2020/11/29 のログ
■タン・フィール > そのままくうくうと眠りについてしまい、
目が覚める頃には日が傾きかけていて、はくちゅ!と小動物めいたくしゃみをシながらむくりと起き上がり、薬の完成のためにテントへと戻った。
ご案内:「薬屋のテント」からタン・フィールさんが去りました。
ご案内:「街道」にジェイクさんが現れました。
■ジェイク > 王都から離れる事、半日。昼下がりの近隣の村落に通じる街道。
普段から人の往来が多い、その道を遮るように柵が設けられ、
道の脇には幾つかの天幕が建てられ、簡易的な陣営の趣きを為していた。
街路に立ち、通行する馬車や通行人を差し止め、積み荷や身分の検査を行なっているのは、王都の兵士達。
曰く、此処最近、山賊や盗賊の類が近隣に出没するために検問を敷いているという名目であるが、
実際の所は隊商からは通行税をせしめ、見目の良い女がいれば取り調べの名を借りて、
天幕でしっぽりとお楽しみという不良兵士達の憂さ晴らしと私腹を凝らすための手段に他ならなかった。
「――――よし。次の奴、こっちに来い。」
でっぷりと肥った商人から受け取った賄賂を懐に入れて、彼の率いる隊商を通せば、
列をなしている次の通行人に声を掛けて近寄るように告げるのは一人の兵士。
何よりも厄介なのは、彼らが紛れもない王国の兵士であり、市井の民が逆らえない事だ。
そして、その事を理解している兵士達は、御国の為ではなく利己的に国民を食い物にしている最低最悪な屑揃いであった。
ご案内:「街道」からジェイクさんが去りました。
ご案内:「富裕地区/王都闘技場/模擬戦場」にビョルンさんが現れました。
ご案内:「富裕地区/王都闘技場/模擬戦場」にセイン=ディバンさんが現れました。
■ビョルン > 賞金のかけられる試合が行われる闘技場の裏側。
小ぶりではあるが、個人戦には十分な闘技場があるようだ。
模擬戦用、修練用とされているが客席の収容人数が限られている以外は、表側の闘技場とは何ら変わりがない。
約束の日、約束の時間。
模擬戦場の審判役をしている騎士風の職員へと刀剣類を預け、街を歩くのと同じ格好でフィールドへ立つ。
袖を抜いたコート、黒スーツ一式にネクタイ、革靴。
その恰好で相手の支度を待ち。
■セイン=ディバン > 「……は~、こんな場所がねぇ」
以前、酒を飲みながらした会話。
まさかこんなに早くそれが実現するとは思っていなかった男は。
どこか、暢気な様子で現れた。
格好も、いつもとなんら変わらない。
それこそ、散歩にでも行くかのような感じだ。
「よぉ若旦那。
待たせちゃったかな?」
これから行われることを考えると、気楽過ぎる振る舞い。
男は、相手に近づきながら、片手を挙げ、そう挨拶する。
■ビョルン > 現れた男、己を旦那呼ばわりするのは小物臭が鼻について勿体ない。
とは思うが、今更ながらに言及できず黙っておく。
「いや、今来たところ。
準備はいいかな」
女から聞いた東国の無手取組の流儀。
顔の前で手を合わせて塵手水を切り、顔の高さに両手を開いてそこに何の武器も隠し持っていないことを示した。
「少し、人に調べて貰ったが。
──相当鳴らした冒険者だったらしいじゃない」
稽古として使う模擬戦場。
名前の読み上げやアナウンスもない。
──開始も互いの呼吸次第だ。
■セイン=ディバン > 「そりゃあ良かった。
偉いさんを待たせたとありゃあ、冒険者としての評判落ちるもんなぁ」
相手の返答を聞きながら、くぁ、とあくびをする男。
どうにもしゃっきりしない表情のまま、細巻を咥えた男は。
相手の構えを見て、首をかしげ。
「鳴らした、というか。一応現役というか。
まぁ、それなりにはやると自負してはいるけども、だ」
男自身、自分の実力はしっかりと把握しているつもり。
超一流、とは言えないまでも、長く冒険者として生きているので。
本当に、それなり、という腕ではあるつもりだが。
「……しかしまぁ、お前さん。素手でやるつもりか?
まぁ、いいんだけれども。
馴染みの武器があるなら、使ったほうがいいんじゃあないか?」
ん~、と。首を傾げつつ、顎をさする男。
そのまま、右手を相手に向け、くいくい、と指を曲げ。
かかってこい、と。そう挑発する。
■ビョルン > 「身内の目はない。
今日はお偉いさんがどうだとか、ナシだぜ」
こんな場に引き出しても緊張感に欠ける相手。
それこそが冒険者の貫禄とかいうものかも知れないが。
相手が首を傾げれば訂正して。
「ああ、失礼──てっきり一攫千金の一山当てて、隠居してるのかと」
そのつもりもないが、率直な言葉は煽りめく空気が闘技場にはある。
続く言葉にははあ? と目を丸め。
「一昨日、聞いたら素手で良いと──…、
そういう相手を刀で切り伏せようってェのは、無粋じゃないかい」
ネクタイを緩めれば肩にかかったコートを脱ぎ捨てて、後方へと投げた。
同時に片足を肩幅ほど引き、半身を相手に見せて寮の拳を構える。足首と膝のバネで重心を上下させて隙を伺う。
■セイン=ディバン > 「そうも言ってられないというか。
一旦気ィ抜くと、クセになりそうというか」
ははは、と笑いながら、ひらひらと手を振る男。
どこまでが本気か。どこまでが冗談か。
ある種読み取れない軽薄さの鎧がそこにはある。
「……。
それもいいな」
何かしら、稼げる方法があるなら。
それもありだなぁ、と。男は、真剣にそう言ってのける。
だが、続く相手の言葉と行動には。
さすがにこの男の表情も真剣なものに変わる。
「あぁ、言ったねぇ。
『オレは』素手でいいって。
……無粋だとかどうとか。なるほど、そういうことか」
相手にしてみれば、ある種の美学。あるいはポリシー。
もしくは、意地か。そういったものあっての言葉なのかもしれない。
だが、男はそんな相手を見下すように。
構えも取らぬまま、ずんずん相手に向かって歩いていき。
「オレが素手。お前さんが武器持ち。
それでも対等にすらならないって意味で言ったんだぜ。ガキンチョ」
はっ、と。笑みを浮かべながら更に歩く男。
距離、既に接近戦の間合い。
相手が踏み込めば、一歩で殴りかかれるほどの距離だ。
■ビョルン > 「その歳で冒険者報酬と浪費の自転車操業もないでしょうに」
己の構えに相手の纏う空気の温度が変われば、僅かに口元に表情が浮かぶが。
そうして相手の言質を黙って聞く。
相手が距離を削いでくれば相手の視野の中で的を定めさせぬよう、両足で小さく弾みはじめる。
調子よく長髪の言葉を重ねる相手には絶望に似た深いため息を吐き。
「そういうの、いいから──稽古つけろって言ってんの、
何でもありのシニアアドベンチャーさんよ……」
初語中に不意を打たれ舌を噛まないように語尾を巻いて吐き捨てれば利き足の右を踏み込み、相手の水月辺りを狙ってストレートパンチを打ち込もうとする。
接近した距離でぽつりと。
「顔はやめてね?」
当たるにせよ当たらぬにせよ、そんな含み笑いを落としたりもした。
■セイン=ディバン > 「市場経済に非常に貢献している、と言ってほしいかな」
物は言いよう、を地で行く男。
そのまま、相手が動き始めるのを見ながら。
男は相手との距離を詰めることに専念し。
「こういう時は、格下が格上に胸を借りるつもりで。
とびかかってくるもんだぜ?」
相手と舌戦繰り広げながら、相手のステップイン。
そして、ボディへのストレートを確認し。
男は、体を半身にずらし、その相手の伸びきった腕を掴みつつ。
顔面へと、裏拳を放ち、寸止めする。
「今のはまぁ、悪くはない。
勢いも速度もな。ただ、相手が無用心に近づいてきてるように見えてるときこそ。
搦め手やフェイントを使うべきだな」
そう静かにいい、ペチン、と相手の鼻に軽く裏拳を当てると。
男は距離を取り、そこで初めて構えを取る。
「ほれ、どんどん来な。
オレに一発でもクリーンヒットできりゃあ、ご褒美をやるぜ」
膝を曲げ、両足のかかとを上げる構え。
半身にした体、重心をゆらゆらと揺らす。
明らかに慣れた者の構えであった。
■ビョルン > 「格下ですが、未来はあります。
──あなたには老後だけでしょう?
……ッ、」
欲張って力を乗せた拳が止められれ、裏拳が顔へと近づけば衝撃に身構えて体を硬くする。
鼻先で止まればむっと口を結んで。
「見切った?
──それとも、結局は『賭け』なのかい」
止まった裏拳、鼻に触れればさも忌々しそうに怒気孕む息だけ吐いた。
「それじゃあ攻勢の稽古にしかならないじゃないか──そんな、」
『殴ってみろ屋』じゃあるまいし、とは言わないでおいた。
己もまた、拳闘スタイルに立て直して隙を伺う。
拳は固く握り直した。
■セイン=ディバン > 「言うねぇ。ま、実際その通りだ。
だからこそ、オレも数人、後進を育成してるわけだからな」
相手の言葉には、笑みを見せ、激昂してみせたりはしない。
事実、男自身、ある種の退き際を考えているのも事実なのだ。
「当然だけど、見切ってる。
悪いが、お前さんの速度じゃあ。
オレが戦ってきた速度自慢の相手とは比べ物にならないんでな」
フッ、と笑いつつ、相手を誘う男であったが。
不満そうにする相手の様子に、ふぅ、とため息を吐き。
「なら、せいぜい食い下がってみな!」
相手が構えるのを見れば。
男は、軽く左ジャブを数発放つ。
ただし、それは当てる、というよりは距離を測るのと、相手の目をくらませるためのもの。
数度のジャブの後、男は相手のわき腹めがけ、ミドルキックを放つ。こちらこそ本命だ。
■ビョルン > 軽口は其処迄。
見切っていると聞けば、ステータス開示していない己も悪いとか思いながら対策を考える。
やはり拳と決めれば拳しかない。イロモノとはなるまい。
「──さいですか」
吐息とともに歯の間から声を出す。
ファイティングポーズのまま、浅いジャブは受け止める。
足は開き広い規定面積で己の体が揺らぐことないように支える。
軽いとはいえ、男の拳が痛くない訳はない。
身体は弾ませることは止めてじっとジャブパンチの間隙を計る。
ジャブの当たる位置はどの辺りだろうか。
いずれにせよ、胴で全て受け止めて斃れぬよう身構えていれば。
左からのジャブがあったのだから蹴りは右足だろうか。
身構えていれば脇腹への高さへの蹴りは見えよう。
足が来る側の拳を開く。
半歩間合いは詰めて内無双をかけるように掌で相手の膝を外側へ払おうとするように押し退ける。
■セイン=ディバン > 男は、相手を格下と宣言したが。
それでも、侮ってなどはいなかった。
若いながらに、修羅場慣れしている気配と経歴。
しかして、それでも尚、圧倒的な経験の差があるのが事実なのだ。
「ふっ……!」
短く息を吐き、ジャブを連打。
それを相手がガードしたのであれば、スキを突き、ミドルキック。
完全に虚を突いた、と思っていた男であるが。
「なっ……!」
その実、このタイミングで機を外されたのは男の方であった。
ミドルキックの足を払われれば、男の体の内側の方は、ガラ空きになる。
片足で立つが故、バランスを保つのが難しい男。
相手の狙い通りに、体が宙に舞い……。
「ででっ、と、っととっ……!」
派手に地面に転がされるものの。
すぐに受身を取り、ふぅっ、と息を吐き。
相手のことを、驚いた表情で見る。
男の知らぬ技。男の知らぬ攻撃であった。
■ビョルン > 弾数の多かったボディーへの痛みが遅れて歯の根をギリと鳴らした。
もう少し頑張る。
そんな意思もまた芽生える。
内無双に相手が均衡を崩し、地へ背を付ければ今度こそはと跳躍した。
空中で片膝立て、着地地点は相手の胸骨上へ。
東国のレスリングであれば背中を地面につけて倒れれば負けであったはず。
これど、これには取り決めたルールはない。故に。
──セイン・ディバンの肋骨は砕けるだろうか。
全体重を乗せた立て膝は、いまだ放物線を描いて相手の胸の上へ落ちる途上に在る。
■セイン=ディバン > 「おいおいっ……!」
受身を無事に取り、立ち上がろうとした瞬間。
自分の目の前、相手が飛び掛ってくるのが見えた。
流れるような動き。見事な攻めであった。
「くっ……!」
それを、男は覚悟を決め、受け止める。
ずしり、と。非常に重い衝撃が体の中心に響いた。
男が着ている服は、知人に仕立てさせた超一流の防具でもある。
しかし、相手の体重を乗せた一撃の衝撃は、軽くはない。
骨こそ折れなかったものの、男の呼吸は一瞬止まる、が。
「こんのっ……!」
そこで男は、ガードしないようにし、フリーにしていた両腕と両足を使い。
相手の体勢を崩し、関節技を仕掛ける。
くるくると相手を転がし、一瞬の内に、いわゆる腕ひしぎ逆十字の形に捕らえ。
「……ったく、恐れ入った。
まさか、本当に一撃入れられるとはなぁ」
やれやれ、とばかりに呟く男。
当然、相手の関節を砕くつもりもないが。
とりあえずは、相手の腕を放すつもりもないらしく。
■ビョルン > 「……おや、…生きてた」
相手に膝落としが叶えど、こちらもまた不安定な態勢に在った。
そういった感触が膝には伝わらなかったが革鎧でも着ていたのやも知れぬ。
強ち、大袈裟でもなさそうに残念そうな息をついていると今度はぐるりぐるりと関節技に巻き込まれる。
ぎじぎしと膝関節が痛みを訴える中、碧眼は事態を確認し。
「ギブギブ、吐きそう」
腕が男の股bに挟まるとか──有り得ないから。
痛みよりも状況に対しての嫌悪感が声を出させる。
「ギーブ」
固められれば、脱出は無理。
審判役はいたっけか、と遠くへ視線を向けながら。
■セイン=ディバン > 「殺す気だったわけだ……。
そりゃあ関心関心」
げほ、と咳き込みながらも。
男は、すぐに反撃に移り、相手を関節技に捉える。
そのまま、相手の声を聞けば。
「……んっ」
そのまま、ぱ、と手を離し。
男は、ごろごろと地面を転がり、距離を取り、立ち上がる。
「いや、実際驚いた。
あの技はなんだ?
経験したこともない技だったが」
ぱんぱん、と土埃を払いながら言い。
男は、相手に向かって手を伸ばす。
■ビョルン > 「そりゃあ、徒手でも殺しはできる。実際の話」
こんな大きな動きでなくても急所を正確に捉えられれば手首を返すくらいの動きでも人間は死ぬ。
けれど、腕への痛みに言葉を切る。
腕が離され、互いの距離が開く。
手を差し伸べられるとそれは断り自ら緩い動作で立ち上がり感覚のある腕で土埃を払う。
「技、というか──系統だった『武道』とか『術』を習っている訳ではなく、
──ですが、そう簡単に手の内を明かしてしまうことも難しいでしょう」
無双、とか掬いとかいう種類だったかな……いずれにせよ、名前も定かではないものは尚更教えられないだろう。
固められていた前腕の感覚が戻りかければ反対の手で手の甲を擦り。
「追撃技はご存知でしょう、ダウンアタック」
■セイン=ディバン > 「そうだな……それは確かに」
こと、そこに関して。男は油断していた。
せいぜいが、自衛が出来る程度の実力だろう、と。
ゆえに、痛い目を見ることになった。
そして、それを判断できたからこそ、相手に反撃できた。
「ふむ……。
実際のところ、お前さんの身体能力は分かった。
よく鍛えられているとは思う。ただ……」
相手が自分で立ち上がり、説明するのを聞きつつ。
男はふむ、と一度考え込むような仕草を見せる。
そのまま、相手に向かい、指を突き出す。
ちょうど、指で銃を作るような形。
そのまま、相手からわずかにその指を逸らし……。
次の瞬間。男の指先から、何かが轟音と共に放たれ、地面を抉った。
「こ~いう、異常な力が無い以上。
様々な技やらは習得しとくべきだな。
もしくは、今からでも魔術の習得を目指すとか」
ふっ、と指先に向けて息を吹く男。
この男の一番の異能。
『自身の細胞を自在に操る力』……。
その気になれば、指先から血液や骨を弾丸のように飛ばすこともできる。
■ビョルン > 今は語ることがない。
そして、この相手にはきっと語ることがない。
代紋を戴く通過儀礼として徒手で知らぬ誰かの人生を奪った経験もあることを。
そうした殺意と、ダメージの蓄積により湧き上がる殺意とはまた違ったと知るのだろう。
身体能力は人間の枠を外れることはない。人間の、若い男の枠の中だけである。
そして、相手が示した先に何かが放たれ、地面が抉れる様を見れば一度は目を見張るがすぐに醒めた顔つきになる。
ただ、仕草だけの拍手は添える。
「すごい、すごい」
王国に居れば様々な魔法や術を使うものは珍しくない。
「だけど、それはできない相談なんだ。
生まれ持った魔力と、自然に育った魔力は別の目的で使う。
それが、血盟家<ウチ>の決まりなんでね」
素っ気なく言ってからふと、肩を竦めて。
「背もまぁまぁ高いし、かぁいらしぃ顔をしてがっぽり稼いでいるのに魔法使いにでもなった日には国中の男から恨まれると思うだろ」
冗談を乗せて先程脱ぎ落したコートを拾いに行く。
■セイン=ディバン > あるいは、この相手を見誤ったか。
そこで初めて、男はそう考えた。
どこか、相手との数度の会話で。
この相手は、似合わぬ血に汚れた世界にいるのではないか、と思っていたのだが。
「……なるほど。事情があるのか。
だとすると、技が必要だな」
大変だな、と言い。自身の指先の傷を修復する男。
そのまま、男は相手に向かい、笑みを浮かべ。
「口が減らねぇなぁ。
とはいえ、素質は十分なんだ。
もしもお前さんが望むなら、いろいろな技を教えてやるぜ」
それも必要ないかもしれないがな、と。
男は肩を竦め、相手に背を向ける。
「さて、今日はこんなところにするか。
これ以上は、オレも本気になっちまいそうだし」
■ビョルン > 「けれど良いこともある。
モノノケに魅了されることも、呪い殺されることも──よしんば、邪悪に染まり切っても聖なる祝福で殺されることもないんだから」
そういうカラクリさ、と今日初めて軽く笑い。
拾い上げたコートはこちらも埃をはたいて肩へと掛ける。
「素質、ね──
ですが、『古来よりの人間の男としての境界を踏むな』とのしきたりはね、俺も冒せやしない。
喧嘩指南なら、何時でも歓迎してるぜ」
歩き出せば敢えて受けたジャブの痕が痛い。
「怪我して帰ったら、女に叱られる──」
なぜ怪我する前に仕留めなかったんですか、と。
相手の言葉に同意をすれば預けていた刀と短刀を受け取り、剣帯へと納める。
「じゃあな、おやすみ──」
相手と一緒に闘技場を出れば、それぞれの塒への帰路につくのだろう。
■セイン=ディバン > 「う……言うねぇ」
耳が痛い、と。
男は苦笑しつつ、相手をまっすぐに見つめるが。
「硬いねぇ……。
とはいえ、そこがお前さんの魅力なのかもな」
本当に、若いのに大したもんだ。
そう思いつつ、男は相手に背を向けたまま、手を振る。
「あぁ、お疲れさんだ。
また今度、酒でも飲もうや」
こうして、男の奇妙な一夜は過ぎていく。
どこか、不思議な充足感を心に感じながら。
男は、家へと向かうのであった。
ご案内:「富裕地区/王都闘技場/模擬戦場」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「富裕地区/王都闘技場/模擬戦場」からセイン=ディバンさんが去りました。