2022/03/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 鍛冶場工房地帯」にスピサさんが現れました。
■スピサ > 王都マグメール 平民地区 工房一帯
鍛冶師の槌を振るう音が昼 何処かしらから聞こえる
一つではない いくつもの音
金属を打つ音 曲げる音 固める音
国の内側も外側も 鉄を求める声は無限にある
ハテグ タナール アスピダ 北の国
それを中心とした確たる場所
それでも、無尽蔵に靄のように広がる鉄と剣 槍と襖の阿鼻
それを消費するために、鉄は求められる。
カァンッ カァンッ カァァァァンッ
硬い音、鋭い音ではなく 熱で白くなるまで熱された鉄
それが槌を振るわれれば曲がり 押されるように それは槌よりもやわらかい。
だからこそ、音と槌の撃が中へと吸い込まれていく
角の取れた鉄の音が響く。
炉の傍で、個人で経営するスピサはこの日は工房に籠っていた。
やりたいこともない 頼まれた武器もない。
無論、鎧のようなものや、革のものまで 今は特に期日までの納期に迫ることがない。
故にスピサは、鉄を造っている。
抽出し終えた、鉄の塊 鉄の板 不格好なそれらを叩き 合成された溶けた土をかけ
そして炉という高熱の火 鞴で空気を送り込むそこで鉄を生かす
槌を振るえば、鍛冶師の一振り一振りが全て 撃と音
両方を吸い込むからこそ、魂の籠った などと言われるのかもしれない。
仏師が仏が見えてくるまで、手を休めず木板をくりぬき続けるように
スピサは鉄を熱し、不純物を弾き、厚みのある鉄の板 錬成されたインゴット
それをいくつか造っていた。
こうすることで、依頼された事柄に見合った鉄を用いて、槌を振るう。
金属によって、適した刃 適した形を作る前 流れを作る手前までの鉄塊を造る作業。
コォォォォォンッ
槌を振るい終わり、自然と冷めていくことで鉄色へと戻っていくそれを眺める。
スピサは積み上げた鉄板の数を見ると、裸体の上に革のオーバーオール姿
薄青い肌に浮かぶ汗をぬぐい、今は一人故に、その大きな単眼もそのままだ。
「ふぅぅぅぅ、……。」
没頭していた時間が終わると、体は少しの疲労を感じさせる。
それまでは感じていなかった乾きを覚えて、傍で温くなっている小さな甕に手を伸ばす。
塩と柑橘を落とした水を、ひしゃくですくうと、胃の中へと流し込んでいった。
ご案内:「」にスピサさんが現れました。
ご案内:「鮮やかな花畑」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 王都の自然公園の一角、赤白黄色にピンクに紫
どれもが鮮やかに咲き誇る花畑が、春の訪れを待ちきれずに咲き誇っていた。
周囲には、やはり春先のピクニックシーズンや散歩日和の気候でもないからか、あまり人の気配は感じられない。
まだ散りどきではない故に、花粉も花弁も舞い上がるとしても時々少量であるその花畑で、
ひょっこり顔をのぞかせてはまたかがみ込む艷やかな黒髪の小さなシルエット。
桃色のシャツ一枚を羽織ったのみの幼い薬師が、花の中から薬用・毒用のものを選別して手折り、手に下げたバスケットの中へと回収していた。
「っふう…っ…とつぜんへんい?がいらいしゅ?…どっちにしても、このへんで咲くはずのない花、けっこう混じってるなぁ……
…ちっちゃいこや、カップルさんが間違えて持って帰っちゃったり、寝転んで吸っちゃったりしないように、ちゃんと処理しとかなきゃ。」
この種の毒にあたる花の駆除を、王都のギルドから薬師として依頼された本日、
ある程度年齢がいっていれば足腰首に負担が掛かりそうな作業を、軽快な動作で寧ろ楽しむようにこなしていた。
■タン・フィール > 「………ぅっ…?…んぁ…」
くらり、と2・3度瞬きする間に地面が傾くような錯覚。
一面に広がる花畑は、広い範囲で旋風のように風が巻き起こっていて、
採取するまえに舞い上がった毒の花粉や匂いの成分が旋回し、
それが風にのって薬師の呼吸器から脳をわずか蝕んでいた。
肺や血を腐らせたりする劇毒とは異なる、酒や麻酔を霧にして吹きかけられるようなそれ。
開けっぴろげにはしていないが、魔族の血という人と異質な性質と、
日頃から薬物を味見・実験していることで体制があるはずの薬師の幼子でありながら、
平衡感覚や思考が歪む毒、これはいけない、と口元を抑えてひとまず周囲を満たす甘やかな毒からの脱出を図る…
が、高まった体温と心拍で焦った身体はうまく言うことを行かず、
足がもつれて花畑へと小さな体を大の字に放り出してしまう。
遠目から見れば、無邪気な子供が、新雪で戯れるように花畑にダイブしたようにしか見えないだろう。
「ぅう、わーーー…やば…。」