように佇む姿は、心なしか大きくなったように見える。逃げた分だけ大きくなるのか?
何か知ってるか?とばかりに、頭髪の守り神?な二匹を指先でつつきつつ、響く問いに虚空を仰ぐ。
「切り紙細工は――論外だわな。紙のチケット、換金券、紙幣の類ってのは、どうだ?
金貨一枚に相当するものを、10で割った価値に割れる奴が確かあった筈だが」
それそのものに細工、加工はダメなら、置き換えるならばどうだろうか。先ほど口に出した貨幣を思い出す。
真逆、聞いていたのではあるまいか。そんな知性の存在すら感じつつ、兎の目を見て答えてみようか。
■ジギィ > 【次回継続】
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」からジギィさんが去りました。
■影時 > 【次回継続にてー】
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」から影時さんが去りました。