2021/07/10 のログ
ご案内:「雨の町中」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 「ひゃ~~~~~っ… 急に、なんなのもう…っ!」
夜が明け、早朝の陽光眩しい初夏の晴れた空を、突然に曇らせる雲が走り、
王都で活動をしはじめた朝の市民たちを分け隔てなくにわか雨を撒き散らしていく。
てちてちてち、と塗れた石畳に飛沫を上げて駆けていく裸足の音は、
朝の薬の素材の買い出しに市場を訪れた、小さな薬師のもの。
朽ちた屋根がかろうじて雨粒を防御できる路地に入り込んだだぼだぼサイズのワイシャツ一枚を裸身に羽織っただけの格好は、
ずぶ濡れになってその幼い体の未発達シルエットをべったり浮きがらせてしまっており、
いかにも重たげに、裾や袖の水分を面倒くさそうに絞り上げながら、天気の様子をみる。
手にしたバスケットの素材は、乾燥していることが重要な薬草や香料なので、
一応濡れぬように蓋で密閉しているが、
早めに雨風をしのげる場所に移動しなければ、と濡れた肌をわずかに震わせて、
周囲に屋根伝いに自らのねぐらに戻れる道でもないかと、様子を伺う。
「…なんとか、濡れないように帰るか…傘みたいなもの、みつけなくっちゃ…っ」
■タン・フィール > 屋根伝いに雨をしのぎながら、
路地から路地、通りから通りへとなんとか移動を繰り返し、時には雨脚の隙をついて一気に駆け、
徐々に少年薬師の自宅・兼・薬屋店舗でもあるテントへと近づいていく。
しかし、朝から昼にかけて、
じわりと湿気を帯びた天候の中での長時間の外出や、ストップアンドゴーの激しい運動で、
小さな体からは順調に体力と体温が削られていて。
「…う~… おなか、へっちゃった。
…食べれるものは、とくに持ってないしー。
これなら、市場の方に行って、お店でなにか食べながら雨宿りしてたほうが良かったかも。」
と、喫茶店やパン屋で、甘いパン屋ケーキを頬張り、
ホットミルクやココアでぬくぬくしている自分を想像してみて、ちょっぴり自宅への前進を選択したことを後悔。
濡れたつややかな黒髪を煩わしそうにぎゅっと絞り、
額に張り付く長い前髪を分けながら、またひとつ、空き家の屋根に身を寄せた。
ご案内:「雨の町中」からタン・フィールさんが去りました。