2022/07/19 のログ
ご案内:「地下牢」にマリエラさんが現れました。
■マリエラ > 微かに香る血の香り、低く苦しげな呻き声、渦巻き澱む昏い感情。
戦場には付き物のそれらを遠く聞きながら、細く溜め息を吐く娘が一人。
砦の地下に設えられた牢獄の中、天井から下がる鎖に両手を繋がれ、吊るされて、
目許を黒い布で覆われ、恐らくはもう数刻ほども放置の憂き目に遭っていた。
時折、鉄格子の向こうに伸びる細い通路を、人が行き交う足音がする。
けれど彼らは一様に、鉄格子の向こうからおっかなびっくりこちらを眺め、
そそくさと走り去ってしまう。
唯一の出入り口たる鉄扉には、無骨な南京錠が施されている上、
この部屋、そのものに結界が張られ、魔術を操る者は外へ出られない。
加えて、虜囚はただ一人、吊るされた小柄な娘であることを思えば、
なんと臆病なこと、やはり人間どもは―――――等と、娘が密かに考えていたかどうか。
いずれにしても、娘の立場は囚人である。
見ることも、触れることも封じられている今、全くもって無力な、
―――――裁きを待つ咎人、搾取されるだけの存在。
その、筈だった。
■マリエラ > 「――――――退屈、だわ」
呟く娘の口許は緩く綻んで、少なくとも現状に怯え、
待ち受ける未来を恐れているようには見えない。
身に着けたドレスの袖や裾、襟元が随分解れ、かぎ裂きが目立ち、
素足の踝や踵には、薄っすら擦り傷も出来ているのだが、それでも。
「ああ、欠伸が出てしまいそう……」
手で口許を押さえもせずに、大口を開けて欠伸だなんて。
無作法だとは思うけれど、この状態では仕方なかろう。
あ、ふ、と小さなくちびるを開いて、暢気に欠伸をひとつ。
仰のかせた頭をゆるく左右に振ってから、溜め息と共に俯き、
「それにしても、退屈だわ……。
まさか、退屈で殺すつもりなのかしら」
呟く声は分厚い石壁に吸われ、聞く者はきっと、居ない。
ご案内:「地下牢」にクレイさんが現れました。
■クレイ > 「おら見世物じゃねぇぞあっちいけ」
そんな声が聞こえるかもしれない。
シッシッと人を追い払えば南京錠を開く。部屋に入った途端に顔をしかめた。
依頼を受けた。魔族から情報を引き出せ手段は問わないと。だが中々に嫌な依頼をひいたらしい。
「うーわ、また厳重な……ったく。おい、休んでる所悪いがお話に来た。とりあえずそっちの状態はこのままでいかせてもらうぞ。触られた奴が凍ったとか目を見たら凍ったとか情報が錯綜してるからな」
相手の能力がわからないが故の拘束方法だったのだろう。そうせざるおえないとはいえ、中々に見ていて気分の良い光景じゃない。
さて、そんな風に声をかければ再び扉が閉じる音。
「さて? 個人的な希望を言うなら……このまま素直にお話としたいんだが? 攻撃目標、お前さんの能力の詳細って所だ。最低限それを話せば俺の前でだけ手錠は外してやる。痒い所もかけないのはつらいからな」
とりあえず何かをする前にまずは簡単な交渉から。
■マリエラ > ――――――新たな人物の足音が耳に届いた。
新たな、とわかるのは、今までで一番迷いなく、一番真っ直ぐに、
こちらへ向かって来る足音であったからだ。
何か言っているのが聞こえたが、こちらに向けたものではなかったらしく、
あたふたと立ち去る足音が、幾つか。
扉を潜り、部屋の中へ入って来た足音はひと組。
聞き慣れない声、言葉遣い、少しばかり早口に聞こえるのは、
未だ、娘の頭が退屈モードであったせいか。
俯いていた頭を声のする方へ向かわせ、そこから軽く、首を傾げる仕草。
閉じていたくちびるを開くのは、少し間をおいてからだった。
「名も知らぬ顔も知らぬ男の個人的希望など、叶えてやる必要ある?
だいたい、お前の質問に答えてやって、わたしにどんな利益があるのかしら」
ふふ、と小さく笑って、交渉決裂のお知らせ代わりに。
■クレイ > 「利点は2つ。1つは苦しまなくて済む。2つは……手だけでも自由になるぜ?」
なんて言うが。はぁと溜息を吐き出す。
そして頭をガシガシと掻いて。
「ま、素直に吐いてくれるなら最初から依頼なんてこねぇって話だよな。しかも正論ときた」
しゃあねぇわなと半分諦めに近い口調で言葉を漏らす。
そうして近寄ってくる足音。
「さて、そうなると俺はお前さんの情報を引き出す為に色々とする必要があるわけだ。古典的な拷問? やっても良いがあれは職人がいて初めて成立する技でな。俺がやると最悪相手を死なせたり、情報を引き出す事が出来ない状態に追い込む事になる」
実際戦場でも珍しくない。情報を吐かせようと思った。そんな言い分を言っておいて現場を見ればただのなぶり殺しにしかなっていないという状態が。
さて、そんな事を言いながら近寄れば。
「そんな時の方法は2つ。1つは仲良くなる。でも……お前さんそういうタイプじゃねぇだろ完全に」
さっきの発言からしてそういう方向のキャラじゃない。であればもうひとつの手段だ。
ドレスに手をかけられる。
「となるとだ、実は最効率はこういう方法になるわけだ。タオル位は持って来てあるから安心しとけ」
もし抵抗しないのならそのままドレスを引き裂くように一気に手を下に引っ張るだろう。
■マリエラ > 「……触れたら凍らせてしまう女の手を、自由にするの?」
小さいがふっくらとしたくちびるを、皮肉げに歪めて微笑む。
どうせこんな交渉は、端から成立しないと知っている。
娘は勿論、きっと相手の男だってそうだろう。
近づいてくる足音に合わせ、声の降ってくる角度に合わせて、
小柄な娘は更に高く、見上げるように顔を仰のかせ。
「お前の都合など、わたしの知ったことではないわね。
退屈せずに済むのなら、一度くらい、殺されてあげても良いくらいだけれど……、」
至近距離、吐息の温度も伝わるほどの。
ドレスの襟元が引き攣れたような感覚に、そこを掴まれたのだと知る。
上等な絹が引き裂かれる、無慈悲で残酷な音が響いた。
ドレスの前が大きく裂けて、娘らしく、あるいはいささか過剰に成熟した女の丸みが、
蒼白く煌めくような素肌が、男の眼前に晒されるだろう。
身動ぎもせず、声も立てず――――――傲然と男を仰いだ顔を彩る微笑も、そのままに。
「――――――――――ひとつ、聞きたいことが出来たわ。
タオル、って、どういう意味かしら。
まさかわたしに、ドレスの代わりにそれを着ろ、なんて言わないわよね?」
男がどこまでを聞いて、依頼を受けたのか知らないが。
触れた者、時には 触れられた 者さえ凍てつかせた娘は、未だ、軽口を叩く余裕もある。
■クレイ > 「能力の詳細をしれば対処方法はあるだろ。だから問題ねぇんだよ」
詳細がわかってしまえば対処方はいくらでもあるわけで。
さて、相手がころされてもいいなんて言えばハハハと笑う。
「ああ、不死の類の魔族だったか? それなら古典的な拷問でもよかったのか? まぁでもどっちにしても効率悪いしいいや」
痛みを与えるというのは慣れられてしまえばそれまで、そもそも相手は魔族。人間基準の拷問が痛みを与えられるかすら別問題だ。
そうしてタオルの使い方を聞かれれば。
「ん、まぁ代えの服が届くまではそうしてもらうが……それ以前に色々と汚れるかもしれねぇしな。さてまぁ早い内に吐いてくれよ。こっちも無理やりしてるみたいであんまり気分よくねぇんだ」
向こうは準備が整ったという事なのだろう。足音が移動し、吊るされた少女。その後ろへ。
「……でもまぁ、こっちでも壊れる可能性はある。壊れてくれるなよ魔族さん」
なんてささやけば……
■マリエラ > 「――――――、豪快な考えかたね」
呟く言葉に潜むのは、決して好意的な感情ではない。
それなりに言葉を選んだ結果であり、本当はこう言いたかった。
『雑なのね』
――――――と。
「お前の都合なんて、知らない、と言った筈だわ。
縛られて、目隠しまでされている女の服を『無理矢理』引き裂いて、
汚れたり、壊れたりするかもしれない真似をしようとしてるのは、
――――――全部、お前の都合じゃないの」
付き合い切れない。
溜め息交じりにそう告げて、娘はそっと俯いた。
背後に回り込んだ男が、何をするつもりか、など、問うまでもないこと。
今宵は娘にとって、長い夜になりそうだった――――――。
ご案内:「地下牢」からマリエラさんが去りました。
ご案内:「地下牢」からクレイさんが去りました。