2020/11/04 のログ
ご案内:「平民地区 訓練所」にスバルさんが現れました。
■スバル > 平民地区の一角にある、訓練所の隅っこで、少年は一人、打ち込み台を前にしていた。
脇差と言われる東洋の刀を重そうに持ち上げ、右手には籠手をしているだけの少年、近くにはバックパックが置いてあった。
他の冒険者や、兵士たちの邪魔にならないようにと、言うよりも、怖い方近づきたくないと言うのが少年の内心、それでも、少年は願いがあるから、訓練所に来ている。
他の子供に比べて小さな体、髪の毛を伸ばして、目を隠す様にしている少年。
その体は、強さ、という物に縁のない。華奢なものだ、それでも、少年は訓練所に通う。
打ち込み台に向かい、踏み込み、そして、突きを繰り出す。斬撃など、行っても少年では相手を倒すことは不可能だ。
だから、軽い体重でも、刀の鋭さを利用し、相手に致命傷を負わせることの出来る突きを、訓練している。
其れしか、出来ないのは判っているし、才能もないのだ、戦士から見れば隙だらけで、簡単に倒すことの出来る子供。
不意を衝くことさえできないそんな少年は、それでも、と、母に倣った剣術を、愚鈍に、ひたすらに。打ち込む。
―――かつん、と弱々しい音が響く。打ち込み台に。少年が全力で突きを放った結果。
■スバル > 「―――は、……んっ…はぁ……は。」
先程始めたばかりではなく、其れなりの時間、繰り返していたからか、全身は汗ばみ、握力もほとんど残っていなかった。
それでも、少年は歯を食いしばり、それでも、と訓練を続けていた。
しかし、やはり限界という物は訪れるもので、そして、ひ弱な少年の限界と言うのは人よりも早く来るものだった。
小さな音を立てて、打ち込み台を揺らすことの出来ない少年は、その場にへたり込んでしまう。
刀を取り落とさないのは、最後の抵抗、とばかりで、ふるふると、震える手で、鞘へと刀を戻していく。
立って歩くのが億劫だけれども、少年はゆっくりと立ち上がり、バックパックの方へ。
バックパックの中には、少年の手作りのお弁当と、水筒がある。
だから、少年は水筒を取り出して、隅っこに腰を掛けて、その中身を―――水を飲む。
冷たい水が体に心地よくて、はふ、と息を一つ大きく吐き出す。
それから、思い出したように深呼吸を繰り返して、熱の籠った体を冷まそう。
呼吸を取り戻すために、大きく吸って、吐いて、吐いて、吸って。
落ち着いてから、夜の闇に落ちていく周囲を、ゆっくりと、見回した
■スバル > 息が落ち着いてきたら、くぅ、と小さく音が成る。当然の如く、食事の時間になっている。
基本的に、家には誰もいないから、訓練をするときは、食事を作って持ってきている、家に帰って親が、姉がいないのは大体日常の事だ。
寂しいとは思うけれど、それで帰ってくる事も無い、偶には会いたい所だけれど、冒険者をしている母は遠くによく行く。
姉は……まあ、基本的に己の思うがままに生きている、そういう意味では母や父と同じなのだろう。
そういう自分だって、思うがままに生きているのだ、家を守っていたいから。
そう、役割を押し付けられたわけではないけれど、それが良いと思うからそうしているだけの話だ。
「――あ。」
お腹がすくと、思考がどんどんどんどんずれていくようだ。
ご飯食べないと、とバックパックからお弁当を取り出す、ずっと一人で料理しているから。
それなりに自慢できるご飯を作れるようになってきている、一寸男の子としては悲しい気もする。
それはそうと、食べなければ生きていけないし、お腹がすいているから。
ご飯にしよう。
訓練所の片隅で、腰を下ろして少年はお弁当を広げ、食べ始める。
■スバル > 「んく、むぐ、むぐ。」
家の中で一人食事するよりは、喧騒が聞こえていたほうが寂しくない、最近はそんな風に思える、けれど……やっぱり冒険者とか兵士は怖いから、余り近寄りたくはない。
遠目に訓練している姿を見ながら少年は一人、お弁当をもしゃもしゃと食べる。
冷めてしまってはいるけれど、それでも美味くできてる方だ、と思う。
ご飯を食べて、水をもう一度飲んだ後、どうしようか、未だ、手がプルプル震えているし、もう少し回復してから訓練をしようか。
それとも、もう夜も遅くなってくるし、家に帰って休もうか。
「むぐ、むぐ。」
何方にしようか決めあぐねていても、お腹が減っていて、ご飯を食べる手は止まらない。
お母さんとか居れば、一緒に帰りたいのにな、と。
夕方、子供とお母さんが仲睦まじく帰る様子を思い出して、少しだけ寂しくなる。
手は、水筒に伸びて、一口、水を飲む。
■スバル > 「ぷは。」
水を飲み干して、一息をつく。
お弁当もしっかり食べ終わって、掌もそれなりに握力が戻って来たのだけれども。
周囲を見回して思う、最近は暗くなるのが早くなってきているし、夜は危険なことが沢山ある。
だから、と小さくつぶやく。
「今日は、もう帰ろうかな。」
夕方過ぎから訓練をしても致し、余り遅くなってしまうと見回りの兵士さんに怒られてしまうだろう。
子供は夜うろつくものじゃない、と。
良く、夜の遅くに訓練をしてるけれど、それは、他の人が怖いから、と言うのもあるのだ。
怒られるのも嫌だし、と、少年は水筒と、弁当箱をしまい込んで立ち上がり。
脇差を腰のベルトに挿して。
バックパックを背負って。
少し急ぎ足で帰っていくのだった。
ご案内:「平民地区 訓練所」からスバルさんが去りました。