2021/04/12 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 闘技場 ベア・ナックルズ」にイスルスさんが現れました。
イスルス > アケローンとは別口の闘技場
観客席はアケローン程広くはない
しかし魔導映像の数で補わせ、その闘いのザマを見せびらかす

アケローンのような、敗北後の旨味を独占するような、販売するような真似もない
生で、映像で、その時 一時のそれを目に焼き付けるしかない故に
この闘技場を愛用する者もまたいるだろうか

「……。」

メイド姿のまま、左右に開かれた鉄格子の向こうから、武舞台の上へイスルスは上がる
腰に備えるスティレット以外、獲物はない
しかし、ドーム型の鉄檻の中心部にはいくつもの鎖が垂れさがる
其処には、魔導機械製の武器から弓 槍 剣 弩 鎖付き鉄球 色々な武具が吊り下げられている。
中心部には、鉄製の丸太杭ほどの幅が差されており、武器をそこから立ち上がり、つかみ取る仕様

武器を使って戦え 武器を使って勝て 武器を使って負けろ そして好きなようにされてしまえ
屈強な者 歪んだ者 アケローンのように餌のようにされた者
全てが此処では平等にチャンスは訪れる

殺すのが躊躇われるほどの美姫ならばなおの事、生存率は上がるだろう

司会者のドーム内説明が耳にうるさい物の、魔導照明と魔導映像が広がるドーム内ステージ
無表情のイスルスは、ジッと開始の合図を待った。
向こう側から訪れる物好きを、好きなようにしてしまえと、我が主は闘争をご希望だ。 

イスルス > 中央付近までいくと、武器の彩りがわかる
握り、振り回せる力はある者の、達したものはない
五体を武器に使うことを禁じられた空間

狩りではない 敵対者を屠るものでもない 遊戯だ

遊びで、肉を食い千切り、放り投げる
一掴みも飲み込むことをしないような真似に違和感を抱くものの、問題はない

向こうからやってくるのは、顔をペイントで施されたピエロメイク
埋め込まれているのか、頭部には3本の角が皮膚越しで凹凸を造っている。
多少肥えているように見えて身軽な動き ピエロメイクと重なった曲芸師のような印象だった

「グルッ……。」

歯列を嚙み合わせ、喉が鳴る
狂人と人外 意味の無い殺し合い
うってつけだろうか

アケローンが最後に甘い時間が待っているのなら、ここでは地獄を造る
人の肝の味が酸味を帯びると言われるように、口内に興奮のアドレナリンと、酸味をえづかせてやろう。
武器を見渡し、互いにマッチングが整った。

司会者の声と共に、カウントが始まった

                   5!

                   4!

                   3!

                   2!

                   1!

                  START!!

ヒュパッ 互いに、中心部の踏み台へと迫る中、先に乗り上げたのはピエロ
しかし、イスルスは角に足をかけるだけで十分だった
足蹴にすることも互いに、できはしない
ダダンッ! ダンッ! と後方へ宙返りをしながら、ピエロマンは魔導機械
イスルスは片刃で肉厚な、マチェットを握りしめる。

         ―――“ギュゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!”―――

魔導機械の、廻り狂う動力の音と共に、蛍光色で刃先を光らせた、回転剣がうなりを上げる
あれはそういう武器だったのかと、武器にはなんら意識を深めていないイスルスは、その絶叫を心地よく受け止める
狂人と人外同士、回転剣と洋鉈で、歓声が起こった。

イスルス > 長い楕円型の剣
それがただの平たい刃ならば、首狩り剣程度の認識だっただろう
それが歯列を造り、鍔や柄とは言い難い、魔導機械を纏って音を立てている

漆黒の光の無い瞳は、喉を鳴らし、マチェットを携え、突撃した

 ぎゅらっ と煙のように、体が撓んで奔っていく。
振り下ろされるそれは、触れるだけで皮膚を壊す
いくつもの爪が、連続して振り下ろされるのと同義

潜り抜け、次の撃が来る前にマチェットを突き刺す方向で逆手に振るいつけると、バックステップによる
まるで樹脂の珠のように弾むピエロマン そしてこちらへと弾け戻れば、それが振るわれる

剣の絶叫が間近で耳に響く中、スゥエーバックと共に通り過ぎる暴力の刃
腹筋と、腰の力 引き戻っていく体に合わせ、機械の付け根とマチェットが組み合った。
剣身と、刃が、触れ合わぬままの押し合いが始まる。

そちらへ こちらへ その剣身を押し付けさせようとする中で、腰に携えていた
スティレットを、見えぬ背後で、スカートの中の尾がまくりあがり、握り抜く

「グルルルルルッ……!」

歯を噛み合わせ、狂人の腕力 中々のもので うなりを上げる喉笛は興奮か 賞賛か
しかし、尾が下へ放ったスティレット
互いにそれを見ぬまま、片足を上げ、そのハンドル型の鍔に、片足が刹那持ち上がり

            ガンッッ!

強い、固い音
一拍おいて上がる、ピエロマンの悲鳴

『■■■■■っ!!!』

ピエロマンの脚に、スティレットの鉄杭のような刃が届き、深々と脚を床へ貫かせた
ハンドル型の柄が足と熱烈に触れ合うその深度

そして、その魔導機械を押し跳ねると、マチェット それすらも、もう片方の足に突き刺す。

再び上がる悲鳴と共に、魔導機械を奪い、後ろへ下がる。
呻く狂った声の中、一度止まってしまったそれを もぞもぞと弄り
それがクランク型のついたそれだとわかると、数度強く回し起こす

           ―――“ギュゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!”―――

今度はイスルスが、その魔導を鳴らす。
近づき、振り下ろすまでは、グラスに口をつけ、降ろすほどの時間でしかなかった
振り切り、事が終わった空間の中で、ガス欠か、止まった魔導機械を放り投げ、突き刺していたスティレットを回収する
刃の全体についた赤 それを、獣の舌が根から先へ、ゆっくりと嘗めとった 嗚呼、狂った味だと、喉に落として分かった。

ご案内:「港湾都市ダイラス 闘技場 ベア・ナックルズ」からイスルスさんが去りました。