2022/06/03 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院」にフィリさんが現れました。
フィリ > 【待ち合わせとなります】
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院」にラファルさんが現れました。
ラファル > コクマー・ラジエル学園の、なんともない日常とも言える一日。
 時刻は昼間、学生たちが、思い思いの授業を受けている場所。
 今の時刻は―――昼休み、混合クラスの学生たちは、それぞれのグループで集まりを作って食べている時間。
 その中に、トゥルネソルのドラゴンは三匹ほどいる。

 上から、シロナ・トゥルネソル。リスの娘の中で次女、母親のゼナに似た肢体とエロ差を持った娘。
 フィリ・トゥルネソル、控えめでおとなしく、一番大人びた少女、もう一度言う、控えめでおとなしい。
 プリシア・トゥルネソル、天使。

 これで、リスの娘全員ではないのだけれども、いま、この学校に通っている娘は三匹である。
 今、シロナは、一寸野暮用があるから―と、そそくさと逃げた。
 ばれているかもしれないが、フィリには言う事の出来ない部活を作って活動中なのだ。
 末娘のプリシアちゃんは、お友達と一緒に動くことが多く、今日も友達と一緒にいるのだろう。

 そんな、フィリの近くに這いよる怪しい影。

 ―――カサカサ。
   ―――カサカサカサ。

 そんな音をたてながら、魔改造も良い所の、学園の制服と同じ色をした、女児用の丈の短い和服を身に纏った幼女が、接近していた。
 長い机の列、ひょこり、ひょこり、金色のツインテールの髪を揺らしつつ。

 モグラたたきよろしく、顔を出しては潜り。潜っては顔を出して。
 徐々に、徐々に近づいていく。円を描くような軌道で、その円を狭めるように。

フィリ > 「―――― はっ……!!」

その日その時、少女は、気が付いてしまった。自らの身に迫る危機的状況に。

…というと、些か大袈裟、寧ろ誇張極まるのだが。彼女が何らかの警戒すべき状況を察知したというのは、紛れもなく事実である。
姉妹達の中でも比較的…というより、見た目だけなら完全に人間と変わらない、この二女であるが。其処はそれ、仮にもドラゴンの血を引いてはいるのである。
何らかの魔術的な気配という物には聡いし、そうでなくとも…元々他者に対し警戒心が強いからか。小動物的に、危機察知してしまうのだ。

と、いう事で。突如走り抜けた第六感に駆られる侭、思わず周囲を見渡してしまうのだが。
…悲しきかな、竜という生物種の本能に、少女個人の運動神経が追い付いていない。
出ては引っ込み包囲を描き、的確に忍び寄ってくる相手の隠行を、見破る事は出来なかった。
というより寧ろ。同じ学院に通う、直ぐ上の姉ですら。同じ状況に置かれれば、対応する事が出来るかどうか――
何せ、相手は。見た目幼女だが自分の叔母に当たる人物、且つ。竜としての力も、個人としての力も、突出した相手なのだ。
きょろきょろと後の席、横の席、辺りを見回した後。金髪尻尾の片方すら見付ける事が出来ない侭、漠然とした不安に抑えた胸から手を離し。

「……は、ぁ………」

気のせいだ。そう、思う事にした。思いたい。
その侭黙って視線を落とし。黙々と購買部で買ってきたサンドイッチを囓り始めた。
不意の怪しげな挙動に対し、何事か、と。此方を見やる他の生徒達の事など、知らぬ存ぜぬ。

……姉妹達が居なければこんなものである。
控え目で大人しいと表現すれば聞こえは良いが。実際の所…つい最近まで引き籠もっていた、超のつく人見知りというだけなのだ。

ラファル > 姪の察知能力は優秀である。
 ただ―――悲しいかな、ラファルは幼い頃から、盗賊系、ストライダーだの、忍者だの、隠れたり移動したりする系のスキルを沢山習熟していた。
 簡単に言えば、トゥルネソル商会の、ドラゴン娘たちの中で一番身体的に強い個体なのである。
 こう見えて、武術を学んで居るシロナを、手を抜いたうえで、遊んで翻弄できるレベルなのである。
 見た目だけ幼女とかいう、地雷も地雷、踏むとドッカンする系の幼女。

 フィリが危険を察知し、視線を動かそうとするときには既に反対側まで移動している。
 速さが、足りているのだ。

 残像すら認識させず。
 級友たちの目さえ掻い潜る。
 そう、この教室に残っている他の学生たちにさえ、認識させずに此処にいると言えば。
 一人もぐらたたきをしていると言えば、良く判るのだろう。

 ―――閑話休題


 そんな幼女が、視線を落としてもそもそサンドイッチを、食んでいる姿。
 その机の角にかじりつくように憑りついて、下から上へ。
 フィリちゃんを見上げて居たりする。

 視線を放していない間、瞬きしたらすでに底に居た、と云うような。

 にぱー、と楽し気な笑みを浮かべて、見上げていた。

フィリ > 磨けば光る。そんな表現が有る。
素質だとか地力だとかは有るのだから、努力すれば才能も花開く筈だ、という。何とも根性論に偏った話。
真偽はともあれ血統…というか、そもそもの種族特性という物に関しては。可能性も無きにしも非ず、かもしれないのだが。
其処の所は少女の場合。半分人間という性質が足を引っ張っているのか――矢張り、荒事どころか運動自体苦手な性格故か。
もしくは。野良犬や暴漢に物理的な意味で襲われる程度の危険なら、少女にとっては…傷一つ負う事が無いからか。
何れにせよ早急に身体を鍛えるつもりなど毛頭ないし、必要性も感じていない。
姉に引っ張られたり妹にせがまれたりしなければ、日がな一日図録や魔術書と睨めっこしていたい。もうその侭書庫の主になりたい。
学校以外だと魔術に秀でた叔母に師事しており、叶うなら自分も商会で魔導関連に携わりたい。
それが、フィリという少女なのである。

…が。そうは問屋が卸してくれない。
学校とは勉学だけではない、社会的な人間関係を学ぶ場でもある。
身分を廃した混合クラスであれば尚更、周囲には様々な生徒達が居る。
誰より率先して動く事の出来るシロナや、かわいさの実体化であるプリシアとは違う、この少女も。
授業中には他の生徒と関わらねばならないし、科目によっては運動や…武術も、やらなければならないのだ。

さて。その武術、というと。少女には二人の叔母が居る。
片方が先に挙げた、魔術に秀でる竜胆であり――もう一人の、武術を極めているのが――

「    、 ぇ。」

目の前に居る生首である。
否、勿論天下のコクマー・ラジエル学院、真っ昼間の教室で。さらし首など行われている訳がない。
正確に言い表すなら机の角に顎を載っけて此方を見上げる、瞬き一つの間に下から生えてきたらしい見た目幼女の事である。

「 ひゃ、っ、 ひゃぁぁぁぁぁぁっっ!!?」

普段の少女しか知らないクラスメート達は、さぞ驚いた事だろう。
物静かを通り越し瞬殺無音を嗜むかのような少女が、素っ頓狂な声を挙げ。文字通り飛び上がったのだ。
其処で初めて、何時の間にやら其処に居る部外者の存在にも驚くのだろうし…更に。
謎の幼女に対する少女の声も。もう一つ、驚きを追加する事になる筈だ。

「ぉっぉぉぉぉぉぉばさ、っ…ぉ、ねぇさ、まっ!? ラファルちゃ、ん、さまっ…ぃ…ぃかがなさ、ったの、です――!?」

ラファル > そもそも、磨く気が無ければ、磨かなくても良かろうである。
 何故ならば、フィリの母親であるリスも、フィリと同じか、それ以上にどんくさい。
 怪我をしないという一点は同じだが、それ以外の何もないのである。
 そして、自分は商人を極めるからいいんです―などと、運動をしない始末だ。

 そう言う意味で言うならば、あの母有りてこの娘あり、なのやもしれない。
 自分の好んだものに全力以上を注ぎ込む、フィリの姿を見て、叔母(幼女)は、思うのだった。

「あっはー。」

 驚いて目を丸くして飛び上がる姿を見て、ぱちぱちと、拍手する幼女。
 その姿は、彼女の妹であるプリシアと近しいが、其れよりは少し年が行っている。
 小学生くらいの子供と言って良いだろう。

「んっとね、師匠に放り込まれた☆」

 ラファルが学園に入る理由、学業と言う意味では薄い、それは、フィリと同じ。
 そして、人間関係の構築や学習と言う意味で言うなら、ラファルも10歳の子供だ、学ぶ必要がある。
 そう判断した師匠を通じて、リスが手配をして、学校に。

「なので、ボクも、学生さんなのでした、まる。」

 にひ、と桜色の唇を引いて、にっかーと笑ってピースサイン。
 ちゃんと、学生の証も、着物の中から取り出して、ほら、と。

 クラスのみんなが、目を丸くしておりました。
 でも、ちゃんと参加していたのです、影を薄くして。

フィリ > なまじっか前例たり得る人物が、身近に存在する事も。少女の方針に影響を与えているのだろう。
竜胆叔母様もといお姉様(そう呼ばねば怒られる)が、する事したい事を定めてくれたのに対し。
親であるリスについては…したくない事をしなくても、案外どうにかなるものだという実例なのだ。
そもそも竜とはいえこの王国、人の中で生きている存在達。人間社会の仕組みは千差万別、色々な生き方が在るのだから。

で。だ。
きっと生まれも育ちもこの国であり、とてもじゃないが実家と学院以外では生存すら困難に思える少女と真逆。
トゥルネソルの中でもダントツにワイルドであろう存在が、目の前に居る彼女であった。
人の軛に収まらない。人間のルールにも囚われない。序でに服にも最低限しか覆われていない。
今日も今日とて冒険しているか、修行しているか…若しくは何処かで騒ぎを起こして、叱られているか。
きっとそうなのだろうと思っていた彼女が目の前に居る上に――

「ぇ、ぇっ。 ぇ、はぃ…?」

説明ぷりーず。この場に居ないお師匠さんに助けを請いたくなるのだが…残念ながら。先日の妹のように、何処かの誰かと以心伝心は不可能だった。
ともあれ。彼女が何を言っているのか、脳内で反芻してみると。
方向性としては、彼女寄りの性質であろうシロナのように、学校機関で学ぶ事となったらしい。
彼女の師匠――忍。本物の忍者である――が、必要性が有ると判断したから、なのだろう。
それを此方の知らぬ間に、あっという間に手配だの采配だの済ませてしまえる辺り。書類仕事の速さに関しては、我が母、恐るべし。

序でに何時の間にやら、クラスの中に存在していたらしいという事は…ツッコむだけで無駄だと知っていた。
彼女を知らない周囲の学生達は驚いているのだが…この見た目幼女その気になれば、王城だろうが魔界だろうが侵入出来てしまうのだ。
いや、見た目というか実年齢的には、本物の幼女と言って良いのだが…それを言うと。
人竜たる少女についてなど、見た目に反して実年齢が片手で足りてしまうので。あまり迂闊な事は口に出来ないのであった。

「大体――理解出来た、気が…ぃたします。
……ラファルぉ姉様も、混合クラスに入られるの――ですね。
ぇぇ、と、今は…他の子達は。ぉ昼休みなので、居なぃのですが……探しに参ります?」

謎の侵略者は、正体さえ分かってしまえば。少女にとっては会話もし易い家族であった。
お陰で。珍しく、比較的ちゃんと喋る少女の様子にも、また。周囲が目を丸くしている事には…気が付かないフリをして。
一先ず此処に通い始めたらしい彼女と。どう、行動するかを思案めかせて。

ラファル > 「フィリちゃと同じだよ。
 ボクも、人間関係の機微を覚えてこいーって、ね。
 だから、ほら、ちゃんと着てる。」

 簡単に、簡潔に、その結果の単語。
 ちゃんと立って見せれば、東洋の島国の服装にあるような和装。
 子供用の甚兵衛と言う奴だろう、この学園の衣装に合わせた色となっている。
 足元も、ちゃんと草履をはいていたりもする。
 説明した積りになってえへんぷい、と胸を張る幼女、下着は付けてないのかちらりとピンクの先端が。

「んー、探しに行かなくても良いかな。
 其れより、フィリちゃに、プレゼントがあるから、来たの。」

 他の子、居る事は知ってるし、探せば見つかるかもだけど、それはまた別でいいや、と笑って見せて。
 もう一度、甚兵衛の胸元に手を伸ばして、その中からにゅるり、と出るのは。
 鈍銀色のウォーハンマー、其れなり以上の大きさの武器だ。
 授業で学んで居ると思うが、ハンマーなどの鈍器は、その重量を振り回して使うので、剣等よりは初心者向け。
 それを手にして、はい、と差し出した。
 ハンマーの殴る部分には、真っ赤に染まっているのは、どう見ても返り血だったりする。

 フィリが手にすれば、それがブルりと震えて、手に吸い付くだろう。
 認められた、と言う証左になる。

「後ね、ボクの事は、おねー様じゃなくていいよ?
 ボクは、フィリちゃんのいもーとになるから。」

 見た目的にそうなるもんね?耳元に聞こえるラファルの声。
 ラファル自身はしい、と桜色の口元に指をあててウインク。
 風の魔法を使った、遠話の術、フィリの耳にだけ、声が届くように。
 恐らく、お姉様の下りに関しても、風の結界で他の子達には届いてないのだ。

フィリ > 「――大切なの…です、ものね。はぃ。賢明な判断だと――流石は影時様だと、思ぅのです…、 っ、っきゃ…!?」

彼女は半分人間で。自分は更に人の血が濃い。
それでも、人間達の中で、人間達と同じように生きようとするのなら。ちゃんと学ばなければいけないのだ。
こればっかりは本能だとかだけではどうしようもない。発展しすぎた人間社会に、教育や練習は必須の事柄なのである。
そういえば彼女、一族郎党だのリスのハーレム周辺だのお得意様だの、大勢集まった新年の折も。何かしらしでかしていたようなので。
…というか、少女自身が被害者の一人なので。いよいよ学ぶ必要性が増してきたのだろうなぁ、と。納得してしまうのだった。
そんな中で大きく声が跳ね上がり、わたわたと彼女に向け両手を振り回すのは。
色こそ合わせているらしいものの、形としては制服と似ても似付かぬというか、元の服装からもかなり改造の入った彼女の格好が。
この場で見えてしまうのは宜しくない物を、ちらりとでも覗かせてしまうからである。
男子生徒の反応が心配だ。…まぁ、これでも彼女の普段の格好よりは。まだ被服面積が大きかったりするのだが。

と、そうやって。彼女の方へと差し出した両手に―― どすん。

「っわ、ひゃ、ひあぁぁっっ!? っな、な、ななななっ、 ぅぇぇぇ!?」

縦横高さプラスαの次元に繋がっているかの如く。彼女の胸元から出て来た物を手渡された。
…大きい。ウォーハンマーだとかスレッジハンマーだとか、そう呼ばれる武器である。
明らかに学校の教室で出す物ではない。というか血が付いている。うん、血にしか見えない赤いモノが。
周囲の生徒達はどよめくし、持たされた少女本人はもっと声を挙げてしまう。声というか、悲鳴だ。
一体これが何なのか。どうしてこんなに物騒なプレゼントが、何の記念日に選択されたのか。
ツッコミ所が多すぎて頭の回転が追い付かない。先ず、何を何処から訊けば良いのか解らない。

…だから、未だ気が付いていないのだろう。
普通なら。それこそ同じ年格好の女子達なら、振り回すどころか持ち上げるのも大変であろうそれを。
仰天しつつも少女自身が、ちゃんと。おっかなびっくりの手付きであるが、落とさず持ち続けられているという不可思議にも。

「っぃぃ、ぃ゛、妹――そ、ぅ、ですか…は――ぃ…はぅ……
まぁ、その。…叔母――とぃぅのは。…ややこしすぎて、説明、出来そぅに…ぁりませんし……」

彼女は母の妹である。が、歳が離れているというべきか。娘達の見た目と年齢の不一致も、また話をややこしくしている。
確かにこれは。もういっそ見た目通りに見える関係なのだと、そういう設定にしてしまった方が。手っ取り早いのかもしれない。
こく、こく。彼女の纏った衣装の島国に伝わる、茶運び人形のような動きで。何度も頷いてみせた。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院」からラファルさんが去りました。
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院」からフィリさんが去りました。