2020/10/26 のログ
ご案内:「平民商業地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 【約束】
ご案内:「平民商業地区」にティエラさんが現れました。
ティアフェル >  良く晴れた爽やかな秋晴れの昼下がり。
 今日も人々は布を織り、果実を摘み、パンを焼き、またそれを売り歩く。
 活気のある商業地区は売り捌く声、買い叩く声、硬貨のぶつかり合う音。
 そんな賑やかしい音で満ちている。

 そんな喧噪を耳にしながらそよ吹く風に下ろした髪を靡かせ、都内の商業地区にある広場の噴水傍で人待ち顔をして佇んでいた。

「いいお天気で何より。……すぐ寒くなっちゃうからなー。
 短い秋を満喫せねば」

 午後の広場は穏やかで走り回る小さな子どもやら、散歩に巡る高齢者やら、はたまた片隅で露店を広げて呼び込みを行う声やら。そんなものばかりの賑わいだったのでごくごく平穏な雰囲気。
 普段の白衣ではなく、ワンピース姿でんーっと伸びをしながら程よい日差しにまったりと表情を弛緩させ。
 そろそろかなー、と待ち合わせ相手を探して視線を巡らせ。

ティエラ > 久しぶり、な気がする。誰かと待ち合わせて、遊びに行くという事は。
幼いころから、ジプシーゆえにすぐに町を離れ、別の街へ、と繰り返す故に、友人を作っても、直ぐに別れてしまう。
冒険者としてもそういう物だから、友達と連れ立って、歩くという事は余り無かった。

だから、少し浮かれている、というのは、間違いではない。この年になって、こんなにもウキウキするものなのね、と自分を再発見する。
今日は少し気合を入れてみた。
流石に連れ立って歩くのに、半裸の踊り子の服は彼女がかわいそうだ。
と、言っても流石に、普通の服という物は持ち合わせがなくて、自分の家に有る物を幾つか選んでみた。
黒いチューブトップ、肩が出て寒そうだからショールを羽織る事で、防寒して、長めのズボン。足元も、パンプスにしてみた。
買い物だから、と小さな肩掛けバック―――これは、中の容量を大きくしている魔法の品だが、それを小物として。
化粧品は―――何時もの口紅とアイシャドウで。

「髪の毛、結んでいった方が良かったかしら。」

時間ぎりぎりまで、ああでもない、こうでもないと悩んでいた結果。
ちょっと遅れそうになって、慌てて走る女だった。
貧民地区を絡まれずに通り過ぎ、平民地区の商業地区へと近づいて、約束に記された場所。
頂いた緑の便箋を片手に。

「ああ、ティアちゃん、お待たせ。」

目的の場所にある、大きな噴水。そこで伸びをしている可愛らしい友人に、大きく手を振って見せる。
彼女が見慣れていない自分の服装だから、判ってもらえるかという心配が今更。

ティアフェル >  少し早めに来て待つのも割と好きだった。広場に憩う人々を観察したり、露店を見たり。考えごとをしたり。
 そうしていると時間なんてあっという間に過ぎるもので、待ったという気もしない。
 こんなに気候穏やかな午後であればなおさらに外で風に吹かれているのも心地よいものでゆったりまったりしていたが。そこへやってくる足音。
 広場の真ん中辺りでぐるりと視線を巡らせていたところだから、その姿はすぐに目に付いた。
 いつもと雰囲気が違うので、一瞬ぱたりと目を瞬いたが、掛けられた声に待ち人であると判り。
 こちらも手を振り返して。

「おねーさまー。待ってないよ、今来たとこー」

 定番の応答を口にしては、パンツスタイルの彼女に目を細めて。

「わー。いつもと雰囲気違うねー。今日も素敵ー。脚綺麗だからパンツ似合う」

 表情を緩めて賞賛したあと、じゃあ早速どこ行くどこ行く?とせっつき出す。

ティエラ > 自分の声に反応したのか、彼女は此方の方を向いてくれた、そして軽く手を振ってくれる。ちゃんと認識してもらえたらしい。
嬉しい事だ、余りこういう格好しないので、誰と思われる事良く有るのだ。
と言って、基本が半裸の踊り子スタイルか、魔女のローブ姿なので仕方がないと言えば、仕方がない。

「ふふ、ごめんなさいね。」

定番の応答に、女は口元を少し釣り上げて笑って、ウインクを一つ。とは言え、遅刻は遅刻なので、後で何か埋め合わせしておかないとだめね、と。
自分の服装を見やる彼女、少し気恥ずかしく、頬染めて、大丈夫かしら、と自分の服を見やってみせた。

「ありがとね。ほら、何時もの格好じゃ、悪目立ちしちゃうかもだから。
冒険者っていやね、定住しない物だから、服も余り準備できないのよね、ここぞのおしゃれが無くて。

ほらほら、落ち着いて。
先ずは、食事でもしてから、がいいかしら?ご飯、未だでしょう?」

今は昼時、少し遅い位。
先ずは食事をしてからにしましょうか、とそっと、ティアちゃんに手を伸ばして。手を繋いでいきましょうか、と。

ティアフェル >  踊り子の衣装だと、確かに日中の平民地区では少し目立ってしまう。
 普段と雰囲気の違う服装だと少し特別感があって楽しいものだ。
 秒でわくわくしながら、謝罪の声にぶんぶんと髪を揺らしながら首を振り。
 遅刻とも云えないし、そのくらいで気にしていてはお互いに気詰まりだと意思表示し。

 全然おっけーと少し照れ気味な様子にぐっと親指を立てて見せ。

「んー。確かに夜の街にはハマるんだけどね。昼間だと余計に目立っちゃうかなあ。
 いや、そうなるね。欲しい服をいちいち買ってたら荷物が瞬時にカンストだよ。わたしも普段着で精一杯。靴も服もかさ張るから。
 ――うん、じゃ軽く。甘い物欲しいなあ」

 昼食はそこそこに、間食に拘りたい。普段は偏った食事は良くないと気を付けるが、今日は特別。
 遊びに使う一日くらいは食事も好きなように摂りたいもので。
 きゅ、と手を繋いで細い指先に少し照れながら。広場から飲食店が集まっている区画に歩き出し。

「んん……。やっぱカフェとかかな? そんながっつりしたものじゃなくていーよね?」

 大衆的な食堂から昼間から開けている酒場、軽食がメインのカフェ。いくつか並ぶ店の中から女性客も多く落ち着いたカフェテラスを見やり。

ティエラ > 快活な彼女は、自分の言葉に対してサムズアップで答えてくれる。
こう、気軽に話せる友人……ちょっと言っては失礼かもしれないので心の奥底に秘めておくが。いちいち所作が悪ガキっぽくて可愛らしい。
だからこうも、彼女の事を気に掛けてしまうのかもしれない。手のかかる弟のような。

小さく笑いを零して、同じくサムズアップをしてみせようか。

「ええ、ええ。私自身は気にしなくても、そういうお仕事だしね。
でも、ティアちゃんが白昼堂々そんな、半裸の女と歩き回る人だって、勘違いされるのは私としても嫌だし。
基本、靴は予備とかは次の街に付くまで使えるような、応急的な物になるからね……それに、可愛い洋服とかは、生地が薄くて冒険に。
……今度、魔法で強化してしまおうかしら。

ええ。じゃあ、そうしましょうか。」

軽く甘い物、良いと思う。甘い物はとても貴重だ。
心も体も豊かになる、一寸ついてはいけない所に付きやすいのが玉に瑕だけれども。
それでも、友達と一緒に食べるそれは、心に特にいい。

彼女とともに歩き始め、彼女の視線の先にあるカフェテラス。

「あそこにしましょうか。」

そう、彼女に言って、手を引いて。
店員に二人、と伝えてメニューを受け取り、日差しがあり、仄かに温かいテーブルを選ぶ。
彼女に先に座るように促し―――対面に座ることにする。そして、メニューを差し出して、彼女に見せる。

「先に選んでいいわ?」

ティアフェル >  男兄弟の中で育つと、ガサツで粗忽にはなってしまい女らしさに欠ける――しかし、そんな挙措にも同じように応じてもらって。へらりと笑みを刻み。
 自分とかなりタイプは異なる相手だが、親しくなれる相手というのは同じ人種に限らないという好例だろう。

「半裸の女て……表現よ。確かにそこだけ切り取れば誤解を招きそうだけど……まあ、過激な服装をしてる人っていうのは、まあまあいるからねー。わたしの方は全然問題ないけど。そういう陰口みたいなこというヤツとはどうせ仲良くならないし。
 いいなぁ……その手が使える人はー。わたしは防具もつけないからいつも服装には悩むよ。ださいのヤだし、かわいいのは弱いし」

 ふー、と小さく息を吐いて少々ボヤきがちだったが、カフェで甘い物、と考えるところりと上機嫌で。
 落ち着いたカフェのテラス席。二人とも顔に直射が来ないところ…と席を選んで座ると正面の彼女からメニューを渡されたが。

「こうしたら一緒に見れるよ」

 一緒に選ぼう、と広げたメニューは二人の角度から真横にして挟む形。文字が少し読みにくくなるがこれなら同時に選べる。

「あー、やっぱり栗かなー、カボチャのケーキも捨てがたい……りんごもシーズンだし、あぁー梨ー…!」

 秋の実りは豊かでそれは菓子類にも多分に反映される。食事そっちのけで甘味類を舐めるように見て頭を抱える。5つくらい選べると苦悶の呻きを零し。

「――シェアしませんか?」

 色々食べたい時のご提案。二人とも食べたいのが被れば注文してシェアしませんかと真顔で。

ティエラ > 何と言うか、あれだ。そもそも、兄妹がいなくても、冒険者をやっていればおのずとがりがり女らしさは削れてしまう。
判るのだ、彼女の所作が。ただ、女性らしさの観点から見てしまえば、悲しい事この上ないという。
でも、友人と、気安くするこの空気は、とても、とても好ましくて。だから、止められない止まらない。
見ていて、本当に胸がすくような、良い笑顔だとおもえる。

「陰口だけなら兎も角、陰口は評判になる事もあるわ?風評被害ってやつよ。
ジプシーが一つの所に留まらず、町を転々と渡り歩くのは、其れもあるわ、だから、そう言うのには、敏感になるの。
仲良くしなければ良いし、ならない。それには大賛成だけど、ね。

ふふ、うらやましい……?でもね、重大な欠点があるのよ。そういう格好で行くと、基本的に冒険者としては―――依頼人に侮られる。
らしい格好、というのは一定の理由が発生するの。」

ボヤキに対して、一つだけ。言えない理由があった。
きらきらしてるティアちゃん、その若さだ、自分はそれなりに年を取ってきている。可愛らしい格好。
似合わない、着れない。うぐぅ。と唸ってしまう、彼女の若さが、うらやましい。吸い取りたい。

「もう。おねーさん、ゆーわくされちゃう。」

広げられるメニュー。そして、魅惑の甘味の数々。彼女と一緒に見ると、屹度、屹度。
そう思いながらも、目は当然、メニューに移動していくのであった。

「ティアちゃん、ダメよ、葡萄も旬なの、忘れちゃだめよ……!」

実りの秋とよくいう物だ、おいしい果物、甘い物……いっぱいあるのだ、そして、それがこれでもか、という風に特別メニューとして、掻き出されている。
あれもいい、これもいい、ご飯よりも甘い物。


       彼女の真顔。それは、今まで見た、どの顔よりも真剣で。


「―――死ぬときは、一緒よ―――」

 ティエラ・フローレス25さい。
 彼女は、いま、何もかもを捨てて、真剣に答えた。

  女らしさとか、そう言うのは今は、忘れる。オーラがにじむ。

        いっぱい
      あ ま い も の

と、全力で、同意した。

ティアフェル >  女性らしさを追求するよりは自分らしさを大事にしていきたい。
 たとえ行きつく先がゴリラだろうが。
 自分らしさが許される今ならば余計に素顔が全開で。

「別にいいわ、それで評判が悪くなるなら普段の自分にも問題があるのよ。そんなことよりわたしは友達大事にしていきたい。そっちを見てくれる人だってきっといるから。
 結局誰にも好かれるなんて無理なことだし。
 見た目は大事だよね。第一印象ってことだし。相手に対する情報のひとつだから――状況に合った服装は大事ね」

 でも、ソロで冒険にでる時はもう好きなかっこしていたい。余り油断しきった服装だと無用な来客が後を絶たないのでそこもまた難しいが。
 大人かわいいコーデというのもあるので、年齢というよりも彼女の場合キャラ問題でゆるふわが抵抗あるのではないかと推測される。

「こんなメニュー見せられて我慢できる女子なんているものかー!
 なんだこの誘惑の嵐は、わたしは今試されているのか…ッ
 ああぁ、ぶどう大好き…! 赤ぶどうジャムがたっぷりのワッフルだってヒドイッ」

 選びきれる訳がない。もういっそ残酷なまでのおいしそうなお菓子たちの誘惑を喰らって容易く陥落する砂城の乙女心。
 
 そして真摯な顔で向き合うと、彼女もまた、本気と書いてマジでガチだったので。
 深く大きく肯いて。

「お姉様……、わたしたち――一蓮托生よ……ッ」

 死地に赴く戦士のような顔を向き合わせた女子二人。その周辺には近寄りがたいオーラすら漂っていた。
 ってなわけで、早速しゅぱ、と手を上げて給仕さんをカムオン。

「っすいませーん! ここからここまで、お願いしまーす! あ、取り皿も。
 それとポットで紅茶をー」

 期間限定甘味欄をずーっと指で辿ってオーダーした。食い切れるのかという。しかし本気になったスイーツハンター二名の前では敵ではない。

「あ、どうしようお姉さま、しょっぱいもいると思うんだけど……!」

 それから注文したが、甘いにはしょっぱいは必須、と本気で焦りだす。

ティエラ > 「もう、気高いんだから。そう言うの、大好きよ、口説いちゃいたくなる。
 好きもあれば、嫌いもあるから、仕方のない事なのよね、屹度。

 ええ、見た目は、とても大事だと思うわ?そもそも、場所によっては、服装次第では入れない場所もあるし。
 依頼人の所に服装不味くてたどり着けませんでした、とか。笑い話に有ったわね。」

 見た目は、結構重要だと思う。人は目でまず判断する、服装とか顔の美醜とか、動きとか。
 だから、その辺りは気にしなければならないのよね、と彼女の言葉に同意するように頷いて見せる。
 ゆるふわは、愛でるものであり、成るものではない。きっと、ティエラがそれをしたら。許不和―ユルフワ―になるとおもう。
 だって、これでも腹筋われてるし、腕も足も、それなりにムキムキなのだ。適度につけた脂肪で隠してるだけで。

「酷いわ、酷いわ本当に。
 この、葡萄たっぷりのミックスフルーツタルトとか……っ!
 定番のサクサクアップルパイとか……!
 どうしよう、屹度、明日からわたし、仕事に出れない……っ」

 たくさんあるお菓子、甘い物、クリにパンプキンスイーツに、フルーツ。
 全部食べたらきっとお仕事に支障が出ちゃう。踊り子なのに、大きくなっちゃう、主に横に。
 がつーんがつーんと、乙女心の防壁を壊される音がする。おとめがきえてしまいます。
 小さな妖精さんたちが、ウルウルした目で、食べてと訴えるものが見える。(幻視)
 そして、二人の心は、一致した。

「ティアちゃん、これよ!『バスクチーズケーキ塩味』……甘い中に、塩を掛けてあるの。」

 しょっぱいの補完。注文は彼女がすべてしてくれるからと、此方はそれに甘えて塩のデザートを探ていた。
 それでも、甘みはちゃんとあるものを選ぶ辺り、甘い物に飢えていた。

「あと、アイスコーヒーも……!」

 口安めの苦い味、其れも完備しておかなければ。
 アイスコーヒーにしたのは、食べれば体温が上がるから、冷やす意味も込めて。

ティアフェル > 「どっちかというと、強気、って云われるけどね。うふふふふ。お姉さまに大好きと云われるのは悪くにゃい。
 わたしはわたしの好きな相手に好かれれば充分です。
 確かに、富裕地区ではちょっと気を遣うしね。ドレスコードなんてのもあるから面倒いわぁ……」

 見た目が総てではないが。ある種の重要なファクターであることは間違いない。
 面倒と云いながらもお洒落をするのは楽しい。見た目を誉めらられれば努力を認めてもらったみたいで嬉しくなる。外見、深いなあとしみじみしていた。

 そして今、その普段から気を遣っている外見を――崩すような禁断の行為に手を染める。
 こんな必殺の温い一言を駆使して。

「――一日くらい、大丈夫だよ~。
 今しか食べれないんだよ? がっつり運動すれば良き良き。
 もう注文しちゃったんだし、食べなきゃねぇ~」

 実際一日くらいの暴食ならば普段気を付けていればカヴァーできる。翌日の体重計を見なければ乗り切れる筈だ。
 自分はスタイル重視の職種でもないので、余計に悪魔の如く、ゆるうい笑顔で囁くのだ。
 何だか、目の前にスイーツフェアリーが漂っていることだし、ここは陥落するのが乙女というもの。

「――それだ! ナイス、ナイスお姉様、これでばっちりね! 甘いとしょっぱいの布陣が完成したわッ」

 OKそれで!と彼女のバスチ塩味にグッジョブ。これで甘味塩味ループに嵌る準備は万端だ。さあどっからでも持ってきてちょうだい、とオーダーを待ち構える捕食者。猛禽類の瞳をしていた。

 紅茶にしたのは、デザートが冷たい場合が多いので胃を温めるためと、糖分を多少は分解してくれるからだ。お互い飲み物ひとつとっても妥協しない。完璧なスイーツハンターだった。

 やがて、ぶどうのタルトや、アップルパイ、モンブランにパンプキンパイ、梨のタルトが続々と運ばれて。
 目がテーブル一杯ずらーっと並んだ秋のお菓子祭りに10000ゴルド級に輝いた。

「ぎゃーやばぁーい…!!」

ティエラ > 「強気な事を言えるのは、それだけの気高さがあるからだと思ってるわ?気高くないと、そもそも、強気な発言なんて、出ないし。
 気高くなく、強気な発言してるなんてむしろ、口だけの人になりそうだし、ね。
 あら、悦んでもらえるなら、何時でも言うわ。ふふ、だ・い・す・き。

 人の世って、世知辛いわぁ。」

 ドレスコード、余り思い出したくない、それを満たすための物を探したりしないといけないし。
 貴族の館とか、変にこだわるからもう、そう言うのは受けたくない、だからこその貧民地区というのもある。
 彼女の言葉にしみじみしながらも、悪くにゃい、なんて可愛らしい方するから。
 もう一度、ゆっくり唇を見せつけるようにして、大好きを言葉にする。好意はストレートにぶつけるタイプ。

「あぁぁぁぁ。其の一日が、一日が、色々と後悔するの……っ。
 ティアちゃん悪魔!堕天使!
 そんなこと言われたら、もう、食べざるを得ないじゃない……。
 そもそも、一蓮托生なのだから……っ!」

 判ってます、そして、もともと食べないという選択肢は最初からないし食べる気は満々なのです。
 だけど、言葉にされるとちょっと懊悩するのは、お仕事柄というやつなのです。
 冗談交じりで彼女に言葉を放って見せて、でも、届く甘味に、目を輝かせるのは葡萄の女。

「ふふ、苦みと、紅茶と、甘みと、塩味……これが、極楽ね!」

 どんどんと、テーブルにやって来るデザート、デザート、主食―dessert―。
 乙女にとって、これ以上の幸せがあるのだろうか、いや、無い。
 後が後悔するのかもしれないが、今はこれが最上、これ以外は、無い。

「見てるだけでも、甘そう、良いにおいするわ……っ!」

 そう、思ってふと、女はちょっと笑って見せる。
 ショートケーキを一つフォークで切り分けて持ち上げて。

「はい、あーん。」

 にっこり笑う、せっかくのおデートなのだ。
 こんな風に、遊ぶのも、良いかしら、と。

ティアフェル > 「いやあ……そうしっかり肯定されちゃうと照れますなあ……。でも嬉しい。口だけ女にならないように気を付けるわ。
 やーん、お姉様ってばぁ。わたしもだーいすき」

 照れ照れしながら後頭部に手を当てて、それから薄っぺらい発言にならないように実証していこうと決め。
 それから、また告げられた好意に頬に両手を当てながら、浮ついた声で発した。ぶんぶんと無駄にアホ毛が揺れていた。
 世知辛いという発言にはちょっと冷静になって、まったくねえと肩を竦めて肯き。特に女子は服装で下に見られることも多いから手間が多いもんだと。

「駄目よ~、オーダーしちゃったからにはどんな結末が待ち構えていよーと後悔しちゃ~。食べ物にも作ってくれた人にも失礼なんだからね~。
 死なばもろともじゃい。大丈夫、デブ時るは一緒よわたしたち。ともに地獄に落ちましょうー!」

 ダイエット地獄がぱっくりと底を開けて待っていたとしても突き進むしか道はない。
 明日のごはんは、葉っぱのみだね、と覚悟は決めた。ドレッシングもかけないで塩だけふってなんらかの葉っぱを齧ってすませる。

「当座ごはんが雑草になったとしても――このシャングリラにの為ならわたし耐えきって見せるー。
 うわーい、おいっしそー! 見た目の綺麗さもテンション上がるよねー」

 きゃーきゃー嬌声を立てながらお菓子の前ではしゃぐ。最強甘味の前では女は皆童心に還るもの。
 どれから、どれから食べればいいのかしらっ、と目移りしまくっていると、不意にひとくち取り分けられたショートケーキ。

「あー、んっ」

 もちろん躊躇なく。即座にぱく、とフォークに吸い寄せられて頬張り。

「んんんんーっ、あっまぁーい。うっまぁーい。この一口目が堪りませんッ。
 はーぁい、おねーさまもー、あーん」

 目をくの字型に細めてぱあと頬を明るませ至福の表情を浮かべてあっという間に口の中で蕩けるような甘みに浸り。それからお返しにぶどうのタルトを一口フォークに刺して、あーん返し。

ティエラ > 「私も、口だけの女にならないように、気を付けないとね。
 そんな風に、言われると、もう抱き締めて頭なでなでしたくなっちゃう、ああ、もうテーブルが邪魔ね。」

 テレテレする姿もかわいらしくて、抱きしめて撫でまわしたくなるけれど、テーブルがある、そして、その上には財宝とも言える甘いスイーツ。
 これらを吹っ飛ばすわけには行かないので、残念、と諦める―――訳なく。後回しにする。大事なので、後回しにする。
 アホ毛が揺れている、凄く元気な証拠ね、とそのアホ毛を眺めるのであった。

 肩をすくめる彼女に合わせて頷く。そもそも、男系社会なので、女性は何時も一段下に見られがち、服装だけじゃなくてだ。
 だから、本当に世知辛いわぁ、と同意してくれる彼女の所作を真似しを肩もすくめて見せた。

「確かに、ティアちゃんの言う通りに、これは残したら、作ってくれた人にも失礼ね……!
 覚悟を決めたわ。ティアちゃんと同じ道に連れていかれるのね、道連れだし……!」

 ダイエット地獄、体系維持地獄。様々な地獄があると思うが、同じ道を進む人がいるならきっと耐えられる。
 また、最初から肉体改造を行わなければなるまいと、決意を新たにする女だった。
 綺麗になって、いてやる……と。

「雑草はダメよ、お腹壊しちゃうから……適度な食事と、適度な運動が、一番のダイエットよ。
 それは其れとして、この素敵な色味、見た目からも甘そうでおいしそうで、ああ……っ。」

 くらくら来てしまう、失神してしまいそうな、綺麗なお菓子の数々、見て楽しむもよしなのだが、食べないと駄目なものだ。
 ちゃんと食べて行かないと、イケナイのだ、とても、おいしくて素敵な物。
 それをまず、彼女の口元に運ぶ、これが―――開始の合図だ。

「あーん。」

 食べてくれた彼女の嬉しそうな顔、彼女の髪の毛、アホ毛ちゃんもすごく踊ってるのが見て取れる。
 甘いお菓子を堪能してくれているのが判り、とても、心がほっこりして、彼女がフォークを突き出していた。
 その上には、葡萄のタルト。

「あー……ん……。」

 口を、開いてぱくんと、小さく切り取られたそれを食べる。
 舌に乗っかるほんのりした冷たさに、甘いクリームと、葡萄の酸っぱさ。それらが引き立って口の中でしびれが走る。
 甘くて、おいしくて。頬を染めて、蕩けてしまいそう。
 
「あぁ、もう……。」

 これだけでも、とても素敵なのに。テーブル一杯あるなんて、と目を潤ませてしまう。
 それでも、これが開始なので、女は次の食べ物に手を伸ばす。
 アップルパイにしよう、サクサクした感触、大好き。

ティアフェル > 「なりがちなんだけどね、妖怪口だけ女。有言実行って何気むずい。
 お姉様ってばー。なんか犬猫と間違ってないかしらぁ……」

 いや全然いいんですけど、なんだか扱いが人間というよりペットに類似しているような。いや、それでももちろん構いやしないんですけど。くすくすと肩を揺らしつつ。

 まだまだ女性の地位は低いのかも知れないが、まあその分甘く見られて得する部分もあるので諦めておく。
 取り敢えず、こうして甘いものを沢山頼んできゃっきゃ浮かれながら食べられるのは女子の大事な特権だ。

「うん、おいしく食べてお腹が出たらへっこませればいいのよ! 腹は必ず出るかも知れないけど、わたしたちはそれを引っ込ませることだってできるんだからッ」
 
 道連れ。真顔で大きく肯いた。出るのもへっこませるのも一人じゃないとなれば勇気が湧く(湧いていいのかだが)。
 
「大丈夫、食える雑草だから。ゼロコストで栄養豊富ローカロリー。一番の問題は――不味い。
 んんぅ、確かにこのリンゴの赤、ぶどうの紫、栗のブラウン、梨のクリーム色……!
 輝いている、君たちは輝いている……!」

 色とりどりの綺麗に盛り付けられた菓子類。見た目からしてやられる。食べるのもったいない、食べなきゃもっともったいない。
 最初の一口目を口に運んでもらって、甘くて柔らかなスポンジとふわふわのクリームを堪能して一瞬で幸せの真っただ中。それがまだまだ沢山ある。食べ切れないくらいある。なんならしょぱいもある。
 幸せ過ぎる。

 あーん返しをすると、蕩けるような顔をするので、『お菓子でなんという色気…!』戦慄すら走った。現役踊り子の真価はぶどうタルトひとつでも発揮されるのか、と少々目を丸くして。
 それからふんわり漂ってくる甘い香りにはっと我に返ると、食べよう食べよう、とテーブルに集中。

 あーんで食べさせっこした後は、貪りたくなるのを堪えて、そのままぶどうのタルトを崩しにかかる。

 生地とクリームのこってりした甘さをぶどうの酸味が抑えてくれて舌に心地よい風味が広がる。幸せ。

「やっはぁ~、やっぱりおいっしぃ~。もういくらでも食べれちゃうー」

ティエラ > 「そうよね、だから、沈黙は金なんて、言葉が出来てしまうぐらい。できないことは言わない方が良いのよ。
 だってぇ。ティアちゃんを本気で大好きをぶつけると、迷惑かもでしょう。
 likeの大好きじゃなくて、Loveのだいすき、だしね。……我慢してるのよ?
 うまく手加減できないから、こういう風になっちゃうの。

 ごめんね?」

 その辺りの加減はうまくないのと、申し訳なく思う。本当は、恋人のように一緒にいたいけれど、そんな気の無い相手にぶつけるのも。
 自分なりに手加減をしている積りなのが、ペット扱いに思われていたらしい。
 そんなつもりはないので、謝罪と、どうしたらいいのかしら、と溜息を一つ。

「お腹だけじゃないわ、全身をバランスよく減らさないと。だって、お尻が無駄に大きくなっちゃったり、するわ?
 どのみち、ティアちゃんが一緒にしてくれるなら、頑張れるわ……!」

 ええ、ええ。一人できついダイエット、二人なら辛さは倍増だけど共有感できっと、何とか乗り切れるはず。
 彼女の元気と快活さは、屹度太陽だから。炎の妖精とか精霊とかそんな感じになるから。大丈夫諦めんな的な。

「ねえ、ティアちゃん。一応聞くけど……雑草を選ぶ理由って、お金的な問題、なの?」

 先程から、草を押す彼女。いま彼女の魂は、色とりどりのすいーつに向けられてるけれど、少しだけ不安になった。
 お金が無くて、雑草を食む生活を選んでるのではないか、と。
 あともう一つ、何となく、直接雑草をもぎもぎして食べる姿が容易に想像できて不安になったから。
 普段から自分の事ゴリラゴリラ言ってるのも、邪推を推進する一助。

 目の前の、甘味の宝石たちを前に、食べたいのに、ちょっと不安が強くなり過ぎた。

「ぁ。」

 そして、質問したが、彼女はスイーツを食べ始めている、甘いし美味しいし。
 だから女も食べることにする、彼女よりは手が遅いけれど、一生懸命サクサク、サクサクと、少しずつ。
 偶にしょっぱいチーズタルトをパクリと食べて。
 コーヒーを一口で甘さを流し。
 はふぅ、と蒼い唇から、甘くなった息を吐き出そう。

「ええ、ええ。とても甘くていい。
 手が、口が、止まらないわ……!」

 サクサク、サクサク、味も、触感も素敵なアップルパイに、ティエラ感動。

ティアフェル > 「でも雄弁は銀、よ。金より銀の方が価値が高かった頃のものだから、ちょっと遅れてる言葉かもだけど。
 やー……そう真っ向から云われると……小っ恥ずかしいなあ。
 いやいや、ごめんじゃないし、恐縮です……!でも、心底なんでまた、って感じだけど……」

 かなり仕上がったゴリラ系女子だもんで、そういう方向性に戸惑いがち。思わず頬を染めて照れくさくなって、アホ毛が揺れ惑う。今のところそんなに男子にもだが女子にはモテたこともない。
 冗談では純情可憐だとかほざけるが。事実としてそんなものはないのでこうなると基本狼狽える。

「難しいよねえ、腹は最後までへっこまないし、わたし太腿がやばいんだー。着痩せで誤魔化す日々……。
 うん、目指せ綺麗痩せ!」

 一緒に痩せれば怖くない。減量にもお菓子にも仲間が必要だ。楽しさは倍に苦しさは半分になるのが友情パワー。ちょっとだけここら辺のトークは熱が篭ってアツかった。

「んー。それもあるかな。節約大事よ。安くあげられるならそうすべきだしね」

 実家がそもそも裕福ではなかった。というか子だくさんで大変だった。こうして贅沢にお菓子を沢山食べれるのもまた幸せなものだが。体重増幅お財布減量になるからには、ダイエットと節約も兼ねて草を食む。
 一応調味はしたりもするが。

 しかし味わっているお菓子と書いて幸福と読むものたちを前に些末なことは吹っ飛ぶ。
 マジでおいしいー。進むぅー。と夢中になって甘き牙城を崩し、そしてなくなっていくことに憐憫すら抱く。

「あ、いーな! わたしもちょうだいちょうだいー。あーん」

 人が食べているものっておいしそうに見える。ひな鳥状態でアップルパイを攻略している彼女に、恥も外聞もなく、口を開けて待機。意地汚い。

ティエラ > 「あら!ほんと?そんな流れだったのね。沈黙は金、雄弁は銀。銀の方が価値が高かったころ……じゃあ、本当の意味でいうなら、言葉は大事ってことなのね。有難う、知らなかったわ。
 恥ずかしがらなくてもいいわ、だって、本当の事だもの。

 それと、聞きたいなら、理由をちゃんと言うわ?なぜ、貴女を選ぶか、というの。」

 一寸口直しに、紅茶を一口。ポットでの注文は、先程のシェアの意味もあると思って居るから、自分の分のカップに注いで一口。
 彼女の魅力に関して、自分が好みに思ったからというのが一番わかりやすいし、其れなら、何処が魅力的に思えたかをちゃんと伝えたい。
 彼女が、嫌でなければ、という所があるのだけど。今は、うろたえてるし、判るように説明したほうが安心してくれるのかしら、と。

「冒険者としては、太ももは……歩き回るから、余り、減量しきれないのよね。筋肉になるし、それにそれをそぐと、歩き回ったり駆けまわったりに支障がでるし。
 綺麗やせ目指せー!」

 なんか見える、熱が見える。目が燃えている。
 でも、推測通りだし、えいえいおーと、右手を上げて、同意する。だって、綺麗に痩せたいのは、同じだし。

「うん……まあ、強くは言わないわ。でも、ティアちゃんの体が資本なのだし、余り切り詰め過ぎはダメよ。
 倒れたりされたら悲しいし、そんなところ見たら連れ帰って、ティアちゃんを養育しちゃうから。

 友達として、友人がそんな状態なのは、とても心配になるから。
 貴女が大丈夫と言っても―――不安の儘になるからね?」

 冒険者は体が資本だから、確かに彼女の言わんとすることは判る、自分もお金が裕福ではないし、状況に依れば草をはむこともある。
 幼いころは実際に食んでいたこともある、だからこそ、彼女にはそれを率先してほしくはないと思う。
 だから、お願い、と己の指を祈る様に握り合わせて彼女に懇願。

 侵略者だ、侵略者がいる。お菓子の幸せの世界を文字通り貪る侵略者。
 それが一体ではなく二体、お菓子の国は、滅びの時を、今か今かと待ち構えるようなとき。
 甘くて、おいしくて、すっぱくて、しょっぱくて。時折、珈琲とかで舌をリセットして。

「はい、あーん。」

 口を開く彼女に、女は一切れ切り分けて、そっとその口元へ。
 サクサクとした感触と、焼いたアーモンドの薄切りの香り、リンゴの甘さが、とても感じられるものだった。

「ティアちゃん、それ、私に下さいな。

 あーん。」

 彼女の手元にある、マロングラッセ、小さくて輝く宝石のようなそれ。
 頂戴、と甘えるように口を開いて見せる。

ティアフェル > 「大昔は銀の方が精製しづらかったんですって。――ううん、でも金の方が価値が上がった今はやっぱり沈黙は金、って言葉の方が正しいのかも知れない。銀みたいに雄弁は沈黙より価値が低いのかも。
 うぅ……そうさらっと云われるとよりテレますな。
 ………今聞いちゃうとケーキの味、判んなくなっちゃいそ。だからとりま食べるねッ」

 なんだかケーキどころじゃなくなりそうで、ちょっとあたふた。今は美味しく味わっておかねば。ダイエットを覚悟し、金銭問題に目を瞑った上での極楽なのだから。
 取り敢えず洒落や酔狂でもなく、云ってくれているのは伝わった。だからめちゃめちゃ照れるが。

「でもその内蕪みたいにぶっとくなったらどーしようかとお風呂で懸念が常に過るわたしの足……。
 お姉様足長いしいーよね…キレイでー。
 えいえいおー!」

 目指せと発破がかかったので、おー、と拳を振り上げて乗る。
 食べたい痩せたい、永遠のテーマである。

「うん、そうね。最近はちょっと……自分を虐め過ぎかもって思って今日は遊んでもらうことにしたのよ。
 お姉様ならきっとそんな風に云ってくれるんだろーなーと思って。
 だからね、こうして適度に息抜きするから大丈夫よ。死にゃしない」

 最近ぶっ倒れがちだが。さすがにそこは伏せて。疲れて余裕のない日々にこのままではハゲてくるような気すらして今日はただ楽しむだけの日に充てた。
 心配して祈るような所作すら見せてくれる様子に、気を付けます。と肩の辺りで右手を上げて。
 ――ちょっとアホなんで、うっかりして性懲りもなくぶっ倒れることもありそうなので、絶対とは誓いづらかった。うっかりはノーカンでと主張したい。

 甘い、口が甘い、とケーキばかりになってこってりしたところでお茶を飲み、バスチを啄む。そしてまた甘みにリターンする。無限にいける、と思わずばくばく食べて順調にお菓子の国の住人を胃の中へ移住させ。
 それから一口もらうと、

「あーんっ……はっふ、さっくさくー。ちょっと酸っぱめのりんごだから程よいわー。
 あ、はいはい。どうぞ、あー、ん」

 口福口福。口の中に広がるバターの効いたサクサク生地と香ばしいアーモンドにリンゴの爽やかなマリアージュ。幸せとうっとりしていたが、マロングラッセを示されて、うんうんと肯いて反応すると、フォークで指して栗一つ分彼女の口に運び。それから、

「おいしいねー」

 一緒に食べると余計に美味しくなるのがお菓子。にこにこと小首を傾げつつ笑い掛け。

ティエラ > 「人の価値観などは、時代に従い変わっていくものだし、ね……。でも、そんな背景があったのね。

 照れてる姿も好きよ、とても素敵。
 ざーんねん。ちゃんと私の思いを伝えられるかなって思ったけれど、仕方がないわ。私もスイーツ楽しみましょ。」

 お金に関しては興味があるがお金の歴史には興味がないので、彼女の言葉は深いわ、と感心する。なぜなら、最初は価値が低かったが今では価値が高く成る。それに合わせて、沈黙も価値が上がるものとしてとらえられたから。
 そして、また今度、とするならば、此処は軽く流すように言って見せる、今は気持ちよくスイーツする時間だから。
 また別の機会にしっかりしっとり口説いていこう、だから今は、ペロリ、と舌をだして茶化して終わらせる。

「流石にそこまでは――たぶん、無いと思いたい、わ。重い物を持って歩いたり、格闘家のような訓練をしなければ。
 私だって、格闘は訓練してるけれど…ね?

 適度に運動して、訓練してますから。ちゃんと手入れもしてるしね。」

 足に関しては、株のようになるにはそれこそ、其れなり以上の訓練とかが必要だから、多分大丈夫―――絶対は言えないので、少し困ったように眉根を堕として見せる。
 足に関しては、気にしていつも手入れしているから、足だけではなくて全身商売道具だから、言える事なのだが。
 食べたい屋世帯のテーマには、女は全面的に同意する次第。

「へぇ……?ちょーっと、聞き捨てならないナ……?
 自分を虐め過ぎた?無茶する悪い娘ですかー?
 それなら、もっと息を吐き出して、息抜きして、休んでもらわないとかしら。
 これは、おねーさまが全力でティアちゃんを癒しにかからないといけない懸案。」

 彼女は、頑張り屋である、初めて出会ったときも、何度か会っている時も。それは思い出せる。
 そんな彼女から零れる虐め過ぎ、それは、屹度度を越しているものと判断していい事のはずだ、一般的に、努力家が弱音を吐くというレベルは。
 並大抵のことでは無いのだから。
 にまり、とわらって、よし、と席を立ちあがり、隣に腰を掛けよう。

 甘やかしモード、拒否は利きません。
 うっかりも見つけたら、許しません、彼女は、頑張りすぎだ、其処を、まず錦してもらわないとだめだと。

「ふふ、おいし。
 甘くてホクホクで、はちみつとの相性も。」

 マロングラッセの甘さを楽しみながら、珈琲を一口。甘さが珈琲の苦みを忘れさせてくれて、珈琲の苦みが甘さを抑えてくれる。
 彼女がこちらを見ての言葉に。

「ほんと、おいしいわねー。」

 はい、と、自分が食べたマロングラッセ、貴女もどうぞ、と一つまみ摘まんで手ずから彼女の口元へ。

ティアフェル > 「わたしも詳しくは知らないけどそうらしいわ。物の価値も言葉の意味も時代に合わせて流転していくっていう実例みたいよね。
 わあ。わたし……知らない内にモテ期でも到来してたのかしら……? うーん、口説かれ人生か……悪くない……いやいやそんなジゴロな対処力なかったか……」

 照れても誉められる。どういう現象?と当人だけが置いてけぼりになる。自分の人生に何が起こっているのかと茫然としかけるが……お菓子によって現実に引き戻される、とにかくウチらを食って冷静になんな、と語りかけられているようだ……(妄想)。

「そ、そーよね、余りに肉が付きやすいとみてて焦るけど。目指せカモシカ脚線美。
 美はやっぱり努力の賜物よね」

 ボディラインは努力を裏切らない。うむ、と深く首肯して。下半身が最も大きな筋肉の集まる場所なので鍛えすぎてヤバイことならない様にも気を付けなければならない。改めて体型を維持するのは大変だ、と息を吐き出し。

「や、いや、……そーでも…なかったかな?
 うん、いつもよりちょぴっとだけ……うん、ちょっとだけよ。ちょっとだから。
 いやぁ…回復屋が癒してもらってたら立つ瀬ないなー……ん? ど、どしたの……?」

 失言だったかも知れない。冷や汗を流しながら目をうろうろと泳がせて誤魔化しにかかっていたが、不意に隣に席を移動した様子に、少々引き攣り気味に首を傾げて。
 心配をかけちゃいけない人に余計な心配をかけることを云っちゃったことを後悔した。

「グラッセも好きだけど焼き立てほくほくの焼き栗も好きー。つい買っちゃう」

 栗の味わい深さは様々な調理法で楽しめる美味しそうな金色のグラッセをこちらにも勧められて、わーい、と口を開けて、ぱく、と噛み締め。

「ほんと、ほっくほくー。甘いけどくどくなくっておいしー」

 一口噛み締めると自然と笑みが零れる。甘い物というのはそんな力がある。優しい甘さに癒されて。そうしていると、テーブル一杯に並んでいたお菓子も大分なくなってきて。

「最後の一口がまたうまーい」
 
 名残惜し気に残った一口をぱく、と口に入れてしみじみと噛み締めた。そして食後に紅茶で口直しをしながら。ついついここに居座り過ぎて、買い物などがまったくできてなかったので、

「さってえ、全力で食べちゃって結構時間食っちゃったけど、この後どこ行こ?」

ティエラ > 「人と話すのは、面白いわね。自分の知らないことが、判ったりするのだもの。
 到来しなくてもいい気がするわ、だってモテ期になってしまったら独り占めできないもの。
 ジゴロになっちゃ嫌よ。今のままでいて、ありのままの貴女で居て欲しいわ。」

 はい、モテ期とか来てほしくありません、ライバルは少ない方が良い、独占欲つよつよな、おねーさまでした。
 それに、彼女がジゴロは想像できないが、それはそれで……彼女らしくないし、成ってほしくないな、と思うのだった。
 そういう意味では、お菓子の妖精さん(幻覚)は、いい仕事した。そう思う(妄想)

「筋肉も、適度にあれば魅力なのだしね。カモシカの足、ええ、素敵。
 ティアちゃんも美人さんにするから、二人で努力しましょうね、ダイエット。」

 うふ、と笑って見せる、一蓮托生逃がしません。余り鍛え上げすぎると、お尻や太ももが直ぐにに太くなるし、適度というのはとても難しい。
 だから、その難しいことに挑戦する辛さを一緒に分かち合いましょう友情。
 ため息吐き出しても、ダメです。

「貴女の一寸は、他の人の沢山。努力家のいう事は、自分の事を過小評価しすぎ。
 甘やかします。」

 嘘の漬けない性格、視線をきょろきょろと泳がせて、冷や汗垂らしている姿にハイダウトーと、言ってやりたくもなる。
 引きつる顔はよく見ます。
 そんな彼女の耳元に唇を寄せまして。

  「大丈夫、痛い事はしないし、優しくするわ。」

 ええ。甘やかすのですから、痛い事も何もありません、不安にさせないように伝えましょう。
 まあ、何をするかというと、甘やかす、なので、それだけの事ですが。

「ああ、ああ!あれ、いい栗だとそれだけで、向いて食べると甘くていいのよね!」

 判る。シェンヤンの呼び名だったか。天津甘栗。栗を焼いて食べる、其れだけなのに、小さな栗がとても甘くておいしくて。
 焼き立てだとほくほくしててとてもおいしい。
 今回はなかったなー今度たべよーね、とお約束。

「すごく幸せそうで、ああ、見ていてとても心地いいわ。」

 彼女の表情は百面相で、見ていて凄く飽きない。思わず彼女の頭に手を伸ばしてなでなでしてしまう。
 これがペット扱い、と思われる所以なのだろうけども、そうしたくなる可愛らしさもあるのだ。

「もう、こんなに時間が経っていたのね。」

 最後の一口食べた彼女の言葉に、あら、と時間の進みに、目を丸くする。
 さて、どうしたものかと思う、一寸お腹も重いので。

「先に、化粧品とか、見に行きましょうか。」

 給仕さんを呼んで、代金を支払いながら提案。


「この、ポッコリお腹の状態で服を選んでも着られない、し?」

 ちょっと顔が赤く成る。
 流石に、食べ過ぎている自覚があるから、なおさらに。

ティアフェル > 「ほんとね、そうなんだ、知らなかったーって感じのことがいっぱい聞けてちょっと賢くなる。
 むしろお姉様なんて万年モテ期なんじゃないのー?
 ジゴロの人って何気にメンタル強いよなーって思ってるあたり……ま、わたしにゃ無理ねー」

 そんな器用さもタフさもない。恋愛ごとすらまだまだビギナーだというのに、コマしになれる道は果てなく遠い。
 荷が重そう…と遠い目をしていた。

「お肉ゆるゆるだと二の腕が揺れちゃうしねー。あれは恥ずい。
 はい、お姉様、きっと美ボディに……!」

 スポ魂状態でしっかり拳を握って肯く様子は美ボディ目指しているというよりボディビル目指しているような空気感だった。
 ダイエットは一人より二人だ。

「いやいや、わたしそんなに熱血じゃないよ、おサボリもするし自分に甘いよ」

 それこそ過大評価というものですぜ姉さん、とふるふる首を振るが、不意に耳元で囁かれて吐息のくすぐったさに肩が震える。

「え、そ、それ痛くする時の科白だし……」

 医者も痛くないよーすぐ終わるよーってごん太な注射をするものだ。
 ぎゃあ、と胸中で悲鳴を上げながら、色気を伴った心臓に悪い甘やかしやで、と胸を抑えた。

「そうそう、ぎりぎりに買いに行っちゃうと焼けすぎてぱっさぱさの買っちゃうこともあるちょっとギャンブルなアレ。この時期食べたくなるのよねー」

 屋台からいい匂いがするとついついふらふらと吸い寄せられてしまう。甘くてほくほくの罪やヤツ。
 次は買い食いもいいねえ、とお約束にうんうん肯いて。

「だって本当においしいんだもの。おいしいもの食べると勝手にこの辺がくいっと上がっちゃう」

 口角の辺りを指で引っ張って示す。意図するまでもなく表情筋がおいしさに動いてしまうのだと主張。
 それでも見てて面白いものならありがたい。頭を撫でられて少しくすぐったげに頬を緩め。アホ毛を揺らし。

「がっつり食べちゃったからねー。楽しい時間はほんとあっと云う間。
 うん、ほんとね……今のウエストに合わせて服買っちゃうと食べ放題ウェアになっちゃう。
 そういえば青い口紅ってどこで買うの? お店で売ってるのって見ないなー」

 普通の店では青い口紅はなかなか見ない。役者向けの業務用メイク用具でしかお目にかかれないような品なのでふと気になったようで化粧の話題になった流れで思い出して尋ねた。
 精算となって、えーと割るといくらだーと計算しきっちり半分代金を支払い。よく召し上がりましたね、と二人で全部平らげた様子に目を丸くする給仕に大変おいしゅうございました、と頭を下げ。
 
 そしてお勘定も終えるとようやく席から立ち。商業地区へと足を運ぶ。

ティエラ > 「そう、ね?そう在る様に磨いているし、男達からの視線を貰えるようにしているけど……ほら、私は同性愛者だしね。本当の意味で、モテたい相手にモテたことは、無いわ。
 本当に、どんな精神構造ならそんな風にできるのかしらね、と思うわ。それに、ティアちゃんは女性だからジゴロにはなれませーん。
 ティアちゃんだったら貢いじゃう……というこんな女性の献身が産むのだと思うわ。」

 遠い目をする彼女に、成らなくていいわそれ、と女は首を振る。
 ジゴロはなっちゃいけない物だと思うのだ、ええ。男性として間違ってる。
 養ってほしいならいつでもお嫁にどうぞ、と冗談紡いでウインク一つ、全力で受け止めます。嘘偽りなく。

「あー……判るわ。踊りの為にわざとそう言う風にする踊り子もいるけれど。
 ある程度引き締めておかないとと思うのよね。目指せ、美ボディ。
 そのまま、私とコンビのダンサーに引きずり込むのも……っ。」

 美ボディになるという事は、運動神経も必要だし、その点彼女は動いているし、快活だ。
 こう、イケナイ欲望がむくりと沸いた。彼女なら、自分と別のタイプの素敵なダンサーになれるのでは、と。

「本当に、おさぼり魔は、そんなこと、自分から、言いません。」

 はい、真面目な人は自分の事を評価します。本当に怠け者は、おさぼり魔は、何も言わずにこっそり自分だけさぼるような人です。
 という事で、彼女は善性の良い子なのです。論破。

「……痛くしてほしいの?愛の鞭的に。甘やかそうと思ってるのだけど。」

 そもそも医者じゃないし、何方かと言えば、こう、休憩所のお姉さんとか。娼婦とか、そっちの方面で考えてみたのだけど。
 心臓に悪いのかしら、と、本気で首を傾いでしまった女だった。

「店によっても違うのよね、同じものを同じように調理しているのに、ゴリゴリゴロゴロしてるのもあるし。
 確かに、食べたくなるのよね、でも、今日はもう無理、次にしないと……!」

 流石に、食べすぎ警報、お腹いっぱい甘い物は別腹と言いますが、甘い物で今その別腹が限界状態です。
 なので、残念ながら次回に栗は持っていかれます、だってさっき栗をたくさん食べたし。

「判るわ、本当に、さっきからもうティアちゃんの笑顔が眩しくて素敵だもの。
 輝いてるといって良い位。」

 私も見ていて本当にほっこりするの、自分も口角を上げて、にこやかに笑って見せる。
 彼女のような、眩しい笑顔は出来ないけれど、それでも、彼女に見せられる自分の笑顔だ。

「あら、嬉しいわ、おそろいにしてくれるのかしら。
 という事で、お化粧品、とりわけ、口紅ね。これは、何処でも売っているのだけれども―でも、人気が薄いのよね。
 基本的にはピンクとかローズとか赤系が人気多くて。
 だから、注文をすればいつでもすぐに取り寄せてくれるの。

 普段から置いてあるというなら。」

 彼女の質問に、じゃあ、其処を案内しましょうか。
 二人で支払いを終わらせて立ち上がり、目を丸くする給仕に、唇を掌で隠して笑って見せて。
 それから、ティアちゃんの手を取って、歩き始めよう。

「ダークエルフさんのお店が、良いかしら、あの人たちは褐色の人が多くて。
 それらに映える色の口紅が多いの。白とか、蒼とか、紫、とか。」

ティアフェル > 「そうなの? お姉様だったら男女問わずモテてそうだけどねー。わたしも口説くとか云われたらドギマギしちゃうし……。心臓に悪いからお手柔らかにって感じだけど。
 でした……そうだ、生まれ変わったらジゴロになろう……」

 献身的な想いがジゴロを育むとなるとそうさせる本人が悪いのかしている方が悪いのか。
 なんだか鶏か卵か、というような埒の開かない悩みに陥りそうでぶんぶんと首を振り。
 ヨメ。実家に連れて帰ったら全員ひっくり返るって、と想像して肩を揺らした。

「脂肪と筋肉のバランスが重要ね。
 ちょ、わたし踊りは全然できないよ…?!」

 うーむと同感して肯いていたが後半の科白に、そもそも色気なんて微塵もないんだから向いてなさそうでしょ!と悲しい主張をした。踊りなんてお祭りの時くらいしかしない。

「云うサボリ魔もいるのよ、ここに……!」

 実際時々だれて今日はサボるぅ、と一日怠けたりすることもあるのだから慌てて云い募る。わたし前のめり気味だけどそこまでストイックじゃないと。
 なんか彼女の中ですごいイイ子象が仕上がっている気がしてなんだか気が咎めてくる。

「嫌です! 小ウサギのように甘やかされ人生で行きたいです! 生まれ変わったら幸せな家庭で飼われるロップイヤーになるんだ!」

 相変わらずおかしな妄想を繰り広げた。何故か力んで本気の主張。痛いのが好きてどんなドエムですかと微妙。

「あー、確かに確かに。上手な屋台に当たったら贔屓しちゃうね。今度は今年の当たり焼き栗屋をクエストしましょうー」

 焼き栗クエスト。栗クエ。プロの冒険者二人なのにしょうもない提案。今は到底入る場所がない。別腹にも詰め込んでお腹はおいしいものでぎっちりだ。

「やはは、甘い物久し振りだったし。きゃーきゃー云いながら食べるの嬉しくって。
 そう? 脂滲んでテカってるってのじゃないよね?」

 糖分に加え脂肪分も結構摂取した。脂ぎってないかしら、と相変わらずな懸念。お姉様の笑顔だって充分素敵よ、と笑い合って。二人して楽し気なきらきらな笑顔を重ね。

「んー。わたしに青い口紅は似合わないとは思うんだけどねー。褐色の肌だから映えるっていうのあるよね。
 そうね、ここも白色人種が多いから特にそういう品ぞろえになるよね」

 うむうむと肯いた、そうか、自分の行くような店は同じような肌色の人種に向けたものだから寒色系等の化粧品は見ないのかとそこで腑に落ちた。ぽむ、と手を打ち鳴らして。
 また手をつなぐと、日が暮れて少し気温が下がって来た中で彼女の手が暖かい。きゅ、と無意識に目を細め。

「うんうん、白い口紅も見ないわあ。行ってみたい」

 ぜひぜひと肯いて伴われて歩いて行く。歩き回っての買い物は腹ごなしにちょうどいい。興味津々ダークエルフの経営するお店に向かう。

ティエラ > 「男性の大半は下心からよ。そして、私のような性的な少数派は、理解が薄いのだし……お手柔らかにしてたら、恋人とか幸せは掴めないもの。
手を抜かないわ。

 えー……。生まれ変わっても、そんな悪い人になってほしくないなぁ。」

 そもそも、その若さで生まれ変わったときなんて想定しないでほしいわぁ、とはふ、と溜息零して見せる。
 何やら色々考えている模様なので。其の様子を見守ることに。
 何を考えているのか、ちょっと興味があるので、教えてくれないかしら、と。

「そうそう。筋肉もスタイルを保つのに必要なのよ……格闘家の様に威圧するためのものではなくて。
 踊りは技能だもの、教えて覚えるものよ。それに踊りの技術は回避とか、肉弾戦に便利よ?
 色気なんて、男の前で、盛らせる以外に必要ないのよ、だって。お祝いの踊りとか、そう言うのだって、同じものなのだから。ただ、体を動かして表現する。
 むしろ、色気を出して踊る方が、邪道といって良いんじゃないかしら。」

 難しいことでは無いのだ。腕を動かして止める、躰を回す。足を上げる。
 一つ一つの流れがあるだけで、殴った蹴ったと同じなのよ、そう説明すれば理解してもらえるだろう。
 と言っても、道に引きずり込むのではなく、理解を得て欲しいだけだ。
 難しい物では、無いのだ、という程度に。

「いません。だって、言ったらサボらせてもらえなくなるもの。
 そして、さぼる事を認められるという事は、それ以上に働いているから、止めに入ってるレベルよ?」

 自分でダレル、それは偶にの事だろう、許されるサボりだ。毎日サボるような人には監視が付いてサボれなくなる。
 いい子。さあ、この認識を崩す為の証拠品を!待ったと意義ありは、回数制限ありそうな雰囲気で、論破を続けましょう。
 逆転できますか……っ!

「じゃあ、いっぱい甘やかし期間に入りましょう。まずは、ハグで心を落ち着けて貰ったり。」

 おかーさんのようにと言ってから。そんな年齢じゃないわね、どうしましょと、自分で少し悲しくなる女。
 彼女の本気の主張は、承りました、青少年の主張はしっかり大人として受け止めましょう。
 彼女も年齢的には大人ですが今は些細な事。

「緊急クエスト懸案……っ。承らないと。」

 美味しい焼き栗や、それを探せという依頼と、依頼書が頭の中に。依頼人は何処でしょう、目の前にいました、受注しました。
 期間は、この冬中でしょうか、構わない、至高の焼き栗を見つけなければ。

「実際とてもおいしかったから仕方ないわ。私もすごく楽しんだし……、また食べたいわ。
 ……んー。大丈夫、ね。」

 鼻の頭とか、じっと見つめてみるも、特にそういう物はなさそうなので、うん大丈夫、とテカリには太鼓判。

「そうでもないわよ?白い肌だから、色々な色が合わせやすいわ。目の色と合わせた口紅、というのもいいし。
 蒼い口紅なら、服の色を別にしてみると言うのも。
 黒い口紅、だってできるわ、ただ、確かに白い口紅だけは、一寸唇が隠れちゃいそうだけど。」

 その場合は、頬などをチークなどで色を付けてみれば、もう少し変わりそうね、と彼女の頬を、唇を見て目を細める。
 そんな会話をしながら、一区画移動、化粧品のお店が並ぶところ、少し、外角―――貧民地区に近い所にあるダークエルフの店。
 看板なども控えめで、隠れた店である。理由は、人族至上主義の国だからだろう。
 店の中もこじんまりしているが、様々な化粧品が分けられてれて置いてある。
 ダークエルフや、異種族が多く居るのはそういう意味だろう。
 店主らしきダークエルフの女性は、此方をちらりと見て、直ぐに視線を外していた。

ティアフェル > 「そっかな。そればっかりでもないと思うんだけど……。男子の方が案外ロマンチストだったりするしね。
 おお……積極的だね……、でもこの街ではそんなに少数派でもないと気がするけど。
 
 生まれ変わったらロップイヤーのジゴロになるんだからねッ。うさぎ大家族を結成してやる」

 ジゴロになるが、結局生まれかわるのはロップイヤーである。うさぎとしては普通かもしれない。
 考えていることといったら生まれ変わった先の家は男の子と女の子は一人ずつで美人で料理上手なママと優しいパパに穏やかで博識なおばあちゃんがいて……とかなりどうでもいい妄想。うっかり聞いちゃったら怒涛の勢いでまくしたてられる地獄。

「うんうん。胸筋もないと胸が垂れちゃうしねー。
 ………めちゃめちゃプレゼンされてる……。
 そう? 色気を出して踊るとか、人間じゃない生き物もやる純粋なアピールじゃない? むしろそっちが正道のような気もするわ。
 楽しいから踊る、誰かによく思われたいから踊る、それでいいと思うよわたしは」

 なんか踊りの道への勧誘だろうかと思ったが違うらしい。解説の意味はよく分かる。
 要は慣れなんかなと思いながら。

「え、何で今わたしがサボリじゃないことを自分以外の人から説得されているの……?
 普通、逆だよね……? 結果気楽にサボリづらくなってない……?」

 あなたはサボらない人だから、と云われると。あなたサボる人だからと云われているのと同等にやり辛くなるんだな、っ認識。どうした、お姉様と唖然としてしまう。逆にこの人こそサボらないタイプの人間ではなかろうかと読んでしまう。

「わあ。むしろそれ落ち着けない……」

 落ち着ける手段がハグ。この肉感的なボディでそんなことされてどうやって落ち着くんだ、と遠い目になった。思春期男子の心根のように荒れ狂ったりしないだろうか。仮に同性だからないとしてもしてもだ。
 なんだかオカンモードになりつつある感じに思わずくすりと笑声を零し。

「この勢いでおいしい屋台マップとか作ったら売れる気しない?」

 焼き栗に限らず、と食いしん坊万歳な発言。食べたばかりでよくそんな発想でると自分でも思う。
 いっそ他に無限に食える胃下垂の人とかパーティに加入させた方がいいような気もする。

「本当ね、さっきのお店当たりだわ。お茶もおいしかったし。またおいしいもの食べよねっ」

 あ、ほんと? とテカりチェックが入って肩の力をほーっと抜く。さすがにテカテカとか恥ずい。

「わたし、我ながらちょっと顔が子どもっぽいからなあ、そういう色自信ないなあ。
 普段ナチュラルメイクしかしないし……いっぺん塗ったくられまくっておてもやん化して爆笑王になっちゃったし……」

 プロのメイクさんみたいなトークに感心しつつちょっと自分の大人っぽくはない造作が心配になった。
 逆にメイクで大人っぽくなるかな、と考えつつ。失敗メイクの黒歴史も思い出して無意識に、はーっと溜息。
 そして連れられて少し目立たないお店に着くと。ほお、と感心したように店構えを眺めて。
 店内にダークエルフの店主が一瞬視線をくれて外されると若干緊張した。おかしな振る舞いをしたら怒られるかなと。
 取り敢えず、店内に並ぶ口紅やチーク、白粉にアイシャドウ。メイクブラシや香水などを珍し気に眺め。
 馴染みのない色味が多いことに感心して、ほんとにあるー青い口紅ーと目を丸くした。

ティエラ > 「でしょうね、それは判るのだけれども、やっぱり私は男は信用できないの。例外があるとするなら、それだけの物を示してもらわないと。
 今の所、愛したいと思った男は、居ないのよ。だから、今の私の世界の中には、男は要らない。
 少数派ではないとして、それは手を抜いていい理由にはならないし?

 凄い……人間すらやめる覚悟……っ!」

 ウサギのロップイヤーで、ジゴロ。何がそこまで彼女を駆り立てるのだろう。うさぎ大家族は兎も角も。人間を止めて迄、ジゴロになりたいらしい。
 そこまで行ってしまうと、止めようがなくなる。
 幸せな家に生まれて、幸せな家庭の中、ジゴロに育ちたい、そんな彼女の妄想―ゆめ―をしっかり聞かされる。
 そこまで詳細に計画を立てているのね、という感動すら覚えてしまうのだ。

「そう、だらんとした胸はね……躍っていると本当に判るの。邪魔にもなるし動きが制限されて、それがぎこちなさになって……。
 大きいとセックスアピール意外には結構邪魔になるのよね……っ。

 それもそうね。ええ。
 大事なのは、何のために踊るか、だと思うわ。相手を誘惑するための踊り。神事として、神様に奉納するための踊り。
 相手と楽しむための、踊り。
 ティアちゃんの言う通りに、それでいいのよ、楽しいから踊る。」

 まあ、私は、それを商売にして、お金をもらうために踊る、になっているのだけれどもと、軽く苦く笑って見せた。
 彼女の言う通り、格好も踊りも、慣れだという事で、落ち着く。

「ティアちゃんが、自分の評価が間違ってるので、正しただけ、です。
 ―――サボりづらくなったと思うのは、うん、ごめんなさいね?でも、貴女は、もっと休んでいい。
 サボり、と思ってはいけない、わ?」

 一寸熱が入ってしまった模様、つないでいない方の手で、自分の頬をぺちぺち叩いて、落ち着け私。と。
 彼女がさらに休まなくなったら大変だ、慌ててフォローする女。大丈夫よ、貴女は休んで、と。

「そんなことはないわ?下心なく抱き着く程度なら。
 ほら、お母さんと抱擁しあった時を思い出してごらんなさいな、落ち着くはずだから。」

 変に意識しなければ良いだけの話だ、同性なのだ、それぐらいは問題なかろう。
 むしろ、自分が変に意識をしてしまいそうなだけだが、それは我慢すればいいだけの話だし。

「ティアちゃん……。」

 最高の提案だが、懸念がある。
 食べ歩きマップは良いだろう、売るのも、屹度売れる。でも、それをしたら……自分たちがおいしい物を見つけても、食べられなくなる可能性が高く成るのだ。
 行ったら、人気で完売してました――――とか。
 それでも、良いのだろうか、と思うあさましい踊り子だった。
 たくさん食べる系の知り合いは、居なくはないが―――うん。

「ええ、あのお店は、覚えておいて、また来ましょう。」

 スイーツだけではなくて、紅茶やコーヒーも凄く、良かった。上品な場所だった。
 だから、また行こう、と思える場所になっていた。

「化粧とは、そういう物を変える、変身するための、物よ。
 童顔な女の子が、素敵なレディに、私のようなきつい女が柔らかく。
 そういう風に変わるために、有るのだから。

 それに、此処なら、プロが教えてくれるわ?」

 気にしなくてもいいのよ、と言いながら、自分の色味、偶には白もいいかも、と白と、普段の蒼い色を買って。
 おそろい、したいな、と同じ色を買って差し出すプレゼント。

 彼女の黒歴史に関しては、其処のダークエルフの店長に言えば、色々教えてくださる。
 自分よりも詳しいので、聞くのはどうだろうか、と。

ティアフェル > 「そ、そっかぁ……うちは弟が5人もいていい面も悪い面も知ってるからなー。男なんてサルばっかって云われたら肯いちゃうけど。
 なるほどねえ……お姉様らしいのかな。
 え、いや逆だよ? ロップイヤーになるついでにジゴロになるのよ? 夢はかわいいうさぎさんなの……リアルな意味のヤツ……」

 比喩ではない。うさぎちゃんみたいになりたいっていうのじゃなくって。ガチでうさぎに生まれたいってやつ。
 冗談の欠片もなく真顔で云い切った。

「そうなんだろうね。わたしもそれはやだからでかくなりたいというより心底垂れたくない。
 邪魔ってほどでかくないから良く分からない……。
 お姉さまは、一番最初から仕事として踊ってたの?」

 楽しいから仕事にしたい、仕事になるから踊ることにした、どちらが先なのだろうと素朴な疑問、というように問いかけて小首を傾げた。

「お姉様にとっては、わたしそういう人なのね……うん、それは、判った。
 休むのも仕事の内ってね……それこそちょっと世知辛い気がするけど。
 休みたい時は休むわ」

 休みたくないから休まないだけで、結局好きなようにはしているのだ。無茶ができるのも今だけかとも思うし。
 しかし、ぺちぺち自分の頬を叩く様子にきょとんとし。今日はちゃんと休むわと笑って肯いた。

「お母さん……? やばい、振り被って頭ぶっ叩かれた記憶がまず蘇る……何故うちは暖かい抱擁を思い出すのに苦心する家なのだろう……」

 落ち着く筈、と云われて母の話で全然落ち着かない自分を知った。ゴリラの親はそれなりにパワフルだった。
 
「え? だめ?」

 食べ歩きマップに難色を示されて、自分たちが買えなくなる可能性を考えていなかった。
 小首をのんびり捻って。おいしいものは分け合いたい、と呑気なことを考えていた。
 実際自分の分がなくなると泣きギレしそうだが。

「うん、お気にいりが増えたね」

 好きな店や場所が増えるのは嬉しいことだ、二人で来たのだから次は待ち合わせはあの店で、なんて指定するのにも使えるだろう。にこにこと肯いた。

「まずメイク面倒いって思うところをなんとかしなきゃね。
 お姉様のゆるふわ系メイク見てみたいな。
 服や靴をそろえてお化粧も変えればセクシー路線狙えるかしら」

 ちょっと情熱の炎が宿り始めた。いつもは広がったスカートとかショートパンツとかラフで緩い格好が好きだがちょっと露出した色気のあるスタイルももしかしてわたしイケるだろうかとメイクに過剰な期待を寄せる。
 同じ色をプレゼント、と云われて一瞬目を真ん丸くしたが。わあ、と嬉しそうに頬を染めて。

「ありがとう~……似合うかな、同じの、わたしも似合うかな?
 て、店長……わたしがセクシーに見えるメイク術とかって……ありますかっ?」

 どきどきしながら恐る恐る少し話しかけ辛いダークエルフの店長に尋ねたが……一瞬『難しい注文』という顔をされた。
 キャラ変は荷が重い、という感じながら、かなり唸り悩みながら例えばこうしたら…と一応教えてくれる。

ティエラ > 「屹度、姉が姉だったから、というのも大きいのでしょうね……?まあ、心から愛せる男性が来たとしたなら。私は、私でなくなると思うわ。
 それだけのお話、なのよ。

 ―――だから、人間を止めてうさぎになるのでしょう?」

 理解間違っていただろうか、あのふもふもモフモフの、うさぎさんになるというから、人間を止めるという衝撃を受けたのだけれども。
 そして、あ。と理解した。ジゴロがついでだった。その辺りを勘違いしていたのね、と。
 真顔で伝えてくれる相手に、OK理解した、と返答を。

 どのみち、人間を止める覚悟はあるらしい。ティアちゃんの生まれ変わりうさぎを見つけたら抱きしめよう捕まえよう。うふふ。

「垂れないようにするものとか、無いのかしら……。
 ―――そうね、ええ。私たちの部族は先ず、魔術と踊りを覚えさせるのよ。旅芸人という触れ込みで街を渡り歩けば、怪しまれることは少ないから。
 それに、踊り手は、持ち物少なくてもいいし、その分別の持ち物が持てるから。」

 ジプシー、旅人の部族。魔女でもお金は必要だ。自分の身を偽りつつ、金銭面の困窮……それを解決するために部族ごとに様々な方法をとる。
 ティエラの部族は、魔法をあまり公表しない。魔女だとばれやすくなるから。だから、魔術と並行し踊りを教える。
 踊り子であれば、何処にでもいるし、酒場とかで踊れば金がもらえる。
 中には、踊りの後に男を誘い、それを食い、更にお金をもらうものも居る、ティエラ自体は男では無く女が好みだが、それをしたこともある。
 だから、最初から、仕事として、生活として、踊りは有ったわね、と頷いた。

「辛くなくても、自分が望んでも、疲労は溜まるから―――心配し過ぎでごめんなさいね。」

 彼女が理解してくれた。しかし、自分は少し踏み込み過ぎではあったかもしれない、要らぬおせっかいのレベルではないだろうか。
 少し眉根を堕として、心配したとはいえ、申し訳なく思い、彼女に謝罪を。

「……家族にも色々いるわね。」

 そう、言葉にしつつも自分も、母親にはそんなに、良い思いはない。
 というも、ジプシーだから、生みの母親ではなく、皆で協力しての共同生活だ。
 いつも誰かとセックスしている母親、別の所で、姉や、兄妹と生活している自分。
 優しく母親に抱き締められた記憶はなかった。

「駄目、とは言わないわ?ティアちゃんの好きにすると、良いと思う。」

 懸念は、先程のあれだけだ。それを聞いたうえで、やりたいならやると良いと思う。
 友人や恋人、家族、手近な人には何処までも優しくするが、知らない人だと、何処までも冷酷、目の前で死のうが知ったことでは無い。
 それが、ティエラなのだ。
 彼女が分け合いたいと言うのならば、彼女のその気高さに、うん、というのであった。

「お仕事ではないときなら、付き合うわ。
 ゆるふわに、情熱が見える……。」

 たぶん、自分は今、一番ゆるふわのつもりだった。服装も普段と変えているし、デート用に。
 でも、それ以上を求める彼女その、目に映る炎、そして、化粧などにも興味を示し、美への道を踏み出すなら、それに付き合うべきだ。
 だから、ぐぐ、と頑張ってみる、と握りこぶし。

「店長、面倒臭がらないで下さいな?私の可愛いティファエルちゃんなのですから。」

 にっこり、店長に笑いかける。難しいは、不可能ではない、つまり、面倒というのがこの店長の性格だ。
 常連だから知っている。
 にこにこ威嚇するのは、ええ、本気で言っております。
 だから、店長も―――応えてくださるのでしょう?ね?と、圧が店長に向かうのでした。
 もう、4種類くらいの案を、出してくださるはず。

ティアフェル > 「えー? こんなに可憐なお姉ちゃんなのにね、何故いつしかサル山に。
 そ、そんなに……? 自己崩壊のレベルにまで……? いや、ここでそれだけって表現はないわー。

 ………そうだけども」

 それはそうなんだけど。いざそう云われるとこう、どんだけ厭世的なんだって感じに響く。
 単純に食べちゃいたくなるようなふわもこのうさちゃんとして生きて周囲から一生かわいいって云われ続けてみたいだけだが。若干微妙な顔になり。
 ならいいけど…と理解したとの声に力なく肯き。
 生まれ変わった家の子にお姉様がなってたらオモロイなと詮無いことを考え。

「それの一端を担うのが胸筋なのよ。あとは寝る時ブラ?
 なるほど……じゃあ踊りが好きか嫌いか考える前にやってた感じなのね」

 それも少し淋しいように感じた。あんなに綺麗に踊れるのにそれは好きとか楽しいとかそんな単純な考えの範疇外にあったらしい。
 踊りを覚えることはほとんど義務化されていたのかと理解した。

「いやいや、心配してくれる人がいるっていうのはすごーくありがたいわ。
 だって、心配って、心を配るって書くのよ。そういう風に思ってもらえるのは嬉しいことよ」

 ただ、せっかく心配してくれる人がいるというのに無茶も無謀も時にはやってしまう。
 けれどストッパーになってくれるのは確かで。疲れた時素直に休もう、と優しい言葉は背中を押してくれる。
 痛み入ります、としみじみと頭が下がる思いで。

「家族の数だけ個性がある……」

 うん、と遠い目で首肯する。うちのおかんはパワフルだった。自分の後に次々と兄弟が生まれてくるものだから、あんまり甘えた記憶もない。
 わたしもああなるのかな、いやだな……とそんな風に親の背中を見て育った。そして存分にゴリラ要素は遺伝した悲劇。

「ん、おいしいのにあんまり売れてない店とか、潰れちゃわないように保全活動にもなるからやってみよー」

 売れすぎるほどマップを当てにしてもらえるとも思えないので、味はいいのに何故か客足の遠い店などを見つけたら紹介がてら記していこうと。
 あと、自分が好きなものは広めたいというある種の顕示欲から。

「わあ、ありがとう。
 今度お互いイメチェンして遊びにいくのもいーねー」

 大分雰囲気変わって面白いかも知れない。いっそ仮装めいた気持ちになるかも。
 普段セクシーなお姉様のゆるふわ系に、普段から野生的ゴリラな自分のセクシー系……ゴリラがセクシー気取ると怪物化するような気がするけど。
 付き合ってくれるという色よい返答にやったーともろ手を挙げ。

「そうそう、カワイイわたしに免じて……物凄く微妙な顔するね店長……客商売ですけど?」

 カワイイと云ってもらったのですかさず言葉尻に乗ると店長からあからさまなリアクションが返ってきて、冗談通じないとボヤいた。
 そして、追加でメイク方法を教えたもらったが……目をぐるぐると渦巻き状にしてのたまった。

「そんなに憶えらんないよ~……頭ごちゃごちゃしてきた~」

ティエラ > 「言葉足りなかったわ、姉というのは、私の姉の方ね?ティアちゃんの弟さんたちを見たことないし、見たことない人を貶すような女の積りもないわ。本当に、ごめんなさい。
 自分を変えると言うのは、そういう物でしょう?だって、例えばティアちゃんは男性を愛する人だとする。それを同性愛者へと変えるのは、十分崩壊のような気がするわ?
 だから、自己崩壊だとしても、男性を愛する私は、私ではなくなる――と言えると思う。
 でも、良い事と言えば、良い事でしょう?それをしても良いだけの相手を見つけた、という事なのだし、だから、それだけの話になるわ。

 ――――」

 たぶん、魔女的な感覚が出過ぎてしまった、彼女の微妙な表情に思う。
 魔女は、魔法で黒猫や、鴉に変化できるので、彼女のうさぎになりたいを、其れの延長としてとらえてしまったかもしれぬ。
 人ではないが故のずれを醸してしまい、彼女の表情を見て、どうしましょう、と、少し考える。
 うまくフォローしようと思うが、上手く言葉が、出なくなる。
 さらに止めとばかりに力の無い頷き、あぁぁぁぁぁぁぁ、と全力で内心戸惑うのだった。

「胸筋は、ええ鍛えてはいるのだけども。………ブラ?
 そうね、私の部族では、大体がそうよ、中に天才と言われるような子がいれば、踊りでは無く魔法を中心にされるだろうけれど。
 私は、踊りを。小さくてもお金を稼ぐ手段としては、良く有る物だし。

 ―――いまは、楽しく思ってるわ。」

 大丈夫だから、と。昔は兎も角今は楽しみも感じてるから、と。そういう事もあるわ、と。
 ポンポン、と彼女の頭を優しく撫でて。

「じゃあ、ちゃんと心配させてもらおうかしらね。
 大丈夫よ、心配させすぎたり酷い目に会ってたら、助けた後はお仕置きするから。」

 ね?と無謀をしそうな彼女の雰囲気に、判りましたか?にっこり笑って、目を覗き込んで。
 言葉だけでは止まらない子は、閉じ込めちゃうぞ☆なんて、ホラーな一言。

「言葉が生まれた気がするわ。」

 家族の数だけあるらしい、聞きなれない。個性はまあ、個人であるが、家族ごとにも、発生するのねと。
 比べることがあまりないから聞きなれなかっただけかも、と思うが、パワーのあるワードに聞こえた。
 物理的ではなく言語的にも、パワーがあるらしい彼女。

「じゃあ、メモとペンはいつも持ち歩かないとだめね。
 食べた味を細かく伝えられるようにしないといけないし、頑張りましょう。」

 やると決めたならば、全力で支援するのが女の考え。細かく書いてわかりやすくした方が、屹度広まるだろう。
 地図も詳細な物を作らないとだめね、と。地図も結構高いので安く済ませるならまずは作らないといけないわ、とか。
 専門家、知り合いにいたかしら、と。

「ええ。今度は、何処に遊びに行こうかしら?
 ル・リエー……はダメね、あそこ水着だから、イメチェンが。ダイラスのカジノ?」

 次に遊びに行くところ、イメチェンと一緒にするなら、何処がいいかしら、と首を傾いで考えて。
 彼女は何処に行きたいだろう、と。
 大丈夫、ティアちゃんはゴリラではない、美少女だ。だから、屹度可愛らしくできる。
 意中の男が一発でずきゅんするような美女になるはずだ……!

「ほら、店の看板も出さない様な店主だから。」

 入る前に店の外観を思い出してほしい、普通の民家のような雰囲気で、凡そ商売してるような外観ではない。
 やる気がないのである、この店主、腕はいいのだけれど。
 後、亜人とかが基本的な客なので、そっちの部族用なのかもしれない。

「はい、ティアちゃん。」

 目をくるくるさせている彼女、聞いたものをメモに取り、それを手渡す。
 後でゆっくり一つずつ、覚えればいいのよ、と。

ティアフェル > 「ああ。いえいえ、こちらこそ、読解力なくって面目ない。
 そー? そういうもんかなあ……恋愛対象が変わって崩壊っていうのはよく分かんないな。
 わたしは、好きになったら老若男女は問わないけどねー。まあ、あんまり子どもだとさすがにってのはあるけど。
 んん……まあ……お姉さまは今のところ女性の方がよくって男性相手だとピンとこないってか、今のところナイってのはよく分かった」

 主義趣向はそれぞれ。自分の中の正義を貫いていくしかない。
 自分の正義=来世はプリティなロップイヤー。あ、すごくしょうもない。
 そんなしょうもない妄想に対して彼女が戸惑っていることを察せず、わたしって、バカ…?と当たり前のことを悩んでいた。

「胸当て……崩れないようにするのにいいよ。寝てる時の重力がなかなかダメージだから。
 ふーん……確かに歌や踊りは元でもかからないし道具も要らないもんね」

 元手がかからず道具を使わず稼げるのは流浪の民には重要だろう。ふむふむと肯いて。今は楽しんでいると聞けば安心したように笑った。

「ありがとうございます……お仕置きは、やだなあ……」

 自業自得とはいえ。心配かけさせるようなことをしたんだから文句は云えないとはいえ。お仕置きはちょっと気が重い。覗き込まれて目を泳がせた。監禁は嫌です…と。

「おお。ひょっとして名言誕生させちゃったかな」

 自惚れたことをにやつきながらほざいて台無しにする。そもそも名言というような立派な言葉でもない。

「うむ。グルメマッパーは苦労するね。
 素敵なマップを新たに生み出そうッ」

 ファイ、おー。支援を頂けるのならやってやろうじゃないかと相変わらず調子に乗るし相変わらず無謀。
 やるだけやるぞと拳を握り。この街の地図なら持ってるよ、と初めて来たときに買ってたものを思い出す。
 しかし少々古いので更新は必要だろうが。

「水着持ってるよ? 知り合いに泳ぎ教えてもらったりしたよ。楽しかった。
 わあ、カジノ行ったことないのよー」

 水遊場には遊びと泳ぎの練習を兼ねて出かけたことがあった。露出の少ないタンキニ系の水着をきっちり購入して。しかし行ったことのないカジノにも興味がある。雪の前に紅葉を見物したい気もするし、行きたい場所ばかりで迷う迷う。
 それにしてもメイクを失敗してバケモノにならないことを祈りたい。

「確かに……営業熱心ではないのかしら……あ、ごめんなさい、目、怖い。ダークエルフの一瞥怖い」

 失言をカマしてしまうと呉れられた視線がちょっと刺さって慌てて謝罪とともに目を反らした。
 外観といい店主といい、常連で知る人ぞ知る人にための店なのだろう。もうけも考えていなさそうだ。
 そしてソツなくメモを渡されて、わあ、首尾がいいと感心して。

「きゃあありがとう。助かる。これでわたしも明日からセクシー系美女に……うふふふふふ」

 化粧をちょっとばかし変えたところでそんなに向上する訳もないが過剰に期待してにやにやした。
 口紅も買ってもらってつけるのが楽しみである。
 ――そんなところで今日のお買い物は一段落だろうか。ゆっくり食べてゆっくり見ていたのでほとんど丸一日経っていた。本当に楽しい時間はあっと云う間。しみじみ感じながら。
 手を繋いでお店を後にしながらにこにこ上機嫌で話しかけるのだ。

「今日は楽しかったー。また遊ぼうねー」

ティエラ > 「会話というのは、相手の事を思ってしなければならないのよ、それが抜けてた私もごめんなさい。
 大した事、ではないのよ、屹度ね、私の思い込み―――というレベルの事になるのだから、それに無理に判らなくてもいいと思うわ?
 好きになってもらえるよう、いっぱい頑張るわ。
 その認識で良いわ、ええ、十分よ。」

 不毛な所になりそうだし、この話はこの辺でやめておいたほうが良さそうだ、彼女も困惑しているのが見て取れる。
 彼女が打ち切る方向に流してくれるのでそれに乗っかって、打ち切ることにした。
 もうちょっと、話しをうまく移動させられるようにならないとだめね、と思うのだった。

「寝る用の胸当て、ね……下着売り場にあるかしら。
 そう、だから私の部族は最初は、魔法と、踊り。その後に薬草とか使うようにって。

 ――――あ、ジプシーの魔女だって、秘密ね?」

 判っているとは思うけれど、ジプシーとかもそうだが、魔女―――先天的に人間ではないので、ばれると大変である。
 信頼の証として、伝えるけれど、他に言わないでね?女はしぃ、と人差し指を立てて内緒を願う。

「ふふ、じゃあ、お仕置きが、無いように頑張ってくださいな。」

 では、無理や無茶をして倒れないようにしてくださいな、と。
 心配しているんだか脅しているんだか訳の分からない状況となる。
 実際に、監禁などは、しないけれど、釘はぶっとい方が良いはずだ。

「名言クリエイターを目指すのも良いかもしれないわ。
 素晴らしい言葉を伝えた女、ティアフェルちゃん。
 辞書に載るかも。」

 うぬぼれた言葉に、くすくす、笑って冗談を紡いで見せる。
 そうなったらそうなったで楽しそうだと思うのだったりする。

「それなら、ええ。ええ。
 先ずは、街を歩き回って、新しいマップを作らないとね、そのマップも見ないと。」

 ティエラ、思ったよりも動く人であり、マップを作るのは足で作ると考えている。
 自分で歩き、自分で見て、初めて作れるのだ、と。店とかの場所もそうなるから、間違いではない筈だ。 
 古い地図があるなら、効率的に行けるね、と喜ぶのである。

「泳ぐのは……そうね。でも、先にイメチェンだし。一緒に泳ぎたいし、水着も買いたいわ。私は持ってないし。
 カジノ、先にしましょうね。」

 彼女と泳ぎに行くのはいいが、先にイメチェンを見てみたいから、後にすることにした。
 カジノならば、ドレスコードもあるし、イメチェンにぴったりなはずだ。ちゃんとできていれば、遊びに行けるのだし。

「……カジノの前に。やることがあったわ。
 次に遊びに行くときは、服を探しましょう?」

 そう、ドレスコード。ドレスというのは服装だ。
 化粧だけではないのだし、一緒に服を買わないと、カジノには行けそうにないはずだ。
 ダークエルフの一瞥におののく可愛らしいうさぎを眺めて、そうしましょうね、と。

「こちらこそ、ありがとうね、また、遊んで欲しいわ。
 お疲れ様、送り狼は、要らないかしらね?」

 店を出て、あいさつしてくれるから。
 女も又挨拶を返して笑って見せる、また、会いましょう。
 街灯がともり、夜も更けているこの時間帯。
 お疲れ様、と言いながら、彼女との今日の楽しいデートは、終わる。
 食べて遊んでいた、一日だった。

ご案内:「平民商業地区」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「平民商業地区」からティエラさんが去りました。