2021/09/19 のログ
ご案内:「無名遺跡」にネイスさんが現れました。
ネイス > 石壁で作られた通路に仕掛けられた落とし穴のひとつ。
その先に待ち受けるのは串刺しなどの直接的な攻撃ではなかった。

本来は魔族が不注意な人間を捕らえてどうにかする小部屋だったのだろう。

それが今は、とある男の仕掛けた罠になっていた。
落ちてきた穴は、直ぐに閉じて次の獲物を待つ態勢に変わって部屋は暗闇に満たされる。

先ず、遺跡の石壁の隙間のそこかしこに植え込まれた花の種が咲き始める。
嗅ぐ者に弛緩を、催淫を、多感を、齎す。

続けて、天井の角や床の角に伸びていた蔦が剥がれた。
その数は一本や二本ではなく、部屋の左右、上下の至るところから。
汁気のない樹木の触手が『獲物』に向かい伸びていく。
明らかに意思を持ち、四肢に絡みつき、自由を奪おうとする。
伏せか、吊り上げか、如何な姿勢で絡め取るのかは『獲物』の抵抗次第。

ネイス > 閉じた部屋の中、暗闇には熱気が満ちていく――
ご案内:「無名遺跡」からネイスさんが去りました。
ご案内:「石造りの牢獄」にダリルさんが現れました。
ダリル > そこは、これ以上はないというくらい、殺風景な部屋だった。
天井も壁も床も、黒々とした石造りで、唯一の出入り口は頑丈そうな錠の降りた扉。
天井近く、換気のためと思しき小窓にすら格子が填まっており、
逃げ道はおのずと限られる、そんな場所だ。

家具調度と呼べるものは、部屋の中央に置かれた木製の椅子と小卓、
卓上でぼんやりと光を放つ、無骨なつくりのランプだけ。
そんな部屋に置かれた椅子へ腰かけさせられたのは、もう、半時ほど前になるか。
ただ腰かけさせられたのではない、当然、両腕は背凭れに、後ろ手に縛りつけられている。
けれど拘束と言えばそれだけだったから、少年はひどく退屈していた。

「……なんだよ、畜生……まだ、なんにも盗ってねえってのに」

久しぶりに身軽な黒ずくめの格好で、闇に乗じ忍び込んだ矢先、
あっさり見つかって捕らえられ、この状況に陥ったわけだ。
まだ責められるようなことはしていないと思うので、少年は強気である。
正面にある扉をじっと睨みつけ、もし、そこから誰か入ってきたら、
思いつく限りの罵詈雑言だけでなく、蹴りのひとつも見舞ってやろうと決めていた。

ダリル > ――――――――かくん。

少年の首が傾いで、人形じみたぎこちなさで瞼が降りる。
そうして聞こえ始めるのは、健やかすぎる寝息。

緊張だとか恐怖だとかが、今、眠気に負けた瞬間だった。

ご案内:「石造りの牢獄」からダリルさんが去りました。
ご案内:「貴族の邸宅」にメレクさんが現れました。
メレク > 王都の貴族邸宅にて行なわれる仮面舞踏会。
普段よりも照明を落とした薄暗いホールには管弦楽団による艶やかな音楽が鳴り響き、
華やかなドレスで着飾った男女が肌が触れ合う程に身体を近付け、会話や舞踏に興じている。
彼等は皆、一様に仮面を付けており、己の素性が何者であるのかを分からなくしていた。

表向きにはやんごとなき者達の社交の場である夜会。
しかし、その実は有閑貴族達が一夜の享楽に耽るための集いであるのは明白。
貴族の他にも見目麗しい奴隷の男女や高級娼婦、事情も知らずに集められた女達が混ざり込み、
灯りが届かぬ会場の隅からは男女の熱い吐息や嬌声が、音楽の途切れる合間に漏れ聞こえてくる事だろう。

その会場の中央の壁際にて一人の男が二人掛けのソファに腰掛けて高級ワインを嗜んでいる。
でっぷりと肥えた身体に、節くれ立つ十の指に嵌めた豪華な太い指輪。
仮面で顔を覆っていながらも、正体を隠す意志が見られない彼は、この夜会の主催者である。
傍らに奴隷達を侍らせて、時折、近寄ってくる貴族達との他愛もない会話に興じながら、
男は快楽に堕落する人々の姿を眺めて、心底愉しそうに只々ほくそ笑むばかり。

ご案内:「貴族の邸宅」にルフィナ・エニコフさんが現れました。
ルフィナ・エニコフ > ある日の夜に開かれた貴族の舞踏会。
招待を受ければ王国の暗部にも顔を常に認知させておくため当然のように参加することになり。

目元を隠すベネチアンマスクをつけて夜会に訪れ。
皆仮面をつけているとは言え、声や雰囲気から知り合いの貴族を見つければ軽い挨拶を交わしながら薄暗いホールの奥へと進んでいき。
ホールの壁際に座るこの夜会の主催者を見つければそばへ近づいていき。

「お初にお目にかかりますメレク卿。
 本日は招待いただきありがとうございます、エニコフ家のルフィナと申します。
 以後お見知りおきいただければ光栄です」

相手の前に立てば軽く膝を曲げ、ドレスの裾をつまんで頭を垂れ。

メレク > ワイングラスを傾けながら、夜会の享楽を眺めていれば、銀髪のドレス姿の女性が、
貴族の群れを掻き分け、己の前に迄、近付いてくるのが見て取れる。
丁寧な所作にて頭を垂れる少女に口端を綻ばせると、にたり、と頬肉を歪ませて嗤う。

「これはこれは、ご丁寧に。お会い出来て光栄ですよ、ルフィナ嬢。
 ――――しかし、いけませんなぁ。ルフィナ嬢は未だマスカレードの作法をご存じないと見受けられる」

宮廷に於ける貴族の礼儀作法であれば、家庭教師も満点を付ける事だろう。
されども、その所作に難癖を付けるように、眉間に皴を刻みながら肩を竦めて見せる。

「宜しいですかな? このような席に於いて、名前を出すのは無粋に極まり嫌われますぞ。
 相手の名前を口にするのは勿論ですが、名乗りを挙げるのは論外です。
 何しろ、貴女は、今、この場に於いて自分が何者なのかを明かしてしまわれたのですから」

如何に其れが茶番であれども、正体を明かさぬ前提での仮面舞踏会。
その場に於いて、ルールから逸脱した少女へと咎めるような言葉を投げ掛けた。

ルフィナ・エニコフ > 「あら…申し訳ございません。
普段、こういったことは別のものに任せているもので、」

相手の注意を受ければ口元を隠すように手を当て、申し訳なさそうに眉を下げ、さっと視線をあたりに泳がせ。
幸運ともいえるだろうか、夜会に響く楽団による音と周りに人が少ないこともあってわかりやすく聞いていた人はいないようで。

「家族のものからは、どのような場でもふるまえるように心構えをするようにと言われているのですが……。
 どうしても最初に教わった基本から離れるとうまくできないものですね。
 恥ずかしながら、聞かなかったことにしていただければ嬉しく思います」

メレク > 「くくっ、以降、お気を付けなさい。
 何しろ、何処で誰が聞き耳を立てているかも分からないですからなぁ」

素直な謝罪に対して、許しを与えると共に貴族としての忠告を一つ。
多少、興醒めと成り得る発言も、他に聞いている者が居なければ、
然程に大事とも捉えられず、この主の機嫌を損なうには至らない。

「今宵はマスカレード、誰もが仮面で素性を隠した虚飾の宴。
 貴女も存分にお楽しみ下さい。好い夜をお過ごしあれ」

微笑みを浮かべた儘、大袈裟な身振り手振りを交えながら少女に告げて、
其の侭、主たる男は他の客達へと挨拶をする為に宴の中央へと姿を消して。

ご案内:「貴族の邸宅」からメレクさんが去りました。
ご案内:「貴族の邸宅」からルフィナ・エニコフさんが去りました。