2022/11/22 のログ
ご案内:「豊穣の森」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
■ドラゴン・ジーン > お日様が青々とした晴天に輝き、降り注ぐ日光が一面を照らし付けている。
時刻的には丁度昼時であり、早朝は身震いする程の寒さであったが、今は程好い暖気が満たされている。
それでも肌に触れる風はちょっとばかり冷たいかも知れない。周囲には秋入りに従って、文字通りの枯れ葉色に染まった落葉が絨毯のように敷かれていた。
拡げられた枝木には殆どもう葉はついておらず、植物も越冬の準備をしているのが窺える。大凡天然のままに残されている貴族の私有地である森林地帯には恵み豊かな森の幸が溢れ。
それに在り付く為に多くの動物達が活発に活動していた。この土地は外部の人間も通過が許可されているが…それでも気を付けた方が良い。
全ての動植物が人間に対して好意的であるとは限らないのだから。栗鼠や鹿程度ならばまだ可愛いかも知れないが熊や猪ともなれば鉢合えば一体どうなってしまうか。
魔物、という風に呼称される存在にも、その例に漏れずに豊穣の恩恵に授かる為に此処を跋扈する者も居た。
土地の広大さに比較すれば紙に一滴落ちたインクの黒いシミのようなもの。あたたかな陽射しの渦中に目立つ黒い粘液めいたものが徘徊している。
■ドラゴン・ジーン > 「………」
外観は完全なる異形であるが、やっている事自体は他の動物達と然程に変わりは無い。長い冬に備えて栄養を確保しているのだ。此処一帯にはブナ科の樹木が密に群生し、特に野生の栗の木が多い。
落葉と共に実り豊かに転がっている棘だらけの外皮に覆われているのは無論ウニなどではなく、その大体が栗の実だ。中には栗は栗でも団栗なども混在しているが。
そうする必要性も本来は無いが、知識として刷り込まれている竜、というより動物としての振る舞い方が癖となってその長い首を模している粘液を流動させて折り曲げ、鋭い牙と顎を形作っている顔を地面に埋め、腐葉からがさがさ掘り出すようにして木の実を咥える。
噛み砕く必要もなく手当たり次第にぐびり、ぐびりと丸呑みに飲み込んで回り。普段は身重の状態ならば子供を抱えている腹部の収納スペースは、今や栗の実入れとなっていた。棘付き殻付きのものも粘液体ならばお構い無しだ。ごろごろに犇めいているのが半透明の黒色の向こうに見えるだろう。
■ドラゴン・ジーン > 「………」
何度も首を持ち上げ、普通の動物ならあるべき眼球の欠落した代替器官である触角が淡い燐光を放ちながら左右に揺れる。豊穣に授かろうとするのは決して自分だけではない、鳥獣類は勿論であるが。此処は王都より近しい場所にあるのだから。
遠目において人間が通り過ぎる事もある。抱え込んでいる籠の中には大体集めて回った色彩や種類豊かな茸に木の実、山菜の数々がぎっちりと詰まっていた。この時期だからこそ此処ぞとばかりに蓄えに走るのは人も同じ事だ。ピクニック気分で和気藹々と来ている家族などの集団客すらも窺える。
そして人が増え過ぎればそこから問題が生じるのも勿論の事であり。貴族が雇用したと思われる、弓や剣を物騒に携えている警備員などの顔ぶれも散見される。ただの狩人などなら兎も角も、これには注意しなければならない。討伐されてしまわぬように。
幸いにもある意味において街中よりも隠れる事の出来る場所は多い。牧場の積み葉が如くに堆積した落ち葉なども隠遁場所としては最適と言える。
■ドラゴン・ジーン > 「………!」
こちらに警戒を飛ばす警備員の一人が居た。どうも、もう余り長居すべきではなさそうだ。
十分以上に呑んだ木の実を胎に抱え、此処に来るまでの経路で考えていた退路をがさがさと恐るべき俊敏さで這って逃げ出す。
幸いながらに魔法使いなどの特殊な能力持ちや、仕事熱心な輩は居なかったようだ。
必要以上に追跡して来る足音はなく、その場より離脱する。巣にへと帰るが為に。森の中から人間や他の動物からすれば一つ脅威が減った。
ご案内:「豊穣の森」からドラゴン・ジーンさんが去りました。