2021/08/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 自然地帯 生温い遺跡」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊のアジトだった場所」に黒曜石さんが現れました。
■黒曜石 > 九頭龍山脈の中腹。
住民が逃げ出したか捨てていったか小さな集落痕があった。
そこに山賊、もっと正確にいえば自称山賊の無法者の集まりができたのは1年程前。
決して規模は大きくなく、無軌道だがそれ故残虐、それ故王国兵にもあまり目をつけられずやってきた。
通りすがりの旅人を襲い、売れそうな者は奴隷として売り捌き、女や、綺麗な顔の男はその前に仲間内で味見をする。
略奪と暴力だけが他者との共通言語。明日なんて知らない。昨日のことなどもう忘れた。
そんな彼等のいた場所は、今日――再び廃墟に戻った。
「やらなければ、やられなかったのに――。」
ぽつり、と村の中央――それだけは変わらず住民の生命線だった井戸の傍で呟く声音。
強い言葉に似付かわしい彩(いろ)は無い。
まるで子供が、意味もわからずに教科書を音読するのに近い調子だ。
薄っすらと膜が張ったような眼差しは、広げた自分の右手に向けられている。
古びた旅装をまとった壮年の男性。
たまたま彼が同行していた商隊を山賊たちが襲ったのが、引き金だった。
多くを語る必要もないだろう。略奪と暴力だけが、互いの共通言語だったんだから。
ぽたり、と広げた指先から一滴、誰かの血が滴り落ちる。
落ちる先の地面には、薄っすらと温度の無い灰が積もっていて
そして、月明かりの無い夜を照らすように廃墟には、灰と火の粉が舞っていた。
風に吹かれて僅かに消える、残り香のように。
■黒曜石 > 風が、もう一度虚空を撫でて滑った。
住民がいなくなって、誰もいなくなって、何の要求もなくなった廃墟。
無法者でもいた方がましだったかどうか。それを知る者はいない。
「……………」
言葉はない。
疲れた様な吐息が、ひとつ、乾燥した唇を割って零れ落ちる。
そして、男はその場から歩き始める。
点々と灰がその足跡を刻んでいたが、やがて――風に攫われて消えていった。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊のアジトだった場所」から黒曜石さんが去りました。