2022/04/17 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス ハイブラゼール 地下闘技場」にイスルスさんが現れました。
イスルス > 今夜は満月

桜月 桃月 ピンクムーンなどと呼ばれる
無音の草原で見たらきっと どんな夜の族でも口角を吊り上げる。

そんな綺麗な満月の下
イスルス自身と共に、その地下に増設されている地下闘技場にて
席としては平民側ではなく富裕層側
その一席にて、ボスが腰を下ろしていた。

黒とストライプカラー
首から両側に均等に垂れ下がるストール
誰が見ても、まともなカタギではない姿。

その傍で、イスルスは今夜も控えている。

月の張った水から汲み上げたそれで沸かされたポット
濯ぐ手元では やわらかくトポトポと注がれる赤葉色のムーンティ

カップを手に持つボスは、闘技場の喧騒と、赤が増えていく武舞台に対し
その表情は何も浮かばせていない。
当然のようにメイドが淹れた月茶を飲み、当然のようにメイド足るイスルスを傍に控えさせている。

今夜は満月

ボスはイスルスを慮り、この好い月の夜に、イスルスをここへと運ばせてくれていた。

『イスルス。』

ボスの一声に対し、リムフレームを備えた黒い、何も映さない瞳のイスルス
声無き人外は、迎える時刻に対し、足の先をボスへと カツン と向き直らせる。
両手を腹部に重ね、ゆっくりと首を垂れるなら、カチューシャのないサイドリボンだけの月明り色の髪。
左右非対称のウルフヘア その一部が頬の傍で垂れ下がる頭部

其処に、指にいくつかの宝飾を身に着けるボスの五指が乗ると小さく左右に動くように撫でられた。

『精々稼いで来い。』

身も心も預けているボスの一声

「グル グルル。」

イスルスは、その舞台へと赴く手前の控室のタコ部屋に至る手前
ボスからの声と手指に対し、喉を鳴らし 瞼を閉じた無表情なそれでも
その喉笛は月のように丸くボスに聞こえたことだろうか。

イスルス > 腰にはステイレット二つ
角を際立たせているものの、それ以外にイスルスの獲物が存在しない。

タコ部屋に入る
その控室は広く、思い思いに皆が準備している。

体を温める汗の臭い
部屋の湿度と温度
 
血と鉄の生温い臭い

蒸れている革や防具の裏側の臭いまで、イスルスは感じ取りながら
無表情なリムフレームとサイドリボン
癖毛のウルフヘアだけが若干放置されたような姿のそれ

何人か茶々を入れようとする者もいる中で イスルスは無
その瞳も表情も 口を開くその時まで 表情を変えることはない。
ボスから与えられた名前 イスルス(鮫) と表す瞳のように。

周りからしてみれば、富裕席でこってりとした非カタギではない誰かの傍にいたメイド
認識度はそれしかないものの、暗い暗い瞳の色と共に、対峙することでゾクリとさせた者は何人いただろう。
人間ではない何かを見たか 人と同じくらいの大きさの獣を感じ取ったか

どちらにしろ、イスルスからしてみれば なんだ 抜いてはくれないのか という認識でしかない。

こんなにもいい月なのだから 気が昂っている者もいるだろう。

ここでつまみ食いや牽制などはしないのだろうかと 少しばかり期待していた。

仕掛けたのが向こうならば マナーの悪い者が悪いのだ
手を出した方が負け という言葉は古今東西 変わりはしない。

「……。」

イスルスは、やがてまた一人になるならば、魔導機械によるアケローンと同じように
武舞台の様子が見えるそれを眺めている。
手の内を明かすようなそれであっても、まるで構わないかのような公開処置。

動画を見ているだけで、赤が香りそうな、そんな夜。

イスルス > やがて武舞台に呼び出されれば そこへと
赴いていくイスルスは、帰り際満足げなことは、ボスだけが読み取れて。

ご案内:「港湾都市ダイラス ハイブラゼール 地下闘技場」からイスルスさんが去りました。
ご案内:「森林地帯」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 王都の北部に広がる喜びヶ原との異名を持つ広大な平野。
樹々が折り重なる森林地帯にて野営を行なう冒険者一行が存在した。
ギルドで同じ依頼を受けた彼らは全員がパーティに属している訳でもなく、
共通の目的の為に一時的な協力関係にある、レイドを組んでいた。

そのため、火熾しを終えて歩哨の順番を決めた後は気儘に思い思いの時間を過ごしている。
同じパーティの者達は薬品や荷物を融通し合い、道中で気が合った若い男女は木陰にしけ込み、
そうでない者達は自身の天幕で食事を摂ったり、装備の点検をしたり、早めに休んでいる事だろう。
冒険者は個人事業主で、得てして個人主義だ。個人が何をしようが無関係な他人が口を挟む事はない。
そんな仲間と呼べるかも怪しい同業者達を横目に中年冒険者が焚き火の前で革袋の酒を呷っていた。

「オークの討伐、か……。
 キング級やジェネラル級の変異種が発生していないと良いんだが」

彼らが受けた依頼は近隣の村々を襲い、略奪や時には娘の誘拐に至るオークの討伐。
経験者が多いパーティではあるが、連携も取れない状況では全員が無事に帰れる保証は何処にもなく、
何事も起こらなければ良い、と熟練冒険者にあるまじき枯れた思考を抱きつつ酒に口を付けた。

ご案内:「森林地帯」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「迷路通り」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都の一角……商店街や住宅街などが連なる表通りたる、広い道から裏路地へと通ると、
一部の住民からは「迷路通り」と呼ばれる、複雑に入り組んだ区画へと繋がる。

王都で薬草や薬の素材となる様々なものを買い終えた、小さな薬師の幼子は、
このあたりにも穴場となる店や素材屋などはないものかと好奇心にかられ、自ら足を踏み入れる。

しかし、高い壁、似通った屋根…迷路通りの名前に負けぬ入り組み方の路地は、
瞬く間に小さな子を巻き込み、もう戻ろうとしても簡単には元の路地には出られない。

「ぉ、おおーーーっ…これが、うわさの迷路通り……っ…
…ええと、こっちから来たから……あ、あれ…?あれ…?」

いよいよ迷子になりきる前に、来た道を戻れば良いとタカをくくっていた幼子は、
迷いの森や、迷わしの妖精の術に化かされているかのように、面白いように戻るべき道の選択を誤り続け、
どんどんと奥深くの迷路…否、迷宮じみた、暗く狭い路地へ進んでいってしまう。

ご案内:「迷路通り」にメリル・クルーガーさんが現れました。
メリル・クルーガー >  
「ここはどこでしょうか……?」

買い物の途中うっかり迷い込んだ迷路通り。
何も考えずに気の向くまま足の向くまま、ぽんやりと歩いていたら現在位置を見失った。
更に「歩いていればどこかしら着くだろう」と言う甘い考えでうろうろうろうろしていたせいでもう何もわからない。
それでものんきに更にうろついて数時間。
一向に出口は見当たらない。

「あら。あらあらあら」

すると前方に人影発見。
ぱあ、と表情を晴れさせてぱたぱたと近寄って。

「よかったぁ、人に会えましたぁ」

ほにゃりという感じの微笑みを浮かべて手を身体の前で合わせる。

タン・フィール > ぺたぺたと裸足で石畳を歩き進み、どんどんと道幅は狭く、壁はさらにうすら高く、陽の光を遮ってくるかのような圧迫感。
さらに、未知の片隅にはずいぶん前に息絶えて骨になった鼠だか猫だかの亡骸が不安をあおり……

「……しょーがない…ひとまず、だれかに聞こえるのを祈って…
すぅううっ……」

恥ずかしいことでは有るが、なりふりかまわずに「たすけてください、まいごです」とでも声を張り上げて、
この道に慣れた誰か通行人や、パトロールする自警団などにでも助けてもらおうと、
大声の前に息をお腹いっぱい吸い…きったところで、
前方の路地から見えた人影に、ふしゅーっと息と大声は不発にしぼむ。

遠目から見ても、怖そうなヒトには思えない、修道服にふわふわした雰囲気で近寄ってくる相手に、
こちらも安堵しきった表情ててちてち石畳を速歩きに近寄り

「ぁ…っ…よかったぁ!…ボク、道がわかんなくなっちゃって、
出口の方をーーー……って、あれ…もしかして、シスターのおねえちゃん、も?」

と、迷っていた様子で、手を合わせる小柄…といえども幼子からすれば見上げることになる相手。
強調される女性らしいシルエットの各所に顔を僅か赤らめる薬師の子は子で、
桃色シャツを裸に纏っただけというエキセントリックな出で立ちでは有るのだが。

しかし、一人でさまようよりはよっぽど薄れた恐怖感に、その少女のような貌は朗らかな笑みで笑いかけた。

メリル・クルーガー >  
「あら、あらあらまぁ」

彼の答えを聞いて笑顔がへにょりと曇る。
迷子が二人になっただけで何も解決していない。

「あなたも迷子に? それは困りましたねぇ」

顔に手を当て、いかにも困ったと言う顔をして見せる。
実際帰れないと言うのは困ったものだ。

「とりあえず、私メリル・クルーガーと申します。貧民地区の端っこの教会でシスターをさせていただいておりますわ」

胸の前で十字を切って見せる。
教会、と言うのは元廃教会だったところを勝手にリフォームして住み着いているだけであるが。

タン・フィール > 「うん、そうなの…お買い物帰りだったんだけど、ちょっと興味本位で入り込んだら、帰れなくなっちゃって…

ぅーん……ボク、あっちのほうから来て、おねえちゃんがあっちから来たから…
他に、大通りに出れそうな道は…と~…」

きょろきょろと周囲を探って、少しでも大通りをいく人々のざわめきなどが聞こえないか耳を澄ませるが、
状況はあまり好転したわけでもなく…薬師少年からすれば、
ひとまずは孤独と不安感からの開放というだけでも、大分助かった事態では有るが。

「ああ、ボクは、タン。 タン・フィールっていうの。
王都のいろんなところで、テントで薬師をやっている、おくすりやさんだよ。
…もし、教会でお薬が必要になったら、おやすくしておくね。」

と、すっかり貧民地区のシスターであると認識した幼子は、自己紹介に僅かに営業も交えつつ、ぺこ、とお行儀よく挨拶して。

「…とりあえず、こっちの道、いってみる?
…どっちかが見慣れた道だったら、みのがさずにすむかも、だし。」

と、2人の来た道と異なる、第三の道を指差してみる。
…どこか冷たく、ますます暗くなっていきそうな、怪しい道では有るが…。

メリル・クルーガー >  
「あら、そうなんですのね」

自分と似たような理由。
彼がキョロキョロしている間も、こちらはにこにこ笑いながらぼんやり突っ立っている。

「お薬屋さん、ですのね。じゃあその時はお願いいたしますわ」

にこにこしたまま彼と同じようにペコリとお辞儀。
そして彼が示した方へ視線をやって。

「あぁ、こちらの道はとても『良さそう』です。行ってみましょうか」

冷たく暗い路地の先。
それを「良さそう」と形容し、彼の前に経って歩き出す。
暗さにも冷たさにも一切怯むことはない。

タン・フィール > 「ぅん、こちらこそーっ…」

にこりと微笑んで細まっているのか、もとより細目なのか、
彼女のまなじりを不思議そうに覗き込みながら、
ぼんやりした様子に安心感は懐きつつも、頼れるお姉さん…という印象よりは、
小さくとも自分もしっかりしなければと奮い立つ。


正直、すこし、こわいと感じる第三のルートの道。
なんなら自分が、ちっちゃいけれどこわいけれど、先頭に立って歩み進まねばと覚悟していた所、
『良さそう』と口にして先んじて歩む彼女の平静ぶりに

「っとと…?……ぁ、う、うん、そう?
…シスターさまの直感だったら、いいこと、あるかもねっ!」

と、無根拠に彼女のおっとりさと、迷わず歩んだ背中を追って、
迷路通りの出口どころか、さらに人の気配も、陽の光も届かない場所へと連れ立って進んでいく……

タン・フィール > 【部屋移動】
ご案内:「迷路通り」からタン・フィールさんが去りました。
ご案内:「迷路通り」からメリル・クルーガーさんが去りました。