2022/08/21 のログ
■ルヴィエラ > (愉しむために、其の後が愉しめなくなるのは、本末転倒だ。
節度とは、そう言う意味。 破滅的な愉しみ方は、余りお勧め出来ない。
己が与える破滅的な其れは、其の後を己が保証して居るから出来る事だ。
己から娘に、生きる為の姿勢について語る事は無いのだろう
この娘は、云わずとも良く理解して居る。 貴族として、在り方を学んで居る。
様々な者を"掬い上げて来た"事が多い己にとっては、其れは中々に新鮮な事か
己は、ただ見守るだけで良い。 もし、この娘に何かあったなら。
きっと、其の時だけ、己が構えば十分なのだ。)
「―――良く出来た子には、褒めて上げねばね。
勿論、態々私が招き入れたのだから、遠慮なく強請れば良い。
ただ…、……さて、何処まで自分を御せるだろうね? ……何せ、相手は私なのだから。」
(誰を相手に身体を重ねて居るのか――理解して居るのだろうか、と
揶揄う様に、そう連ねては、娘の顔を柔く引き寄せ――口づけを、重ねよう
柔く啄み、押し付け、じゃれ合う様に舌を絡めて、戯れ合い
其の上で、ゆっくりと娘の身体を、抱え上げる。 娘自身の重みで、結合が一層深まり
子宮の奥底を熱塊が深く押し上げる圧迫すら与えながら、部屋の中、用意されている寝台へと向けて、歩み出そう
一歩、一歩、進む度に、打ち付けられる腰と共に娘の身体が、上下に跳ねる筈だ
寝台の淵へと腰を下ろせば、改めて娘の身体を柔く抱き締め
――娘の奥に、塗り広げて行こう。 媚毒たる夜魔の薄蜜を。
とぷ、とぷ、と溢れ出す先走りを、聖域たる器のうちに、染み込ませる様塗り広げる毎
胎の奥で響く結合の気配が、次第粘ついた物へと変わって行く筈だ。)
「……感じる事に、集中して御覧。
……何よりも、溺れる君の姿を、愉しませて貰いたいのだが、ね?」
(寝台が、軋む。 突き上げが、次第容赦を失って行く。
父でありながら雄である魔が――娘を、雌を、堕落にまで導こうとし始めていた)。
■マレルダ > あり方として知っている事と、実際に体験することの間には差がある。
例えば、己が知っていたセックスと、こうして『父』と交わるセックスの差とか。
だが、それだけに溺れるのは違う。
それは楽しみの意味をはき違えている。
「それはやってみないと分からないわ。それでも、足るまでと心には決めておかないと」
ここに狡いトリックがある。止めるポイントは、足るまで。
足りぬと感じればまだ求められるという事。
そんな言葉遊びめいた逃げ道を作っておいてから
今一度腰を動かしていく。
完全に結合している肉棒と子宮。
その感触が初めてであれば、より心地よく感じていく。
そうしていれば持ち上げられる感覚。
より深く重なり合って、より強い快楽へと変わる。
上下にはねる動きが新たな快楽を伝えてくる。
それを素直に感じていれば、身体の奥が、芯の方が熱くなってくる。
淫魔と交わっているからこその媚毒の効果。
それをなんとなく理解すれば、くすっと小さく笑いこぼして。
「娘にも本気なのね……ううん、それがパパの本質だったものね」
揶揄うように言葉を向けたものの、それが本質なのだと改めて理解すれば、
淫魔の状態を寝台に横たえるように両手で押し倒す。
その上で、上体も、顔もすぐ近くに置いてから、腰だけを激しく動かす交わりに変えていく。
「淫魔の本気は初めてだものね。うずくというか、飢えると言うか……ううん、ゾクゾクしてくる感じ」
そう告げた娘の瞳は欲望にぎらぎらとしていた。
感覚的な感想だけを口にした後で、『父』に胸を押し当てて、そして口づけを重ねていく。
性行為としての快楽も心地よいけれど、どちらかと言うと心の結びつきの方が心地よく感じる性質故に、
より近しく、より情を感じるような体勢をとってより深く交わっていこうと。
■ルヴィエラ > (――己と、こうして言葉遊びを交せる辺りに、余裕を感じる物だ
心配をしては居ない。 その在り方は、易々と揺らぐ物ではあるまい
自制心の逃げ道も作りながら、己と言う物が揺らがぬ様な強さを持つ
其れは、誰よりも自らを理解して居なければ為し得ない事だ
娘が己を押し倒して行くなら、其れを拒みはしない
されるがままではない、自らもまた腰を跳ね上げ、娘に合わせながら
掌を腰から、娘の乳房へと滑らせ、其の膨らみを愛でよう
娘が身体を押し付けてくれば、其の掌を背に回し
雌では無く、娘を愛でる様に柔く撫ぜ上げ、肢体を絡めて行くのだ
快楽だけで無いモノを、もし、娘が求めて居るのだとしたら
其処に、娘の本質や、性質が在るのやも知れぬ
口付けの合間に、耳元や目元に唇を触れさせ、"可愛がって"やりつつ
熱塊が、ゆっくりと脈打ちを強めて行くのを、其の胎に感じさせようか
娘の動きが、娘の身体が、この交合で確かに雄を、父を愉しませて居るのだと
そう教える様な反応を、伝え。)
「……飢えを満たされる事は、何よりも喜悦を産む物だ。
君が、初めて経験する感覚やも知れぬが…、……じっくり、味わうと良い。」
(様相は――まるで、変わらない。
大抵の人の雄の様に、快楽が深まり、余裕を失い、溺れて行く様な気配は微塵も或るまい
だが、其れが夜魔と言う物。 淫魔と言う物。 女を、雌を、屈服させ、堕とす為の存在
だが、今は其れが、ただ愛でる事のみに向けられている。 己が娘を、甘やかすにも似て、構いながら。
己が腕の中で、娘が、溺れて行くのを見守るのだ。
全てを包み込む様に、全てを赦す様に。 ――快楽が弾ける其の瞬間を、見詰めて居よう)。
■マレルダ > 押し倒したことでより触れ合う肌の面積が広がって、時々父からの愛でる行為が混ざってくれば、その声には甘いものがたっぷりと乗り、楽しげに歌うように体を動かしていく。
「ああんっ!……これ、すごい、けどぉ……パパの、ちゅーの、ほうが、気持ち、いいっ!」
何がどう気持ちよいのかを言葉で紡ぐ。
そういうスタンスが余裕があるように見えてしまうのかもしれないけれど、声色や舌の回りで若干の差がある。
それを知られることは弱みを知られることでもあるので、あまり見せないようなスタンスにしていた。
が、父が相手であれば強みも弱みもあってないようなもの。
故に、やや舌足らずな雰囲気になる言葉をそのままに紡いでみた。
じっくりと味わうと良いと言われたこの行為。
いわゆる飢えを満たす行為でもあれば、何度も何度も求めていくのだろう。
けれど、それはこの先。
まず今は、目の前の一回を楽しんでいた。
愉しんでいても、相性の良い肉棒に淫魔の媚毒。そして、父のかわいがりがそろえば頬なく絶頂へと至るだろう。
ただ、いつものように安易に達するのではなくて、より強く、より深く、快楽が感じられるように全身の動きを工夫する。
小刻みに震える身体を暫し堪えていくものの、ついに達する絶頂は、今までの中で一番深く高いもの。
「あああっ!……ぱぱ、ぁ……イくぅっ……わたし、ぃ、イ……っちゃぁぁぁあぁあああっっ!!」
高く大きな声で快楽を叫びながら、激しく体を痙攣させて、頤を空に向けながら達する姿を父に晒していく。
そして、達しきれば、ぱたり、とその体の上に己の身体を預けて暫しの休息、か。
ご案内:「高級娼館「ファタール」」からマレルダさんが去りました。
ご案内:「高級娼館「ファタール」」からルヴィエラさんが去りました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」に影時さんが現れました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」にジギィさんが現れました。
■影時 > 「……おお怖ぇ。なんだ、あれか。夜のツレでの取り合い沙汰にでもなったンか、きっと。
独占しておきたい、己だけのものにしたいと思わせるの魅力――、魅了、か」
想像してみよう。先ほどの魅了は抵抗、こちらの言葉で云うならレジストはできた。
状況が状況だからでもあったら、己のように強くない、備えもないただの人間が耐えられるとは思い難い。
手籠めにしているつもりと思って、その実は虜にされていたというオチ、か。
その手の感情に流されて己を見失うものの末路は、だいたいろくでもない。己もそうならない、ということも言い難いもの。
「滅ぶのもまた神の意志、思し召しとやらと云われそうで何から何まで、というのは好きじゃぁないな。
抗いすらもまた――とされちまうにしても、と……?」
色々な処を巡り歩いてきたが、その手の見聞録めいた本を会う機会はこの国でもある。
石造の文明の痕跡を残して、ふっといなくなってしまったかのような民が居た、あったとする記述をふと思い出す。
星が数廻りしたから、命数が終わったので滅びを選んだやら云う論じようは、はたして真相かどうか。
生憎と神ならぬ己には分からない。が、方々からの圧力などで滅べ、滅せよとされた際――素直に従えるかどうか。その際の人の動きは色々な例がある。
伐り倒され、残る切り株の断面を確かめ、虫よけなるものを施す姿にふと、目尻が下がる。
「ああ、貼っつけてくれるだけでいい。それで今回の大仕事のひとつは仕舞いよ」
想定外の色々があれば、思うところもまた多いだろう。ここは人ならぬ、元はとはいえエルフたちの森なのだろうから。
柑橘めいた香りを覆面越しに感じながら、差し出した札をぺたり、と。貼る姿を見れば、それを契機に札に込められた魔術が発動する。
札の表面に複雑な文様が浮かびあがり、それを伐り倒した樹全体を包んで眩く光る。
そのあとに、あったはずのものが消えて失せれば風が生まれる。倒れた樹の幹が消えて失せて、空間を生めるように大気が流れて風が生じるのだ。
■ジギィ > 「いちばんヤバいのはドライアドには単なる生活手段だってことよね。善悪の問題じゃないから、誰も咎められない…
そのぶん、尊厳とかも認められていないけど。
…カゲトキさん、折角寿命長いんだから体験してみる?」
少し顔をしかめてべっ、とスカーフの下でエルフは舌を出す。少なくともこのエルフの里では、在るもの全てに尊厳を認めるものであったから、何となくそのような態度は受け入れがたかった。まあ、そのようなヒトの在り様じたいも認めていたので顔をしかめるだけで留まる。
後半、彼の背負い籠に取り付けた件のドライアドの種を眼で指していた。もちろんもうその目自体にんまり笑って。
「ンーどうなんだろね。 あのひとたちが何か考えているようには思えない、というか視座が全く別にありそう。
氏族の中では『どうでもいいと思われているんだ!』ってスネている人も居たなあ」
虫よけと称して振りまく仕草を終えて、諸々を腰の辺りに付け直す。そうしながら切株を見る目は思案気だ。
自分はこうなった後の樹の行く末に詳しくはないけれど、樹の戦場は地面の下にもあると聞いた。
―――どうか、再びの僥倖がありますように。
その思考が、来る途中で出会ったものに及ぶのに時間はかからない。
エルフは重労働を終えた彼の様子を伺っておきながら、少々上の空で受け取った札を頓着なく切り倒された幹に貼り付ける。
「――っぷわ…」
巨木が在った空間に流れ込む空気はそれなりに多く、上の空でいた事もあって中腰だったエルフはすてんと後ろに尻もちをついた。
そうしてひっくり返った視線に思いのほか青い空が飛びこんでくる。
日差しは少し午後に傾いているけれども、日暮れまでに森から出ることは可能だろう。
「あー…空気が美味しい。
カゲトキさんも少し吸って起きなよ。今ここなら、変なモノ漂ってる危険ないから」
ひっくり返った表紙にスカーフがまくれたので、エルフはひっくり返ったままそれを取り外して深呼吸。
ついでに連れにも、深呼吸のお誘い。
帰りはまた薄暗い中を緊張して戻ることになる。この辺りで一度、緊張を解いてもらうのも良い。
なにしろまた、働いてもらわなきゃいけないかもしれないし。
■影時 > 「……――あー。そうか、その意識の差も何よりも大きいか。一方通行の懸想、情とやらは、何かと怖ぇなあ。
んや、気にはなったが、なったがー……諸々教えれば聞いてくれるのか、怪しいことこの上なくなってきたぞ、ったく」
幸か不幸か世話になったことはないが、サキュバスの類にも似ているような気がしてきた。
あれも確か、男の精気やら何やらを吸うのは生活手段、栄養補給の手段であるらしい――と聞く。趣味である、という与太も聞くが。
後腐れもないかもしれない反面、魅了にどこまで抗いきれるかどうか、という自信もない。
美しい森に潜む美女、美姫には己のような流れ者は御しきれず、不釣り合いであろう、と。向け遣られるにんまりとした眼差しに肩を竦めよう。
「すでに決定事項であるが故、悪しからず――疾く従え、としか思っていなさそうという具合かね。
だとしたら、そうだよなぁ。お前らなんぞ決まり事の前にはどうでもよいのだ、と。そう思っちまうのはもっともだ」
虫よけとなる薬やら液やらを、かつての故郷の農作業で作ったな、と。
ふと、そんなことを思い出す。もっとも、エルフがやって見せた薬のようにいい匂いはさすがにしなかったが。
神の目線、視座が凡俗のそれと同じであるとは、大体限らない。
自然の摂理とやらは、それこそ抗いがたい大波、波濤の如く、抗いも何もかもをただ押し流してゆく。
超然とした長命者の類でさえそう思うのだから、なおさらであろう。
幹の具合は先ほどエルフが見分してくれたが、土中の根、さらに地中深くの地脈などの具合までは、確かめきれてない。
土中に潜り、進む仙術めいた忍術も覚えてはいるが、それを使ってどうこうできる、という沙汰でも最早あるまい。
「……大きいものが、不意に無くなっちまうってのは、どうにも物悲しさを覚えちまうな。
ン?そうか。 なら、どれ………」
術で樹が消え去ったのを確かめ、余韻めいた風が渦巻く中、口元を隠す覆面を外して、息を吸う。
大きく大きく吸い――長く長く吐く。成程、確かにこの空気の旨さ、清涼さは格別である。取り込む自然の氣に身体も整うというもの。
用が済んだ斧を取り上げ、刃の状態を確かめては背負い籠の中に放り込む。
腰裏の雑嚢から取り出す巾着から、丸薬状に固めた携行食を摘まみ、口に放り込む。唾液でふやかし、飲み下しつつ、尋ねるのは。
「……帰りが厄介だな。さっきのアレに遭う可能性が一つ。で、あの種を植えられる場所にジギィ。心当たりはあるか?」
動く森、とも云うべき歪んだ樹人めいたものと遭う可能性と。
今回、もう一つの達成事項として生じた事項の対処。特に後者について、当てがあるのかどうか。其れが問題だ。
■ジギィ > 「まあヒトとヒト同士だって解ったものじゃないからね。ドライアドのほうが解りやすくて思いっきり愛情を掛けられるってのもあったなあ。まあ、つまりその学者がどえむだったわけだけど。
えーっ、『腹上死』って、男のヒトの夢だって聞いたことがあるよ?」
ちがうのお?とその笑った目のままで首を傾げて見せる。否定するならば、以前の稚児男色疑惑が再浮上するかもしれない、と予感するかもしれない。
それから彼のカミサマへの言い様にけらっと笑って、辺りを示すようにエルフを片腕を振る。
「あはは、そんなカンジかもね。
基本的にはどうでもいいと思っているんだけど、ごますってくるし懐いたのが可愛くない訳ではないから、たまーに手を貸してやる
…というのが私の見立てです」
どう?とエルフは肩に纏った狼の毛皮に聞いてみる。もちろんご本尊ではないからうんともすんとも言わないが、それ自体が守護精霊からの返答とも思えてしまう。そのままエルフがふふん、と鼻息を漏らすとスカーフが揺れる。
そのエルフがすてんと転がったまま天を眺めていると、彼が何か口にしているのが視界に入る。ずるーい、と声には出さずに口だけ尖らせて、尋ねられたことにそのまま首を傾げる。
地面を覆っている落ち葉がくせ毛にまとわりついて来る。
「そうねえ…もっと森の奥に心当たりが無くはないけど、今はちょっと、難しいかな。
この森じゃなくて、全く別の土地に連れて行ってみよっか。それが禁止事項なら多分、途中で鳥か獣に襲われると思う」
襲われるのはヒトではなくて『種』のほうだが、エルフはあえてそこは明言せずにいうと
よっ、と声を掛けて身を起こして、立ち上がる。
体中についた木っ端を払い(本日何度目だろう)ながら、装備を検めて。
「それよりさ、途中でスモモの樹に寄っていってもいい?帰り道からそんなに外れないから」
検め終わると、片手で登って来た斜面の反対側、来る時にエルフが滑り落ちた側を指さしながらエルフは言う。
視界は針葉樹で所々遮られるが、反対の斜面を見れば午後の陽がさんさんと降り注いでいて、こちらとはまったく植生が違うのが解るだろう。
同意が得られれば、満面の笑みでスカーフを再び口元まで引っ張り上げて、弾む足取りで斜面を降りていくだろう。
彼にはすこし、既視感があるかもしれない光景だろうか。
■影時 > 「……其れも其れでなんとも言えねェや。犬や猫を育てて可愛がるのとは、ワケが違うだろう。
斯様な死にざまをして大往生という手合いは確かにいるが、俺は、どうだろうなぁ。そんな風に死ねる気がしねぇや」
そのように育てたものを愛玩動物とみるのか、性処理道具とみるのか。
何となく、鉢植えに植えた種や苗から見事に育った木霊を想像する。さながら、盆栽でも育てているような心持ちだ。
可愛がる犬や猫によもや、欲情するのか。人の姿をしているからといって、愛情をもって育てたものに、勃起できるもの……なのだろうか?
真面目に考えだすと難しい。
どこでそんな言葉を知った、と言わんばかりに露骨に顔を顰めつつ、言葉を濁す。
干からびて死ねるのか。はたまた、思いもよらない何かで本懐等を遂げることなく、死ぬのか。――否、もともと、死ねるのか?
「はははは、可愛いと思っている――ってのがミソだな。
成程成程。何は兎も角、思惑通りに育ったものが可愛くなけりゃ、目をかけてやる気も失せるか」
自意識過剰め、などとは笑うまい。嗤いづらい。乾いた笑い声を響かせつつ、肩を竦めて息を吐く。
目をかけてやって、そのあとの行く末の例があの動く森のような何かなどと思うと、考えるだけ馬鹿らしくなる事柄もあろう。
口にしている携行食は、いつかの邂逅で分けた兵糧丸だ。
食いたげな風情が見れば、歩み寄ってみよう。一つまみ分を取りだし、落とせば口元にちょうど落ちるかもしれない。
食べれば、砂糖の甘味とはっかめいた香気が口の中に広がることだろう。
「――それが現状一番良さそうな気がしてきたが、ちょっと、待て。
それは次第によっちゃァ、件の種を襲ってくる鳥獣の類を退治せにゃならんというオチかよ」
新天地を求める。その判断自体は、良い。間違いではないだろう。
だが、別口の追っ手があると考えると辟易とした風情が、男の表情に漏れる。
植物の種の運ばれ方は、色々だ。実を食した鳥や獣が、別の土地で排泄した糞に含まれる種が発芽するという例の類を思い出す。
予測のひとつとして、そういった外部への運搬者になる側が襲い来るケースが脳裏に浮かぶ。
続く問いについては、問題ない――と頷き、背負い籠を取り上げて肩に担ぎ、口元を覆面で覆い直す。
見やる行く手は、日の当たり方ゆえか、また違う植生の繁茂が見られる。どことなく、覚えのある情景だ。
■ジギィ > 「そーね。ワケは大違いよ。何より向こうは絶対に貴方よりも大事なものがあるし、むしろそのために飼われるわけだし。
…ふーん…ふぅん?」
顔を顰められつつしげしげと彼を覗き込む。
愛情、性愛と欲情とを混同する話はよく聞くことだ。それが一体であるとおもっているものもあれば、分かつことができるものだと思うものもある。しかしことドライアドを育てた記録の中で挙句行為に至るものは、こぞって独占欲を露わにしていた気がする。
さておき、彼の懊悩(?)はエルフに測ることは難しかったらしく、ふうん、ともう一度鼻息を漏らすと背筋を伸ばした。
「そんなものじゃない?ちょっと、ヒトのほうのカミサマは知らないけどさ。
べつに感謝されたりとか信仰されたりとかしなくたって、カミサマには基本関係ないもんね」
最後に一応、ウチのほうのカミサマの話ね、と付け足しておく。
彼が漏らした乾いた笑いが、何を思いやっての事か今のエルフには気付くことが出来ず、怪訝に眉を顰めるだけ。
そのまま転がって見遣ったもの欲しげな視線が彼を動かしたらしい、こちらに近づいて来るのを視線だけで追いかけていると、先ほどのところから取り出す仕草を見せるので
エルフはそのまま落とせ、とばかりに口を開けて待っていた。
―――すぽっ、と音もしたかもしれない。
「ン――――流石れすカゲトキさん。
んふふ、らいじょうぶ大丈夫。ほこは任しておいて、ほの森に居る間は私が守ってあげるから。
…ドライアドの種子を守って往く男。うーん、ひとつ歌ができそうだわ」
頂いた携帯食を頬袋に詰め込みつつ、責任あるのだかないのだか解らない言葉を彼にかける。
そうして立ち上がって、身を検めて、頷く彼を見止めるとスカーフの上からでも解る満面の笑みを浮かべて斜面を下へと降りていく。今度は来た時と違い、落ち葉で足元滑らせるのは相変わらずとはいえ立ち並んだ樹をまるで止まり木のようにして下って行く。
スカーフの下で口の中のものを転がせば、吐息がハッカに香って清々しい。エルフは目を細めながら危なげなく斜面を下りきって、彼の到着を認めれば進む方向を指し、陽の当たる反対側の斜面を登って行くだろう。
今度は落ち葉は少ないが、地面は根太が這っていて低木が多い。近くで鳥が羽ばたいていく音が聞こえ、遠くで囀る声が聞こえる。
■影時 > 「いや全く、そうだな。その通りだ。
――嗚呼、ダメだな。そのあたりを考えるとやはり俺には飼える気がしねェや。
弟子でも何でもなく、俺が死んだ後にも残って枯死したなンてオチも、責任を持って育てたとも言えねえだろう?」
この辺りは考え過ぎなのか。それとも、抜け忍の癖に忍者としての責任感なども残っているから、なのか。
肉欲と愛情を分けて考えること自体は容易。しかしながら、死んだ後の始末などを考えると、厄介だ。
住みかに一輪の花が残って、餌を求めて徘徊する、または出歩けずに枯死したにしても、育成に対して責務を果たしたとも言い難い。
「分かってるさ。ああでも、人の方の神っていうのも、また一層厄介になるぞ?
唯一の絶対の神しか信じてはいけないというのもありゃ、色々と物凄い神様やらがひしめくのも、色々ありだ。
……聞いた話を思い出すなら、人間にちょくちょくちょっかいを出すのもとか、色々あったか」
全く、信仰も千差万別、多種多様。文化圏が移ろえば、国の境目を跨ぐだけでも変わるものだ。
故郷ですら土着の信仰と流入してきた宗教が混じって、ごった煮めいた有様をしてもいたか。カミサマも大変である。
さて、そんな神にかわって兵糧丸をぱかっと開いた口に落とそう。落としたら、あ。いい音がした。
「……唾液でふやかして食う奴だから、飲み下し辛かった水を飲めよ。
なぁ、その間だが、獣除けの香の類は覚えはあるか?
気配を隠して駆けるのが出来んワケじゃないが、隠形の仕様がないものを追ってこられると厄介だ」
兵糧丸は出立前に仕込んだものだ。万一食料の類を落としてしまったとしても、かろうじてどうにか食いつなげる分はある。
飲み物がないときにも食べられるように工夫はしてはいるが、慣れないものには少々つらい可能性はある。
念のためにそう言葉を送りつつ、続く言葉に思わず不安げな表情が満面の笑みを浮かべて見せる側と対照的に滲む。
そうしながらも、追い縋る動きについては淀みなく、危なげなく先導するようなエルフの後ろを追従してみせようか。
遠く遠く囀る音と――重く、そして軋ませるような。そんなさざめきめいた騒音も僅かに聞こえてくる。
あの妖物めいた樹が、無垢の種の気配を感じて、探し求めているのではあるまいか。斯様な予感をさせる。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」からジギィさんが去りました。
■影時 > 【次回継続にて。】
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」から影時さんが去りました。