2022/12/03 のログ
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」に影時さんが現れました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」にジギィさんが現れました。
■ジギィ > 「ちょっと、そこ否定してツッコミくれるとこじゃない?自分で奥手っていうとか、私きもいやつになっちゃうんだけど。
トモダチと呼べる仲間で、家賃まともに払えるのいないもん。
カゲトキさんは…」
まさか、トモダチじゃないとまでつるりとエルフが口にすることはなかったが
首を傾げ、しげしげと相手を眺めて考えるふう。
依頼に付き合ってくれるし、ねだるとなんかくれそうだし、おごってもくれそうだし。
(…金づる?)
声には出していない。
「妖精たち自身が空気清浄機に近いからなあー みんなすっごくいいニオイするのよ、花と蜜の香り。わかるでしょ?
苦手なもの、は」
本気で彼らを近づけさせないとするなら、恨みを持つ血の穢れをばらまけばいい。まさかそれをさせるわけにはいかない。彼がそれをするなら、エルフにとって彼は『敵』だ。
エルフの視線は妖精たちを追いかけ、彼に返答しながら考えている。
ここは彼らの領域。この場から出るだけならば彼らに避けてもらうよりも追い出してもらうほうが早い。
しかしそうすると、どこへ放り出されるのか分からないのが難点だ。
あるいは…
(私が、『彼ら』側につけばいいんだよね)
「ひどい、カゲトキさん。
ドワーフの靴下をばらまいてやる、だなんて!」
エルフは驚いたように彼を見てから大げさに顔を悲壮にゆがめ、ご丁寧に震える手で口元を抑える。
よろよろ、と背後によろめいたりもしてみたりして。
『やだぁ』
『なんだって!』
『えんがちょ!』
『うっそぉ』
『卑劣漢め!』
とたんに妖精たちが、その羽音が聞こえるくらいに激しく周囲を舞い始める。かぐわしい香りが布越しでも伝わるだろう。
「ね!ひどいねー!
ちょっとこのひと森の外までつまみ出してくるから、送ってくれないかな。
あっちの森のはずれの―――」
エルフが言葉を継いでいる途中。
飛び交う妖精たちから昼間にも解る、蛍のようなふわふわとした明りが零れ落ち始めて彼を包み込みこんでいく。皮膚に触れれば、夢から覚める直前のようなふわふわとした気分がちらつくようになるだろう。
(あ、やばい)
「♪――θέλω ――κάτι!」
エルフが節をつけた一節を発するのと、彼の身体に浮遊感が感じられるのはどちらが早かったろうか。
もし如何なる術にか踏みとどまることが出来ていたなら
まるで大きな花弁が舞い散るように、妖精たちがちらちらふらふらと漂いながら地面へと落ちていく光景を目にしていただろう。次いで、急に瞼の重みを感じるだろう。
あえなく踏みとどまれなかったならば
彼の眼の前に広がる光景は、この森のどこか。
見覚えのある場所か、果たして思い通り、森の入口か―――
■影時 > 「奥ゆかしく肯定してみたつもりだったが、……あのなあ。城もそうだが何処暮らしであっても金はかかる。
そこは否定しねぇし出来ねぇが、せめて維持費を捻出できそうな位にどうにかこうにかしとかねえと、……な?
一山大きく当てた、にしてもって、なァ、ジギィ。何故そこで俺をぢーっと見やがるんだね」
まさかまさか――金づると思われたとは、夢にでも思うまい。
ツッコミに困った風情の顔で眉間に皺を刻みつつ、肩を竦めては首を横に振る。
金づるだか財布と思われても、流石に限度はある。そもそも、手元に大量の金銭を溜め過ぎるのはかえっておちつかない。
「……――ああ、確かに。
そうそう。百年物をって、ちょっと待てやゴルァ。そんな御大層なもんまでは仕入れてねぇぞ!?」
そういえば、同伴させるエルフもそんな良い匂い、香りををさせていたか。
覆面越しであるとはいえ、感じる芳香は否定できない。
だからこそ、その真逆のものを用意すれば、それこそ虫除けよろしく効果覿面と思ったのだ。
その手の手段は色々とアイディアがある。職業柄、特に鼻の利く犬などの対処はどうしても意識に置かなければならない。
鞄の中の中身を思い出しつつ、取り出してみようとした刹那に――、響く言葉についついノリで宣い、はた、と気づく。
何の隠語か、それともそんな名前の呪物の類でもあるのか。
兎も角、演技過多すら見える素振りのエルフの言葉に、叫び返してしまえば、妖精たちがそれこそ羽虫よろしくな動きで舞いだす。
それがまずい。光を放つ鱗粉めいた光の粒子が、己を包み込み始めてゆくのだ。それを吸い込まないように、口元を覆う覆面を引き上げ直すが。
(まっ、ずい、ぞ…………!)
それでも、立ち眩みめいたすら感覚を覚えつつ、エルフが放つ言葉を聞く。
話の内容は聞こえたけれども、身体に妙な浮遊感を覚える。この感覚はまずいとばかりに意思を強くもったのは、良かったのかまずいのか。
まるで塗りつぶすような勢いで、眠気めいた瞼の重さを覚える。がくり、と片膝をつきつつ、堪えようとすれば保つのか――どうか。
■ジギィ > 「奥ゆかしくだって、似合わなあいー
そんなことないよーお金なくたって暮らせるところはあるもん。お金にそんなに価値があると思っているのはヒトだけじゃないかな。
多分魔族とかでも、鼻紙か何かだとおもってやついそう。
―――ン? ナ イ ショ」
金に執着しているんだかしていないんだかの発言。
ヒトに混じって暮らすのにお金が必要なのは解っているが、常に一定収入とか貯金とか、そういう考えはないらしい。
むしれるひとからむしる。
めのまえのひととか?
妖精たちは気が変わるのが早い。興味が移るのも早い。
コイバナの提供をねだるところから、侵入者に対しての反応に切り替えるのも早かった。
迂闊だった。早々に次の話に継がなければいけないのにわざわざ段階を踏んだから、彼だけが先に光に包み込まれ始めて、慌てたエルフは『歌』を一節。
喉の調子を整えられていたか不安だったが、思い通りの威力を発揮してくれ
すぎたかもしれない。
「―――ん、 ん―――っ…
ごめえん、カゲトキさん。前フリあげられなかった」
周囲を見渡せば
フェアリーたちが地面にゆらゆら漂い落ちていく中、片膝をついた彼を取り巻くもので変わっていないのは
若干済まなそうな顔のエルフと
彼の背負子での中で勝鬨のような鳴き声(覗き込めばハイタッチしている様子が見れたかもしれない)を上げている2匹と
たたずむやや大き目な野兎。
その野兎を横目でちらりと見てから、エルフは彼に歩み寄って屈み込み、耳元に囁く。
「ごめん、今目が覚めるようにしてあげても良いんだけど、もうちょっとここから離れてから。
あと本気で寝ないでね。森の中でキャンプすることになっちゃう。
――よい、しょ」
囁き終わると、片方から肩を入れるようにして彼を支えて立ち上がる。
彼の上背と体重があるから、お互い寄り掛かっているような風情でもあるだろう。
「足元大丈夫? キビしそうだったら、まるちゃんずにちょっと足の運びを手伝って貰おうか」
彼なら気付くかもしれない。エルフが多弁になって、むしろ時間の無駄を――時間稼ぎをしていることを。
野兎の正体が知れない。
このまま、彼が不安定なまま移動することになると、きっと付いてきてしまうだろう。
妖精のいたずらには悪気は無い。悪いことが起こるとまでは言わないが、イイことが起こることは滅多にない。
彼の足取りが確かになるのが先か、野兎が何か仕掛けてくるのが先か。
エルフはこっそりと、気付けの古典的方法を試す。
―――彼の脇腹をつねってみたりして。ぎゅっと。
■影時 > 「ははは、確かに言っちまうと……そうだなぁ、如何にもなドレスとか着て、ちょんとおすまし顔で座っているとか、しっくりこねぇや。
分かってる分かってる。
俺だってやろうとすりゃぁ、それくらいは出来るが、どうしてもな。
一部出来ないことやら何やらが出る時は、他人(ヒト)と金に頼らないといけなくなる。
魔族もぴんきりだろうよ。
紙幣の類は、それを保証するものがなくなっちまったら能がなくなるが、価値のある何かってのは……割とどこでも通じるぞ?」
金づる確定か。確定なのか。
凍え死ぬこと、干上がることがなければ野宿生活を営めるのは分かる。理解はできる。
だが、そういった生活を続けていくにも、限度がある。
だから、目に見える価値を具体化した貨幣のやり取りは、よくある事態解決に手っ取り早く役に立つ。
なまじ知っているから、毟られてしまうのかどうなのか。毟り返すには何処からどうしたものか。
ふと、向こうの胸元を見やる。懐にある、かもしれない財布ではない。その中身でもひと揉みするなら、溜飲は下がるのか。
兎に角、もう少し貨幣の大事さを教えてやらねばなるまい。いざ、貧乏暇なしに落ちてしまってからでは遅いのだ。
ともあれ――それもまた、今の状況がどうなってから、だろうか。
手管と手段を問わなければ、この手の怪異めいた事象への即応は決して不可能ではない、筈だ。
だが、それも知っていればの話だ。こういうものであるという知識が足りなければ、どうしても後手後手となる。
かろうじて僥倖と云えたのは、独りではない、ということだろう。小動物二匹とエルフと、あと問題は……野兎?か。
「ついノりで言っちまったが、百年物の靴下やら足袋ってのは、そもそも原型残ってンのか、あやすぃぞ…………」
目が覚めたような、というには危うい寝起きめいた具合の中、呻くように答え、片膝をついた姿勢のまま頭を振る。
背負ったままの背負子の篭の中から、何かやってやったぜー、と云わんばかりの鳴き声を聞きつつ、視界の端に佇む兎を見る。
あれは、何だろうか。まるで動じずといわんばかりの威容めいたものは、それはもはや異様という二文字でしかなくなる。
「それは、それで不穏なん、だが。……正気のまま、じゃぁ、やべぇ、ということなのかね。
っ、こら、いつかの時みてぇに、鎧の中まで手ぇいれるんじゃ、ねえ。
……――大丈夫、と思うが、手伝って、くれるのか、ねあいつら」
耳元にささやくエルフが、己が身を支えて立ち上がらせてくれるのは、いい。
少なからず耐性はあると自任していたくせにこれとは、まだまだ修行が足りない。
胴鎧の隙間から抓る痛痒に、覆面の下の顔をありありと歪めて、今も視界の端に見える野兎に僅かに意識を配る。
ありていに云うまでもなく、まずい状況、なのだろうか。
ひとまずは動こう。動けるかどうかを試すように踏み出す足は、ちゃんと動く。もげたりなどはしていない。
■ジギィ > 「…いっとくけど、できるからね。しっくりはこないけど。できない訳じゃないから。
お金が便利なのもわかってるよーだ
価値… 価値ね」
価値あるものといえば、今のエルフにはまだ後悔を取り返すことでしかない。
金はその目的を達成する手段の多分助けになるけど…
わからない、とエルフはここで思考を停止して首を振った。
「百年物があったら、たぶんどこぞの薬屋が欲しがると思うよ。妖精除けなんて滅多にできることないんだから…靴下からどうやって作るか知らないけど」
煮るのかなあ、と思ってやっぱり思考を停止する。
「そりゃあ、ここのコと混じっちゃえば楽かもしれないけどさあー …まあ、趣味なら止めないけど。フェアリーたちは良い匂いだし美男美女ぞろいだしね。
あ、ごめん痛かった?(棒)」
エルフが肩を貸して立ち上がらせたり抓ったりと介抱(?)はしているが、彼がまがりなりにも意識を保ってまともに会話できている事に内心驚きと、感嘆がある。
言語をもつものが無防備にあの節を聞いて、意識を落とさないものはほとんどいない。何せ、住人たるフェアリーでさえそうなのだ。
魔法でも何でも無いので、魔力のゆらぎなども何も起こらない。だから新手が押し寄せるとかいう危険は最小限だった。
(…エルフの節に聞き覚えがある者たち以外は)
『どうしてオオガラスは机に似ているか?
答えは解ったかね?』
佇む野兎が、太い男性の声で不意に繰り返す。
横目で伺っていたエルフは、気付かれたように思って思わず小さく肩が跳ねる。彼が重くのしかかってくれていて良かった。ぴくりとも動かない。
「まるちゃんずは、頼んだら手伝ってくれるんじゃない。
――――ねえ?」
エルフがちちっ、と小さく囀りのような音を鳴くと、彼の背負子がごそごそと揺れ、彼の背中に這いあがってくる気配。
―――――そして。
「…その位置、気に入ったの?」
彼の頭上に、2匹重なって鎮座する。
いちおう、野兎につぶらな瞳でガンをつけている。
野兎は当然意に介さぬ風。
『仕方ない、質問を変えよう。
朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足…
いや…』
イケボの野兎が、小首をかしげて考え込む。
頭上から鳥の鳴き声。
風のざわめき。
エルフは決めた。
(一旦むししよう)
ずり、と彼を引きずりつつ進む。
野兎の横を通り過ぎようと試みるらしい。