2022/02/11 のログ
ご案内:「どこかの山中」から奇妙な狼さんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 野外闘技場ステージ 白と赤の武舞台」にエレン・ローズマリーさんが現れました。
エレン・ローズマリー > それは寒い冬の日だった
まだ日の明るい中 空は青白い雲で覆われ日の光はすっかり隠されている
日光を嫌う者でも歩ける灰色の時間が作られていた

雪は静かに降り続け、それは髪の上に乗れば溶けることもなく いずれ髪の軽さに負けてサラリと落ちていくような雪
白い吐息 青白い灰色の時間 の中で 周りはただ一つ 殺し合いという現場を見るために冬 雪の野外などという場所に集まっている。

「どれだけ赤がぶちまけられているかがわかるのも、一興ね。」

エレン・ローズマリーはその日、ゴシック衣装の上に毛皮の白いコートやウシャンカ帽を身に着けた姿
白い毛皮で固められ、両手指には内側に薄い毛並みを纏わせた黒革のグローブを身に着けている。

ダンピールの、ヴァンパイアよりも半端な存在 生きているのか死んでいるのかすらわからないような
そんな体でも 白い吐息はこぼれ出る 温かいのか冷たいのかすらわからないような臓腑の温度は確かに
外気温よりも温かいことを示しているのだろう だからこその白い吐息

そして手には細身の杯を携えている。
度数がやや高い九つの頭の山で一角で収穫された形も熟成もいい山桃の酒
唇に触れるそれは冷たく感じても、あっという間に喉を過ぎれば熱を帯びる
時折盃の中身を葡萄酒のように回しながら、目の前では殺し合いながら
赤を流していき 熱を奪われながら殺し合う 体が震え疲れ 生きることを諦めるまで
逆に体を燃焼させていき湯気立つかのような、そんな対する者同士のそれを眺めている。

白いステージを用意すればいいだけだろうという者はここにはいない
偶には雪景色の中の殺し合いもいいものなのだ。

エレン・ローズマリー > 「……綺麗ね。」

エレンは瞳を細め、周りの物好き 所謂同質の存在らと共に雪降りの空間
雪が浅く積もった武舞台の上の殺し合い 剣の軌道を描いた赤い線を眺め
そして何よりも、お互いが集中と執着からでる熱が通り過ぎて、決着を迎え
浅い呼気を出しながら倒れ伏して 赤と白に体を埋もれさせて その瞳の光が暗くなって
きっと光が閉じても尚 呼気が続いて、体の熱が止まり 指先の冷たさが何も言うことを聞かなくなるその瞬間まで

アケローンや地下闘技場やオークション
いろいろな催しの中で雪の日の舞台に誘われてやってきたこの日
その死に方にこの時期にしか見られないものだったと、エレンは満足げに甘い酒を口にし
それをゆっくり一息に呷る。
外で見れない方々は、別の屋内でアケローンのように 中継映像を眺めているという。
それでも目の前で、雪に塗れながら体の熱が雪の冷たさに負けて白く染まる姿を
こうして生で見れないのは聊かもったいないのではないかと、エレンは思うのだ。

「無念な顔も 諦めた顔も 首が落ちて周りに赤を増やす姿も みんな綺麗。」

エレンの過ごしてきた日々は甘い焼き菓子と砂糖入りの紅茶で過ごす時間をとうに過ぎ
白桃ワインとゴルドを両手に乾くことなく携える時間と悲鳴 絶叫 阿鼻 が響く日取りへと変わっている。
そしてそれらはどう店という催しに生かせるかなどと考えてしまう

世の中は全て ゴルド と 力 だ。

エレンは、甘くも強い 雪の日に合う山桃の酒が乾いた杯に雪がちらつくのを眺め
死んでいった者らの表情 諦められない這いずりも 震えて 歯を打ち鳴らす姿も
全てが喉を通り過ぎて行って。

「酒の味というものが、こんなにも甘く感じたのは久しぶりね。」

きっと、目の前の光景に満足した印なのだろうと、雪と酒が解けて雫となると
ほんの少しだけ量ができた それをイチゴ色のやはり血を啜ることに値するような
舌先が少し尖った長めの舌を伸ばして 杯を傾けて落とす
先ほどよりも味は薄まっていて雪の味は濁りそのもの それでも
そのほんのわずかな苦みが あの嘆きと苦しみと悲しみを感じさせるようで
ひどく甘く感じたのだと、きっとエレンは屋内でも感想を漏らすだろう。
殺し合いをたしなみながら飲む甘い酒の味を。

ご案内:「」にエレン・ローズマリーさんが現れました。
ご案内:「薬屋のテント」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都の平民地区の一角は、昼から夜にかけての人々や店の賑やかさがピークを過ぎた頃。

街を行き交う人や喧騒・音楽・出店もおとなしくなりはじめ、
人々が買えるべき場所へと足を向け始めた頃、薬の素材を買い出しに出ていた薬師の子供も、
己の自宅兼薬屋であるテントへと戻っていて…

「ふーっ、お外、さむいさむい…! テント、暖かくしておいてよかったー。」

テントの中は、小型のキャンプ用暖炉やランプなど、点々と火の気配を保っていて、
とろ火でくつくつと煮込まれているお茶のような薬湯の良い香りと、それが保った暖かな気温がほっとひとごこちつかせてくれる。

その甘い匂いと、あたたかそうな湯気がテントからほわほわと浮かぶ様は、
空き地を通りがかったものにはさぞぬくぬくとした棲家に見えるだろう。