2022/08/29 のログ
ご案内:「森の中の洋館」にセレーナさんが現れました。
■セレーナ > 森の中にたたずむ洋館。
周囲の森は、魔法で報告感覚を惑わして、この館へ至ることを遠ざけている。
だが、洋館に招かれた者はここまで至ることがあるというそれ。
その洋館の中、自室に一人女が佇んでいた。
窓の近くに置いたソファのひじ掛けに肘を置いて、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
やることが無いのは暇だ。暇は好きではない。
だからと言って外出するのは面倒くさい。面倒くさいのは嫌だ。
そんな相反する気持ちを抱えた時に大抵この場所にいる。
ぼんやりとしていれば、何かしら取るに足らない事を考えているから。
同時に屋敷に誰かが来ればその姿を見ることができるという事もある。
結局は、ぼんやりとそんなことを考えていたのだった。
ご案内:「森の中の洋館」にレリアさんが現れました。
■レリア > 王都にて、村の自警団が使用する武器調達の交渉に来ていたのが数日前。
思いの外に交渉は難航しているのは、相手の商人が業腹なのもあるが、
自警団の交渉役である自身が資金を渋っているからだった。
そんな折、自身の警護と称してついてきた古い付き合いの
女仲間数人と、近くの森まで気分転換にと散歩に出かけることになったのだが―――。
「参ったな……。迷った、かも……。」
木々の間を歩みながら漏らすのは独り言。
決して方向音痴という訳では無いけれど、
不慣れな場所故か道に迷ってしまったらしい。
気付けば一緒にいた仲間の姿も無く、あても無く彷徨っていたのだが、
その矢先に豪奢な屋敷が視界に映ったのだった。
まるで誘われるようにしてその屋敷の前までに辿り着き、
屋敷を見上げながらまたしても独り言。
「誰かいれば良いんだけど…。」
不安と期待を込めてそんな台詞を漏らしてから、屋敷の扉の前までに歩み、
その扉の奥、屋敷の住人に向けてノックをしながら声を掛けるのだった。
「すみません!どなたか、どなたかいらっしゃいませんか?」
■セレーナ > ノックしながらかかる声。窓から外を見ていたが、そこに現れたのは一人の女性。
暫し見やっていたものの、ふっ……と表情を緩めた吐息を漏らす。
いつもであれば面倒くさいと配下の誰かをやらせることが多いのだが、今日は見た目も化け物どもしか存在しない。
来客は暇をつぶすのに十分なそれゆえに、自分の部屋の扉を入り口から最も近い扉へ空間をゆがめて繋いでから、緩慢に立ち上がる。
そして、あまり急いだ様子もなく玄関へと向かい扉を開く。
扉が開くまで、たっぷり5分くらいはかかっただろうか。
けれど、女はそんなことを機にした風もなく、気だるげな、薄い笑みを浮かべて来客をみやり、
「……どうかなさったかしら?」
短く端的に何かあったのかだけを問うた。
■レリア > 声をかけるものの、音沙汰がない。
誰も居ないのか―――そう考えた矢先、漸く扉が開いた。
出てきたのは、見目麗しい、と言っても過言ではない女性だった。
道に迷った女は苦笑いを浮かべながら、事情を口にする。
「こんにちは、突然すみません…。
恥ずかしいことに道に迷ってしまいまして……。
王都への道を教えて頂けませんか?」
恥じらいを隠したところで状況は前進しない。
故に簡潔に事情を説明し、そして単刀直入に言葉通りの願いを口にする。
■セレーナ > 道に迷ったと告げる女性。迷った原因には最も心当たりのある女。
ここから外に出すことは容易いのだけれど、それでは自分がまた暇になる。
せめてひと時の暇つぶしの相手位にはなって欲しい。
そういう思考回路から、どうするかは彼女次第だがと考えつつに言葉を紡いだ。
「そうね……この森で迷うことは恥ずかしい事ではないわ?
この森に入った者は、惑わされてどこか別の場所へと出て行ってしまうものだから。
ただ、ごく稀にこの館まで来る人がいるの。……貴女みたいに。
そうなると、無理に森を歩いてもまた、この館まで戻ってきてしまう」
迷いの森のからくりを告げてから、二呼吸程時間をおいて
「私はここに住んでいるので、どうすればよいかは知っている。
ただ、私は今とても退屈にしていたの。
少し私の退屈しのぎの相手をしてくれないかしら?
そうしてもらえるのであれば、この森を抜ける手段を与えましょう」
どうかしら、と首をかしげて向けた問い。
どちらを選ぶかは女性次第。
それは女性の選択故に、これ以上の情報は増やさずに返答を待って。
■レリア > 「え、ええと……。そ、そうなんです…か…。」
苦笑いを浮かべたままに目の前の女性を聞けば、次第に表情は変わり、
眉根を寄せて困惑してしまう。
分かったのは、どうやらただの森では無かったということ。
そして、目の前の女性がこの傍迷惑な森の仕組みに何か関係していそう、ということ。
とは言え後者の方はあくまでも推測に過ぎないし、
頼れる者も彼女以外にはきっといないだろう。となれば、答えは一つしか無かった。
「ありがとう…。それじゃあ、お願いします。
あ、アタシはレリア、よろしく。」
彼女の提案に一つ首肯してから、緩い笑みを浮かべ、了承の意を告げる。
次いで自身の名前も告げつつ、退屈しのぎ―――、
何か茶を飲みながら世間話でもすればいいのだろうか、
そんな安易な考えを思い浮かべつつ、彼女の言葉を待とう。
■セレーナ > 暫し様子を見ていれば、暇つぶしに同意する女性。
そして、名前を告げてくる様子に口元笑み深めて
「そう、ありがとう……レリア、ね。
私はセレーナ。では、こちらへ」
言いつつレリアを館内へと招く。
そして、ドア近くのベルを手にして何やら特徴的なリズムで鳴らせば、レリアを先導するように館を進む。
廊下を奥に、そこから階段を上り、まだ入り口側に戻ってくるような動き。
邸内にいくつもの気配を感じるものの、それは人なのか獣なのかが分からないような、
そんな不思議な気配がそれなりの数だけ感じられるやもしれない。
けれど、特に何かが出てくることもなく、目的の部屋までやってくれば、開く扉。
そして、レリアをその部屋へと招く。
その部屋は見る限り私室のようだった。
窓際にソファセットと、そのテーブルの上にポットと紅茶。
部屋の奥には天蓋付きのベッド、同じ向きの奥の壁には酒瓶とたくさんのグラス、そして本棚。
部屋だけで普通の平民ならば一軒家のようにも見えるほどの広さがあるだろうか。
そのまま窓際のソファへと足を向け、先程まで座っていた場所へ腰をかければ、ポットの中の紅茶……
移動時に新しくさせておいた紅茶を向かいの席のカップに注いで。
■レリア > 「こちらこそよろしく、セレーナさん。」
彼女が漏らした名前を繰り返してから、屋敷の中へと促す彼女へと続く。
入ってすぐにベルを鳴らす様を見れば、この女性がこの館の主なのだろうか
と考えを浮かばせながら歩み続ける。
決して迷路という訳では無いけれど、随分と迂遠な道なりを進み、
やがて辿り着いたのは広い部屋だった。
その間に人のような気配を幾つか感じられたが、
使用人だろうと深くは考えぬままに室内へと足を踏み入れる。
田舎である自身の村、そして自宅に比べて広々とした部屋の様相に
少し呆気に取られながらも、彼女に続き窓際に歩みを進める。
そして手慣れた動きで紅茶を注ぐ彼女の動きを少し後ろから眺めながら、
その注がれたカップ側にある椅子に気付き―――。
「ありがとう。失礼します。」
座っても?と問うまでも無いだろう。
客人用だろう椅子へと腰掛けながら礼を述べ、
彼女が茶の用意を終わらせるまで膝に手を置きながら待つのだった。
■セレーナ > 自分のカップにも紅茶を注ぎ終えれば、ミルクや砂糖をレリアの方へを少し押し。
「好みに合わせて使ってくださいな」
そう告げてから、自分の紅茶に一口口につけて。
「そういえば、この館の伝説はご存じ?
……この近辺の村々では、吸血鬼の住む館と言われているわ。
この館にたどり着いたものは、館の吸血鬼にとり殺されたり、かどわかされたり。
何か願いをかなえてもらった、何て噂もあるけれど」
そんなおとぎ話めいた話を口にして楽しげにくすくすと溢した笑い。
それから視線をレリアに向けて、その瞳を覗き込んでから
「それにしても、こんな森にどうして足を踏み入れてしまったの?
恐らく目的があるか、この周辺の伝説を知らなかったかのどちらなのでしょうけれど、貴女自身に少し興味があるわ」
小さく首をかしげながら、そんな言葉を続けて向けて。
■レリア > 「……頂きます。」
緩く笑みを浮かべてから、差し出された砂糖とミルクを
自分好みの分だけ紅茶へと混ぜてゆく。
並行して彼女の話に耳を傾けるのだけれど―――、
いよいよもって怪しい話だな、と警戒しつつも、
自身について話を振られてしまえばそんな思考も中断せざるを得なかった。
「あ、いや……そんな深い理由は無いわ。勿論、森の噂も初耳。
……ちょっとした散歩、のつもりだったんだけど…ね。」
散歩をすることになった理由まで彼女に説明する必要は無いだろう。
そう考えた女は、頬を掻きながらありのままに迷い込むことになった理由を答える。
言い終えると今度は自身が一つの疑問を口にしよう。
「…さっきの話。まさか本当に吸血鬼なんていないわよね?」
聞きたいような聞きたくないような―――そんな心持で吸血鬼の存在を問うてみる。
■セレーナ > 「ちょっとした散歩?……そう、それで招かれてしまうのだもの、ついていないのか、何かに余程の不満を持っていたのか。
私の暇つぶしの相手ができるのは、何らかの力を持った者か、何らかの不満を持っている者ですものね。」
レリアが森で迷った理由を聞けば、ついていないと言うように嘆息一つ。
ただ、その吐息にはどこか面白がるような色も混じっていたか。
その言葉の意味も意味深ながら、当人でなければ意味が分からないように紡がれる。
逆にレリアから帰ってきた質問。
その質問にくすくす笑いがしばらく続き
「……あぁ、それを聞いてしまうのね。
そう、人間は己の理解の範疇外にある者は信じないし、信じたくはない。
ましてや自分の目の前に現れるだなんて心にも思っていない。
けれど、その世界をのぞいてみたい好奇心も抑えられない。
……残念ながら、吸血鬼はいるわ。そう……貴女の目の前に」
口元が、今までで一番大きな弧を描く。
猫がネズミを嬲るような、そんな視線と表情で。
■レリア > 「ええ、そうよ。……まあ、確かに……。
幾つか不満に思ってることはあるけれど、そんなものじゃないかしら?」
目の前の彼女の台詞を聞いて、あくまでも人間的な発想の返答を返す。
同意を示すように首を傾げつつも、何か嫌な予感を感じずにはいられない。
その嫌な予感が一層に深まったのは己が問うた答えを聞いた、だ。
「……いや、まさか……。冗談でしょ…?」
柔らかかった笑みを薄っすらと引き攣らせながら、
否定して欲しいという願望を込めて聞き返す。
目の前の彼女の―――恐ろしくも有り、どこか美しさすら感じずにはいられない
笑みを見詰めながら、話題を変えようと―――寧ろ、逃げたいという一心で
先に言葉を連ねるのだった。
「と、ところで…!先にこの森の抜け方を教えて貰えないかしら?
夜になる前に出来れば帰りたいし……。」
そう問いながら彼女の瞳を見詰めるのだが、すぐに視線を逸らす。
真っすぐに見詰めていると何か魅入られてしまいそうだったから。
■セレーナ > 「あら、貴女は私の『暇つぶし』の相手をしてくれるのではなかったの?
私が何者かを知ったらすぐにでも帰りたいだなんて」
くすくすと笑いをこぼして見せれば、すぅっ、と一度消えてレリアの背後に現れる。
己の正体を明かしたのだから、人外の力を晒すことを抑えることなどなかった。
そのまま耳元に唇を寄せて
「いいじゃない。言ってしまいなさいな、その不満。
ここに貴女を知るものなど誰もいないし、私に興味を持たせることができる内容だったら、
その話だけで帰れるかもしれないわ?
まぁ、それでも子供のように恐れ、泣きわめくだけならば……」
耳元囁くように言葉を紡ぎながら、途中一度言葉を切って、その首筋をぺろり、と一度舐め上げて
「……貴女の血か」
そして、後ろから抱きつくように両手を回して
「……貴女の肉体のどちらかを頂くだけだけれど」
■レリア > 「いえ、そんなつもりは無いわ…!
ただ、先に教えて欲しいだけで……、ひッ…!」
言い訳がましい台詞を述べるのだけれど、時既に遅し。
見詰めていた先の彼女は視界から消え、気付けば己の背後に立っていた。
身体中に鳥肌が立ち、肩を震わせながらごくりと生唾を飲み込む。
耳元で囁かれる台詞を聞きながら、唇を震わせ必死に恐怖に耐えるのだけれど
首筋を舐められてしまえば、びくり、とまたも身体が震えてしまう。
次いで提示された二択を頭の中で反芻させながら、恐る恐る唇を開き―――。
「ほ、本当に帰して……くれる、の……?」
最早彼女の言葉は偽りではないと信じざるを得ない。
助かりたい、生きたい、と願うのは当然であり、ただの人間の女にとって
いまはそれだけが最も重要なことだった。
縋る様に回された彼女の手に己の手を触れさせ、
いまここでその不満を答えるべきか否か、言葉に詰まってしまう。
■セレーナ > 「ええ、帰してあげるわ。
少なくとも、まず、貴女は私の眷属になりに来たわけではない。
次に、私は人を吸い殺すのは趣味じゃない。
最後に、貴女を殺して怪しまれ、追手がかかるのは私にとっても得策じゃない。
だから、どれを選んでも帰してあげる。
……大丈夫よ。どれを選んでも、貴女にとっては心がちょっと軽くなるだけだから」
レリアを篭絡するように向ける言葉。
その言葉は密やかに、甘く、毒をしみこませるように。
ただ、選ばなければ逃がさない、と言うように両手はしっかりとレリアの身体に回されている。
大して力を入れているようには見えないのに、振りほどくことはできない力が入っているだろう。
■レリア > 背後の彼女の台詞を聞き、深く深く自らに落とし込む。
いずれも完全に信用できる訳では無いけれど―――彼女の心証を悪くさせる事は得策ではない。
そう考えれば、自ずと答えは一つしか無かった。
「わ、わかったわ……。」
言い終えると、恐る恐る首を回し、彼女の瞳を見詰めながら、
小さな小さな声音で己の"不満"を囁く。さてその言葉とは―――。
■セレーナ > 【部屋移動します】
ご案内:「森の中の洋館」からセレーナさんが去りました。
■レリア > 【移動いたします。】
ご案内:「森の中の洋館」からレリアさんが去りました。